原発のライフサイクルでのCO2排出量:
核発電業界も、正確に把握できては
いない
「やかんをのせたら~~」のフォーカス
からは外れるのですが ・・・
「原発はCO2を出さない」という風評
ならびにプロパガンダが、今のところ
「常識化」してしまってますよね。
確かに、発電の熱源が核分裂であり
酸化(燃焼)ではないので、発電中の
原子炉や蒸気タービンからはCO2は
ほぼ出ません。で、そればかりが
喧伝されてます。
しかし。
核発電のライフサイクルをザっと考えて
みましょう:
フロント エンド(核燃料製造)
U採掘 → U精錬 → UF6に転換
→ U濃縮 → 還元 → 核燃料に加工
原発の建設と稼働
(使用済み核燃料の冷却も並行して
行うのですが、これは下のバック
エンドに入れます)
バック エンド
(再処理を行わない場合)
使用済み核燃料の冷却
その解体
地層処分(地下深くに埋める)など
* 無論、地層処分の場所は今のところ
日本では見つかっておりません。
上記のように多様な各種プロセスがある
ので、どこから・どれだけのカーボン排出
があるのかは、結構複雑な問題です。
すでに 付録 w-3) (上の黒いメニューの
終わりの方にあります)などで紹介した
ように、
核発電のライフサイクルでのCO2排出の
推定に関しては、推定手法や対象となる
原子炉のタイプなどによって、かなりの
変動が出ています。
この推定手法などの問題点にフォーカス
した論文を見つけました。
中国の研究者たちによる
Critical review of nuclear power plant
carbon emissions
(原発のカーボン排出に関する批判的
レビュー)
という論文で、2023年9月のものです。
Frontiers | Critical review of nuclear power plant carbon emissions
からダウンロードできます。
この論文の共著者たちのうち5名は、
China Nuclear Power Engineering Co.,
Ltd. に雇用されているとのことですから
核発電業界による研究であることは確か
です。
しかし。核発電業界の文書であるにも
かかわらず、冒頭部分にはっきりと
以下の記載があります:
Nuclear power plays a crucial role in
achieving the target of carbon neutrality to
build a sustainable society. However, it is
not “carbon-free” when considering its
entire life cycle. Therefore, accurate
accounting and monitoring of its generated
carbon emissions are required
(サステナブルな社会を創造するための
カーボン ゼロ目標。それを達成するため
には、核発電は不可欠な役割を演じる。
だが、その核発電も、ライフサイクル
全体を考えると「カーボン ゼロ」
ではない。そのため、核発電が排出する
カーボン量を正確に推定しモニターする
ことが必須だ)
その少し下では、
The carbon emissions resulting from NPP
construction and operation are under-
estimated due to the limited data and
methods, which creates uncertainty ——
(原発の建設と稼働から生じるカーボン
排出は、データや推定手法の制約のため、
過小評価されている。そのため、
不確実性が ・・・・)
要するに、不確かなのね~
私の20分クロッキー
さらに 3.1.2 Enrichment という段落では
従来の推定手法の結果として、U濃縮に
よるカーボン排出がライフサイクル排出に
占める割合が大きいと認めています。
—- the carbon emissions resulting from
enrichment are prominent throughout the
whole nuclear fuel cycle, accounting for
61.9% and 55.8% of the total emissions
of the nuclear fuel cycle in the OTC and
TTC strategies,
(・・・ 濃縮から発生するカーボン排出
は、核発電のライフサイクル全体の中でも
特に目立つ。その比率は、OTCの場合で
61.9%、TTCの場合で55.8%となる)
OTCとはOnce-Through Cycleつまり
核燃料を再処理しないで、使用したら
埋めるというサイクルです。
TTCとはTwice-Through Cycleで、使用
済み核燃料を再処理してもう一度使用する
ものです。
なお、
U濃縮での消費電力の膨大さ → それを
たとえば石炭火力からの電力で補って
いたら、かなりのCO2が ・・・ と
いう問題については、上の黒いメニュー
(項目は基本的にアルファベット順)に
あるページ d-13) などで、
「U濃縮って、なあに?」といった
基礎的説明は、ページ f-12) などで
取り上げております。
雨が降れば、流れちゃいそうなプロパガンダ
私の20分クロッキー
さらに
3.2 Carbon emissions resulting from the
NPP construction and operation
という段落では、原発建設と稼働に伴う
カーボン排出の推定がかなり未確定である
ことを認めています:
Sovacool et al. (2008) demonstrated that,
compared to front-end emissions, the
emissions originating from the construction
phase are lower, accounting for approxi-
mately 12% of the total emissions of the
nuclear fuel cycle. However, Poinssot et al.
(2014) published contradictory findings,
revealing that the contribution of the
emissions resulting from construction is
approximately the same as that of the
front-end emissions.
(Savacool et al. (2008) が示したところ
によれば、フロント エンドからの
カーボン排出と比べれば、原発の建設から
の排出は少なく核発電のライフサイクル
からの総排出量の約12%とされる。だが
Poinssot et al. (2014) の研究はそれとは
異なる結果を示しており、原発建設から
の排出はフロント エンドからの排出と
大まかに同等だ)
根拠はどこに~~
私の20分クロッキー、男性のモデルさん
まあ、こんな現状ですから、
・ 核発電業界は、「原発はCO2」を
出さない
とのプロパガンダをどこまで続けるつもり
なのでしょうねえ??
根拠をしっかりと示してもらいたい
ですよね。
・ そのプロパガンダの問題点を私たち
反核勢力がもっと指摘すべきですが、
あまり聞こえてこないのはなんで??
反原発団体などは、もっと情報発信に
努めませんと。