この記事は、必要ない方々は無視してくださいね

核発電関連問題への初心者の方々、ならびに
20歳前後以下の方々だけを対象に

この記事は、上記の2種類の方々だけを対象にしています。
以前から原発問題を学んでこられた皆様にとっては
「当たり前の」 内容にすぎないので、無視してくださいね

2022年9月はじめ現在、ザポリージャ原発の状態が
世界の憂慮事項になっています。
放射性物質の漏出やメルトダウンなどに至らず、
一刻も早くロシア軍の部隊が撤退してくれることを祈りつつ!

で、このザポリージャ原発の現状について、反原発派を
自称される、ある年配の方からこんな質問がありました:
「原発が停止したってことは、どこかで停電になってるん
でしょ? かわいそうね。
でも、停止したんだから、もう安全なんでしょ??

ああ~~~
前半はその通りですけど、後半が ~~~
あまりにも基本的な学習不足ですね
そういう方に尋ねられてしまったので、「やかんを
のせたら~~」 のフォーカスから外れてしまうのですが、
不本意ながらもやむを得ず、簡単に 「事実はこうだ」 を
説明しておきますね。

説明のための略図 ~ 原発は、停止してもなお危険が残る

* 蒸気を発電用蒸気タービンに送り込み、またそこから水を原子炉へと引き入れるのに、ポンプが必要です。そのポンプは、外部からの (送電グリッドの) 電力で動きます。 このポンプが止まると、原子炉が「空焚き」 ⇒ メルトダウン、の可能性 ** 下に説明するように、使用済み核燃料の崩壊熱を冷ますため、冷却プールの水につけて冷やします。この水も冷却しないと、蒸発して冷却できなくなってしまう可能性が。

* 蒸気を発電用蒸気タービンに送り込み、またそこから水を原子炉へと引き入れるのに、ポンプが必要です。そのポンプは、外部からの (送電グリッドの) 電力で動きます。
このポンプが止まると、原子炉が「空焚き」 ⇒ メルトダウン、の可能性
** 下に説明するように、使用済み核燃料の崩壊熱を冷ますため、冷却プールの水につけて冷やします。この水も冷却しないと、蒸発して冷却できなくなってしまう可能性が。

こんなわけで、発電タービンとの蒸気/水のやり取りと、
使用済み核燃料のプールでの冷却のために、
外部からの電力供給が必要です。
この外部電力供給が途絶えた状態を station blackout と
呼び、大変危険な状態です。
それに備えて原発構内には非常用ディーゼル
発電装置などを原発構内に備えています。

使用済みの核燃料に起こること

放射性元素は、それぞれの半減期に従ったペースで
他の元素に 「変身」 していきますが、このときに
「崩壊熱」 という大量の熱を出します。たとえば、
235 U ⇒ アルファ崩壊 (半減期 約7億380万年)
⇒ 231 Th (トリウム) ⇒ β崩壊 (半減期 約25.52時間)
⇒ 231 Pa (プロトアクティニウム) ⇒ ・・・・・・・・・・・・・・・
というふうに 「自然に」 崩壊 (他元素への変身)をしていく
のですが、この際に膨大な熱を出します。
この 「崩壊熱」 を冷まし続けないと、事故になるわけですね。
ですから、高レベル放射性廃棄物などは、すぐに
「地下を掘って、捨てりゃいい」 というわけにはいかず、
何十年かの冷却が最初に必要です。電気事業連合会も、
それを認めています:
高レベル放射性廃棄物の貯蔵 - 高レベル放射性廃棄物の処理・処分 | 電気事業連合会 (fepc.or.jp)

この 「使用済み核燃料の原発内冷却プールでの冷却停止」
⇒ 「使用済み燃料の崩壊熱によるメルトダウン」 ⇒ 水素爆発など
という問題は、2011年3月に福島第一の大事故で、
現実化しております
そもそもこの4号機は事故発生当日、停止中で発電をしては
いませんでした。当の東京電力も、認めています:
4号機の事故の経過|福島第一原子力発電所事故の経過と教訓 (tepco.co.jp)

ですから、原発内に使用済み核燃料がある限り、原発は
発電稼働していなくても水素爆発など起こす危険性があるわけです。

なお、上記は2011年当時に広く報道されたことなので、
その当時にある程度の年齢に達しておられ、
原発問題の基本を学習されている方々には、このページは
不要ですね。

ただ、その事故当時にまだ幼稚園児だった (2022年9月
現在、15-16歳) というような皆様には、このページが
何かのお役に立つかも。

20-min croquis of strokes / ストロークのクロッキー、20分
そのころ、俺はまだ中学生だった ~~
* 私の20分クロッキー。描いた2018年1月当時、
このモデルの男性は21歳前後でした。

それにしても

こういう基本事項を一通り学べる、入門学習コースが必要ですよ
反核・反原発団体などの皆様、そういうコースを作りませんか??

核発電を廃止していくには、

・ 戦争や異常気象などの影響なども考えに入れた、
エネルギー源の確保
(現在、ウクライナでの戦争が続いておりますし、フランスでは
異常気象で河川の水温が上昇し原発稼働に支障をきたして
います ・・ 上の黒いメニューで付録 w-10) を参照)
・ 放射線の健康への影響 (因果関係を立証するには
専門的知見が必要、因果関係を否定しようとする勢力の存在)
・ 軍事関連のリスク (本ウェブサイトの、本来のフォーカス)
・ ホスト自治体の経済への影響 (本当に、原発誘致で
安定した雇用などが創出できるのか?)

などなどの各種問題系を扱っていくことが必須です。
分業・組織化が必要ですよね。
ところが、基本を学んでいない方々への対応ばかりに
追われてしまうと、正直なところ、こうした各種専門的な
動きの足を引っ張る結果になってしまいかねません。
(上の黒いメニューにある add-4) を参照)

ですから、「基本学習コース」を作成する必要があると
考えるのですね。
2011年3月当時にまだお生まれでなかった方々も
社会にはいらっしゃるわけですから、基本を教えて
いくことに特化していく人材も、必須です。

Posted in Uncategorized | この記事は、必要ない方々は無視してくださいね はコメントを受け付けていません

固定ページ al-1) (革新軽水炉)をアップロード

ある意味で不本意ながら、「革新軽水炉」の
ページ シリーズを始めました。
その最初は、Westinghouse の AP1000。

何が「不本意」なのかも、そこに記しました。
では、上の黒いメニューで al-1) (革新軽水炉) をクリック!

Posted in Uncategorized | 固定ページ al-1) (革新軽水炉)をアップロード はコメントを受け付けていません

「付録の付録」 に変更と追記

上の黒いメニューの末尾にある 「付録の付録」 に、
9月2日の追記と変更を加えました。

「家庭連合」 に限らず、カルト団体の看板を鵜吞みにしないよう、
ともに気を付けましょう!

Posted in Uncategorized | 「付録の付録」 に変更と追記 はコメントを受け付けていません

「革新軽水炉」関連のページ シリーズを作成中

AP1000, ESBWR, EPR, ATMEA, APWR, ABWR といった
「革新軽水炉」 については、「やかんをのせたら~~~」では
今まで触れてきませんでした。
理由は単純で:
・ 「やかんをのせたら~~」 は、核発電の軍事リスクに
焦点を絞ったウェブサイトです
・ 「革新軽水炉」 各種は、いずれも従来のPWRやBWRに
safety by design つまり 「設計段階から、事故対策を考えた」
対策を講じたものです。
つまり、proliferation risksなどを特に考慮したもんじゃ、
初めからないのですね
・ したがって、「やかんをのせたら~~」 で今まで
「革新軽水炉」 を扱わなかったのは、当然の帰結です。
単純な三段論法ですね。

「革新軽水炉」 各種では、軍事面のリスクが最初から問題に
されておらず、メルトダウンなどの事故への対策を考えた
設計になっているわけですね。ならば、本ウェブサイトでは
本来なら、取り上げないのが当然です

Another 20-min croquis / 20分クロッキー、もう1つ
プイ ! 私の仕事じゃない!
私の20分クロッキー

それに、革新軽水炉はPWRやBWRへの改良に過ぎないので、
「やかんをのせたら~~」をここまでお読みくださっている
皆さまであれば、関連文書をご自分でお読みになれば、
「事故危険性」 という面での問題点も、ご自分でご指摘に
なれるでしょう

ですから、右の 「アーカイブ」 で2022年5月をクリック ⇒
5月14日の記事に明記したとおり、革新軽水炉は取り上げない
計画でした。

ところが!

日本語の各種メディアで報道されているように、岸田政権は
新型原子炉の開発や導入を訴え始めています。
その新型原子炉のうち、本サイトで今までに取り上げたような
もの(IFR、TWR、MSRなど)は、多くがまだ開発中です。
すでに実用化されているものは、ほとんどが 「革新軽水炉」 と
呼ばれるものです。
つまり、革新軽水炉は、近年中にも新設される恐れが日本でも
生じてしまった、というわけですね。

なら、反原発団体などから、革新軽水炉の問題点を指摘する声が
上がってしかるべき ・・・

・・・ なのに、聞こえてきませんよね??
ああ~~

やむをえず、本ウェブサイトでも 「革新軽水炉」 各種を短く
紹介することにしました。

ただし:
革新軽水炉はいずれも、「事故危険性」を問題にした設計
でして,proliferationその他の軍事リスクについては、
従来の PWR や BWR と似たようなものです。
ですから、事故危険性に関する問題点を短く指摘するに
とどめます。
事故危険性という問題系なので、詳細を知りたい方は
原子炉工学を専門にしてらっしゃる方々に、ご相談願います。

それと、「軽水炉」 ではないですが、HTGRについても
英の新型原子炉計画に日本が参加へ…ヘリウムガスで熱取り出し、30年代の稼働目標 (msn.com)
にあるように、喧しくなってきました。
いずれ将来、詳しく固定ページで取り上げる必要があるでしょう。

では最初は、Westinghouse 社の AP1000 にしますね。
しばし、お待ちくださいな!

それにしても・・・
日本の既存の反原発団体や個人の皆様、
こうした新型原子炉の最新動向についても、
声を上げてください!
たとえば、アメリカのUnion of Concerned Scientistsなどは、
この問題について すでに2021年3月付のレポートを
公表してらっしゃいます!
ucs-rpt-AR-3.21-web_Mayrev.pdf (ucsusa.org)
にございます

Posted in Uncategorized | 「革新軽水炉」関連のページ シリーズを作成中 はコメントを受け付けていません

ザポリージャ原発で2度の 大爆発との報

英国の中間層向けタブロイド紙、Expressのウェブサイトより

Ukraine nuclear horror: TWO huge explosions reported at Zaporizhzhia power plant | World | News | Express.co.uk

2022年8月30日 07:07 London time (3:07 pm JST)

この日本語を書いているのは 3: 40pm JST頃なので、
飛び込んできたばかりのニュースです。
そのため信憑性は未確認です。

緊迫のザポリージャ原発で2度にわたる大きな爆発が
あったとの情報がある、との報道です。

いつもどおり、私による日本語化。
< > 内は、私からの補足説明。

****************
Ukraine nuclear horror: TWO huge explosions reported
at Zaporizhzhia power plant
(ウクライナの核ホラー: ザポリージャ原発で2度の
大爆発との報)

ロシアによる侵略がウクライナでは続くなか、ヨーロッパ
最大の原発では2度の爆発があったと報じられている。

Rebecca Perring記者


正直、ロシア側の発表は相変わらず嘘っぽい ~~
原発大事故があったら、領土を放射線汚染で
大きく失うのはウクライナでしょ ・・・
私の20分クロッキー

ウクライナの都市エネルホダルにはロシア軍が独自の市当局を
設置しているが、その市当局はザポリージャ原発区域を
ウクライナ軍が再び砲撃したとウクライナを非難した。
ロシアのTASS通信による情報である。

この市当局によれば、同原発の使用済み核燃料保管施設のそばで
砲弾2発が爆発したそうだ。

ヨーロッパ最大の原発 <であるザポリージャ原発> に攻撃を
加えたと、ロシアとウクライナは互いに非難合戦を繰り広げている。
今週、IAEAの使節団が同原発を視察する予定だ。

ウクライナ南部にある同原発周辺での砲撃が放射線災害をもたらし
かねないという不安が、この報道で3さらに高まっている。

つい先日、ウクライナのヴォロディミール ゼレンスキー大統領は、
同国南部にある都市ケルソンにウクライナ軍が攻勢をかけるので、
ロシア軍は撤退するよう求めたばかりだ。同大統領はウクライナ軍が
ケルソンを奪回すると言っていたが、ロシア政府は奪回は失敗したと
主張している。

この月曜日 <29日> の演説でゼレンスキーは、ウクライナ軍は
ロシア軍を 「国境まで」 駆逐すると宣言していた。
********************

ウクライナ軍と交戦するまでもなく、侵略軍は一刻も早く撤退して
ほしいですね!
プーティンに早く正気が戻ることを!

ザポリージャ情勢については、またたびたび紹介していくことに
なりましょう。紹介の必要がなくなる日を、待望しながら。

Posted in Uncategorized | ザポリージャ原発で2度の 大爆発との報 はコメントを受け付けていません

ザポリージャ原発周辺でヨウ素剤配布

ウクライナの当局は、ザポリージャ原発周辺住民への
ヨウ素剤の配布を始めた模様です。
私たち反核派の多くが予想していたとおりだともいえる
のですが、この予想も当たってほしくなかった —
ロシア軍は、こうなる前に原発から撤退してほしかった -
ですよね。

プーティンには、もう正気は戻ってこないのでしょうか??

英国のフリーペーパー METRO のウェブサイトより、
そのヨウ素剤配布に関する記事を。

いつも通り、私の抜粋・日本語化で。
< > 内は、私からの補足説明です。


“Contamination” (汚染)
私の作品

**************
Residents near Zaporizhzhia plant given iodine pills in case of leak | Metro News

Residents living near Zaporizhzhia
nuclear plant given iodine pills in
case of radiation leak
(ザポリージャ原発周辺の住民に、
放射線漏出に備えてヨウ素剤を配布)

Sam Corbishley
2022年8月27日、5:30pm (ロンドン時間、JSTでは28日未明)

ウクライナのザポリージャ原発周辺の住民に対し、ヨウ素剤の
配布が行われた。同原発施設群周辺では今も戦闘が続いており、
放射性物質が漏出した場合に備えてのことだ。

当局は同原発施設で送電線の火災損傷があったとしており、
同原発は一時的に送電グリッドから切り離された。それから
数日後、ヨウ素剤が配布された。

1986年にチョルノービで起きた破局的な原発爆発の影響に
まだ悩まされているウクライナにあって、今回の事態のため
不安が高まっている。

同地域では昨夜も砲撃が続いており、Planet Labsによる衛星
画像を見ると、ヨーロッパ最大のこの原発施設周辺では、
ここ数日続いて火災が燃えているのが見受けられる。

核事故の際に甲状腺が要素の放射性同位体を吸収してしまう
のをブロックするヨウ素剤がザポリージャ市で配布された。
同市は、この原発からは約27マイル <43.2km> 離れている。


火事だ!
“Run for Your Life!”
私の作品

・・・(中略)・・・

<今までの> 断続的な砲撃のため、ザポリージャ原発の
インフラストラクチャーは損傷をこうむっていると、
ウクライナの核発電運営企業エネルゴアトムは土曜日
<27日> に発表している。

「<原子炉内や使用済み核燃料プールで> 水素が発生し
漏出するリスク、放射性物質をまき散らしてしまうリスクが
存在している。しかも、火災の危険性は高い」 とも、
同社は発表している。

食い違う報道が錯綜しており、その中で現時点での最新の
ものを見ると、ウクライナのドニプロペトロウシク地区の
知事Valentyn Reznichenkoによれば、said that Grad missiles
and artillery shells hit the cities of ニコポルとマールハネツィの
両都市に 「グラド」 ミサイル <ロシア軍のBM-21ミサイルの
こと> や砲弾が命中した。いずれの都市も、同原発から
ドニエプル川をはさんで6マイル <10km> 程の位置にある。

これに対してロシア国防省のスポークスマンIgor Konashenkovは、
ウクライナ軍がマールハネツィからザポリージャ原発めがけて
発砲したものだと述べた。

Konashenkov によれば、この24時間でウクライナ軍の17発の
砲弾が同原発施設に命中、そのうち4発が核燃料保管倉庫の
屋上に命中したそうだ。

いずれの主張も、直ちには確認が不可能である。戦闘が続いて
おり、取材記者の動きにも制限が加えられているためだ。

同原発施設に関し、憂慮が全ヨーロッパで高まる

フランスのエマニュエル マクロン大統領は、国連の機関である
IAEAによる現地視察を 「きわめて迅速に」 実施すべきだと述べた。

「民生用核発電を、戦争の道具にしてはならない」 との警告も、
同大統領は発している。

ウクライナのエネルギー大臣の顧問であるLana Zerkal が
ウクライナのメディアに述べたところによれば、そのIAEA調査団の
視察のための必要物の調達が、まだ準備中である。Zerkalは、
この視察をロシアが妨害していると非難している。

ウクライナの主張によれば、ロシア軍は同原発に兵器を補完する
ことでこの原発を一種の盾として利用しており、そこから周囲を
攻撃している。これに対してロシア側は、ウクライナ軍が無謀にも
原発めがけて発砲しているのだと主張している。

・・・ <後略> ・・・


それは、あちらへ・・・
私の20分クロッキー

*********************

ヨウ素剤については、2011年の日本でも一部地域で話題に
なったので、覚えてらっしゃると思います。
ヨウ素剤の効果の詳細などについては、「やかんをのせたら~~」
では取り上げません。
医師や薬剤師にお尋ねくださいな。
「やかんをのせたら~~」は、あくまで各発電の軍事面に
フォーカスしたウェブサイトですので。
それに、薬剤のことは薬剤の専門家に尋ねたほうが、確かです。
(上の黒いメニューにある add-4) も参照)

それと、「」 という箇所、「発電 = 民生用」 と思い込んで
らっしゃる方は、「誤訳じゃないの?」 と誤解されるかも。
現実には、軍事用の核発電も世界中にあります。原子力潜水艦が、
その代表例ですよね。
「民生用だ、平和利用だ」 と喚いたところで、現実には容易に
軍事化されてしまうという真実が、今回の戦争でも明らかになり
ましたよね。

それにしても、ザポリージャ原発関連のニュースは、あまりにも
目まぐるしいですね。
また何か報道があれば、紹介しますね。

Posted in Uncategorized | ザポリージャ原発周辺でヨウ素剤配布 はコメントを受け付けていません

次のJCPOAは別物??

CNBC(アメリカのダウ ジョーンズとNBCが共同設立した
ニュース放送局)のウェブサイトより

ザポリージャ原発関連のニュースがひっきりなしなので、
しばらくJCPOAのことを取り上げられませんでした。
やはり、一人で運営するウェブサイトには、限界がありますね。

でも、JCPOAの重要性を忘れていたわけじゃ、
まったくありません。特に、2022年8月現在の対ロシア経済
制裁とヨーロッパの天然ガス不足という状況にあって、資源
輸出国イランの動向は重要性を増しています

いうまでもなく、
イランへの制裁解除、イランから再び大量に石油や天然ガスを
輸出 ⇒ 世界の石油やガスの価格が下落 ⇒ ロシア経済への打撃
という流れが予想されますよね
やはり、中東は現在の世界を揺るがせる地域なのですね。

そんなわけで、JCPOAの最新の動向について、CNBCの
ウェブサイトから。
いつもどおり、私の抜粋・日本語化で、< > 内は私からの
補足説明です。

JCPOA 2.0 will be different from predecessor: Virginia Tech professor (cnbc.com)

"Argument IV -- Conclusion" (口論 IV ・・ 結論)
合意 ~~??
私の作品 “Argument IV”

***************
イランがロシア・中国に接近する中、JCPOA核合意は
まったく姿を変えるはずだと、教授

最終更新: 2022年8月24日、米国東部夏時間12:18
Lee Ying Shan記者、Natasha Turak記者

・ Joint Comprehensive Plan of Action(JCPOA)と呼ばれる
イランとの核合意の新バージョンは、以前のものとは大きく異なる
ものになるだろうと、ヴァージニア テック大学の経済学教授 Djavad
Salehi-Isfahani は述べている。
・ 「JCPOA ver. 2.0は、ver. 1.0とは大きく異なるものになろう。
1.0の実現にあたった <イラン> 政府は穏健派の政権で、全体として
西側との和解に勤めていた」と、Salehi-Isfahaniは言う。
・ だが一部のアナリストたちによれば、イランは現在ロシアや
中国など東側との結びつきを強めているが、完全に東側を向かせて
しまうのは、良いver. 2.0 (プランB)ではない。

JCPOA)と呼ばれるイランとの核合意の新バージョンは、以前のもの
とは大きく異なるものになるだろうと、ヴァージニア テック大学の
経済学教授 Djavad Salehi-Isfahani は述べている。

「JCPOA ver. 2.0は、ver. 1.0とは大きく異なるものになろう。1.0の
実現にあたった <イラン> 政府は穏健派の政権で、全体として西側との
和解に勤めていた」 と、Salehi-Isfahaniは言う。

2018年に当時のドナルド トランプ大統領の下、アメリカがJCPOAから
脱退した。この合意を再建するための加盟諸国による交渉が幾度も
ウィーンで行われてきたが、その最初の会談は昨年始まった。

オバマ政権時代に成立した2015年の最初の合意では, イランはその
核プログラムの大半を破棄し、国際監視団による査察をさらに受け
入れ、その代償に経済制裁を解除してもらうことになっていた。
この初回のJCPOAには、アメリカとイラン以外の世界主要国、
つまり英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国も加盟していた。

イランの現在の大統領であるエブラヒーム ライシ(Ebrahim Raisi)は、
2015年当時にJCPOA締結に当たったハッサン ルハーニよりも 対西側
強硬派と見られている。

Salehi-Isfahani 教授によれば、2015年の合意は 「イランの西側との
関係を正常化することを狙ったものだった。ルハーニ政権のチームや
政治的基盤は国内の現代的な中産階級で、西側志向が強くイランが
ロシア・中国寄りになることに反対していた」

「だが新たなJCPOAが成立したとすれば、その環境は大幅に異なる。
今やイランは、西側を向かず東を向いているためだ。別種の合意を
必要としているのだ」

Truth Gone II
あちらを見なさい
私の昔の作品 “Truth Gone II”
東を向くイラン

2018年2月、アメリカがJCPOAから脱退する以前に、イランの最高
指導者アヤトーラ アリ ハメネイ師は、「東から西へ」という転換が
イランの優先課題だと述べていた。

「トランプが合意から脱退した後に、ハメネイ最高指導者はイランは
東側にさらに注目する必要があると明言した」 とSalehi-Isfahani は
述べている。

ライシのもとでイランは、ロシアそして中国との結びつきの強化に
努めてきている。

昨年9月にライシは、イラン大統領としては初めてタジキスタンを
公式訪問し、上海協力機構 (SCO) のサミットに出席した。

SCOでのイランの立場はオブザーバーというものであり、
SCOは中国とロシアがこの地域のセキュリティのために
結成した組織である。

「ライ氏が選挙で大統領に選出されて以来、イランはSCOの
メンバーシップを求めている ・・・ ライシはさらにモスクワを
2回訪問しており、プーティンもテヘランを訪れている」 と、
Salehi-Isfahani 教授は語っている。

さらにイランとロシア両国の外務大臣は、ロシアのウクライナ
侵略に伴う国際的なロシア非難を受け、最近テヘランで
話し合いをした。

ライシは大統領に就任した際、中国とイランの25年間に及ぶ
包括的協力プログラムへの取り組みを繰り返し訴えていた。


そんな代案じゃ ・・・
私の100 分デッサン
良いver. 2.0 (プランB)ではない

どのような合意が締結されようと、西側企業はイランと商売を
する気を減じるだろうと、ジュネーヴ セキュリティ 政策センター
(Geneva Center for Security Policy)のエグゼクティブ フェローの
Ali Ahmadは言う。それは、1つにはイランに対する今までの
経済制裁の余波があること、また1つには企業としての責任
(デュー ディリジェンス) である 「取引相手のことをよく
知って」 イラン軍部との関係がないことを確認することが
困難なためである。

「ヨーロッパの企業や投資家は、イラン市場については
“様子を見よう” という態度に出るか、避けようとするかの、
いずれかになると思われる」 とAhmadiは述べている。
「実際にイラン市場に入り込もうとしているのはアジア諸国で
あり、たとえば中国、インド、トルコ、マレーシア、カタール
などだ。特に、中国である」

だが、東側の主要国への接近は顕著ではあるが、東側一辺倒に
なってしまうなら 「良いver. 2.0 (プランB)ではない」 と
Ahmedi は述べている。

「確かに中国はイランの原油を買い、必要物を売り込み、工場も
建設している。だが中国企業はアメリカからの経済9制裁に
ついては、リスクをかぶる覚悟がない。制裁リスクが軽減しない
限り、大掛かりにイラン経済にかかわろうとはしないのだ」

Ahmediによれば、ライシ政権はアジア諸国の経済とのつながり
強化を望んでいるが、同じような問題は多くのアジア諸国にも
該当する。

Ahmediはさらに、「イランのロシアとの通商は、実は極めて
小規模なものだ。今後大幅に増大する見込みではあるが、
JCPOA合意を締結できなかった場合の穴埋めとなるほどの
規模にはならない」
20-minutes with kindergarten crayon / 幼稚園用のクレヨンと20分
どうなることやら~~
私の20分クロッキー

障害

2015年に本来は締結されたJCPOA合意の新しいバージョンの
合意に到達できるはずだという希望については、イランは
ここ数年になく楽観的だ。だが、重要な障害がいくつかある。

EUは新合意の 「最終文面」 を提出したが、イランの交渉官たちは
いくつか問題点を指摘しており、それらの問題には調停が
不可能である危険性もある。一例としてイランは新合意が拘束力を
有することを望んでいる。これは、将来もアメリカ政権が
新合意に <トランプ政権のように> 違反しないようにするためだ。

Kpler社の上級商品アナリストReid I’Ansonも、この合意の再建に
ついては懐疑的だ。それは、国内に妨害要因があるためだという。
彼は先週CNBCの 「Capital Connection」 で、この合意の再建は
ありそうにないと述べている。アメリカ国内では人気のない合意で
あり、イランの内部では 「歓迎されていない」 ためだそうだ。
****************

今後も、何か新たな進展があれば、JCPOA交渉のことを取り上げて
まいりますね。

Posted in Uncategorized | 次のJCPOAは別物?? はコメントを受け付けていません

ザポリージャ原発、スタッフが脱出

世界の心配の種、ザポリージャ原発がグリッドから切断され、
ウクライナ南部では停電があった件の報道です。
「近隣の火事」 が原因だったというのは日本語メディアでも
流れていますが、その 「火事」 が戦闘に由来するものだろう
というのは、だれでも推察できますよね。
原発の基礎知識がある方々なら、「グリッドから切断」 ⇒
「ステーション ブラックアウト」 ⇒ 「メルトダウン」 という
パターンを警戒しますよね。皆様も、かなりドギマギされた
ことと存じます。
何とか接続を回復したまでは、日本語メディアでも報道されて
いますが、さらに最新動向が気になりますよね。

そこで、2022年8月26日付のCNNによる報道を。
いつも通り、私の抜粋・日本語化で紹介します。
< > 内は、私からの補足説明です。
* なお、状況が刻々と変化していますので、以下の記事の
報道内容も、明日には outdated になっている可能性はあります。
その流動性は、あらかじめご承知おき願いますね。

Staff exodus risks safety at Ukraine’s Zaporizhzhia nuclear plant – CNN

Hanging by a ‘thread,’ staff exodus risks safety at Ukraine nuclear plant
(ウクライナの原発でスタッフが脱出、大事故をかろうじて防げているだけ)

CNNのRebecca Wright, Olga Konovalova and Oleksandra Ochman
2022年8月26日 GMT

"Control"
爆発、占拠 ・・・
“Control”, 私のかなり昔の作品

*****************
ウクライナのザポリージャ発 (CNN)  ウクライナ南東部にある
ザポリージャ原発からロシア軍部隊が近隣の町村への砲撃を開始した
とき、同原発に勤務していたエレナは脱出することを決めた。

3月に同原発にロシア軍部隊が押し入って占拠したのだが、それ以降も
同原発で勤務を続けることにしていた。ヨーロッパで最大の同原発の
稼働を続けるため、ウクライナの原発スタッフ数百名が実質的な
人質にされたのだが、その一人となったのだ。

だが同原発周辺では絶えず爆発が発生、自分の息子の生命の安否も
心配になったエレナはリスクを冒して脱出することにした。
「怖かったです。いつも爆発ばかり起きていますから」と、
エレナはCNNに語っている。
エレナ氏の身の安全のため、エレナというファースト ネーム
だけを使用する。

ウクライナ側はロシア軍部隊がこの原発を盾として利用、深刻な
損傷や災害発生の危険性を招いているとして非難してきた。
一方ロシア側は、同原発めがけて砲撃を加えているのは
ウクライナ軍だと繰り返し主張している。

ウクライナのヴォロディミール ゼレンスキー大統領が水曜日
<24日> に国連安全保障理事会での演説で述べたところに
よると、ロシアがこの原発を 「戦闘地域」 に変えてしまった
ため、「世界は放射線による破局の一歩前に立たされて」
おり、同原発の非武装化を進めるべきだという。

「右側を見ると、貯蔵庫の背後のどこかをロシア軍が砲撃して
いる。同時に多数の爆発が発生しており、大型車両の火災の
ようだ」 と、エレナは言う。

同原発周辺でのロシア軍によるこうした行為がもたらしかね
ない事態のため、原発従業員たちの不安が募り、脱出が加速
している。

「ここ2週間ほど、スタッフが大挙して逃げ出している」
そう語るのは、今もなおザポリージャ原発で勤務を続けている
スタッフの一人、ダリアだ。ダリア氏の身の安全のため、
ダリアというファースト ネームだけを使用する。「みんな雪崩
のように、集まって脱出している」

エレナによれば、同原発の従業員たちはそこを占拠している
ロシア軍部隊を怖がっており、機関銃を抱えて歩き回っていると
いう。さらに夜ともなれば、「酒に酔って空めがけて発砲している」

「私たちが脱出する前に、ある男性が殺害された。だから、
私たちは逃げ出したのだ」 と、エレナは言う。ウクライナ議会の
人権コミッショナーDmytro Lubinetsが水曜日に述べたところでは、
この3月から今までに、原発のウクライナ作業員3名がロシア軍に
よる殴打や爆撃で殺害されている。さらに少なくても26人が情報
漏洩のかどで拘留されている。

"Facing Off"
一触即発
“Facing Off”, 私の作品

「極めて危険な」 状態

同原発に残っている人々にとって、状況は 「日々悪化している」 と、
ウクライナ国営の核発電運営企業エネルゴアトム社のPetro Kotin
社長は言う。

「極めて困難な状況だ。こんな状況の原発に残って作業を続けている
人たちは、本当に英雄だ」 と、Kotinは語る。

Kotinによれば、ロシア軍は2か所のタービン ホールに20台のトラックを
格納していた。 これは最近漏出したヴィデオで明らかになった
ことで、CNNもこれを確認している。

「そうしたトラックの積み荷は爆発性の物質だと思われる。大変
危険だ」 と、Kotinは述べている。

さらに同社長によると、消防隊用の入り口がブロックされている
ため、火災が発生した場合には隣接する原子炉にまで延焼する
危険もある。

Kotinによれば、ロシア軍はザポリージャ原発での発電電力を、
ウクライナの電力グリッドからロシアの電力ネットワークへと
切り替えようとするだろう。このプロセスにおいて、いったん
原発を 「完全停止」 させることになる。その間には、ディーゼル
発電装置を用いて原子炉を冷却する。これは、大変な危険を伴う
と、Kotinは言う。

ウクライナの各発電企業であるエネルゴアトムによれば、木曜日、
ザポリージャ原発はその歴史の中で初めて、ウクライナの電力
グリッドから完全に切断された。同社によれば近隣の灰坑で火災が
発生、同原発と電力グリッドとを接続していた唯一残っていた
電力線の接続が2回にわたり切断した。さらに同社は、「侵略者の
行為」 が原因であるとした。

ロシアが任命した同原発地域の知事は後に、同地域への電力供給を
再開させるための作業が進行中であると述べた。この知事は、この
停電騒ぎはウクライナ側の行為によるものだと非難した。

IAEAが木曜日遅くに発表したところでは、ザポリージャの6基ある
原子炉すべてがウクライナの電力グリッドからは切断された状態に
あった。


暴力による沈黙の強制
“Silenced”, 私の作品

「無力な怒り」

同原発での作業にはさらに重大な危険が伴うようになっており、
もはや最低限しか残っていないスタッフには心理的プレッシャーが
一層重くのしかかっている。同原発に勤務するダリアによれば、
彼女の部署では今や、スタッフは元の10-15%しか残っておらず、
彼らは毎日 「無力な怒り」 とでも呼ぶべき状態にある。

「もうすでに、<ザポリージャ原発にいるのは> 大変つらいです。
でも、いつ・どうやれば出ていけるのか、わからないのですよ」 と、
ダリアは語る。

彼女によれば、同原発の技術スタッフはこの状態の中で無事故で
この原発を稼働させるという 「不可能なミッション」 を成し遂げて
いるのだが、「何もかもがどれだけ大変か、どれだけ大変な事態に
なりかけているのか、世界の人たちは理解していない」。


ダリアによれば、「人間の心理的状態から事故が発生する場合がある。
ザポリージャのような発電所の場合、本当に問題なのは機器ではない。
本当に問題なのは、人間なのだ。人間がどういう決定を下すか、
信号や違反行為、損傷に対してどんな反応をするのか」。

IAEA では目下ロシアと交渉を進めており、同原発の緊急検査をして
稼働状態の安全性を調べようとしている。だがダリアの見方では、
この査察が実現しても、「何も変わらないだろう」とのことだ。

「私の唯一の希望は、ウクライナ軍 <が来てザポリージャを解放
してくれること> だ」 とダリアは言うが、同時にウクライナ軍が
やってくるとロシア軍が何をするか、恐れてもいる。「ロシア軍は
“殺すぞ” と言うことに慣れており、そのための命令もすでに
受けている。だから、みんな脱出していったのだ」。
*********************


見たくない ・・・
私のかなり昔の作品

実際にザポリージャ原発内で勤務してらっしゃる方々による報告との
ことですが、ほんと、怖いですね。
1日も早く、プーティンが正気を取り戻すことを祈っています!

それと、IFRやMSR、SMRといった次世代原子炉を開発・導入した
ところで、「原発」 である限りそこには大量の放射性物質があります。
それを敵国軍隊が占拠し、基地化した場合、防衛軍はうかつに手を
出せませんよね。上記記事と似たような惨事に陥る可能性は
明らかに存在します。
特にSMR (上の黒いメニューの s-1) から s-3) 参照) の場合、
小型の原子炉が多数できるので、そのうち1つでも敵軍に占拠され
たら ・・・
多数ある小型原子炉のすべてを守れというんじゃ、防衛軍も大変です。

 

Posted in Uncategorized | ザポリージャ原発、スタッフが脱出 はコメントを受け付けていません

反感を買うのは覚悟のうえで ・・・

・・・ ハッキリ言っちゃいます。

本「やかんをのせたら~~」では、かなりのページを 「今後商用化
されるかもしれない、新型原子炉」 の紹介に費やしてきました。
SMR、IFRとフォロワー、MSR、TWRなどなど。
当然、技術的な話も含むので、「難しい、わからない、
こんな文章たくさん読むの嫌!」 という反応も一部にあるのは
最初から承知の上です。

それでも新型原子炉の紹介をこれだけしてきたのは、
「日本政府も、いずれ新型原子炉の開発や導入を検討するだろう」
と予想していたからですね。
正直、2011年当時から予想しておりました。

で、いかんせん、私の予想が的中してしまいましたよね。
(自慢じゃないです。当たってほしくなかった!)
日本語で広く報道されているとおりで、たとえば
次世代原発の建設検討、従来方針を転換-GX実行会議で政府提案 – Bloomberg
をご覧ください。


先を見てみると ・・・
私の100分デッサン

問題は、2011年から今まで日本では、既存の反原発団体などから
新型原子炉各種の問題指摘をほとんど聞いたことがない、という
嘆くべき事実です。
正直、日本語で詳細に指摘しているのは、私だけのようです。
いや、私もやってきたよ! とおっしゃる方がいらっしゃれば、
ぜひ下記のEメール アドレスでご連絡ください!
協力して、何か新しい反核活動を始めましょう!

反核 (兵器も発電も) 運動を本気でやりたければ、
上の黒いメニューにある add-4) の ”ぐちゃぐちゃの図” で示した
ように、かなり多分野の協力・組織化が必要です。

それをやっていきたい方、「この11年間の敗北」 を反省して
らっしゃる方、ご連絡くださいな!
一緒に何ができるか、話し合いましょう!

yadokari_ermite[at]yahoo.co.jp
で、私 (ひで) まで

Posted in Uncategorized | 反感を買うのは覚悟のうえで ・・・ はコメントを受け付けていません

UPIの記事で、原発の「軍事的リスク」のまとめ

(2022年8月24日)

Shelling of Ukraine nuclear power
plant exposes multiple risks
(ウクライナの原発での砲撃から、
多数のリスクが)

ロンドンのキングズ カレッジで研究ならびに知識拡散担当
マネジャーを務めてらっしゃるRoss Peelさんが、2022年8月22日
現在でのザポリージャ原発が抱えるリスクを まとめて
くださっています。
特に目新しい内容はないのですが、現時点での主なリスクを
要約的に把握するには、良いテキストです
ですので、いつも通り私が抜粋・日本語化して紹介しますね。
例によって、< > の中は私からの補足説明です。

Shelling of Ukraine nuclear power plant exposes multiple risks – UPI.com
2022年8月22日
Ross Peel, King’s College London

Felt-tip marker on paper / 紙にマーカー
ああやだ、もう考えたくもない~~
私の点描練習

********************
Aug. 22 (UPI) – ロシア軍が占拠しているザポリージャ原発では
このところ、砲撃が激化しており、安全性に関する憂慮が
世界的に高まっている。この巨大原発の稼働はウクライナ人
スタッフが続けており、厳格な管理をストレスの激しい条件下で
実施している。

攻撃と損害発生が続く中、ロシアとウクライナ両国はお互いへの
非難合戦を続けている。今回の紛争では情報操作とフェイク
ニュースが大きな役割を演じており、正確な状況は明らかに
なっていない。

・・・(中略)・・・

同原発の原子炉は強度の高い建屋の中に納まっている。
こうした建屋は内部での爆発があっても耐えられるように設計
されており、外部からの力にもある程度抵抗できる。だが、
確かに最近の原発は航空機の衝突にも耐えられるようには設計されて
いるものの、意図的な砲撃にも耐えられるか否かについては、
意見が分かれる。何メートルものコンクリートの壁の中には
鉄骨などが入っているのだが、適した武器を選んで集中的に
砲撃を加えれば、建屋の壁を貫通することは可能であろう。
それ以上に懸念すべきかもしれないものとして、建屋外にある
使用済み核燃料の冷却プールだ。そこには強度の放射能を有する
使用済み核燃料が水の中に保管されている。いずれかの冷却
プールに攻撃が加えられれば、放射性物質が大気中に大量に
漏れ出す恐れがある。空からの攻撃に対しては、プールは防御が
比較的弱いためだ。

<冷却水の> ポンプやパイプ類など安全に欠かせない装置は、
原発の稼働を停止させた後でも、なお重要だ。ザポリージャ原発
には全部で6基の原子炉があるが、そのうち3基は停止している。
だが原子炉内にある核燃料も、使用済み核燃料も、稼働停止の後、
もしくは原子炉から取り出した後、数年間大変な高温を保つ。
ザポリージャのような原発の場合、<使用済みの> 核燃料も絶えず
冷却していないと過熱し、爆発性のガスが発生したり、溶融、
発火などの問題を起こす場合がある。そうなると、放射性物質の
漏出も発生しうる。

ザポリージャにある核燃料の場合、余分な熱を除去するため
冷却水を常時流していることが不可欠だ。パイプやプール、
原子炉などへの損傷のためにこの冷却水を喪失、あるいはポンプが
稼働しなくなった場合には、早急に対処せねばならない。
対応が遅いと、危険な結果を招く危険がある。
・・・(中略)・・・

Buttocks too small?? Legs too short?? / お尻が小さすぎ?? 客が短すぎ??
眠らせてもくれない ・・・
私の20分クロッキー
ロシアの戦略

ロシアのヴラディミール プーティン大統領がザポリージャ原発を
管理下に置きたがっているのには、理由がいくつか考えられる。
1つには、同原発からウクライナへの送電をカットしたいのかも
しれないが、今回の侵略開始の時点で同原発はすでに低電力モード
での稼働になっていたので、この影響は限られたものと見られる。
他の意図として、ロシアはこの原発を政治的交渉での条件として
利用、占拠した地域を入手してしまうことの正当化に用いるのかも
しれない。また各種の情報源を見ると、ロシア軍はこの原発に
部隊を配備、兵器類も配置したようだ。これによってこの原発は
一種のロシア軍基地となり、ここから軍事ミッションを開始できる。
しかもウクライナ軍は、この基地に対しては反撃を加えにくい。

ジュネーヴ条約の1977年改訂では、核施設周辺での軍事戦闘を
禁じている。それでも、ロシア軍によるザポリージャ原発占拠に
対処しようとする国際社会の努力は、ほとんどが功を制していない。
IAEAはたびたび、同原発の現状を調査し放射性物質がしかるべき
位置に保管されているか否かを確認する調査団の派遣を求めて
きたが、まだ現地入りを果たしてはいない。

国連は最近、同原発の非武装化を求めたが、ロシアの言い分に
よれば非武装化すれば核施設テロリズムの脅威が発生し、同原発の
リスクがさらに増大してしまうという。セキュリティ確保のため、
同原発を中立的なサード パーティー機関の管理下に置くことが、
適切なソリューションかもしれない。だが、たとえサード パーティー
機関が原発を管理下に置いていても、姿を隠した武装集団が原発に
攻撃を仕掛ける危険性は残る。ロシアは、ザポリージャ原発への攻撃は
ウクライナのテロリスト集団によるものだと主張しており、その
<でっち上げ> 根拠として、テロ攻撃が行われる危険性はあるのだ。

なんにせよ、原発周辺での戦闘行為はやめて もらわねばならない。
さらに、国際機関による検証チームの現場調査を可能にせねばならない。
原発周辺での軍事行動は、できるだけ早急にやめる必要がある。
人命や環境、インフラストラクチャーを守るためだ。
***************

Just a 20-min croquis, "Very low on the floor" / 単なる20分クロッキー、「床に近い低い視点から」
ああ、もう~~
私の20分クロッキー

「やかんをのせたら~~」では、今まで、核発電の軍事的リスクとして
次の4種類を指摘してきました。

1) Proliferation risks ― 核兵器拡散リスク。原子炉がもともと原爆用
Pu製造装置であった以上、核の歴史の初めから今もずっとあるリスク。
本ウェブサイトでも、一番詳細に取り上げてきた。ただ、
なぜか日本で原発問題や新型原子炉開発などが論じられるときには、
素通りされてしまう (推進派と反対派の両方から!) ことが多い。
だが現実には、上の黒いメニューにある付録 w-4) の後半で紹介した、
アル ゴア元副大統領のインタビューをお忘れなく。

2) 巨大ダーティ ボム化リスク ― 原発そのものが、軍事攻撃や
テロリスト占拠などによってメルトダウンを起こす、使用済み
核燃料冷却プールの冷却停止 ⇒ 放射性物質の大量漏出
(上の黒いメニューで、g-5), g-6), u-1), u-2), u-3) など参照)

3) 言いがかりリスク ― 「XX国が、自国の原発や関連施設の地下で、
ひそかに核兵器開発をやっている」 ⇒ その施設を攻撃 という
パターンを実行してしまうリスク。本サイトのページ c-1), c-2) のほか、
2003年3月に始まったアメリカの対イラク戦争も現実の例。
現在のロシアによるウクライナ侵略でも、侵略当初にロシアが
この種の言いがかりをつけていた。

4) 敵軍の基地化リスク ― 上の記事にあるように、敵軍が原発や
核施設を基地にしてしまうリスク。やられると、被害国は反撃が
しにくい。

これらのうち、2) 以外はいずれも、いかんせん現実化してきた
リスクです。2) だって、テロ団体やテロ国家による原発破壊が
いつ現実のものになるか、分かったもんじゃありません。
現実、目下世界がザポリージャ原発に関してもっとも恐れている
のは、このリスクですよね。
(それにしても、現時点でのロシア連邦共和国は、テロ国家と
呼ぶべきでしょうか、テロ団体と呼ぶべきでしょうか??)

結局、現実をしっかりと見つめるなら、
・ 核兵器の拡散を防ぐためにも、
・ 自国を守るためにも、
・ 周辺諸国への放射性物質汚染を防ぐためにも、
核発電は核兵器とともに廃絶するのがもっとも賢明ですよね。

「日本の場合、真冬や真夏の電力需要が・・・」 というのであれば、
11年前、2011年春から 「国内にあるエネルギー源」 の開拓をもっと
進めるべきでした。輸入資源はしょせん、戦争や軍事動向、市況などの
影響を大きくこうむります。日本の場合、私見ではクリーン コール
技術の開発にもっと力を入れておけば ・・・ と思うのですが。

Posted in Uncategorized | UPIの記事で、原発の「軍事的リスク」のまとめ はコメントを受け付けていません