炎に包まれるヨーロッパ: 2024年 の予測 (パート1)

Hans Petter Midttun氏による論調、
パート1
OPINION:
Europe in Flames: a Prognosis for
2024 (part 1)
(論調
炎に包まれるヨーロッパ: 2024年
の予測 (パート1) )

”Weeping Face”
私のかなり昔の作品

現在のウクライナでの戦争は、少なく
ても2つの点で「核」が絡んだ戦争です
よね。
・ ロシアによる核兵器使用の「脅し」
のため、西側が軍事的には介入できない
・ 核発電施設(原発)が戦闘に巻き
込まれている
その意味で、当のウクライナの報道
機関に紹介されている専門家による
本戦争の考察を、「やかんをのせたら
~~」では取り上げないわけにまいり
ません。
ノルウェーの軍事顧問などを務めた
独立系アナリスト Midttun さんの考察
が、Kyiv Postに紹介されていますので
紹介しますね。

いつもどおり、
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。

英語の原テキストを読める方は、
そちらにどうぞ:
Kyiv Post — Ukraine’s Global Voice
(ウクライナで最も長い歴史を誇る
英語紙です)
Opinion: Europe in Flames – a Prognosis for 2024, Part1 (kyivpost.com)

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Out in the cold —
私のかなり昔の15分クロッキー

ロシアVSウクライナ戦争は決して、
特定地域だけの紛争ではない。
ヨーロッパの未来が左右される。
西側を待ち受ける選択肢を考察する、
5つのパートからなる徹底論調の
パート1。

Hans Petter Midttun
2023年12月26日

パート1: 基礎事項

予測をするのは、困難な作業ではない。
だが的確な予測をするとなると、
大変だ。そのため、何が変化しうる
要因で、何がそうではないのかを明確
にすることが大切だ。私の2024年
予測では、現状を続けるとみられる
要因の一部と、変化がありそうな要因
の一部とに光を当てる。

まず時間と空間を問わず現状のままで
あり続けそうな要因であるが、それら
をこの分析の出発点としよう。一方の
変動要因とは、2024年にこの戦争の
要望を作っていきそうな要因である。
そうした要因の例として、ネガティブ
なトレンドとポジティブなトレンドの
両方がある。ただし、変動要因の中には
ネガティブにもポジティブにもなりえる
ものもある。不確実性や未知の要因だ。

振り返れば、あの日・あの時 ・・・
オイルパステルでの20分クロッキー


現状を続けそうな要因

まず、この戦争を分析する場合、必ず
2014 年という年が開始地点となる。
2024年2月20日が来れば、この戦争
は <ロシアによるクリミア侵略開始
から数えるなら> 10年続いている
ことになる。確かに2022年2月24日
にこの戦争は劇的に拡大したのだが、
それでも「Hybrid War」(複合戦争)
であることに違いはない。

侵略者も同じ、兵器や目的も同じ、採用
戦略も同じ、使うツールも変わって
いない。2014年から。

2年前にロシアは、主な努力の在り方を
非軍事的な努力から軍事的なものに切り
替えた。だがその軍事的努力は、今も
あらゆる非軍事的ツール (たとえば、
外交や政治、エネルギー、経済、情報、
安全保障、州境など) に支えられて
いる。

情報操作やプロパガンダ、積極的な
各種手段が今も、Hybrid Warに不可欠
な要素である。ほぼ10年間続いている
この戦争の展開している主な領域とは、
市民たちや意思決定・政策決定者たちの
認識という空間の内部にある。戦闘や
情報操作、サイバー攻撃、脅迫、脅し、
挑発、でっち上げ、軍事偽装、その他の
手の込んだ手段により、一種の仮想
現実を作り上げているのだ。それを
受けて西側はロシアの望むような政治的
決定を下しているのだが、それがロシア
の操作によるものだとは考えもして
いない、あるいは認めていないので
ある。

え!!下手すると核使うぞって ・・・

核による脅迫は、絶えずこの戦略の一部
であった。だがそれ以上に今では、
ウクライナでロシア陸軍が苦闘して
いるが、その核という「既成事実」戦略
が大変効果的であることは、既に何年も
実証されてきている。そのために西側
<の軍隊> は踏み込めず、ウクライナに
決定的に関わる決断ができないでいる。

この戦争の最初の8年間もそうであった
が、交渉をほのめかすことで西側の
ウクライナ支援という決意が揺るぎ、
支援が手薄になっている。

第2に、ロシアの狙いは2014年から
変わっていない。<今年の> 12月9日
ロシア外務省のスポークスパーソン
Maria Zakharova は「ウクライナを
中立・非同盟・非核という状態に保ち、
その武装解除と非ナチ化を進め、
<ロシアが略奪した> 新たな領土を認め
ウクライナに暮らすロシア語を話す住民
や少数派文化集団の権利を確保すること
が重要だ」と強く述べていた。

「非ナチ化」という用語は、ロシアに
都合の良い政権変革を言う。「武装解除」
と「ウクライナの中立・非同盟・非核」
は今後のロシアによる領土などの拡大に
対し、位名が無防御に晒されるという
ことだ。

その5日後 <12月14日> に
プーティン大統領は「ウクライナの
非ナチ化や武装解除、中立といった
・・・ 目標を実現すれば、平和が
訪れる」と力説した。

諦めねえからな!

ウクライナとその国際的なパートナー
諸国による抵抗にも関わらず、ロシアは
ウクライナ(とベラルーシ)を服従
させるという目標を諦めていない。
ロシアはすでにクリミアと4つの州を
非合法に併合しているが、それ以外の
地域への領土的野望は衰えてはいない。
さらに重大な問題として、ロシアは今も
アメリカやヨーロッパの犠牲の上で
超大国としてのステータスを勝ち取ろう
と躍起だ。旧ソヴィエト連邦の解体に
よって被った歴史的な不当な被害を正し
たいと、ロシア政府は考えているのだ。
かくして、東部ヨーロッパ背の影響力
を取り戻そうとしているのである。

第3に、現在の戦争はロシア対西側と
いう大きな意味での対立の一部でも
ある。ウクライナを降参させるという
のは、はるかに大規模の目標の一部に
過ぎない。ウクライナなしでは、ロシア
は超大国にはなれないのだ。ウクライナ
(とベラルーシ)とをロシア連邦に取り
込んだ暁には、ロシアは大規模な人口
動態問題を解消できると睨んでいる。
さらにロシアは、ウクライナの防衛産業
や技術、それに関連した制度や機関、
世界有数の農業地域の一部、さらに鉱物
資源、天然ガス、石油の豊富な埋蔵をも
掌中に収めようとしている。<この併合
が実現するなら> 少なくても、ロシア
軍をロンドン、ベルリン、パリから
今までより1,000㎞近い位置に配備
できるようになる。

ウクライナを従属させることは、ロシア
が超大国としてのステータスを手に
入れるための前提である。アメリカ
そして中国と肩を並べる超大国と認め
られるには、人口も経済力も技術も、
したがって軍事力も強力でなければ
ならないのだ。

俺たちは配備する、お前らはするな!
どういう屁理屈や!?

つまり、ヨーロッパのすぐ隣に攻撃的で
帝国主義的な大国が出来てしまい、
それが軍事力を行使して次の目標を
達成しようとするわけだ。その「次の
目標」とは、ヨーロッパへの影響力だ。
NATO軍を1997年の境界にまで引き
下がらせること、アメリカが軍と
核兵器をヨーロッパに配備できない
ようにすること、なのである。

第4に、今回の戦争は根本を揺るがす
ものだ。ウクライナは、存亡をかけて
戦っている。ロシアは、超大国になり
たいという野望にうなされて戦争を
始めた。その野望を実現するには、
ウクライナを破りロシアに併合して
しまうことが不可欠だ。こうした、
相手に挑発されたわけでもない戦争を
始めてしまうと、引っ込みはつかない。
友好諸国も、敵に回してしまった。
世界はもはやロシアのことを、帝国
主義的、侵略的な犯罪国家と見なして
いる。結果としてあり得るのは、勝利
を収め(そして超大国となった)
ロシアか、敗北し(国際コミュニティ
ではパーリア国家と扱われる)ロシア
か、のいずれかなのだ。

だがその同じ今回の戦争は、西側に
とっても根本を揺るがすものだ。
ヨーロッパの安全を保つ多雨には、
ウクライナが領土を完全に保ち、
独立と主権を維持することが不可欠
なのだ。Josep Borrel <スペインの
政治家、以前に欧州議会の議長も
務めた> の言葉を借りれば、
「ウクライナの敗北は、我々
ヨーロッパの敗北だ」なのである。

第5に、ウクライナへの敗北をロシアが
認めることは決してありえないという
ことを、我々は弁えておく必要がある。
西側が歩調を揃えてウクライナに必要な
ものを供給、ウクライナがロシア軍を
国外に追放できたとしても、ロシアは
敗北を認めることはない。ロシアの
歪んだ「物語」の中では、ウクライナ
は「存在しない」ことになっている
からだ。

核を持った国家は、下手をすれば
隣国の存在そのものを ・・・

ベストのシナリオでも、ロシアが
ウクライナからの撤退を受け入れると
すれば、受け入れなければウクライナ
よりもはるかに強力な相手と戦わねば
ならなくなる場合だ。そうなれば、
ロシアの現体制も国家の存続も危ぶまれ
てしまうリスクがある。

最後に西側は昔からの行動習慣を踏襲
している。1930年代にそうしたように
西側は侵略国家が平和を破壊し危機と
紛争、戦争を引き起こすのを傍観する
ことを選んでしまった。その結果、
侵略者は軍事力によって戦略的目標を
達成できると信じ込むに至って
しまった。

根拠なき恐怖 ・・・

再度、西側は根拠なき恐怖に支配されて
しまっている。過去の戦争(と国際的な
作戦)の経験に嫌気がさし、戦略的な
思考をする者もいない。「今は平和な
時代だ」という精神性が支配的なのだが、
現実はその反対なのだが。自由世界には
現在、チェンバレインは有り余るほど
いるのだが、チャーチルがいない。
<Arthur Neville Chamberlain (1869 –
1940) は昔の英国の首相 (1937 – 1940)。
ナチスに対する宥和政策を採用した。
一方の Winston L. S. Churchill (首相
在任は1940 – 1945, 1951 – 1955) は
ナチスに対する対抗姿勢を示した>
第二次大戦前夜の時代と同じく、
ヨーロッパもアメリカも火災が鎮火
不能に広がる前に消化してしまおうと
いう意志に欠けるのだ。

ああ、鬱になりそうな ・・・
私の点描練習

本論調にある見解は著者自身のもので、
Kyiv Postの見解でもあるとは限り
ません。

Hans Petter Midttun氏について:
独立系のアナリストで、Hybrid Warfare
を専門とする。Centre for Defence
Strategies(防衛戦略センター)の非常勤
フェロー、Ukrainian Institute for Security
and Law of the Sea(ウクライナ安全保障・
海洋法研究所)の理事会メンバー、また
ノルウェーの対ウクライナ国防アタッシェ
も歴任、またノルウェー軍士官でもある。
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ヨーロッパがロシアにどう向き合う
べきか、というお話ですが、そこでも
やはり核問題が絡んでいますよね。
核兵器というものは実に厄介なもので、
それを人類はわざわざ作ってしまったの
です。廃絶するのが「ヒトの責任」だ、
と言ってよいでしょう。

About FrancisH

A freelance painter, copywriter, and beading artist
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