日本語メディアでも既に報道されているように、ベラルーシが憲法を改正?改悪?し、
ロシアの核兵器をホスティングできる体制になったようです。
やはり、世界は新冷戦体制に既に陥っており、そこでは核兵器が戦略的重要性を
増大させている、と見るべきでしょう。
今回の憲法改正?改悪?の背景の一部として、ベラルーシはロシアの支援のもと、
同国初の原発を建設しました。リトアニアとの国境近くにあるオストロヴェツ(Ostrovets) という場所で、建てたのはロシアのRosatom社です。2020年11月、
2基の原子炉がグリッドに接続されました。(Nuclear Power in Belarus – World Nuclear Association (world-nuclear.org)
現職のルカシェンコ大統領の権力基盤にロシアがあることなどと考え合わせると、
この辺からすでに、「何か匂い」ませんか??
“Undercover Treaty” (密約)
私のかなり昔の作品より
大方の軍事評論家たちの戦前の予想を超え、「核兵器が(実際にか、単なる
脅しとしてかは別にして) 利用される」事態に突入してしまっている
わけですね。
まず、過去のいきさつ
今回のベラルーシでの改正?改悪?の背景事情は、Federation of American ScientistsのウェブサイトにあるBelarus Special Weapons というページをお読みくだされば、ざっとお分かりになると思います。
Belarus Special Weapons (fas.org)
です。
(私による抜粋・日本語化。< >内は、私からの補足説明)
<1991年から翌年にかけて> 旧ソヴィエト連邦が解体したとき、ベラルーシは
(ロシア、ウクライナ、カザフスタンとともに) 核兵器保有国となった。<旧
ソヴィエト軍の>SS-25 大陸間弾道ミサイル(ICBM) 81基が<新たにできた>
ベラルーシの領土内に残っていたためだ。ベラルーシ共和国の国家主権宣言を
見ると、同国は非核保有国であるとの宣言がある。1992年5月、ベラルーシは
核非拡散条約 (NPT)のリスボン議定書に署名、ウクライナならびにカザフスタンと
ともに、自国領土内にあるすべての戦略核兵器弾頭を破壊するか、ロシアに返還する
ことに合意した。
その実行のため、<当時のソヴィエト連邦の指導機関であった> 最高ソヴィエトは、
START 1 <第1次戦略兵器削減条約>という条約を批准せねばならなかった。だが
しばらくの間、ベラルーシの議会議員たちは作業を遅らせ、同国の安全保障と
核弾頭輸送経費の拠出とを、国際社会に求めていた。ようやく1993年2月4日、
START I 条約を批准しNPT順守が認められた。1993年半ばまでには、戦術核
兵器すべてをベラルーシ国外に移動させた。同国はさらに戦略核兵器 <対象と
する地域・標的に限定した被害を及ぼすのが戦術核。対して、大規模な破壊を
もたらすのが戦略核> も1995年までに国外に移そうと努めた(リダとマズールに
配備されていた) のだが、この期限を守れる見込みはほとんどなかった。
ベラルーシの大統領アレクサンドロ ルカシェンコは1995年2月、ヨーロッパ通常
戦略条約(Conventional Armed Forces in Europe)という軍縮条約を批准しない
ことを決定した。この条約ではNATOがベラルーシの領土を侵害してしまう、
との主張によるものだ。だが実はこれは、財政的な事情によるものであった。
結局、こうした残る戦略核兵器の処理をしたのはロシア軍の舞台であり、
同地に25年間滞在した。これは、1995年1月と2月に締結された関税同盟合意に
従ってのことであった。
1996年7月の時点で、SS-25 Topolという単一核弾頭の移動式核ミサイル81基 を
ロシアに引き揚げたが、残る18基はまだベラルーシに残っている。だが
ルカシェンコ大統領の発表によれば、これら残存核ミサイルのベラルーシから
ロシアへの引き上げを一時停止するそうだ。同大統領によれば、この核兵器を
撤去するという決定は前指導層による誤った判断で、不必要なものだという。
それは、近いうちにロシアとベラルーシは統合する可能性があるためだそうだ。
とにかく当該の核兵器は解体され、軍事的脅威とはならなくなった。そして
1996年11月終わりにようやくロシアへと返された。
同年11月には、ベラルーシは非核保有国となっていたのだ。
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要するに、いったんは核兵器を放棄した国が、このたび再度核武装をできる体制になってしまったわけですね。
まさに、1990年代の旧冷戦の崩壊 ⇒ 最近の、新冷戦体制の構築
という忌まわしい変化を象徴するような出来事ですよね。
“Urban Mirage I” (都市の幻影 I)
私のかなり昔の作品より
で、今回の改正?改悪?
その認識の上で、CNNによる報道から一部、抜粋・日本語化してみましょう。
2022年2月28日JST付の
Belarus to renounce non-nuclear status following Russia’s invasion of Ukraine
(ベラルーシ、ロシアのウクライナ侵攻を受け非核保有国というステータスを破棄)
(17) Belarus to renounce non-nuclear status following Russia’s invasion of Ukraine (cnn.com)
記者は、CNNのHannah Ritchie、Josh Pennington
(私による抜粋・日本語化)
日曜日<2月27日>、ベラルーシは今までの非核保有国というステータスを破棄する
可能性を示唆した。以前はソヴィエト連邦の一部であったベラルーシからも、
ロシア軍がウクライナに侵攻したことを受けてのことである。
ベラルーシはこの30年ほど、ロシア政府を権力基盤とする絶対的権力者
アレクサンドル ルカシェンコが指導者を務めているが、同国当局によると
この非核保有国ステータスを破棄するという変更は、国民投票の結果からも
支持されているという。
ベラルーシ中央選挙管理委員会によると、投票権のある国民のおよそ78.63% が
今回の国民投票で投票、そのうち65.16%が新憲法に賛成を投じたという。
この新憲法はベラルーシの非核保有国というステータスを破棄し、また
ルカシェンコが今後さらに2期にわたり大統領選挙に出馬することを認める。
だが西側諸国は、この日曜日の投票結果を正当なものとは認めない模様だ。
この1月に発した声明で、欧州安全保障協力機構(Organization for Security
and Co-operation in Europe、OSCE)へのアメリカ使節団はこの国民投票を
「ベラルーシにとって実現可能でもなければ、信用もできないものだ」と
述べていた。
この国民投票に先立って1年間ほどにも渡る弾圧が、ルカシェンコ陣営から
国内の野党勢力に対して行われた。そのきっかけとなった問題は2020年の
大統領選挙で、そこでは選挙違反行為がなされ、市民による抗議が相次いだ。
今回の憲法改正の、ロシアにとっての意味: ベラルーシの新憲法は理論上、
ロシア政府がベラルーシ領土内にロシアの核兵器を配備することを可能にする
ものだ。これは、ソヴィエト連邦の崩壊以来、初めてのことだ。その時点で、
ベラルーシ政府はいったん核兵器を放棄、非核保有国となった。
…(中略)…
ルカシェンコとプーティン: この日曜日に<ベラルーシの首都である> 投票所で
記者会見に応じたルカシェンコは、西側が何らかの核兵器をポーランドあるいは
リトアニアに配備した場合には、ベラルーシが<1990年代初頭に> 放棄した
「核兵器をベラルーシに戻すよう」 ロシアのプーティン大統領に依頼することが
可能になる、と述べた。
「あの~~ フツーじゃなく怖いんですけど0・・・」
私の20分クロッキーより
…(中略)…
カメラ撮影中の発言でルカシェンコはさらに西側諸国を非難し、「西側が
ロシアに圧力をかけ、第3次世界大戦を誘発しようとしている」と主張、
さらに「核戦争となれば、世界の終末となってしまう」と警告した。
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“a nuclear war would end the world.” (「核戦争となれば、世界の終末となって
しまう」)ですか・・・
1国の大統領の発言としては、この文脈ではウカツすぎるようにも思いますが ~~
まあ100万歩ほど譲って、人類は確かに核兵器その他の大量虐殺兵器を作ってしまい、
しかもたびたびそれを「平和利用」という名目のもとで拡散させてしまったの
ですから、人類だけが滅亡するなら、まだ分かります。しかし、カラスたちにも
タンポポたちにも、責任はありません。他の種族を巻き添えにして核戦争で
「惑星心中」をするような権利・資格は、人類にあるハズもありませんよね。
「核抑止」という概念・主張は旧冷戦時代からありますが、「核戦争となれば、
勝者はおらず、自国も滅亡してしまう」という判断を核保有国指導層がすることを
大前提としていますよね。
では、ハッキリ言ってしまって、今回のプーティンやルカシェンコのように、
国家指導者が「おかしく」なっている場合、「核抑止」は現実にどこまで
有効なのでしょうか??
“YouTube Politician” (YouTube政治家)
私の2021年の作品より、紙にボールペン
* 反核(発電も、兵器も)団体などの皆様へ
「新冷戦体制」に世界が突入したという見方に同意していただけるのなら、
私たち反核発電・反核兵器勢力は、今後の社会にあって従来以上に大きな任務を
背負うことになりましょう。
そうであれば、私たちが協力し合う必要も高まるでしょう。何か、私でも手伝える
ことがありましょうか?
そうお考えの方々、もしいらっしゃれば、
yadokari_ermite[at]yahoo.co.jp
で私 Heeday Francisまでご連絡くださいませ。
あるいは、FacebookのPainter Francis Heedayのページにメッセージを
くださっても歓迎です。