ほんと、この報告は長いですよね。
今日で、最後になります。
元の英語記事は
https://fas.org/blogs/security/2021/02/plarf-jilantai-expansion/
にあります。
(私による日本語化)
(続き)
アメリカの対ミサイル防衛システムがもたらしえる影響を克服する アメリカのミサイル防衛システムのため、中国の報復能力が無意味になってしまうのでは、という懸念は絶えず深刻なものであった。中国は既にDF-5B というICBMに複数核弾頭(MIRV)を搭載することを決定している。核ミサイルが最大で5個までの核弾頭を搭載できるのだ。新型のDF-41 ICBMもMIRV搭載が可能で、将来配備予定の JL-3 SLBM も複数核弾頭を搭載できる。サイロ配備型の固形燃料ミサイルと、それが搭載する核弾頭数とを増やすことで、中国はミサイル防衛システムを確実に突破する核兵器を追求していくことであろう。
固形燃料式サイロ配備ミサイルへの移行 中国の旧式ICBMである液体燃料式ミサイルは燃料充填に時間がかかり過ぎ、発射までに時間が大変かかる。そのため、敵国からの攻撃に曝されやすい。さらに、液体燃料を扱うのは面倒で、危険が伴う。固形燃料式サイロ配備ミサイルに切り替えることで、敵からの攻撃時に機能を維持できる能力、稼働手順、さらにICBM軍の安全を向上できる。
非戦時にもミサイル警戒態勢を保つよう、変更 中国のミサイルは平時には核弾頭を外して配備されているものと見られているが、アメリカやロシアのものはいつでも発射できる状態で配備されており、発射命令があれば短時間で発射できる。アメリカとの軍事競争がエスカレートしているため、中国もミサイル発射までにそのような時間をかけて準備している余裕があるのか、疑わしい。現状のままでは、中国は信頼できるだけの抑止力を維持できない恐れがある。2020年にアメリカ国防総省が確かなこととして述べたところでは、ジランタイのサイロ建設は「中国が米ロにか適わぬまでも、何とか抑止力を持とうと努めていることの、新たな証拠だ」。
ICBM軍のバランス 中国のICBMの80%は可搬式で、数も増大中である。中国はICBM軍全体の増強に努めているので、サイロ配備ミサイルも増強し、しかるべき役割を果たさねばならない。
中国の核攻撃力の増強 中国は従来、「最低限の抑止力」という原則を保ってきたため、今までは核ミサイル発射装置を比較的小さなレベルに保ってきた。だが今や中国指導層は、核弾頭を増やしたミサイルを増強し、敵国の軍事施設に対する脅威を強化せねばならないと、判断した可能性がある。アメリカ、インド、ロシアは今も自国の核兵器装備の近代化に努めており、核兵器の強化あるいは増大を進めている。
短時間で発射できる通常兵器の強化 ジランタイで新設中のサイロは核ミサイル用のものとみなされているが、1つの可能性として、まず通常弾頭の弾道ミサイルをサイロに配備するという選択もあり得る。(本筆者は、その可能性を提唱しているわけではないが) そうした配備を実施すれば、戦略的(大陸間など)レンジではなく中距離の標的に対して極めて短時間で攻撃を行う能力が得られる。
国家の威信 中国は富を増やしており、従来よりも力を付けている。強国はミサイルもそれだけ多数保有するものであり、そこで中国も、強国としての立場を強く打ち出すため、ミサイルを増強する必要がある。
現代型の固形燃料式ミサイル用サイロをジランタイ近郊に12基以上も建設しているという事実から、中国の核兵器戦略は、サイロ配備のミサイルへの依存度を高めようとしている可能性がある。その動機が核兵器全体の増強にあるのか、脆弱性の拡大に対する対抗なのか、それとも短時間で発射できるICBMが将来どのような役割を演じるのかに関して独自の考えがあるのか。それは、今後の展開を見ないと判らない。いずれにせよ今回のサイロ建設は明らかに、核兵器の近代化を推進する核抑止のダイナミクスを思い起こさせる事実であり、他の何よりもジランタイのトレーニング地域を観察すれば、中国の労力を探ることができる。
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長かったですね、ようやく終わりました。
上のリンク先、つまり元の英語ページには、本件に関する背景情報へのリンクなどもあります。英語の書物など読める方々は、どうぞ!