Should South Korea Pursue
Nuclear Weapons? A Deliberate
and Cautious Approach
(韓国は核兵器を保有すべきか?
意図を明確にした、慎重な
アプローチを)
北朝鮮が核兵器を増大・先鋭化させる中
韓国内では「韓国も、核抑止のため独自
の核兵器を!」という声が高まっている
ことは、「やかんをのせたら~~」では
幾度も紹介してきました。
今回、韓国系と見られる専門家の考察で
分かりやすいものをReal Clear Defense
というウェブサイトに見つけましたので
私の日本語化・要約で紹介しますね。
特に、日本語圏ではたった今話題に
なっている「核抑止」の現実上の問題に
ついて専門家が簡潔にまとめてくれて
います。その視点で、要約して
おります。
Jihoon Yuさんの考察
2025年2月5日
Real Clear Defense
Should South Korea Pursue Nuclear Weapons? | RealClearDefense
* Jihoon Yuさんは、
韓国国防分析研究所(Korea Institute for
Defense Analyses)の研究フェローで
国外協力担当ディレクターで、韓米同盟
や韓欧の安全保障協力、北朝鮮との
関係、国防、海洋安全保障、海洋戦略
などがご専門だそうです。韓国軍の小型
空母プロジェクトや潜水艦プロジェクト
にも関与された、とのことです。
では、かなり短く要約紹介していきます。
< > 内は、私からの補足説明です。
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韓国独自の核兵器開発・保有を進める
にせよ、反対するにせよ、韓国の国防、
周辺地域の安全保障、国際関係のダイ
ナミクスなどが複雑に絡み合う
ややこしい問題だ。
安全保障上の憂慮事項と、核抑止の
主張根拠
北朝鮮が核武装を強化する中、韓国が
独自の核武装を持てば抑止力が高まり、
アメリカへの依存を軽減でき、韓国の
国防方針をより自律的にできる、
との主張もある。
北朝鮮以外の地域も視野に入れると、
インド洋・太平洋での中国の存在感が
拡大する中、核武装した韓国があれば
各地の各種勢力による攻撃の危険性に
対する対抗勢力となれる、と説く者も。
だが、核兵器の開発そのものが単純な
課題ではなく、しかも核を保有しても
その効果を確保するには重大な問題も
ある。核抑止を確かなものとするには
単に核弾頭さえあればよいわけでは
なく、それを運ぶ手段 <ミサイル
など>、確かな指揮系統、明確な戦略
ドクトリンなども必要となり、これら
はいずれもかなりの時間もリソースも
要する。
アメリカとの同盟の役割と抑止力の拡大
韓国は長年、アメリカの安全保障つまり
核の傘の下で守られてきた。そのアメ
リカの対外方針の変化を受け、韓国独自
の核武装を求める声が高まるのも
当然だろう。
だが韓国が核武装するなら、アメリカ
との同盟関係は緊張感を高め、衰えて
しまう危険性すらある。アメリカはどの
ような場合でも、その同盟国が核兵器を
拡散させることには反対してきた。韓国
が独自の核武装を行えば、米韓間の
緊張が高まり、安全保障での協力の
縮小さえ招きかねない。
経済や外交面での影響
安全保障という問題以外にも、核保有
が経済や外交に及ぼす影響も考慮しない
といけない。韓国はNPT加盟国であり
NPT下での義務に違反すれば <つまり
独自の核武装をすれば>、国際的な
反発を買う。通称制限や経済制裁、
外交上の孤立などを招きかねない。
そもそも現在の韓国の経済的繁栄は、
国際通商や投資と密接に結びついて
いる。その韓国が核武装を目指す
なら、重要な経済パートナーである
アメリカやEU、中国などとの関係
が悪化しかねない。その損害は、
核武装がもたらす利益を凌ぐものと
なりかねない。
地域での軍拡競争と不安定とを
招く恐れ
韓国が核武装プログラムを進める
なら、この地域での軍拡競争を招き
かねない。たとえば日本が対抗して
軍備強化を進める恐れがある。そう
した動きが始まるなら、東アジアの
緊張が高まり、誤った判断や意図
せざる紛争が起きる危険が増大
しよう。さらに、中国とロシアは核武装
した韓国を新たな脅威とみなし、
対抗して軍備増強を始める恐れもある。
さらに<韓国が核武装した場合>、
北朝鮮との緊張が一層高まるリスクも
ある。核兵器というと核抑止の手段と
捉えられやすいのだが、北朝鮮が従来
以上に強硬な反応に出る危険性もある。
何らかのご判断などがあれば、核武装
のために紛争を回避できるのではなく、
むしろ紛争を招いてしまう可能性も
あるのだ。
核武装に代わる方策の探求
核武装には深刻なリスクも不確実性も
伴うことを鑑み、韓国は安全保障の
ための核武装に代わる手段を慎重に
探さねばならない。韓国軍は既に
世界でも有数の強力な軍隊である
ので、通常兵力をさらに強化すること
も有効な選択肢である。ミサイル防衛
システムやサイバー攻撃への防御、
精密攻撃兵器などへの投資を続ける
のも効果的な抑止策だ。
アメリカとの協力を深めることも、
抑止力の教会につながる。アメリカ
だけでなく日本も含めた3か国の
同盟関係の強化も抑止力の向上に
役立とう。
外交も引き続き重要である。確かに
北朝鮮との交渉は大変だが、交渉
チャネルを開いておきこの地域での
信頼関係を構築することは、安全
保障との関連でも安定した環境の
形成につながる。
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2025年8月6日の広島、平和祈念式
での湯崎広島知事のご挨拶が秀逸で
あったと、
現在日本では話題になっています。
上で紹介した考察と照らし合わせても、
次の「核抑止」に対する見解は、
確かに秀逸だと私も考えます!
その挨拶からの引用、
「抑止とはフィクション」広島が世界に問う“核抑止力”原爆投下から80年(テレビ朝日系(ANN)) – Yahoo!ニュース:
「このような世の中だからこそ、核抑止が
益々重要だと声高に叫ぶ人達がいます。
しかし本当にそうなのでしょうか。確かに、
戦争をできるだけ防ぐために抑止の概念
は必要かもしれません。一方で、歴史が
証明するように、ペロポネソス戦争以来
古代ギリシャの昔から、力の均衡による
抑止は繰り返し破られてきました。なぜ
なら、抑止とは、あくまで頭の中で構成
された概念又は心理、つまりフィクション
であり、万有引力の法則のような普遍の
物理的真理ではないからです」
同感です!