What a turkey
(ひどい愚行 ・・・ * )
* 英語のturkeyはもちろん「七面鳥」と
いう意味ですが、スラングでは「愚行を
やらかす人」という意味もあります。
ただ、国名のTurkeyとスペルも発音も
一緒なので、トルコの方がいらっしゃる
場合には、ウッカリ使わないで
くださいね。
Beyond Nuclear Bulletin
2024年2月1日号より
What a turkey | Beyond Nuclear International
英国で建設中のHinkley Point C原発の
建設コストがとんでもなく膨張、
ついに世界第2位の高価な建築物に
なってしまった ・・・ という報告
です。
英語の元記事を読みたい方は、
上のリンク先へどうぞ。
日本語読者の多数派の皆様のため、
このHinkley Point Cのごく短い略歴を
最初に紹介しておきますね。
英語版Wikipediaの”Hinkley Point C nuclear
power station” というページを基本に
しています。
詳しい情報は、
Hinkley Point C nuclear power station – Wikipedia
をお読みくださいな。
Hinkley Point C 原発、ごく大雑把な概要
所在地: 英国・イングランド、
Somerset州
所有者:
・ EDF Energy社(英国のエネルギー
企業ですが、親企業はフランス国営の
EDF社)
・ 中国广核集团(中国の国営企業)
建設開始: 2017年3月、2024年2月
現在も建設中
* 既に2023年2月のEDFによる発表
で稼働開始見込みが予定より15か月
遅れの2028年9月とされ、建設費も
大幅に予算超過。2024年1月には
さらに、稼働開始は3年ほど予定より
遅くなり460億ポンドに膨らみました。
当初予算の倍以上の金額だそうです。
(”まともな”ビジネスの論理で
あれば、こんなプロジェクトはやめる
べきですよね)
原子炉: EPRです。EPRに工期延長と
予算超過がつきまとってきたのは良く
知られており「やかんをのせたら~~」
でも上の黒いメニューにある
ページ al-4) で紹介済みです。
なお、”C” という名称からお分かりの
通り、Hinkley Point A とBもあった
のですが、
Aは1965年に稼働開始、2000年に
廃炉が発表されました。Magnox原子炉
でした。(減速材がグラファイト、
一次冷却材がCO2、上の黒い
メニューで e) を参照)
Bは1976年稼働開始、2022年に廃炉
発表。ガス冷却炉(GCR)でした。
それと、日本の三菱重工(MHI) もCに
絡んでおり、2022年11月発表の
リリースによれば、緊急冷却用ポンプを
納品したそうです。重大事故発生の場合
に、格納容器や燃料プールの冷却に使用
するポンプです。
三菱重工 | 英国ヒンクリーポイントC原子力発電所向けポンプの初号機を納入 残りの機器も順次製作、納入予定 (mhi.com)
下で日本語化紹介するBeyond Nuclear
Bulletinの記事では、このHinkley Point
C の工期遅延と予算オーバーを問題に
しています。
原発は実際には、いかにコストが
膨らみすぎる代物かお分かりいただ
けると思います。
では、そのBeyond Nuclear Bulletin
の記事を
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。
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2024年1月31日
Linda Pentz Gunter記者
(Beyond Nuclearの国際問題専門家)
Hinkley Point C costs hit a new high but
the nuclear plant still isn’t roasting
Christmas turkeys
(Hinkley Point C原発の建設コストは
さらに膨張したが、いまだに
クリスマス用七面鳥 * を焼いてくれ
もしない)
<* 冒頭で説明したように、英語の
turkeyの二重の意味を生かした
言葉遊びです>
<サウディ アラビアの> メッカに
ある大モスクは、1,152億ドルで世界で
最も高価な建築物だと見られている。
それに続く第2位は ・・・ 英国で
建設中の原発だ。2基の原子炉を擁する
<発電能力が> 3,260MW のHinkley
Point Cという原発だが、英国で今も
建設中である。今のところそのコスト
は最低でも460億ポンド (590億
ドル)<8兆6,435億円程度、これ
だけ巨額を費やし、税金も投入して、
得られるものは電気だけです> で、
これは開発担当企業であるフランス
のEDFというエネルギーの巨大企業
が公表した最新の数値だ。
こうした現実から、Hinkley Point C
原発は今や世界で2番目に高価な
建築物という不名誉な栄冠に輝いて
いる。しかもこの原発は、まだ完成
してさえいない。建設コストは、
今後さらに膨らみ続ける恐れもある。
もともとEDFは、2017年までには
ブリテン(英国)の人たちは
Hinkley Point C原発からの電気で
クリスマス用七面鳥を焼くことに
なっているはずだと、大口を
たたいていた。この建設完成予定は
今や、「2029年以降」となっている。.
核発電業界というのは、コストや工期
などを3倍に膨らませることが得意だ。
昨年12月のCOP28気候変動対策
サミットでは、2050年までに世界の
原発を3倍に増やすと発表したのだが
これは例外となりそうだ。<つまり、
実現しないだろう> だが新設原子炉
のお値段は? 建設期間は? そうした
面では、核発電業界は確実に3倍増を
達成しているのだ。
Hinkley Point C原発でも、その3倍増
がほぼ実現できつつある。 現在の建設
コストは、最初の推定であった180億
ポンド(230億ドル) <3兆3,350
億円くらい> の倍以上に膨らみ
あがっている。伸びに延びた延長工期
を考えると、コストの3倍増は充分に
あり得そうだ。
核発電業界の今迄の実績を考えるなら
Hinkley Point Cのこのコスト倍増は、
特に驚くこともないニュースだ。
それに先立ち、英国のリーシ スナク
首相の保守党政権は先日、英国は
「今後70年間、核発電の過去
最大級の拡大を開始、雇用創出と電気
料金の軽減、英国のエネルギー安全保障
の強化に努める」という無理な発表を
していた。その計画がその目標のいずれ
も達成できそうにないことは、言う
までもない。
Hinkley原発プロジェクトで英国の
消費者が払う電気料金は値下げする
どころか、実際には「電力市場での相場
料金よりもはるかに高いものとなる
だろう」と、Norbert Allnoch博士は予想
している。同博士はドイツの
ミュンスターに本拠を置くInternational
Economic Forum for Renewable
Energies (IWR) <Internationales
Wirtschaftsforum Regenerative Energien
再生可能エネルギーに関する研究や
コンサルテーション、国際ネット
ワーキング、啓蒙活動などを営む機関>
のCEOである。
そのIWRの推定によれば、Hinkley Point
Cが発電する電気のコストは「15
セント/kWhという基準よりも大幅に
高くなり」、しかも上昇を続けそうだ。
これは、英国政府が「核発電のために
EDFに支払う金額を国家が保証する
こと、それがインフレ率に応じて修正
されること」に合意しているためだ
と、IWRは発表している。
こうした問題に先立ち、先日の発表に
よると英国の政府当局は、イングランド
南東部のサフォークの海岸部にある
サイズウェル原発 <2006年12月に
廃炉発表されたGCR原子炉の原発
SIzewell Aがあり、イチオー今も稼働
可能なPWR原子炉の原発Sizewell B
もあります。そこに新たに全く同じ
EPR原子炉2基のSizewell Cを建設
しようという計画があります> の
EPR 2基について、 EDFに対し
Development Consent Order (DCO)
<直訳すると「開発同意命令」、
国家規模で重要なある種のインフラ
プロジェクトを正式に認可するもの>
を承認したとのことだ。このプロ
ジェクトには、英国政府は13億ポンド
(16億ドル)<2,320億円程度> を
投じる。このフランス企業EDFは既に
現地の原生林を伐採、近隣のMinsmere
自然保護地区に暮らす野生動物たちの
生息域を脅かし混乱を発生させている。
一方でフランスは英国に対し、Hinkley
でのコスト超過とSizewellでも工事が
始まるとコストが膨らむと予想されて
いるのでその超過分とを支払うよう強く
要請している。報道によればフランスは
英国がSizewell C原発から中国を締め
出したうえ、Hinkley原発からも中国
企業の中国广核集团が保有していた
33.5%の持ち分を引っ込めるよう
促したとして、英国を非難している
そうだ。
英国の核発電プロジェクトに対する
中国の投資は、今までしばらく政治的
には厄介な難問だった。結局、中国
からの投資は「国家安全保障上の、
容認できないリスク」と 見なされるよう
になった。<同じ英国の> Essex州
Bradwell<廃炉作業中のMagnox原子炉
の原発があります> でも新たな原子炉
建設が提案されているのだが、これが
中国とフランスの合弁プロジェクトで
あるため、進捗しそうにない。その理由
の少なくても一部は、中国が関与する
ことに伴う安全保障上の懸念なのだ。
そうした問題のため英国政府は別の
出資者を探すことになり、結局は
Regulated Asset Base (RAB) <直訳
すれば「規制資産ベース」> という
手段で電気料金を支払う人たちから
徴収するしかなくなった。このRAB
という方法では、原発の設計や建設、
発電開始、稼働のために予測される
コストを予め電気料金に乗せることで
電気料金を支払う人たちの出費を集めて
将来の原発プロジェクトの資金を効果的
に集められる。
Together Against Sizewell C <という
反原発団体> のスポークスパーソンが
X (以前のTwitter) に投稿したものに
よれば、「Hinkley Point C には
やりたい放題な集金手段があって、建設
工事は遅延に遅延を重ねコストは呆れる
ほどの膨張を続けている。この原発が
いつになれば発電を始めるのか、その
ためどれだけの資金が浪費されるのか、
誰にも確かなことは分からなくなって
しまっている」
Hinkley Cの事例は、核発電産業が
「経済的に歯止めが利かなくなって
しまっている」ことの実例だ。そう
語るのは、Beyond Nuclearで原子炉
監視プロジェクトのディレクターを
務めるPaul Gunterだ。EDFのEPR
原子炉をフランスのFlamanvilleで建
設中だが、今も未完成だ。そのEPR
のコストは現時点までで当初予算の
4倍以上に膨れ上がっており、$150
億ドルに達している。フィンランドの
Olkiluoto原発 <フィンランドの南西岸
にある原発で、3基ある原子炉のうち
3号機がEPRです。そのEPRの建設は
2005年に始まりました> でもEPRを
建設したのだが、コストは当初の32億
ドルから120億ドル超にまで膨張、
稼働開始は当初予定から12年も後の
こと <2023年4月> だった。
アメリカに目を転じると、ジョージア
州のVogtle原発でAP1000 原子炉
2基 <上の黒いメニューのはじめの
方にあるページ al-1) を参照。Vogtle
原発に関する記載もあります> を
建設中だが、その総コストは最低でも
350億ドルにのぼっており、当初の推定
より少なくても200億ドル高い。
しかも2基あるうちの2番目の原子炉
は、まだ発電稼働に至っていない。
***********************
ここでご注意いただきたいのですが、
原発建設はこれほどコストが膨大に
なるのに対し、日本での核発電推進
勢力は「発電稼働中のコスト」つまり
燃料費などだけを並べて「原発は発電
コストが安い」などと喧伝しています
よね。
しかし、巨大な建設費用や廃炉コスト、
核ゴミの長期保管コストなどの一部は、
我々が収めている税金で賄われている
ことをお忘れなく。
35年ほど昔のことですが、私が都内
に当時あったクリエイティブ
エージェンシーでChief Creative Officer
を務めていた時、エネルギー庁関連で
原発広報の仕事にも関わっておりまし
た。(今から思うと、後悔!)
その広報職務の一環で、原発建設中
だったある立地町に取材や撮影に
行ったことがありました。通産省
(当時、今の経産省)関係の担当者の方
と一緒に、まず町役場に挨拶に行ったの
ですが、そこでの歓迎ぶりと言ったら
・・・ なにせ、原発のおかげでその町
には巨額の交付金などが国から舞い
降りてくるわけですもんね。
町にあった宿屋さんで夕食になろうと
したとき、町役場からのご来客が
・・・ ビールやウィスキーのボトルを
抱えて、我々「御一行様」の部屋に
お持ちになったのでした。
まあ、私自身はアルコールが苦手なの
で、他の人たちが飲んだのですが。
問題は、「原発のゼニ」は形を変えて
こんな「もてなし」にまで回って
きちゃうって事実ですよね。無論、
このアルコールは「直接的には」その
町の住民税が財源だったのでしょう
けど。
税金の使われ方として ~~ 現時点で
あれば「原発おもてなしのアルコール」
なんかに税金を使うんじゃなくて、
たとえば能登半島地震で避難して
らっしゃる方々のため、優先して
使ってほしいものです!