Can Nuclear Energy Power South Korea’s Future? – The Diplomat
にあるEunwoo Lee記者による記事、後半を紹介します。
2022年6月25日付の記事、私による日本語化です。
いつもどおり、< > 内は私からの補足説明です。
******************
後半
こうした期待が高まってはいるが、ユーンにとってもその
推し進める核発電産業にとっても、道行は険しい。直ちに
問題になるのは、使用済み核燃料の処理・処分をする場所を
見つける、という問題だ。原子炉内部ではウラニウムが
核分裂のプロセスを起こし、その核分裂のエネルギーを
電力に変換する。その際の副産物の一部や残余ウラニウムは、
高レベル放射性廃棄物となる。これは煉獄のような灼熱と
物体を透過してしまう強烈な放射線を発するので、放射性
物質による汚染を防止するため、高度な取り扱いと防御が
必要になる。
だが韓国の通商産業エネルギー省 (MOTIE) によれば、
韓国内の原発では今のところ使用済み核燃料を原発敷地内の
一時保管施設に保管しており、これは今まで処分場に適切な
場所を幾度も探してきたのだが、見つかっていないためだ。
2031年から、各原子炉にある一時保管施設は容量が満杯に
なっていく。ユーン政権がどこかの市町村の説得に成功、
核ゴミ処分場のホスト市町村になってもらえたと仮定しても、
乗り越えねばならないハードルはさらにある。同省の報告書を
さらに見ると、当局も原発敷地内の一時保管施設の経験しか
なく、核ゴミの輸送や保管、処理技術、技術者の増員といった
ニーズが焦眉の急だ。
だが政府機関が恒久処分施設をどこに設けることにしようと、
結局は失敗に終わってきた。これは、当該地区の住民からの
抗議 (しかも場合によっては、それは暴動に近づいた) 、
あるいは環境検査の結果 <不適切性が明らかになった> ためだ。
そんな事情で過去に韓国政府は19年を費やし、韓国唯一の
保管施設をギョンジュ (慶州) 近くに設けようとした。
これは <最終ではなく> 中間保管施設で、しかも低・中
レベルの核ゴミしか扱わないものだったのだが。核発電産業は
高レベル核ゴミの処分場も必要としており、高レベル処理施設
建設となれば、反対はさらに熾烈化するはずだ。MOTIE の
推定では、恒久的な高レベル核ゴミの処分施設を建設し稼働を
開始するまでには、最大で37年を要するという。それよりも
かなり前に、韓国の原発は現場保管の核ゴミの山に埋もれてしまう。
同時に、韓国は領土面積が小さく人口密度は高いため、事故が
発生した場合に対する市民の認識が厳しいだけでなく、実際の
事故の招く結果も深刻なものになるはずだ。韓国の領土は東西
方向では平均で300㎞ほどで、技術的にはどの程度の放射性
物質を巻き込んだ災害でも、全人口に影響がある。さらに、
4つの近くプレートが重なる地点のそばにあるため、韓国では
毎年70回ほどの地震がある。
このように地理的な制約と市民の核プロジェクトへの嫌悪が
あるため、韓国政府は韓半島の南東端に原子炉を集めて
設置するしかなかった。この地域は既に面積当たりの原発密度が
世界最大になっており、原発のメルトダウンなどの発生確率も高い。
この地域ではすでに2度にわたり大規模な地震を経験しているが、
いずれも幸運にも原発のそばではなかった。
3月には発電と送電を制御するハヌルの送電開閉所のそばで
山火事が発生、送電線の一部が機能できなくなった。ブラック
アウトをかろうじて逃れられたのだが、地元の消防車の大半を
原発に向かわせたためであった。山や民間住居を犠牲にしての
ことであった。この山火事の惨状は全国にTV放映され、
核エネルギー産業の社会イメージは損なわれた。気候変動に
伴い山火事や嵐は今後増えるものと見られ、しかも既存原発の
大半は東部海岸線に迫る山がちの地域に立っているため、
次の福島第一型惨事は韓国で起きるのでは、との心配も聞こえる。
2011年の福島第一原発大惨事では、大地震のため送電線が
壊れ、それに続いた津波でバックアップ用の発電装置も洪水に
吞まれた。被災した3基の原子炉を冷やせるだけの電力が
なくなり、炉心のメルトダウンに至った。未だに、実際の損害が
どこまでひどかったのかは解明されていない。この大惨事のため、
その当時には世界中で原発反対の論調が高まり、しかも韓国では
自然災害の激化にも見舞われていた。そのため、韓国政府による
核エネルギーへの取り組みに反対する人口が増えることは、
容易にありえた。
国内からは、その他の問題も出てきた。核エネルギー業界では
いまだに透明性の欠如や汚職、ゆすり・たかりが横行しており、
安全性に疑念を抱かざるを得ない。一例として韓半島東部の
海岸地帯にある町ウルジンには、8基の原発がある。そこで発生した
事故件数は、1988年から今までに100件前後に達する。地元市民の
監視団体が放射線量の急増を検知して抗議したが、当局は以前には
チョルノービからの放射性物質の影響だとして真剣に取り合わ
なかった。2013年にはある技術者が構造上の欠陥をピンポイントで
指摘、この欠陥のためハヌル原発の蒸気発電機の稼働寿命が本来の
半分になってしまった。 だが稼働担当の企業はその技術者に対し、
誤った問題指摘をしたと訴訟を起こした。当の欠陥は、今もそのままだ。
また国内のサプライヤー各社は安全証明書を捏造、まがい物や
質の劣るコンポーネントを取り付けている。<原発に絡む大金には>
政府役人たちも 「たかって」 いる。現金を受け取る代わりに、
<不正行為を> 頻繁に見逃したり、場合によっては契約書に
定めてあるはずのパーツをサプライヤーが無視することを
許容したりしている。個別のパフォーマンス試験は経費が
かさむのでめったに実施されず、災害が発生するまで誰も問題を
指摘しないため、こうした癒着がまかり通ってきた。
核エネルギー業界で50年ほどの実績を有し、核安全委員会
(Nuclear Safety and Security Commission) の委員でもある
Lee Byeong-ryeong 博士の話によれば、韓国核エネルギー産業の
病巣の根底にあるのは 「核マフィア」 だ。 韓国水力原子力社
(KEPCO)、韓国核安全研究所 (Korea Institute of Nuclear Safety)、
そして最高権威である核安全委員会 の周囲に形成された少人数の
集団で、緩すぎる法規制を適用するとともに核エネルギー関連の
研究ならびに政策策定を独占してしまっている。
ユーンが韓国の核エネルギーの未来を安全なものにしたいので
あれば、「核マフィア」から廃棄物処分まで、克服せねば
ならない問題があふれている。
***************
やれやれ、決して韓国に限った問題なんかじゃなくて、日本の現状も酷似してますよね。
「平和利用」 などとお題目を唱えたところで、しょせん核エネルギーはもともとが大量破壊兵器の技術、原子炉は原爆製造のための設備です。そして、近代社会では国防に巨額のカネが動きます。当然、カネ目当ての有象無象が集まり、法規の改悪、贈収賄、隠ぺい ・・・ろくでもない事項がリストアップされる結果になります。
韓国の軍事戦略との関連も何かあると思うのですが、それは今後
調べていきますね。
何か見つけ次第、このウェブサイトで紹介してまいりますね。