COP28での核発電業界の喧伝、
アメリカが主導
Beyond Nuclear Bulletin
2023年11月16日号より
US to lead nuclear industry’s COP28 mission – Beyond Nuclear
US to lead nuclear industry’s COP28
mission
(COP28での核発電業界の喧伝、
アメリカが主導)
核発電産業界がCOP28 (という気候
変動対策を考える国連主催の国際会議。
今年11月30日から、ドゥバイで開催)
で核発電の発電能力を3倍に増やそう
と働きかけるようです。例によって、
「核発電はCO2を出さない」って
主張でしょう。(本ウェブサイトの、
上の黒いメニューの終わりの方にある、
付録 w-1)、w-3)、w-8)、w-10)、w-14)
などを参照)この無謀な動きについて、
Beyond Nuclear Bulletinより。
まあ、見方によっては、核発電業界の
断末魔の叫びと思えなくもないですね。
では、いつもどおり
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。
終わりだ ・・・
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もうすぐ開催される地球規模の気候変動
危機対策の国際会議は、そうでなくとも
見通しが不安なうえに、化石燃料の主要
産出国の1つ <ドゥバイ> で開催
される。アメリカ上院議員や国務長官を
歴任したジョン ケリー (John Kerry)
は、ドゥバイで開催予定の今回の
第28回加盟諸国会議(COP28)でも
アメリカ大統領代理気候変動特務代表
(Special Presidential Climate Envoy)
を務めている。そのケリーは、2050年
までに世界の原発発電能力を3倍に
増大させよというロビー活動を行う。
ケリーを後押ししているのは、英国、
フランス、スウェーデン、フィンランド、
韓国で、世界銀行ならびに世界規模の
主要金融機関に充てた宣言でそれを明言
しており、しかもローンの慣行において
費用の増大が予想を超えて膨らむ場合が
ある原発へのローンを認めるとも
述べている。
Kerryは世界銀行に対し、過去64年間
実施されてきた核発電関連のローン
提供方針を変更するよう求める。今まで
に世界銀行がこの核発電という議論の
喧しいエネルギー源への資金貸与を承認
したのは、1回のみだ。1959年、
イタリアの最初の核発電プロジェクトに
対し4,000万ドルを貸与したのだ。
(総建設費用の60%) この原発は、
ガリリャーノ川(Garigliano)の岸に
建設された。ゼネラル エレクトリック
社製の180MW原発で、第1世代の
沸騰水型原子炉を採用、1964年から
1978年まで稼働した。1978年に安全
性に影響する蒸気発生装置の劣化が
あり、恒久的に停止となった。結局、
このガリリャーノ原発の廃炉作業には
当初、27年を要するものと想定されて
いた。だが現時点ではすでに24年を
経過しており、まだ作業は進行中だ。
この大きくはない原子炉の廃炉作業を
完了するのに要する費用は4億3,200万
ドルと見積もられており、建設費用
よりもはるかに巨額だ。しかも、廃炉
作業からは1ワットの電力も得られない。
へへへ、工期が伸びてしまいまして~~
世界銀行ならびにその他の多国籍開発
銀行各行は、世界のどこかを問わず、
概して核発電へのローン提供には
良くても懐疑的だ。<銀行によっては、
否定的だ> 原発の建設での想定予算や
想定竣工時期を守るという点で、
核発電業界は失敗ばかりを示してきて
いるのだ。10年前、クリーンで安全、
安価な電力を世界のより多くの人々に
届ける必要性を認識した世界銀行は、
「世界銀行は核エネルギーを扱わない」
と公に宣言した。世界銀行のジム
ヨンキム総裁は2013年11月、
さらにこう述べている。「世界銀行
グループでは、核発電のサポートには
関与しない。これは極めて難しい論争で
すべての国で議論が続いていると認識
している」 核発電業界は経済面で失敗
を重ね、その提唱した「原発
ルネッサンス」も崩壊している。核発電
に関する議論はたびたび再燃するが、
そうした議論の疑わしさはこうした
失敗や崩壊のため一層強まっている。
核エネルギーに代えて、今年2023年に
世界銀行はインドにおいてエネルギー
消費の公効率化と再生エネルギーとに
15億ドルを投資すると発表した。
インドでは太陽エネルギーを利用した
「グリーンな」水素製造技術の開発を
進めており、それに対する投資も
含まれる。さらに南アフリカでは、
世界銀行はEskom適正エネルギー
移行プロジェクト (The Eskom Just
Energy Transition Project、EJETP)
<Eskomは南アフリカのエネルギー
企業> を開始、これは2022年11月に
承認された4億9,700万ドルの
プロジェクトだ。これはKomati
<という場所にある> 建設から56年に
なる石炭火力の発電所を廃炉とし、対象
敷地を再生可能エネルギーと蓄電装置
へと転換し、雇用とコミュニティ発展
の機会を生み出すというものだ」
世界銀行以外の主要金融機関を見ると、
欧州連合(EU) は2022年に核発電を
クリーンでグリーン、持続可能な
エネルギーと分類して市場に出すことを
決定しているが、それでも核発電は今も
極度に複雑な問題であり、EU加盟諸国
の間でも見解は鋭く対立している。
今までのところ、EUの主要銀行には、
実はダーティーで危険、極度にリスクの
多い核発電への投資を実施した銀行は
ない。
ジョン ケリーは核発電業界のトップ
セールスパーソンという特殊ミッション
を務めているが、これは誤ったもので
あるだけでなく、気候変動の緩和を
タイムリーかつ効果的に進めていくうえ
での深刻な脅威となる。コストも最小で
済み短期間で導入できる再生可能
エネルギーやエネルギー消費の効率化と
節約への戦略的な投資が、核発電に
向けられてしまうためだ。この再生
可能エネルギーと効率化こそ、同じ
金額の投資で世界的な炭素排出の削減を
確実に実現できるのだが。
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やれやれ~~ 私の10分クロッキー
「原発はCO2を出さない」という主張
の問題点については、既に上で指摘した
本ウェブサイトの各関連ページを
お読みください。
それにしても、核発電業界という
斜陽産業の最後の悪あがきという感が、
私には否めません。