Federation of American Scientistsのウェブサイトより、中国のサイロ新設の件 -3

このFederation of American Scientistsの記事、かなり長いですね。
続きを紹介します。

英語の元記事は、
https://fas.org/blogs/security/2021/02/plarf-jilantai-expansion/
にあります。

(私による日本語化、続き)

ドライブスルー式トンネル

今回のトレーニング地域にみられる新施設の中でも特に関心を引くものとして、2か所のドライブスルー式トンネルがある。これらのトンネルは、移動式発射装置で利用するものかもしれない。正確な機能は不明だが、その物理的寸法と位置を見ると、これらトンネルは発射台やミサイルの再装着施設を覆い隠すためのものかもしれない。移動式発射装置は、隠さずに稼働させると、大変攻撃に弱いものだ。

現時点までに発見されている2か所のトンネルは、トレーニング地域の両端に配置されており、このトレーニング地域には新たな施設や発射台が工事中で拡張が行われている(英語本文の下の図を参照)

この2か所のトンネルは長さがおよそ350メーターで、計算上はDF-41の発射台12台を収納できる。より現実的には、実際に収納できる発射装置はそれより少数で、支援用車両も収納するのであろう。トンネルの入り口は幅と高さがおよそ6メーターで、大型の発射装置も充分に入り込める。

各トンネルには出入り口が2か所あり、片側には長さ75メーターの部分があってトンネルのその他の部分よりも幅が広くなっている(20メーターと13メーター)。この幅広部分はおそらく、ミサイルの再装備あるいは人員が集まる場所であろう。この幅広部分に隣接しているのが四角形の建築物で、3棟の高い建築物がある。これらは、地上からトンネルに出入りするため、あるいは耐天候制御システムを収納するためのものであろう。

こうしたトンネルは、稼働旅団基地エリアにおいても建設中である可能性がある。ただし、本記事の著者はまだそれを発見してはいない。

覗いてみたら ・・・

覗いてみたら ・・・


要約と意味合い

ジランタイ近郊のPLARFのトレーニング地域は独自ののぞき窓とでも呼ぶべき存在で、そこからは中国の核に関する姿勢を探ることができる。中国は現時点で18基から20基のサイロを運用しており、ジランタイのトレーニング地域に建設中のサイロが出来上がると、この数は一気にほぼ倍増してしまう。今までのサイロが旧式の液体燃料式DF-5というICBMを配備するためのものであったのに対し、ジランタイの新たなサイロは1基を除きすべてそれより小型で、新型で小型の固形燃料式ICBM、たとえばDF-41やことによってはDF-31Aなどに合わせた設計になっている模様だ。

1か所のトレーニング地域内にこれほど多数のサイロ(今までのところ、16基)が建設中であるのは、奇妙なことだ。(たとえばウーザイ(五寨)の発射試験施設には、トレーニング用サイロは2か所しかない) サイロが2基もあれば、トレーニングには充分であると考えられる。1つの説明として考えられるのは、中国が数種類のサイロ設計を試しており、どのタイプのサイロをどの旅団の基地地域に最終的に建設すべきかを見定めようとしている、という可能性だ。米国国防総省が2020年に断言したところによれば、ジランタイはDF-41を「サイロ配備するための少なくてもコンセプトをまとめるため、利用されている可能性が高い」  その目的のため、同地域のサイロは実際の使用能力もある程度実現する可能性すらある。

攻撃されたら報復できるよう、武器を増やしとかなきゃ~~

攻撃されたら報復できるよう、武器を増やしとかなきゃ~~

仮に中国のICBM用サイロの数が倍増あるいは3倍増したとしても、アメリカやロシアが運用しているICBM用サイロの個数と比べれば、はるかに小さいものにすぎない。その事実は、指摘しておくべきだ。アメリカ空軍にはサイロが450基あり、そのうち400はミサイルを搭載している。ロシアは稼働可能なサイロを約130基擁しており、それに対し中国のジランタイで16基新設というのは、アメリカのICBM軍団1つの中の1中隊が持つサイロ数の、1/3にも足りない。

だが中国にしてみれば、あくまで「最小限度の抑止」というのが核戦略であり、従来よりも多数のサイロをジランタイに建設するのは重要なことなのだ。運営コンセプトが定まれば、中国国内の他の旅団基地においても、新しいサイロのクラスターが2~3箇所、建設開始となる可能性は否定できない。今までのところでは、中国のサイロ建設はアメリカとのサイロ数での対等化を狙ったものではなく、準対等化さえ目指すものではないのだが、ならはそもそも、中国は何のためにサイロの新設などに取り組んでいるのか?その建設の動機とは?その説明として考えられるものが、いくつかある。(あるいは、それらのうちいくつかを組み合わせた説明も可能だ。以下、そうした可能な説明を列挙するが、順序には意味はない)

報復能力の保護強化  現在のICBM用サイロでは、アメリカやロシアからの攻撃に対して脆弱すぎると中国が懸念している可能性がある。サイロの数を増やすことで、先制攻撃を受けても存続できるICBMの数が増え、報復攻撃でそうしたミサイルを発射できる。現在中国は車載の可搬式固形燃料ICBMを開発中だが、これはアメリカCIAの分析によるなら、アメリカ海軍がTrident II D5ミサイルを太平洋に配備したことに対する対応であった。こうした作用・反作用の力学こそ、中国が目下進めている核兵器近代化の要因の1つであろう。
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ほんと、長い記事ですね。最後の部分は、次回に。

About FrancisH

A freelance painter, copywriter, and beading artist
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