SLATE、”War Stories”より
Fred Kaplan, 2021年7月13日
アメリカの核兵器の「近代化」ですが、それについてFred Kaplanというジャーナリストが、SLATEという雑誌に下の記事を執筆なさっています。
この雑誌自体は軍事問題や国際関係を専門にしたものではないので、紹介するのはどうかとも思ったのですが、筆者のKaplanさん自身はそうした分野がご専門のジャーナリストで、関連した著作も数冊おありです。
またSLATE自体は、リベラル/プログレッシブ系のメディアです。
しかし、「朝日新聞の言うことだから~~」とか、「産経の記事だから~~」といった、「この会社の言うことだから、~~~だ」というような決めつけが多い社会状況になっております。そうした先入見に縛られず、読むべきものは読んでいきたいと願っております。
先日、この「やかんをのせたら~~」でも紹介した、中国の西北部ユーメン近郊のICBMサイロ新設との関連で、SLATEのWar Storiesという連載ページに掲載されたものです。
Let’s Not Get Into a Nuclear Arms Race With China
China’s new missile silos are concerning—but we already have more than enough weapons to counter them.
(中国と核武装競争を始めるのは、やめよう
中国の新ミサイル サイロは憂慮すべき存在だが、それに対抗するには充分すぎるほどの核兵器が、アメリカにはすでにある)
記事本文は
https://slate.com/news-and-politics/2021/07/nuclear-weapons-china-missiles-yumen.html
でお読みになれます。
以下では、私の日本語翻訳で、2回に分けてこの記事の内容を紹介しますね。
長い記事なので、2回に分けます。
(私による日本語化)
アメリカ軍部の将軍や司令官たちはこの何か月か、2つの大きな課題に取り組んでいる。中国の軍備増強に対抗する必要性と、それとは別にアメリカの既存の核兵器備蓄の「近代化」だ。つまり、既存の核兵器モデルが旧式化しつつあるので、それをアップグレードしあるいは交換するための、新たなミサイルや爆撃機、潜水艦などを製造せよ、というわけだ。
そうした動きを加速しそうな、新たな展開があった。ある衛星画像から、中国が北西部ユーメンという都市の近郊にある砂漠地帯に120か所ものミサイル用サイロを建設した模様だ、という展開のことだ。サイロ10か所を1グループにまとめ、それを制御する発射制御センターが設けられているように見える。中国のDF-41 大陸間弾道弾には、うってつけの組み合わせだ。
アメリカ戦略軍のトップ、Charles Richard司令官はこの展開について、中国各核武装の「息を呑むような急拡大」だと述べている。他にも、このサイロの新設をもって、アメリカ政府が核兵器近代化プランの実施を急ぐべきもう1つの理由とする人たちはいる。下院では、一部の議員たちが戦略的ならびに経済的な理由から、核兵器近代化に反対してきた。(この近代化のコストは、今後30年間で1兆ドルを超える)
今回発見されたサイロにミサイルが配備されると、中国のICBM数はほぼ倍増する。まさに息を呑むような建設プロジェクトであり、急速に完成に近づいている。だが、これらサイロが新たな脅威となるか否かは、まったく明らかではない。それこそ、中国の核戦略の変化によるものなのかどうかも、定かではない。むしろ今回のサイロの増設は、アメリカからの核脅威が増大していると中国高官たちは見ており、それに対する中国の対応である可能性が高い。
そう言うと、一見、おかしな発言に聞こえるかもしれない。確かに近年、アメリカは核兵器を削減してきているし、アメリカ大統領が中国に対し先制核攻撃を始めるというのは大半のアメリカ人にとっては馬鹿げた話だ。だがほとんどの中国人にとっては、そうではない。
第1に、アメリカには「オハイオ」級の潜水艦14隻があり、そのいずれもTrident IIという潜水艦発射型弾道ミサイルを24基搭載している。しかもこのミサイル1基は、8個前後の核弾頭を擁している。つまり、これだけで合計2,600個近い核弾頭を有しているのだ。今年5月、米海軍はLockheed Martin社にTrident IIミサイル増産を5億ドルで発注した。「コロンビア」級の新型潜水艦に搭載するためだ。この新型潜水艦は、近く実戦配備となる。ここで肝心な問題として、この新たな核弾頭1つで、対爆発耐久性に優れたICBM用サイロを破壊してしまうだけの爆破力と精度とがあるのだ。言い換えれば、先制攻撃用のミサイルだと思われても、当然なのだ。
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この記事の後半は、次回に紹介しますね。