前回までの投稿でお分かりのとおり、イランがウラニウムの過剰濃縮を再開しちゃった
のは、アメリカが先にJCPOAの合意順守を放棄したからだというのが、イランの主張
ですよね。
そこで、当の36条本文を紹介しましょう。
JCPOAの合意内容本文より、第36条。
0. Main Text (europa.eu)
より
DISPUTE RESOLUTION MECHANISM
- If Iran believed that any or all of the E3/EU+3 were not meeting their commitments under this JCPOA, Iran could refer the issue to the Joint Commission for resolution; similarly, if any of the E3/EU+3 believed that Iran was not meeting its commitments under this JCPOA, any of the E3/EU+3 could do the same. The Joint Commission would have 15 days to resolve the issue, unless the time period was extended by consensus. After Joint Commission consideration, any participant could refer the issue to Ministers of Foreign Affairs, if it believed the compliance issue had not been resolved. Ministers would have 15 days to resolve the issue, unless the time period was extended by consensus. After Joint Commission consideration – in parallel with (or in lieu of) review at the Ministerial level – either the complaining participant or the participant whose performance is in question could request that the issue be considered by an Advisory Board, which would consist of three members (one each appointed by the participants in the dispute and a third independent member). The Advisory Board should provide a non-binding opinion on the compliance issue within 15 days. If, after this 30-day process the issue is not resolved, the Joint Commission would consider the opinion of the Advisory Board for no more than 5 days in order to resolve the issue. If the issue still has not been resolved to the satisfaction of the complaining participant, and if the complaining participant deems the issue to constitute significant non-performance, then that participant could treat the unresolved issue as grounds to cease performing its commitments under this JCPOA in whole or in part and/or notify the UN Security Council that it believes the issue constitutes significant non-performance.
(私の日本語化)
紛争の調停のための仕組み
36. E3/EU+3(JCPOAの参加国でイラン以外の諸国)のいずれか、あるいはすべてがJCPOAの下での責任を果たしていないとイランが判断した場合には、 イランはその問題を合同委員会に報告して解決を求めることができる。同様に、イランがJCPOAの下での責任を果たしていないとE3/EU+3 諸国の何れかが判断した場合にも、合同委員会に報告して解決を求めることができる。合同委員会は報告を受けてから15日以内にその問題を解決すること。ただし、合意によってこの期間を延長することができる。合同委員会による検討の後、いずれの加盟国も、合意順守の問題が解決していないと判断した場合には、その問題について外相と相談することができる。関係諸国の外相たちは15日以内に、その問題を解決すること。ただし、合意によってこの期間を延長することができる。合同委員会による検討、そしてそれと並行しての、あるいはそれに代わる外相レベルでのレビューの後で、その問題を提出している加盟国あるいは合意順守への違反が疑われている加盟国のいずれも、諮問委員会によるその問題の検討を要請することができる。この諮問委員会は3名のメンバー(問題提出国が1名、問題ありとされている加盟国が1名、独立した第3の加盟国が1名)で構成される。諮問委員会は15日以内に、その合意順守問題に関する見解を発表すること。ただし、この見解には拘束力はない。ここまでの30日間のプロセスの後で、その問題がなお解決していない場合には、合同委員会は諮問委員会の見解を最長で5日間検討し、問題の解決に努めること。それでもなお、その問題が未解決であり、しかも問題提出国がその問題が深刻なものであるとみなす場合には、未解決であると判断する場合には、その提出国はその未解決問題を理由として、JCPOAの下での自らの責任のすべて、あるいはいずれかの履行を中止し、国連の安全保障理事会に対し、その問題が加盟国による義務不履行の深刻な例であると考えている旨を通知することができる。
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要するに最後の方の、
then that participant could treat the unresolved issue as grounds to cease performing its commitments under this JCPOA in whole or in part and/or notify
(・・・ その提出国はその未解決問題を理由として、JCPOAの下での自らの責任のすべて、あるいはいずれかの履行を中止し、・・・)
という箇所が、イランのウラニウム“過剰濃縮”(西側寄りの態度でいうんじゃなくて、発電用なら5%でまったく充分なのですから!)再開の根拠となっているわけですね。何せ、アメリカがJCPOAそのものからいったん脱退しちゃったのですから。トランプ元大統領のやることは ・・・ この条項がある限り、アメリカが脱退しちゃうとイランが過剰濃縮を再開しちゃうってことを予測できなかったのでしょうか??
イランもイランで、ウラニウム濃縮で63%というのは、もう何を目指しているかは言うまでもないですよね。
一般にウラニウム濃縮という行為には、そうしたリスクが付きまといます。なにせ、確かに大量の遠心分離機を稼働させる施設が必要とは言え、あくまで「発電用濃度」と「核兵器用濃度」との間の差は単なる「程度問題」ですからね。
ですから、ウラニウム濃縮という行為そのものを各国・地域で行うことを全世界で禁止し、IAEAなりが一元管理する認定施設のみで行う ・・・ そんな風に変革したらどうかと、私は考えます。
むろんこれは、地球上に核兵器や核発電が残っている間の話でして、あくまで両方がこの世界から消えるのが最終的な解決ですが。
では、次回投稿でもJCPOA関連の報道を紹介していきますね。
福島第一からの汚染水海洋放出も大問題ですが、これについては反原発団体などが
YouTubeその他で報じてくださっていますので。
ですから私は、あくまで自分のフィールドである「核発電と核兵器の不可分性」に
関連した話題にこだわりたいと思います。