核発電3倍に、という無謀

Beyond Nuclear Bulletin
2024年1月11日号より
COP28’s tripling nuclear energy is unachievable – Beyond Nuclear

COP28’s tripling nuclear energy is
unachievable
(COP28の核発電3倍増は、実現
不可能)

そもそも、気体CO2排出はダメで、温排水排出なら良いのか?
かなり簡略化した図です

そもそも、カーボン排出を減らそう
⇒ 核発電を大幅に増やそう
という発想そのものがトンデモない
論理の飛躍を含んでおり、呆れるしか
ないのですが ・・・ (上の黒い
メニューの終わりの方にある付録
w-1)w-3)w-8) を参照)
無論、核産業業界などからのプロパ
ガンダなどが裏で蠢いているんで
しょう。
私たち反核勢力も、しっかり対抗
しませんと。

では、COP28の核発電3倍増は実現
不可能だという記事を、Beyond
Nuclear Bulletinの2024年1月
11日号より。

いつもどおり、
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。

******************************
<アメリカのボストン地域で最大の発行
部数を誇る日刊紙である> Boston
Globe 紙に掲載された主張がある。
核物理学者で以前にアメリカの
エネルギー長官を務めた Ernest Moniz
と、弁護士でありアメリカに本拠を置く
団体Clean Air Task Forceの理事長でも
あるArmond Cohenとが、全世界での
核発電量を3倍にするという目論見を、
2023年12月にアラブ首長国連邦で開催
された国連の会議 <COP28> で採択
した「気候変動を緩和するために不可欠
な努力の一環」であるとして擁護する
主張だ。この主張記事は初めから、
COP28の成果を曲解しており、「予想
に反し、COP28での勝者とは
核エネルギーであった」と述べている。
確かに現時点で核発電を行っている国々
は世界で32か国あるが、その多くが
アメリカが主導した2050年までに世界
の核発電量を3倍に増大させるという
誓約に署名した25か国にも加盟して
いる。だが核発電技術の現状を考える
なら、この意味で「勝者」であるとは
果たしてどういうことなのか、極めて
疑問だ。場合によっては危険な妄想で
すらあり得る。

オレ、「勝者」・・・

Moniz と Cohenの主張では、地球規模
で加速中の気候変動危機を軽減するため
の適切なプロジェクトは、どのような
ものであるべきかを定めている。この
二人が不可欠な要素として挙げている
こととして、「2050年まで世界で、
原発をおよそ50基、毎年新築する必要
があろう。これは、すぐにでも始める
ことだ」としている。「大型の」原子炉
は1基あたり、少なくても1100 から
1600 MW相当の電力を発電する。認可
のための検討のプロセスがあくまで
必要であり、最初に安全性が認められた
原子炉設計の建設認可が2030年までに
降りるものと想定すると、2050年まで
に大型原子炉約10,000基を完成させ、
稼働させねばならなくなる。随分と
高望みだ。ここで「相当の」という言葉
を使ったが、これは「小型モジュール式
原子炉」(SMNR)<要するに、SMR
のことです。上の黒いメニューでページ
s-0) – s-8) で論じています> という
まだ開発中の設計のことも考慮に入れて
のことだ。SMNRの発電容量は、1基
あたり1MWeから300MWeだ。SMNR
を導入するという戦略の場合であれば、
マイクロ原子炉やミニ原子炉を数万基、
今後30年間で建設することになる。
現在、核発電産業は始まってから
およそ70年になるが、全世界で稼働
させている民生用発電原子炉は全部で
412基である。それ以外に「稼働可能」
と見なされているものが440基ある。
ただしいくつかは、発電稼働が許可
されていない。日本の原子炉の多くは
福島第一の惨事の後では、稼働が認め
られていないのがその例だ。

原発が稼働する前段階で、たとえばこんな電力消費が。
その電力が石炭火力からのものであったら??

2050年までに世界での商用核発電の
容量を3倍に増やすという歴史に残る
ほど実現性が疑わしいCOP28の誓約
に署名した「勝者たち」だが、その
25か国のうち18か国には、原子炉
1基から始めて発電を行ってきたと
いう稼働実績がある。どの程度の
規模まで拡大したのかは、さまざま
だが。

署名した諸国は、次の通り: まず
提唱国であるアメリカが現時点で
93基を擁している。そして <アルファ
ベット順に> アルメニア(2基)、
ブルガリア(2基)、カナダ(22基)、
クロアティア(0)、チェコ共和国
(6基)、フィンランド(5基)、
フランス(55基)、ガーナ(0)、
ハンガリー(4基)、ジャマイカ(0)、
日本(稼働中10基、福島事故後に
残っている「稼働可能な」原子炉は
33基)、韓国(26基)、モルドヴァ
(0)、モンゴル(0)、モロッコ
(0)、オランダ(1基)、ポーランド
(0)、ルーマニア(2基)、
スロヴァキア(5基)、スロヴェニア
(1基)、スウェーデン(6基)、
ウクライナ(15基だが、そのうち6基
をロシア軍が管理下に)、アラブ首長国
連邦(3基)、そして英国(9基)。

誇大妄想なのか~~?

Moniz と Cohen の主張は近年の歴史
を振り返っており、世界でも最初の核
の「勝者」であるアメリカからそれを
始めているのだが、公正にこの歴史を
振り返るなら、こんな「大勝」が実現
可能なのか疑わしくなるはずだ。
2005年のエネルギー政策法(Energy
Policy Act of 2005)がアメリカ議会で
成立した時、強力なロビー活動のため
議会ではいわゆる「ニュークリア―
ルネッサンス」が始まっていた。
この法案により、連邦政府による原発の
建設認可と稼働許可とが1つの申請に
まとめられ、認可プロセスが効率化
された。核発電産業に対しては何十億
ドルもの連邦政府の血税が刺激策として
あてがわれ、連邦政府からのローン保証
と発電に伴う税控除とが提供された。
この結果、議会調査サービス
(Congressional Research Service)に
よれば、2007年までに大型の「先端型
原子炉」33基を新設しようという
プロジェクトを核発電業界は急遽
開始することとなった。それから
16年間先に飛ぶが、2023年になって
みるとそうしたプロジェクトで実際に
稼働可能となった大型原子炉はVogtle
原発の3号機1つだけだ。これは
Westinghouse社の1,100MWe原子炉
で、ジョージア州にある。同じ原発の
4号機も竣工・検査・稼働開始を
2024年あるいは2025年初めに開始
する予定だ。このWestinghouse社の
原子炉2基を建設するプロジェクトは
当初の推定では完成までの経費が140
億ドルであった。だが実際には、
今では350億から400億ドルにまで
膨れ上がっている。かくしてどちらの
原子炉も、今までの歴史の中で最大の、
しかも予想を外れた金額の電力を発電
する結果となっている。それ以外に
建設が始まる見込みであった原発は、
サウス カロライナ州にある Virgil C.
Summer原発の2号機と3号機だけだ。
電力会社のパートナーシップが事業主
であったが、2017年に断念したのだ。
100億ドルが無駄になり、しかもこの
件に伴い関連企業の役員2名が現在、
連邦刑務所で服役中である。サウス
カロライナ州の電気利用者たちに対し
詐欺を働いた、というわけだ。
その他の「先端型」原子炉29基は、
延期またはキャンセル、または撤回と
なっている。

結局、小さいのをたくさん集めるってこと

アメリカは「相当の」設計を活用する
というアプローチを採用している。
大型の新型原子炉は経済的に成り立た
ないので、代わりに小型モジュール式
「先端」原子炉設計を利用しよう、
というわけだ。このアプローチでは、
ずっと小規模の原発敷地に最大で
12基もの小型原子炉を建設し認可を受け
それらを1か所のコントロール ルーム
から制御するというものだ。だが、
Moniz と Cohenはこのやり方の現状
レポートについてはなにも記して
いない。小型モジュール原子炉を次々
に完成させていき、順にグリッドへの
送電を始めていく、という方法である。
原子炉の稼働開始の経費を抑え、
工期を短縮でき、安全性も高まると主張
されている。

売れてないので、SMR各種大安売り~~

 

アメリカエネルギー省 (DOE) が誇大
喧伝をし、連邦からの支援金も
受けているSMNRの代表企業が、
オレゴン州ポートランドに本拠を置く
NuScale Power Corporation社だ。
NuScale社の筆頭株主(60%)は
アメリカ核産業にその名を轟かせる
Fluor Corporation社だが、同社は
核兵器のメーカーとしても大手だ
<私(ひで)による強調>
DOEはさらに、NuScaleのパイロット
プロジェクト用に連邦政府保有地から
無料の敷地まで提供している。
アイダホ国立研究所にある敷地だ。
SMR設計でアメリカ原子力規制委員会
(Nuclear Regulatory Commission、
NRC)からの安全性認可を受けたのは
NuScale社が最初であり、核発電業界
でのスタートアップとしては現時点
では唯一この認可を得ている。その商用
小型モジュール炉は、従来型のPWRを
50MWeまで小型化したものだ。
NuScaleによるこのコンセプトは、
核発電業界の何十年も保持してきた
常識を克服しようという、同社の革新的
な思考の表れである。この従来の常識
とは、「スケール メリット」を活かす
べく大型原子炉を建設・稼働させるべし
というものだ。発電での効率は大型
原子炉のほうが優れている、というわけ
だ。この小型化した従来型原子炉12基
を1か所のコントロール ユニットから
制御するというコンセプトに参加する
顧客をNuScaleは募集していた。この
コントロール ルームは、ユタ州公営
共同電力事業体(Utah Association of
Municipal Power Systems、UAMPS)
と接続する。UAMPSは電力関連の
全サービスを提供している連合体で
あり、「電力の包括的な卸売りサービス
をアメリカ西部山岳地域での各自治体
所有の電力システムに 非営利ベースで
行っている。UAMPS加盟自治体は、
ユタ州、アリゾナ州、カリフォル
ニア州、アイダホ州、ネヴァダ州、
ニューメキシコ州、ワイオミング州の
自治体など50で構成されている」
アメリカ西岸部にあるので、アイダホ
州のアイダホ フォールで行われていた
国立研究所のNuScaleのパイロット
原子炉プロジェクトにとっては
理想的な位置だった。

崩れ行くビジネス

NuScale社とUAMPSのメンバー
33組織(「加入者」)とが、
DOEによる財政的な傘である14億
ドル(予想経費の 1/4)の下に集結、
Carbon Free Power Project  (CFPP)
という有限責任会社を結成した。
このCFPPがNRCに対し、建設と
条件付運転の一括許認可(Combined
Operating License Application)を申請
したNuScaleの原子炉を用いた720
MWeの発電という前提であった。
このCFPP社は当初、NuScaleの
小型原子炉12基を建設する計画だった
(それぞれ50 MWe)。だがその後、
完成までの費用推定が$53/MWh から
$55/MWhにまで上昇、不確定要因も
増大した。 そのため CFPPは当初の
設計を破棄、同じNuScaleの77MWe
の原子炉モジュールでの契約をする
ことに決定した。このモジュールは、
まだNRCからの認定を受けていない。
また原子炉の個数も12から6基に
削減することにした。このプロ
ジェクトの総出力は462 MWeとなる。

Let’s go beyond nukes —
私のTシャツ作品

このプロジェクトは想定経費が手に
負えないものになっており、UAMPS
の加入自治体も脱退を始めていた。
推定経費は結局$89 /MWhにまで跳ね
上がった。これはDOEからの補助金
を算入しての話で、それを算入しな
ければ$105/MWhを上回るコストに
なった。2023年11月8日までには、
UAMPSの加入者自治体も減り、
NuScaleも財務的な窮地に陥った
ため、CFPP核発電プロジェクトを
終了するという合意を公表した。その
時点では、プロジェクトの総出力が
462 MWeであったのに対し、加入者
からの需要はその20%しかなかった。
だがこの契約の規定として、加入者
からの需要は80%以上あることと
定められていた。その昔、核発電の
電力の宣伝では「安価過ぎて測ること
もできない」とうたっていた。だが
現在では核発電の電力は「「高価
すぎて使えない」代物になってしまって
いると、核発電業界を観察し警鐘を
鳴らしているある団体は上手く揶揄して
いる。

Moniz と Cohenの主張の最後にも、
気候変動対策に核発電を利用すると
いう行為の意図についての頭った記載が
みられる。つまり「風力や太陽
エネルギーでの発電は出力が変動し
やすいので、炭素排出がなく四六時中
利用できる核エネルギーを活かすこと
が、主な目的である」と主張している。

いらない・・・

今では再生可能エネルギーの風力や
太陽エネルギーによる発電同志の
組み合わせが急速に進み、蓄電容量も
増大、「間欠性」という用語が再生可能
エネルギーの解説から消えつつある。
こうした組み合わせは今や核発電より
経済的な競争力にはるかに優れており、
導入期間も確実に短くて済む。しかも
投資金額当たりの炭素排出削減量も
大きい。Monizと Cohenの想定が実は
どのようなものなのかを知るには、
フランスのエネルギー政策のありよう
を学ぶだけでよい。フランスは
ヨーロッパ第一の核発電国だが、そこを
調べれば <核発電で炭素排出を減らす
という> 気候変動対策の「目標」が
実は何なのかを理解できる。現在
フランスは、再生可能エネルギーの
プログラムの縮小を積極的に進めて
おり、これは中断している既存の
核発電プログラムを再建することを
優先しているためだ。フランス政府は
「エネルギー主権」を実現するための
道として、核発電を選択したのだ。
フランスは現在、再生可能エネルギー
の目標を設定することを回避する法案
を作成中で、2024年2月には提出の
見込みだ。その後、議会で投票に
かける。その一方でフランスにある
大量の原子炉では、老朽化や安全の
ためのマージンの減少で、問題発生
が増加している。「フランスは何十年も
新世代原発の実用稼働に取り組んできた
のだが、まだ実現できていない」との
認識が広く持たれているのだ。

不都合なものは、殺してしまえ・・・

Beyond Nuclearの見方としては、
この論説コーナーにあるMoniz と
Cohen の主張は 気候変動危機に対処
するためのエネルギー政策において、
最も利用しやすく最も競争力も高い
再生可能エネルギーを実質的に無く
してしまおうとする全体的な戦略の
表れとみられる。再生可能エネルギーと
蓄電技術を組み合わせ、それに最も
コストがかからない手法である
エネルギー利用の効率化と保全とを
重ね合わせれば、最も費用も期間も
少ない方法で炭素排出を削減できる。
これに対し核発電は最も費用がかかり
はるかに危険な道だ。効果的な導入が
難しいという点で、信頼性が低いこと
をたびたび実証してきているのが、
核発電なのだ。

*****************************

最後のフランスのエネルギー政策、
どこかの国とも重なって聞こえます
よね。

プロパガンダのやり方も、考えましょう
デモ主体で良いのか?

それにしても、核発電推進勢力は
こうした大掛かりなプロパガンダを
絶えず展開しています。それに私たち
反核勢力が対抗しようとするとき、
資金面など考えるとどうにも無力感に
苛まれますよね。
だからこそ、インターネットや
メッセージ Tシャツ、音楽や芸術作品
などなど、費用のあまりかからない手法
をあれこれ活用して、対抗を続けていき
ませんと。

それと、「NuScale社の筆頭株主
(60%)はアメリカ核産業にその名を
轟かせるFluor Corporation社だが、
同社は核兵器のメーカーとしても
大手だ。」という箇所、忘れないで
くださいね。核発電と核兵器は不可分だ
という単純な事実を忘れていては、
反原発運動をいくら続けても、問題の
本質を忘れての運動になって
しまいます。

もういっちょ、このNuScale社の
プロジェクトの破綻については、
日本語メディアではカヴァレッジを
見たことが、私はないです。
「~~~に日本語報道があるよ」と
仰る方は、私までお知らせくださいな:
yadokari_ermite[at]yahoo.co.jp
(↑ [at] を@に置き換えてくださいな)

大きいのをつぶして、小さいのをたくさん建てるって ・・・

その日本語メディア一部は、「SMR
なら小型なのでメルトダウンが起こらず
安全」というような主旨の報道は
してきましたよね。私自身の目で
読んだことがありますので。

こういうメディアの偏向にも、
私たちは対抗していきませんと。

About FrancisH

A freelance painter, copywriter, and beading artist
This entry was posted in Uncategorized. Bookmark the permalink.

Comments are closed.