中国のICBM増産もやめて欲しいですが、その一方で、アメリカはプルトニウム(長崎型)原爆の中核装置(「プルトニウム ピット」)を増産しようと ・・・近年、アメリカは「プルトニウム ピット」という長崎型原爆の中核となる装置の増産に努めているそうです。
私としては、どちらもやめて欲しいのですが。
South Carolina Environmental Law Project という、サウス カロライナ州の自然環境やコミュニティを守ろうとする法律関係のグループ(1987年結成)によるリリースを紹介します。
「ピット」の増産をやめさせようと、アメリカ政府を相手取った訴訟が起こされたようです。
Lawsuit Filed Against Biden Administration Over Nuclear Bomb Core Production Plans (scelp.org)
(原爆のコア装置製造計画に関し、バイデン政権を相手取った提訴)
2021年6月29日付の発表です。上のリンクをクリックすれば英語本文をご覧になれます。
この下には、私の日本語翻訳を紹介しますね。長いので、今回は前半を。
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(私による日本語化)
原爆の中核装置の製造計画に関し、バイデン政権を相手取った提訴
国を挙げてのプルトニウム ピットの増産を再検討することを連邦諸機関は拒否したが、これはアメリカの国家環境政策法および行政手続法への違反だと、原告各グループは主張
サウス カロライナ州エイケン発 – 本日、コミュニティ グループや公益グループの連合体が、アメリカ政府のエネルギー省(Department of Energy (DOE))ならびに国家核安全保障局(National Nuclear Security Administration (NNSA))を相手取り、訴訟を提訴した。(元のウェブページの下の方にあるダウンロードというボタンをクリックすると、訴訟本文をご覧になれます) この訴訟は、両機関が「プルトニウム ピット」の製造を4倍以上に増大するという計画を国家環境政策法に則り「厳しく再検討する」ことを怠り、しかもその製造場所をニューメキシコ州のロス アラモス国立研究所とサウス カロライナ州のサヴァンナ リヴァーとの2か所に分割したことを受けてなされた。
プルトニウム ピットとは、核爆弾の中核部であり、起爆装置である。その製造には、極度に有害な放射性物質を広範に処理し扱う作業を伴う。2018年、アメリカ連邦政府は2030年までに最低でも毎年80個のピットを製造するよう求めた。そのうち30個以上をロス アラモスで、50以上をサヴァンナ リヴァーで製造するというものだ。この新たに製造するプルトニウム ピットはW87-1という核弾頭用のものだ。これはカリフォルニアにあるローレンス リヴァモア 国立研究所で開発中の新型核弾頭で、賛否の議論を呼んでいる。 新型の設計であるため新型のピットが必要で、原爆の中核部分はすべて上述の両施設で2038年あるいはそれ以降までに製造する必要があると、政府の文書には記されている。
3つの団体すなわちニュークリア ウォッチ ニューメキシコ(Nuclear Watch New Mexico)、サヴァンナ リヴァー サイト ウォッチ(Savannah River Site Watch)、環境放射性物質に反対するトライヴァレー コミュニティーズ(Tri-Valley Communities Against a Radioactive Environment) はエネルギー省(DOE)ならびに国家核安全保障局(NNSA)に対し2019年から今までに6回働きかけているが、それはロス アラモスとサヴァンナ リヴァー サイトでプルトニウム ピットを増産することにあたっては新規または補充的な全米的で広範に及ぶ「計画的な環境への影響に関する声明」(PEIS)が法的に要求されている、という問題に関するものであった。だがそれら3団体に対する2021年3月22日付の回答(リリース本文中のリンクから、PDFをダウンロードできます)でNNSA は、ピットの製造についてはすでに検討済みでそれを再考する計画はなく、10年以上前に作成した時代遅れのPEISを補完的に分析するとともに、サヴァンナ リヴァー サイトだけを対象にする単独のレビューを別途実施することで良しとする、としていた。ピットの製造を1か所だけで行うのか、それとも2か所で実施するのかには大きな違いがあり、2か所だと廃棄物も増えその2施設から廃棄物を輸送する必要も生じる。
今回のピット製造計画の変更に対応した両政府機関の評価活動は断片的かつ事後対応的なものであり、恣意的しかも気まぐれで、国家環境政策法および行政手続法への違反であると、この火曜日に提出された異議申し立ては主張している。この申し立ては、上述の3団体ならびにグラー・ジーチー海島しょ連合(Gullah/Geechee Sea Island Coalition、グラー・ジーチーは2000年7月にノース カロライナからフロリダの沿岸部で独立を宣言した国家。アフリカ系の方々や先住民の方々が多い)に代わりサウス カロライナ環境法プロジェクト(South Carolina Environmental Law Project)が、サウス カロライナ地裁エイケン分所に提出したものだ。
今回の提訴のねらいは、被告である両政府機関に、レビューや意思決定のプロセスに一般市民を参加させ、この大幅に変更されたピット製造計画が環境に及ぼす影響の評価を行うようにさせることにある。これには、両施設近隣にありながらも充分な注意を向けられていないコミュニティ多数にとっての環境的公正さも含む。NNSA が今までに国家環境政策法(NEPA)に基づくレビューを実施したのは、この2か所を結び付けて拡大したプルトニウム ピット製造計画の一部の特定箇所のみであり、ピット製造に関連するすべてのDOEの施設に対する影響やピット製造プロセスで出来る廃棄物の処理、この計画の実現性に深刻な嫌疑を引き起こす一連の新情報など、プログラム レベルでの重大な問題については評価を行っていない。
サヴァンナ リヴァー サイトでのピット製造には、「MOX燃料製造施設」(Mixed Oxide Fuel Fabrication Facility)として知られる失敗した過去のプロジェクトの施設を完全にオーバーホールする必要がある。この失敗で、70億ドル以上もの経費が無駄になった。2020年2月の 推定では、サヴァンナ リヴァー サイトだけの経費が46億ドルとみられていたのだが、今やそれが111億ドルにまで急増しており、この金額は2021年5月28日付のNNSAの予算要求(リリース本文中のリンクから、ご覧になれます)においても確かめられる。最近の下院での証言でNNSAの指導者たちはすでに、SRS(サヴァンナ リヴァー サイト)で2030年までに毎年50個のピットを製造するとの目標であるが、これは2035年にまで先送りする必要が生じるかもしれないと述べている。
(長いので、今回はここまで。後半は、次回に)
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「プルトニウム ピット」ですが、プルトニウム型原爆は起爆するのに implosion という特殊な起爆方法が必要で、それには技術が必要です。そのため、「プルトニウム ピット」という特殊な起爆装置が開発されたのですね。長崎での「実際の使用」から76年、いくつかのタイプのピットが開発されていますが、さらに新型のものをアメリカは作ろうというわけです。
核武装拡大に取り組んでいるのは中国だけではなく、アメリカも新型プルトニウム核弾頭の開発・製造に躍起のようですね。世界はまた、核軍拡競争の時代に入ってしまったのか・・・
「核発電」反対陣営と、「核兵器」反対陣営とに分かれている余裕は、ありませんね。両者の不可分性を認識・情報発信して、力を合わせて「核」廃絶に世界を向かわせないと。
では、このリリース後半の日本語訳は、次回!