英国セラフィールドは悲惨とカネと絶望 の底なし沼

英国セラフィールドは悲惨とカネと絶望
の底なし沼

The Guardianの”Nuclear Leaks”
(核関連のすっぱ抜き)
Sellafield: ‘bottomless pit of hell, money and despair’ at Europe’s most toxic nuclear site | Energy industry | The Guardian

Beyond Nuclear Bulletinの2023年
12月14日号で紹介されている、The
Guardianによる英国セラフィールド
(ウィンズケール)核施設に関する
記事です。

まず、Bulletinの記事を日本語化して
紹介します。
その後で、The Guardianの記事を
抜粋・日本語化して紹介しますね。

ふたつとも紹介しますよ

いつもどおり、私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。

Beyond Nuclear Bulletinの2023年
12月14日号より:
*******************************
Plutonium time bomb
A shocking expose on Sellafield
(プルトニウムという時限爆弾
セラフィールド核施設に関する驚愕の
事実が露呈)

英国の日刊紙The Guardian では1年
にわたり同国にあるセラフィールド
再処理施設・各廃棄物処分場の調査を
実施してきているが、その結果、驚愕
の事実が露呈した。その1つとして、
地球上で最大のプルトニウムを保管
しているこの再処理施設に、ロシアと
中国に強く結びついているサイバー
グループがハッキングを行ったのだ。
ただし英国政府はそれを否定して
いる。さらにこの施設は等級化が激しく
危険であり、そこでの職場体質が有害で
「ヨーロッパでも最も有害な核施設の
安全性を脅かしかねない恐れがある」
セラフィールドではいじめや嫌がらせ
が行われており、それが知られるに
至ったのは、以前にセラフィールドの
人材関連の職務を下請けで行っていた
Alison McDermottの勇気ある内部告発
によるものだ。McDermottはインタ
ビューで、セラフィールドを相手取った
訴訟を行ったところ筆舌に尽くしがたい
いじめを受けたと語っている。
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「目をつむれ!」って ・・・

われ思うに、柏崎刈羽原発のテロ対策の
ずさんさの報道などを思い返すと、
TEPCOもセラフィールドのことを笑え
ませんよね。
どの企業も核関連組織も、いじめや
嫌がらせといった大人のやることじゃ
ない悪事に費やす時間や労力があるの
なら、しっかりとテロ対策や安全性
向上に努めてほしいものです。

では続けて、The Guardianの
すっぱ抜きを:
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Sellafield: ‘bottomless pit of hell, money
and despair’ at Europe’s most toxic
nuclear site
(セラフィールド: ヨーロッパで
もっとも有害な核施設は、悲惨とカネと
絶望の底なし沼)

核のナルニア <C. S. Lewisの
「ナルニア国物語」の部隊。映画にも
なりましたよね> として知られるこの
セラフィールド核施設は、<イング
ランド北部の西海岸にある>
カンブリア地方の財源となっている。
だが長年、国際的に安全面での懸念対象
でもあり続けているのだ。

– セラフィールド核施設、ロシアならび
に中国と関係する集団からのハッキング
を受ける

Anna Isaac記者、Alex Lawson記者

<写真キャプション ― セラフィールド
が核ゴミの受け入れを始めたのは1959
年のことだった、とあります>

2023年12月4日

放射性物質の漏出なら、ウィンズケールでは過去に実際に発生しています

ヨーロッパで最も有害な核施設である
セラフィールド。そこを初めて訪れた
閣僚たちはまごうことなく、この施設
の抱える課題を認識する。

英国の外務大臣を以前に務めた人物は
セラフィールドを「悲惨とカネと絶望
の底なし沼」と呼んだ。この施設が
あまりにも巨額のカネを吸い込むため、
他の多数のプロジェクトを衰退に追い
込んでしまった。そうした各種
プログラムが成功していれば、この地の
経済は潤っていたはずなのだが。

従業員たちにとっては、セラフィールド
は憧れの場であるとともに、恐怖の対象
でもある。

「セラフィールドで仕事に就くという
のは、別世界に入り込むようなものだ。
なにしろ、それは核のナルニア国みたい
なものだから」 と、ある上級従業員は
述べている。「ただ、<Lewisの
ナルニア国物語のように> 収納家具
からナルニアに入り込むのではなく、
銃を持った警官たちがパトロールして
いる中でチェックポイントを通って
入るのだが」 他の従業員たちは、
セラフィールドのことを核のディズニー
ランドと呼んでいる。

<写真キャプション― 冷戦時代の
核兵器競争の産物で、1947年に核兵器
開発のプルトニウム製造施設として
出来たものだ、とあります。世界初の
商用規模の原発だったコルダー ホール
原発も1956年にこの地に出来、2003年
に発電を終えた。>

発電しない実用原子炉カルダーホールの概略図、再掲

セラフィールド <旧名はウィンズ
ケール、上の黒いメニューで
ページd-1) を参照> は、災害と賛否
両論の渦巻く施設でもあった。災害の
実例として、1957年にはウィンズ
ケール火災が発生。その当時、この
火災はヨーロッパ史上最大の核災害と
認められていた。そこからの有害な
煙はヨーロッパ大陸全土にも広がって
しまった。200平方マイル <およそ
520平方km> に及ぶカンブリアの
牧場で乳牛からとった牛乳は、
放射性牛乳として排斥された。

セラフィールドが放射性ゴミの処分場と
してその種のごみの受け入れを開始した
のは、1959年のことだ。それ以来
今までに、核燃料棒からスクラップに
なった金属に至るまで、何千トンという
ゴミを受け入れてきた。そうしたゴミは
コンクリート製のサイロや人工の池、
密封された建物に収められている。
老朽化している建物の安全性を保ち、
さらに有害なゴミを入れる新たな施設を
建設するため、新しい作業プログラムの
実施が絶えず必要だ。そうした施設は、
少なくとも2030年までは操業を続ける
見込みだ。

例によって、すごいカネを ・・・

 

施設を運営しクリーニングするための
費用も、うなぎ上りだ。セラフィールド
の維持にはあまりにも多額の経費が必要
で、予算担当の役人たちはそれを財政上
のリスクの1つと見なしている。英国中
の核施設のクリーニングに要する費用は
最新の推定によれば2,630億ポンド
<およそ47兆3,400億円> で、
その中でもセラフィールドが圧倒的に
大きなシェアを占めている。ただし
その経理処理に手を加えることで
1,000億ポンド以上を他の項目に移す
ことも可能だ。これは、英国の年間の
総債務よりも巨額である。また
セラフィールドの諸施設を廃止処理
するための費用も膨らみ続ける債務
であり、しかもこの債務は英国の
純負債には算入されてはいない。

セラフィールドを所有しているのは、
エネルギー安全保障省 (Department for
Energy Security) が資金出資している
特殊法人の原子力廃止措置機関
(Nuclear Decommissioning Authority)
とNet Zeroで、後者は全英に17か所
ある核施設のクリーニングを請け負って
いる。

セラフィールドに勤務している従業員は
11,000人にのぼり、専用の鉄道路線も
有している。専用の洗濯サービスもあり
放射性物質で汚れた衣類と、そうでない
衣類とを扱っている。またこの施設専用
の警察部隊まであって、警察犬が80頭
以上もいる。施設の建物は、1,000棟を
超えている。

放射性 子猫

 

セラフィールドから環境への悪影響が、
かなり昔から問題にされてきている。
当地のツバメなどの動物を検査して
みると、セラフィールドからの放射性
物質の痕跡が発見された。また施設に
暮らす野良猫たちは「放射性小猫」が
実際にどこまで有害なのか、現地周辺
では論争が絶えない。セラフィールド
施設の主張では、野良猫の放射性物質を
検査したうえで安全なものを保護して
いるそうだ。

この施設で何が行われているのか、
それを諸国が賢明に凝視しており、
そうした国々としてはアメリカ、
ノルウェー、アイルランドも含まれる。
これは、セラフィールドには世界最大
量のプルトニウムが保管されており、
しかもイタリアやスウェーデンなどの
諸国からの核ゴミも受け入れている
ためだ。

ノルウェーの人たちはかなり昔から、
セラフィールドでの事故が及ぼす
被害を気に病んでいる。モデル作成の
結果を見ると、セラフィールド方面
からは南西からの風が吹いていること
が多く、そのためこの施設で大規模
事故が発生した場合には、放射性粒子
が北海を超えて飛来し、ノルウェーの
野生生物や食料生産にまで壊滅的な
被害を及ぼす恐れがあるのだ。

ノルウェーとアイルランドも、
セラフィールドから海中への
テクネティウム – 99 という放射性
金属元素の放出を止める努力に加担
していた。2003年、ノルウェーは
ロブスター関連事業を崩壊させたと
して、国としてセラフィールドを
非難した。

情報筋によるとセラフィールドでの
雇用は、ゴールド チケットのような
扱いを受けることが多い。これは、
この施設で職に就くと契約期間が長い
うえに賃金も平均以上であるためだ。
この地域には、他には大規模の
雇用主が極めて少ない。

英国の「核海岸」の地図
右上の車線部がカンブリア。
カンブリアを拡大したものが、左下の地図

セラフィールドがあるのは、<イング
ランド北西部の> ウェスト カンブリア
に位置する「核海岸」の中心部である。
湖沼地帯 <Lake District、風景に
恵まれた山岳地帯です> 国立公園と
アイリッシュ海との間だ。核海岸の
南端にあるバロー イン ファーネス
(Barrow-in-Furness)では、
BAE Systems社が潜水艦を製造して
いる。セラフィールド近くの土地では
原発の新設計画が長年練られていたの
だが、2018年にそのムーアサイド
(Moorside) 原発計画はお流れに
なった。日本の東芝グループが撤退を
決めたのだ。<東芝の子会社
ウェスティンハウス社の英国子会社
だったNuGeneration社がAP1000と
いう軽水炉 (上の黒いメニューに
ある al-1) 参照) の原発を建てる計画
だったのですが、2017年に
ウェスティンハウスが倒産したことで、
東芝は撤退に至りました。2020年、
EDF社とロールズ ロイス社とがEPR
で (上の黒いメニューにある al-4)
参照) 建設計画を再開しようと名乗り
出たそうです>

セラフィールド施設は、この地域に
とっては重大な財源である。情報筋に
よれば、誰もがセラフィールドに勤務
しているか、勤務者が知り合いにいる
ような親密なコミュニティができて
いるそうだ。

住宅 ・・・ これじゃ、再建は不可能

 

セラフィールドに努める高給取りの
マネジャーたちの多くは、施設の南方
にある田園地帯や自然豊かな村落に
暮らしており、その例として
ゴスフォース (Gosforth) という村
がある。<英国最大の不動産ウェブ
サイトである> Rightmoveによると、
そこでは平均的な住宅の価格は
311,000ポンド <およそ5,500万円>
である。ある情報筋によると施設の
北方にあるウォーキントン
(Workington) 町や ホワイト
ヘイヴン(Whitehaven)町にはこの
施設の平社員たちなどが住み、それ
ぞれ平均的な住宅の価格は133,000
ポンドと155,000ポンドだ。

セラフィールドの前施設長マーティン
チョウン(Martin Chown)は、年収が
330,000ポンドから334,999ポンド
だった。新卒初任給は36,556ポンド、
マネジャーたちは平均で50,000
ポンド、工場のエンジニアたちは平均
的に63,000ポンドだと、Indeedと
いう求人ウェブサイトには出ている。
2022年のイングランド北西部での
平均年収は、国家統計局(Office for
National Statistics)によると30,248
ポンドだった。
********************************

すごいコスト ~~

最後の部分、日本に住む人なら当然の
ように六ケ所村のことを想起します
よね。再処理工場には、ここまで費用
がかさむ ・・・ ま、地域にそれだけ
カネを落とさないと、こんな危ない
施設を作らせちゃもらえません
ものねえ。
こういうバラマキから、現実には
やり取りされているはずの「闇のカネ」
まで計算に入れたら、原発の電気って
とてつもなく高価なもので ・・・

About FrancisH

A freelance painter, copywriter, and beading artist
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