日本語でも報道されているように、GE Hitachi がカナダ最大の都市トロントの
近郊に SMR を新設することになったそうです。
新設予定の原子炉は同社が開発を進めてきた BWX-300 という SMR で、
同社の関連ウェブページなどを見ると、思った通りパッシヴ セーフティー
(人間が介入しなくても、自然に安全性を保てるとされている仕組み)などを
売り物にしています。
ですが、
・ どうも、そのパッシヴ セーフティーの仕組みについて、
BWRX の場合での具体的な説明が見つからない。
・ 上の黒いメニュー内部の下の方にある固定ページ s-2) で Union of Concerned Scientists が公表している SMR の安全性に関する問題指摘を抜粋紹介しましたが、
そこで指摘されている問題点に関する対応策なり反論なりが、インターネットでは
見つけられない。
・ パッシヴ セーフティーはメルトダウンなどの防止に関する安全策ですが、
proliferation risk (核兵器につながってしまう危険性)についての言及は、
やはりネットでは見当たらない。
といった現状です。(2021年12月4日 JST 現在)
GEがYouTubeで公表しているBWRX-300紹介ビデオ
GE Hitachi’s Small Modular Nuclear Reactor The BWRX-300 Can Help Countries Meet Their Climate Goals – YouTube
も見ましたがが、上記の問題点はまったく解消しません。
そのビデオ中で Dahlgren さんとおっしゃるPrincipal Engineer (主任エンジニア)の
方が、
BWRXには、— like a LEGO Kit (LEGOのキットを組み立てるように)— 既存の
実証済みのテクノロジーを採用し、組み合わせている
という主旨の発言をしてらっしゃいます。
確かに、既存のものを組み合わせるなら、原子力規制当局による承認などは早く進む
はずですよね。ただ、逆に言うと、passive safety とはいっても、従来のテクノロジー
より本質的に安全性が向上するわけではないのでは?と、常識的に疑問が
生じますよね。
それとこのビデオを見ていてやはり気になるのは、後半でエストニアやポーランドでの
SMR導入も「ほのめかして」いることです。その主な動機はやはりCO2削減でして、
「核発電(原発)は、稼働中には炭素を排出しません」と、このビデオの8:15あたり
でも明確にうたっています。原文は Nuclear power does not emit carbon during operation
というもので、それはその通りなのですが、during operation つまり「発電中は」って
ことです。ウラニウム濃縮作業で消費する電力や、原発の外部電源などを無視するならば、ってことです。
核発電が本当にCO2を出さないのか、さらに希少資源である水を大量消費しないのか、
という問題については、すでに上の黒いメニューで一番下にある 付録 w-1) で短く
問題指摘しております。
日本の反原発団体の皆様へ、
CO2削減が全世界の課題 ⇒ 日本に限らずSMR導入が世界に広まりつつある、という
世界的潮流が見られるようです。
反核団体が世界的に連帯し、SMRの問題点を指摘するような動きを起こす必要が
あると私は考えているのですが、いかがでしょうか??