日本国内では、「原発 ⇒ 福島第一から
のトリティウム水廃棄」という反応が
自動的に返ってくる状況です。
今、2023年8月30日ですので、
2024年に入ったころには、状況がどう
変わっているのか、私には分かりませんが。
どのように変化しようと、間違いなく
言えることとして、
そもそも核発電をやらかしていなければ、
トリティウム水放出もなかった
ですよね?
その初期段階以来、核発電には損害賠償に
関する免責(賠償の不充分さを公的に容認
してしまう)という問題がつきまとって
おります。
その「免責を法律が認める」ことの
悪名高いモデルがアメリカの
Price-Anderson Actでして、
それに関するBeyond Nuclear Bulletin
8月24日号の記事を
私の日本語化で紹介します。
Beyond Nuclear Bulletin
2023年8月24日号より
Senate extends nuclear industry’s limited liability to catastrophic accidents – Beyond Nuclear
(核発電産業が破局的大事故を起こしても、賠償責任には上限 ・・・ そんな法律をアメリカ上院が延長)
核発電による損害への賠償に制限を設ける
Price-Anderson法なるものがアメリカには
あって、その有効期間が上院で延長されたと
いう記事です。
「そんなもん、日本にいる我々には、関係
ないでしょ?」とか言わないでね。
日本にも原子力損害の賠償に関する法律なる
ものがあって、最初のバージョンは1961年
に公布されています。これが、アメリカの
Price-Anderson Actに類似した法律なのです
ね。(というか、このActをモデルにした、
と言うべきかも)
要は、核発電などで大型事故が発生すると、
その被害が甚大すぎる ⇒ 損害賠償の上限を
法で定めて、核発電企業(原子炉メーカー、
電力会社などなど)を保護しよう
という法律です。
日本にも類似法がある以上、日本にいる我々も
Price-Andersonのことを少しは知っておいて
よいですよね。
そして、「法で損害賠償の上限を定めないと
関連企業がつぶれてしまうような危険極まり
ない事業(核発電)なら、初めからやるな
~~」とアピールしましょう。
では、Bulletinから。
いつもどおり、
私による日本語化
< >内は、私からの補足説明
です。
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Senate extends nuclear industry’s limited
liability to catastrophic accidents
(アメリカ上院、破局的事故の場合の核発電
産業の賠償責任を制限する法律を延長)
August 24, 2023
Price-Anderson Actの再認にあたり、
下院が公聴会を避けているのは、
なぜか?
2024年版National Defense Authorization
Act(国家防衛授権法)は1,168 ページ
に及ぶ長い条文でできているが、その
一部としてPrice-Anderson Nuclear
Industries Indemnity Act(プライス
アンダーソン原子力産業免責法)が組み
込まれている。この法案は「通さねば
ならない」ものとして、公聴会も全く
開催されぬまま、今年7月27日、
アメリカ上院はPrice-Anderson法を
再認することを投票で決めた。同法の下
では、アメリカの原子力産業に深刻な
債務が発生しても免責され、特に破局
的な核事故が発生してもその天文学的
な賠償責任を免れる。その Price-
Anderson法の効力が20年延長され、
2045年まで延長される。本来なら
2025年12月31日で廃止されるはずで
あった。今回の乗員による再認を受け、
これから同法の再認の是非を決める
投票が下院でなされる。
下院では、偏りのない意見聴取を行う
のか?
下院が検討すべき問題点は、実に多数
ある。それによって、真実をもって疑問
に答える必要がある。ところが<実際
には>アメリカ政府は、「国民による、
国民の、国民のための」政府でなければ
ならないのに、原子力産業の各社ロビー
活動の圧力に屈し、核事故が発生した
場合の賠償責任を連邦の納税者たちの
負担にしてしまうのだ。検討すべき
問題点のトップにある疑問として、
下院がPrice-Anderson 法による免責を
わざわざ設けようとしているのは、何の
ためなのか?この免責は、いわゆる
「先端」原子炉設計やSMRの建設・
稼働を可能にする。「先端」とは言われて
いるものの、こうした原子炉の実効性や
実際の安全性などは未確認だ。核発電
業界は、SMRは「事故が発生しても、
作業員は帰宅しても構わない」ほどに
安全性が高いと主張している。同業界
は、SMRを何百基も大量製造し、
建設し、稼働させようと目論んでいる
のだ。だが、原子炉の建設・稼働の免許
を得るには、原子炉の敷地外での緊急
避難計画が必要なのだ。しかしこの緊急
計画の必要性を免除してもらうことを、
原子力業界は企んでいる。そのような
原子力業界に、Price-Andersonによる
免責を認めようというのだ。.
アメリカ議会がPrice-Anderson法を可決
したのは1957年のことで、これは原発の
建設や稼働への民間投資を促すためで
あった。これに先立ち「peaceful atom」
つまり核の平和利用という方針を
アメリカ政府は掲げていた。だが原発で
破局的な事故が発生した場合、放射性
物質の漏出という災害が原発敷地外に
広範囲に広がってしまう。そうした
場合に、建設業者もベンダー業者も
稼働事業者も深刻な賠償責任を免除
されることを保証しなければ、アメリカ
にはいつまで経っても民営の商用原発は
出来ないということに、アメリカ政府は
気づいたのだ。Price-Anderson法は
さらに 破局的事故の場合の市民への
損害賠償に関する規定も設けられた。
原子力産業側の賠償責任額は当初5億
ドルまでと上限が設けられ、20年ごと
に再検討を受けて再認されることと
された。
現在でも、核事故が発生した場合、住宅
保険をはじめとする財産保険で損害に
対して保険金を支払う保険プランを、
アメリカの保険会社はいまだに提供して
いない。そして核産業が負担すべき損害
補償額は最大で137億ドルという上限が
設けられている。下院の決定による
ものだ。だがNational Academies of
Science (アメリカ科学院)の2014年
の推定によれば、2011年に発生した
日本の福島第一原発の破局ではゼネラル
エレクトリック社のマーク1という
沸騰水型原子炉3基が実際にメルト
ダウンを起こしたのであるが、この
大事故による放射線被ばくや長期的な
リソース汚染、広域にわたる経済的
被害、住民の避難などによる経済的
喪失の総額は、2,000億ドルを優に
超えるそうだ。
アメリカ上院は本来なら民主的な
プロセスを経て法案を成立させる
義務を負うのだが、その義務を無視
してしまった。したがって我々は、
下院では透明で民主的なプロセスに
よる公聴会を開催し、そこではPrice-
Anderson法の再認が実際にどのような
結果を招くのか、独立系専門家たちの
証言を求めるべきだ。
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日本の原子力損害の賠償に関する法律も、
よく似たような内容です。
こんな法律を作ってまで核発電をやって
いきたい ・・・ その意図とは??
1950-60年代と違って、発電なら今では
太陽光も風力も地熱もあります。
ここまでして、核発電による電力を確保する
必要なんて、どこにあるのでしょうねえ??
あるいは、真の意図は電力そのものじゃ
なくて、核技術の保全・保有にある ・・・
そう考えた方が、現状を説明しやすい
ような。