すぐ下の2月4日の投稿で紹介したリンク先にある「武装ガード」ですが、軍隊でも内戦でもなく、原発の守衛なのです。無論、日本とアメリカでは銃に関する法規制が異なるのですが、原発に対するテロへの警戒の程度が、太平洋のこちらとあちらでは、大きく異なっているのですね。
それをわきまえてから、アメリカの原発見学などに行くべきなのですが ~~ ある友人はアメリカのある原発に呑気にふら~りと近づいてしまったところ、小銃を持ったガードたちに銃を突き付けられたそうです。
で、アメリカの原発のテロ対策というと、日本ではすぐに「旅客機ハイジャック → 原発に自爆衝突」というシナリオを話題にしていますが、他の脅威にも対応しているんです。
https://fas.org/sgp/crs/terror/RS21131.pdf に、Congressional Research Service(米国議会調査サービス)の下院向け報告書で、Nuclear Power Plants: Vulnerability to Terrorist Attack という報告書があります。
それを見ていくと、要約に続いて導入的な説明が続き、Design Basis Threat(設計に基づく脅威)への対策を論じています。ここで注目したいのはその次の脅威、つまりForce-on-Force Exercises(武装集団の攻撃に対処するための演習)という個所です。
要するに、武装テロリスト部隊が原発を襲撃するというシナリオにも備えているわけです。「なんだよ、なんかのスマホゲームか??」と思っては、困ります。この報告書は、アメリカ議会向けの報告ですよ!
その一部を、抜粋してみましょう:
「Force-On-Force Exercises. EPACT (2005年のエネルギー政策法)codified an NRC requirement that each nuclear power plant conduct security exercises every three years to test its ability to defend against the design basis threat. In these “force-on-force” exercises, monitored by NRC, an adversary force from outside the plant attempts to penetrate the plant’s vital area and damage or destroy key safety components. Participants in the tightly controlled exercises carry weapons modified to fire only blanks and laser bursts to simulate bullets, and they wear laser sensors to indicate hits. Other weapons and explosives, as well as destruction or breaching of physical security barriers, may also be simulated. While one squad of the plant’s guard force is participating in a force-on-force exercise, another squad is also on duty to maintain normal plant security. Plant defenders know that a mock attack will take place sometime during a specific period of several hours, but they do not know what the attack scenario will be. Multiple attack scenarios are conducted over several days of exercises. 」
(私の日本語化)
(武装集団との戦闘演習) 2005年のエネルギー政策法(EPACT)では、各原発でセキュリティのための演習を3年おきに行うよう求めるNRCの要件を成文化している。それにより、設計に基づく脅威への防御能力をテストするのだ。そうした「武力衝突」の演習をNRC(米国原子力規制委員会)がモニターしており、そこでは発電所外部から敵対武装集団が発電所の重要個所に侵入し、不可欠な安全装置を損傷させる、または破壊しようとする。こうした演習は綿密な管理の下で実施され、参加者は細工を施した武器を携帯する。細工というのは、そうした武器からは空弾あるいは弾丸の役割をするレーザー光線しか発射されない。命中した場合には、着用しているレーザー センサーがそれを知らせる。その他の武器や爆薬、さらに物理的なセキュリティ バリアーの突破についてもシミュレーションを行う場合がある。発電所のガード部隊の中の分隊の1つが戦闘演習を行っている間、別の分隊が発電所の通常のセキュリティ任務にあたる。発電所のガードたちは、数時間にわたる演習の中のある時点で偽装攻撃も行われることを知っているのだが、そのシナリオは知らされていない。演習は数日間に及び、攻撃のシナリオも複数ある。
以上のように、アメリカの原発では武装集団との戦闘に備えた演習まで実施しているわけですね。はて、日本の原発に武装テロ集団が襲撃をかけたら、どう守るのでしょうか??
「国を守らねば → 核抑止が必要 → 潜在的核抑止能力のため、原発とその稼働の維持が不可欠」といった理屈を言う前に、その原発自体が武装テロ集団に襲撃されたら、どうするのでしょうね??
そして、武装襲撃以上にリアリティのある脅威として、「原子炉内部の人員によるサボタージュ」には、どう対応するのでしょうか??
それを、次回の投稿で考えます。