Kyiv Post
OPINION: Europe in Flames:
The Unknowns (Part 3)
(論調
炎に包まれるヨーロッパ:
不確定要因 (パート3) )
ウクライナ戦争に関するKyiv Post
ウェブサイトに掲載の論考、
パート3です。
英語元記事を読みたい方々は、
Opinion: Europe in Flames: The Unknowns (Part 3) (kyivpost.com)
へどうぞ。
The Russo-Ukrainian war is not a local
conflict. The future of Europe is at stake.
An in-depth five-part analysis examines
the options facing the West.
(ロシアVSウクライナ戦争は決して、
特定地域だけの紛争ではない。
ヨーロッパの未来が左右される。
西側を待ち受ける選択肢を考察する、
5つのパートからなる徹底論調の
パート3)
いつもどおり、
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。
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Hans Petter Midttun
2023年12月27日
ドローン戦争
ドローンによる戦争が繰り広げられて
いるが、それにより戦争のやり方も
変化しつつある。ドローンを活用
すれば、従来の偵察活動では2週間
かかっていたものを、わずか数分で
目にすることができる。またドローン
によって、今までの手法では攻撃不能
であった標的を攻撃できる。一人称
視点(First-person view、FPV)を
備えた「カミカゼ」 <自爆式>
ドローンは操作性が高いうえに極めて
高速だ。さらにカメラを利用した
手動操作であるため、GPS妨害電波
などに対して強い。また高速である
うえに比較的小型で、操縦がしやすい
ため対航空機用防空システムでは
対処しにくい。
こうしたドローン システムは商的に
販売されており、高価ではなく操縦も
しやすいため、砲撃や射撃よりも精度に
優れる。さらに手りゅう弾から対戦車用
弾頭まで各種の武器をロードでき、
特別に硬化させた標的でなければ、
壊滅的な効果を発揮できる。さらに
ドローンが残す経路も、情報戦では
重要な意味を持つ。数百米ドルの
ドローンが、何百万ドルもする重兵器を
破壊している。
本格的な戦争では、いまやドローンは
すべての重要な戦争で利用されている。
「ドローンがないと、視界なしで戦って
いるようなものだ。敵は自分たちを見て
いるのだが、自分たちは敵を視野に
収められずにいるのだ」
海軍を持たない国であるウクライナが、
ここまでにロシアの軍用艦や船舶23隻、
そして潜水艦1隻を破壊しているが、
これは巡航ミサイルや UAV <無人
航空機>、海上ドローンを活用しての
ことだ。ロシアの黒海艦隊をロシア
本土に帰らざるを得ないようにし、
2023年7月17日に黒海穀物イニシア
ティブ <Black Sea Grain Initiative、
ウクライナ、ロシア、トルコ、国連の
合意による協定で、ウクライナの港から
商戦が穀物を国会の外へと運べることを
保証したもの。2023年7月にロシアが
破棄しました> が実質的に終了して
以来今までに、226席以上の商戦が
ウクライナの港に入港することを可能に
してきた。ウクライナの一人称視点
(FPV) を備えたドローンが現時点で、
ロシア軍の戦車の40%以上を破壊して
おり、武装車両や砲、トラックの30%
以上を撃退している。ウクライナの
各企業が毎月50,000機のFPV付き
ドローンを製造しているのだが、
これでも必要量の10-15%に過ぎない。
ロシア軍のドローン製造と輸入の量は、
はるかに多い。ウクライナの専門家
Maria Berlinskaによれば、「ロシア軍
はウクライナ軍よりもはるかに先を
進んでいる。自動化も進んでおり、
「ドローン編隊」も編成でき、自動
光学ナヴィゲーション(ドローン自体
が標的を認知し攻撃するかどうかの
決定を下す)も可能だ。こんなドローン
が何千と飛来してきたら、ウクライナ軍
は2-3週間で何十キロも後退せざるを
得なくなる。」
両国とも、パートナー諸国と防衛産業
ベースとを動員し、戦場で決定的な優位
に立とうと努めている。それに成功する
方が、この戦争の様相を根本的に変える
こととなりそうだ ・・ そうかも
しれない。
心理的要因
戦争に関連するありとあらゆるトラウマ
に、ウクライナの人々は晒されている。
今回の全面戦争が始まる以前でも、
ウクライナには851,068名の退役軍人が
いた。戦争が今日終結したと仮定した
場合、ウクライナの退役軍人はさらに
1,800,000 名増大する。彼らの家族まで
含むと、支援を必要とする可能性のある
人口は恐るべき7,200,000 人(つまり、
総人口の10-20%)に達する。
これは、今回の戦争での戦闘からの
トラウマだけを考えた数値だ。だが
ウクライナはさらに、実存的な戦争を
も戦っている。ウクライナ兵士たちの
士気の高さは戦場で実証済みであり、
ウクライナが自分よりも強力なロシア
軍を打ち負かしている原因でもある。
ロシアが被った損失は、第二次大戦以降
で最大のものだ。アメリカの諜報機関に
よると、ロシア陸軍はこの戦争の開始
時点で3,100両の戦車を有していたが、
そのうち2,200両を失っている。
1950年から1980年にかけて製造した
旧式の戦車や装甲車、砲などを
引っ張り出して「バックフィル」
<古いもので埋め合わせをする> を
せざるを得なくなっている。最低でも
ロシア軍兵士315,000名が死亡、
あるいは負傷している。これは、
ロシア軍が今回の全面戦争を開始した
時点で有していた人員の90%近くに
相当する。 .
ロシア軍は「人海戦術」でウクライナ
の陣地を脅かそうとしてきたのだが、
その多くは装甲車両や砲による支援なし
でのことだった。上述のような大規模の
損害を受け、場合によっては
「障壁部隊」を設定して兵士たちに前進
を強いるしかない場合もあった。酒に
酔う徴兵された兵士たちや命令に服従
しない兵士たち、有罪判決を受けた兵士
たちはStorm-Zというロシアの懲罰部隊
へと強制的に押し込まれる。そこから、
「大砲の餌食」としてウクライナの前線
へと送り込まれる。士気もやる気も最低
レベルで、最近ロシア軍の「ドニエプル
グループ」の司令官は将校たちを集め
襲撃ユニットを編成せざるを得なく
なった。さらにローテーションも無理
なので、状況はさらに悪化しそうだ。
ロシア軍は、第一次大戦で見られた
ように崩壊・解体する可能性もある。
その破局がいつ・どのように訪れるのか
は予測しがたいが、2024年に起きる
可能性も充分にある。ロシア軍が要塞化
されたウクライナ陣地を無理に襲撃
せざるを得ないようにし(バフムートや
アウディーウカなど)、重大な損害を
受けさせれば、そうしたロシア軍の崩壊
を実現できるのかもしれない。あくまで
可能性の話だが。
防衛支援
西側からの兵器や弾薬の供給が減少して
いるが、メディア各社はそれを
「支援疲れ」の一環だとしている。実は、
そうではない。それは、欠陥のある戦略
思考と安全保障と国防への投資を渋った
結果なのだ。既に昨年、西側諸国は
ウクライナがろ紙を打ち負かすために
必要なだけの兵器や弾薬の備蓄がない
ことに気づいていたのだ。
2022年8月、私(Midttun)は次の警告
を発した:「NATOがウクライナに
供与できる兵器がなくなりつつある」
NATO諸国は今回の戦争が2014年に
始まった際に、その防衛産業ベース
(Defense Industrial Base、DIB) の
動員や軍の増強、武器弾薬の備蓄の
増大を怠ったのだ。2022年4月、
アメリカの防衛産業が発表したところ
では、防衛関連の必要物調達の発注を
受けた場合、生産増大には18から
36か月を要するそうだ。
アメリカのウクライナ向け防衛支援が
再開するのは、来年になる公算が大だ。
これは単純に、アメリカの国益という
事情のためだ。(アメリカにとっての)
コストを最小にして、ロシアの軍事
活動を削減するという狙いだ。敵対する
恐れのある諸国すべてにアメリカの意思
と能力を示す合図を送り、将来の紛争を
抑止するというものだ。この努力により
アメリカのDIBの拡大増強を図る。
既存の生産ラインも新規のラインも稼働
させる。アメリカ軍部から以前に直接に
供与した兵器を、新型の現代的兵器と
交換する。 さらにそのコストの大半は
アメリカ国内で消費することで、雇用を
創出する。同時にアメリカは、
ウクライナの軍事技術やドローンへの
対抗策、ロシア軍の戦術・戦略などに
ついて実戦に基づく貴重な情報を
集める。ロシアの電子戦に対抗する
うえでの手助けになる。アメリカの
ウクライナ向け支援は支出ではなく、
長期的には戦略的な投資と見るべき
なのだ。
ヨーロッパは、アメリカからの防衛支援
に取って代われる状態にはない。この
30年間、ヨーロッパは軍事支出が不充分
で軍の縮小や効率化を進めており、
そのためウクライナに必要な武器や弾薬
を供与できないのだ。ヨーロッパ諸国
には、自国の軍隊とその持続可能性とを
再建することが急務である。ヨーロッパ
のDIBはいかなる意味でも必要に応え
られるだけのものを製造しておらず、
その表れの実例として100万発の砲弾
を供与するとの約束を守れておらず、
2024年から2025年にかけて防空
システムを供与するとの誓約も果たせて
いない。2024年には生産量が増強
されることを願うのだが ・・
そうなれば良いが。
黒海
ウクライナは、黒海では優れた戦果を
挙げてきている。
黒海艦隊(BSF)の一部をクリミアから
他所に配備転換せざるを得なくなって
いるほどだ。ウクライナ南岸への陸海
共同での上陸という脅威は消えた。BSF
が認知されている艦船配備(maritime
recognized picture)を編成できる能力が
劣化した。フラグシップ艦を失い、
ミサイル輸送船の一部も失い、潜水艦も
1隻破壊された。ウクライナの港を閉鎖
する能力も弱体化した。
ルーマニア、ブルガリア、トルコの領海
を通過しての船舶輸送航路も、
ウクライナは再会できている。8月8日
以降、ウクライナ海軍が設けた
ウクライナ回廊経由で、ウクライナの港
から200隻以上の船舶が出港している。
さらに12月4日までに、ウクライナの
港に入港した船舶は 226隻にのぼって
いる。
今までのところ、ロシアはこうした
輸送海路には介入も封鎖もしない
ことにしている。この海路を封鎖する
選択も検討しているのかどうかと
尋ねられたロシア外務省のスポークス
パーソンMaria Zakharovaは、直接の
解答を避けたが、この輸送海路が軍事
目的に利用されている恐れがあるとの
嫌疑を述べた。これは7月19日付の
ロシアの「黒海でウクライナの港に
進行していくすべての船舶は、軍事
物資を輸送している可能性があるもの
と見なす」という声明を再度強調した
ものだ。つまり、そうした輸送船舶を
合法的な軍事標的とする、との含意
がある。
この点でのウクライナの戦果は目を
見張るものだが、BSF とその海軍
航空部隊とはお望みであれば民間船舶
の入港などを禁じ停泊させる能力を
保持している。そうした行為をロシア
が控えた場合には、西側がこの戦争に
直接に介入することを回避するという
長期的な目標のためである可能性が
極めて高い。外国船隻の船舶を沈没
させたり、損傷を与えたりすれば、
まさに西側の介入を招く危険性があり
得る。あくまで、可能性であるが。
本論調にある見解は著者自身のもので、
Kyiv Postの見解でもあるとは限り
ません。
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今回のパート3には、核兵器や原発の
話題が直接には登場していません。
ですが、
・ そもそも核兵器使用されたら・・・
という脅威が、現在の状況を招いた
大きな要因の1つ。
・ こうした現状のただ中に、原発が
立っている。
という現状は充分に意識しておくべき
ですね。
特に、私たち反核勢力は、こうした
世界情勢などにも目を光らせておく
必要があります。
福島第一からの ”トリティウム水”
排出もウォッチを続けるべきですが、
同時に世界ではウクライナ、イラン、
サウディ、北朝鮮などなどで凝視を
続けるべき事態が進行中です。
反核勢力のやるべきことは、極めて
多いのですね。