(2022年8月24日)
Shelling of Ukraine nuclear power
plant exposes multiple risks
(ウクライナの原発での砲撃から、
多数のリスクが)
ロンドンのキングズ カレッジで研究ならびに知識拡散担当
マネジャーを務めてらっしゃるRoss Peelさんが、2022年8月22日
現在でのザポリージャ原発が抱えるリスクを まとめて
くださっています。
特に目新しい内容はないのですが、現時点での主なリスクを
要約的に把握するには、良いテキストです。
ですので、いつも通り私が抜粋・日本語化して紹介しますね。
例によって、< > の中は私からの補足説明です。
Shelling of Ukraine nuclear power plant exposes multiple risks – UPI.com
2022年8月22日
Ross Peel, King’s College London
ああやだ、もう考えたくもない~~
私の点描練習
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Aug. 22 (UPI) – ロシア軍が占拠しているザポリージャ原発では
このところ、砲撃が激化しており、安全性に関する憂慮が
世界的に高まっている。この巨大原発の稼働はウクライナ人
スタッフが続けており、厳格な管理をストレスの激しい条件下で
実施している。
攻撃と損害発生が続く中、ロシアとウクライナ両国はお互いへの
非難合戦を続けている。今回の紛争では情報操作とフェイク
ニュースが大きな役割を演じており、正確な状況は明らかに
なっていない。
・・・(中略)・・・
同原発の原子炉は強度の高い建屋の中に納まっている。
こうした建屋は内部での爆発があっても耐えられるように設計
されており、外部からの力にもある程度抵抗できる。だが、
確かに最近の原発は航空機の衝突にも耐えられるようには設計されて
いるものの、意図的な砲撃にも耐えられるか否かについては、
意見が分かれる。何メートルものコンクリートの壁の中には
鉄骨などが入っているのだが、適した武器を選んで集中的に
砲撃を加えれば、建屋の壁を貫通することは可能であろう。
それ以上に懸念すべきかもしれないものとして、建屋外にある
使用済み核燃料の冷却プールだ。そこには強度の放射能を有する
使用済み核燃料が水の中に保管されている。いずれかの冷却
プールに攻撃が加えられれば、放射性物質が大気中に大量に
漏れ出す恐れがある。空からの攻撃に対しては、プールは防御が
比較的弱いためだ。
<冷却水の> ポンプやパイプ類など安全に欠かせない装置は、
原発の稼働を停止させた後でも、なお重要だ。ザポリージャ原発
には全部で6基の原子炉があるが、そのうち3基は停止している。
だが原子炉内にある核燃料も、使用済み核燃料も、稼働停止の後、
もしくは原子炉から取り出した後、数年間大変な高温を保つ。
ザポリージャのような原発の場合、<使用済みの> 核燃料も絶えず
冷却していないと過熱し、爆発性のガスが発生したり、溶融、
発火などの問題を起こす場合がある。そうなると、放射性物質の
漏出も発生しうる。
ザポリージャにある核燃料の場合、余分な熱を除去するため
冷却水を常時流していることが不可欠だ。パイプやプール、
原子炉などへの損傷のためにこの冷却水を喪失、あるいはポンプが
稼働しなくなった場合には、早急に対処せねばならない。
対応が遅いと、危険な結果を招く危険がある。
・・・(中略)・・・
眠らせてもくれない ・・・
私の20分クロッキー
ロシアの戦略
ロシアのヴラディミール プーティン大統領がザポリージャ原発を
管理下に置きたがっているのには、理由がいくつか考えられる。
1つには、同原発からウクライナへの送電をカットしたいのかも
しれないが、今回の侵略開始の時点で同原発はすでに低電力モード
での稼働になっていたので、この影響は限られたものと見られる。
他の意図として、ロシアはこの原発を政治的交渉での条件として
利用、占拠した地域を入手してしまうことの正当化に用いるのかも
しれない。また各種の情報源を見ると、ロシア軍はこの原発に
部隊を配備、兵器類も配置したようだ。これによってこの原発は
一種のロシア軍基地となり、ここから軍事ミッションを開始できる。
しかもウクライナ軍は、この基地に対しては反撃を加えにくい。
ジュネーヴ条約の1977年改訂では、核施設周辺での軍事戦闘を
禁じている。それでも、ロシア軍によるザポリージャ原発占拠に
対処しようとする国際社会の努力は、ほとんどが功を制していない。
IAEAはたびたび、同原発の現状を調査し放射性物質がしかるべき
位置に保管されているか否かを確認する調査団の派遣を求めて
きたが、まだ現地入りを果たしてはいない。
国連は最近、同原発の非武装化を求めたが、ロシアの言い分に
よれば非武装化すれば核施設テロリズムの脅威が発生し、同原発の
リスクがさらに増大してしまうという。セキュリティ確保のため、
同原発を中立的なサード パーティー機関の管理下に置くことが、
適切なソリューションかもしれない。だが、たとえサード パーティー
機関が原発を管理下に置いていても、姿を隠した武装集団が原発に
攻撃を仕掛ける危険性は残る。ロシアは、ザポリージャ原発への攻撃は
ウクライナのテロリスト集団によるものだと主張しており、その
<でっち上げ> 根拠として、テロ攻撃が行われる危険性はあるのだ。
なんにせよ、原発周辺での戦闘行為はやめて もらわねばならない。
さらに、国際機関による検証チームの現場調査を可能にせねばならない。
原発周辺での軍事行動は、できるだけ早急にやめる必要がある。
人命や環境、インフラストラクチャーを守るためだ。
***************
ああ、もう~~
私の20分クロッキー
「やかんをのせたら~~」では、今まで、核発電の軍事的リスクとして
次の4種類を指摘してきました。
1) Proliferation risks ― 核兵器拡散リスク。原子炉がもともと原爆用
Pu製造装置であった以上、核の歴史の初めから今もずっとあるリスク。
本ウェブサイトでも、一番詳細に取り上げてきた。ただ、
なぜか日本で原発問題や新型原子炉開発などが論じられるときには、
素通りされてしまう (推進派と反対派の両方から!) ことが多い。
だが現実には、上の黒いメニューにある付録 w-4) の後半で紹介した、
アル ゴア元副大統領のインタビューをお忘れなく。
2) 巨大ダーティ ボム化リスク ― 原発そのものが、軍事攻撃や
テロリスト占拠などによってメルトダウンを起こす、使用済み
核燃料冷却プールの冷却停止 ⇒ 放射性物質の大量漏出
(上の黒いメニューで、g-5), g-6), u-1), u-2), u-3) など参照)
3) 言いがかりリスク ― 「XX国が、自国の原発や関連施設の地下で、
ひそかに核兵器開発をやっている」 ⇒ その施設を攻撃 という
パターンを実行してしまうリスク。本サイトのページ c-1), c-2) のほか、
2003年3月に始まったアメリカの対イラク戦争も現実の例。
現在のロシアによるウクライナ侵略でも、侵略当初にロシアが
この種の言いがかりをつけていた。
4) 敵軍の基地化リスク ― 上の記事にあるように、敵軍が原発や
核施設を基地にしてしまうリスク。やられると、被害国は反撃が
しにくい。
これらのうち、2) 以外はいずれも、いかんせん現実化してきた
リスクです。2) だって、テロ団体やテロ国家による原発破壊が
いつ現実のものになるか、分かったもんじゃありません。
現実、目下世界がザポリージャ原発に関してもっとも恐れている
のは、このリスクですよね。
(それにしても、現時点でのロシア連邦共和国は、テロ国家と
呼ぶべきでしょうか、テロ団体と呼ぶべきでしょうか??)
結局、現実をしっかりと見つめるなら、
・ 核兵器の拡散を防ぐためにも、
・ 自国を守るためにも、
・ 周辺諸国への放射性物質汚染を防ぐためにも、
核発電は核兵器とともに廃絶するのがもっとも賢明ですよね。
「日本の場合、真冬や真夏の電力需要が・・・」 というのであれば、
11年前、2011年春から 「国内にあるエネルギー源」 の開拓をもっと
進めるべきでした。輸入資源はしょせん、戦争や軍事動向、市況などの
影響を大きくこうむります。日本の場合、私見ではクリーン コール
技術の開発にもっと力を入れておけば ・・・ と思うのですが。