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論考を紹介しましょう。
ウラニウム採鉱など核エネルギー産業
の陰でアメリカ先住民の暮らしや健康
が脅かされてきている問題についての、
Linda Pentz Gunterさんの論考です。
いつもどおり、
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。
わてら、昔からここにすんどるのに、後から来た人らがUを ・・・
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元の英語論考をお読みになりたい方は、
下記をどうぞ:
“Terrible news” | Beyond Nuclear International
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Terrible news!
(ひどいニュース!)
2024年5月19日
Russian uranium ban reopens threat of
uranium mining escalation in US
(ロシアからのウラニウム輸入禁止に
より、アメリカでウラニウム採鉱が
激化する恐れが再燃)
Linda Pentz Gunter
2022年2月24日にロシアがウクライナ
への侵略を開始した際、この戦争が
いつまで続くのか、どのような結末を
迎えるのか、誰にも分からなかった。
<その時点では> キーフはすぐにでも
ロシア軍の手に落ちるものと思われた。
それから2年以上が経過したが、今も
戦争は続いており、ロシアからは
核兵器使用の脅しが聞かれ不安を
募らせている。.
この侵略が始まった時点でアメリカと
そのNATO同盟諸国とは直ちに、
ウクライナの防衛を支援し、ある程度
は兵器も供与しようと努めていた。その
一環として、ロシアからの燃料輸入の
禁止という制裁も直ちに決定した。
侵略開始からわずか12日後の2022年
3月8日にはアメリカのジョー
バイデン大統領は、ロシアからの石油や
液化天然ガス、石炭のアメリカへの輸入
を禁止する大統領命令に署名している。
<ところが> これには、ロシアからの
ウラニウムは含まれていなかった。
なんでUは例外なんや??
この、2022年にロシアからの化石燃料
輸入を禁止した際には、私たち反核運動
に携わる者たちの多くは、ロシアからの
ウラニウムも禁輸せよと騒いでいた。
アメリカによるウラニウム輸入の少なく
ても12%はロシアからのもので、
アメリカ国内の原子炉燃料として使用
されている。ロシアの衛星国である
カザフスタン(25%)とウズベキスタン
(11%)からの輸入も含めると、この
数値は50%近くにまで膨れ上がる。
(アメリカへのウラニウム供給国と
してはもう1つカナダがあり、
カナダ1国で27%に達する)
<原文では、ここに写真>
2024年5月13日、バイデン大統領は
ようやく、ある民主・共和両党が賛同
した法案に署名した。ロシアからの
ウラニウム輸入を禁ずる法律
(Prohibiting Russian Uranium Imports
Act)だ。この法律が禁じているのは
「中性子線を照射していない低濃縮
ウラニウムで、ロシア連邦共和国
あるいはロシアの法人が製造したもの」
の輸入である。(ここでのロシアの
法人とは、要するにロシア国外で営業
しているRosatom <というロシア
国営の核エネルギー公社> のことだ)
今回の戦争が始まったころに我々
<反核勢力> がロシアからの
ウラニウムのボイコットを求めていた
ころ、核発電のもたらす害悪を強調
するという流れで声を上げており、
この核発電という危険で差別的な技術
の利用を恒久的に終わらせようという
我々の課題の一環であった。そのころ
我々は、なぜ核発電関連だけが禁輸
対象から外されていたのかを問題に
していた。今、その原因は明確に
なった。この法案は有害なもので、
文字通り被害をもたらすのだ。
輸入止めて国内で製造しますんで、そのための予算
この法律が制定されたことで、
「エネルギー省は専用の資金27億
2,000万ドルを獲得、アメリカ国内
でのウラニウム濃縮への投資を
展開し、アメリカの国際的な責務である
信頼性が高く危機にも対応できる世界の
ための核エネルギーを推進できる」と、
アメリカ国務省は発表している。
こうした動きはいずれも、2050年まで
に世界の核発電能力を3倍に増やそう
という馬鹿げた課題の産物だ。
(2050年までに仮に達成できても、
<気候変動対策としては> 遅すぎるの
だが) 「敵対的な影響に左右され
ない、安定した核燃料サプライチェーン
を向こう数十年にわたり確立するため」
だと、国務省は述べている。だが
今回の法案は、そうした成果を全く
生み出しはしないであろう。
確かにこの法案により、ロシア製の
ウラニウムに対するアメリカの依存を
終わらせるという効果はあるかも
しれない。だが、<核エネルギーと
いう> 声明を破壊するエネルギー源
へのアメリカの依存症を治療しては
くれない。核エネルギーは、反抗する
だけのリソースが特に少ない
コミュニティを犠牲にしてしまう。
さらに気候変動危機への対応に当たり、
より短期間で導入できコストも安い
再生可能エネルギーを活用するのでは
なく、 最も費用がかさみ期間も要する
エネルギー源 <つまり核エネルギー>
に 資金も貴重な時間も向けてしまう
ことで、アメリカが再生可能エネルギー
による経済へと向かう道を今まで
以上に困難なものにしてしまう。
予算全部、アイツが食っちまいやがった
先週 <5月9日の週> バイデンが
この法案に署名していた時、喜んで
いたのはだれか、誰の目にも明らかだ。
Uranium Energy社やTerrapower社、
Centrus社、Energy Fuels社の
エグゼクティブたちは、胸の高鳴りを
抑えられなかった。ウラニウムの
アメリカ国内での採鉱や精製、濃縮を
再開できるということで、すぐにでも
始めたかったのである。だがそうした
業務はアメリカ先住民の諸部族に
とっては、特に有害なのだ。彼らの
暮らす土地は既に、以前のこうした
ウラニウム関連活動によって恒久的に
汚され、毒に侵されているのだ。しかも
そうした先住民たちは今も、適切な、
あるいは何らかのクリーニングと補償が
なされるのを待ちわびているのだ。
Pinyon Plain, Arizona
そうした土地の1つとしてグランド
キャニオンがあるが、すでにPinyon
Plainというウラニウム鉱山からの汚染
という脅威に晒されている。この鉱山
プロジェクトを進めているのはカナダ
資本のEnergy Fuels 社で、2024年
1月に業務を開始している。この地
にはハヴァスパイ族という先住民が
暮らしており、彼らはこの
プロジェクトに強く反対してきたの
だが。
「我々はウラニウム採鉱にはもう
何十年も反対してきている。大地にも
大気にも水にも人にも、有害なリスク
があることが判明しているからだ」と
語るのは、ハヴァスパイ族のリーダー
であるCarletta Tilousだ。Pinyon Plain
でのウラニウム業務の撤廃を求めて
闘争している。このPlainはRed Butte
というハヴァスパイ族にとっての聖地の
近くにあるのだ。.
<原文では、ここに写真>
「アメリカ南西部でのウラニウム採鉱
のせいで傷つけられた我々のコミュ
ニティには、恐ろしいほどの死の遺産が
残されている。しかも連邦政府の所有
する土地であれ、部族の保有地であれ、
何千ものウラニウム鉱山が <閉鎖後
に> クリーニングもされていない」
と、Tilousは述べている。
Tilousiはさらに「ウラニウムによる
グランド キャニオンの汚染は今後も
続くはずだが、それにはコロラド川へ
と流れ込む <地下水の> 帯水層も
含まれる。ウラニウム鉱山からの汚染
物質はさらに、Havasu Springsの水源
となっている深層部の帯水層にも流れ
込みそうだ。こうしたリスクを避ける
ための唯一の手段は、ウラニウム鉱山
を閉鎖することだ」とも語っている。
<アリゾナ州にあるHavasu Springs
ですが、大きな湖を形成しており、
リゾート地でもあります。そこに
放射性汚染物質が流れ込めば ・・>
Navajo Nation
ナヴァホ ネイション<Navajo Nation,
アリゾナからニューメキシコ、
ユタ州にまたがって存在する先住民
自治区> では同自治区内での
ウラニウム採鉱を禁じているが、以前
には最盛時で500を超えるウラニウム
鉱山を擁していた。それらはすべて、
いまでは閉鎖されているのだが、
クリーニングはされていない。 (全米
では、閉鎖されたウラニウム鉱山は
4,000以上ある) ナヴァホ族の人たち
はウラニウム鉱山が健康やコミュ
ニティの幸福にもたらす害については、
イヤほど実体験で理解しているのだ。
「今回のバイデンによる決定は、
ひどいニュースだ」と述べるのは、
ナヴァホ ネイションのウラニウム鉱山
で以前勤務していたなLarry King だ。
彼はウラニウム採鉱に反対する東部
ナヴァホ先住民 <Eastern Navajo Diné
Against Uranium Mining> のメンバー
でもあり、もう何十年もウラニウム
鉱山のクリーニングを求めてきている。
Kingはさらに、地表からリーチング
してウラニウム鉱石を取り出す採鉱
方法 (in-situ leach、現在採用されて
いる主要採鉱方法)でウラニウム鉱石
を取り出した後で 「帯水層を採鉱
以前の状態に戻した例を、見たことが
ない。採鉱企業たちは、自分たちの
欲しい鉱石だけをナヴァホ族の土地
から取り出すと、次の鉱山へと去って
いったのだ」とも語っている。
in-situ leach, schematic
ウラニウム採鉱を禁じているナヴァホ
ネイションだが、ウラニウム採鉱の
再開のため新たな脅威に晒されている。
<ニューメキシコ州にある> Church
Rockという地点でUranium Resources
社が新たなin-situ leach方式のウラニ
ウム鉱山を開こうとしたのだ。この
計画は、ナヴァホ族の人々の反対のため
取りやめとなった。だが、その後で
トロントに本拠を置くLaramide
Resources社がUranium Resourcesを
買収、同地でのウラニウム採鉱を始め
たがっている。ナヴァホ族の自治区
境界線が同地を囲んでおり、この
候補地はナヴァホ自治区内部にはない
ためだ。
Kingの自宅は、Laramide社の計画対象
地域から肉眼で見える位置にある。
「この <ウラニウム採鉱> プロ
ジェクトの環境への影響に関する発表を
見ると、このプロジェクトの対象地域内
に民家もあり、そうした住民たちは
立ち退きを迫られている。だが、私は
立ち退かない。私はこの地で生まれた。
一歩たりとも動くつもりはない」と
Kingは語っている。
Trampled and Ignored, 私の最近の作品より ・・ まだ未完成です
バイデンがロシアからのウラニウム
輸入を禁ずる法律に署名したのち、
Washington Post 紙はある記事を掲載
したのだが、それが恥知らずで偏向
したものであった。その記事には、
アメリカ先住民の声は何一つ紹介され
ていなかったのだ。 その記事の記者
Maxine Joselow は核エネルギー企業
4社のエグゼクティブならびに政治家
2名の発言を引用しているが、いずれも
この法案に賛同している。Joselowは
ウラニウム採鉱に反対する者たちに
ついては「他の人たち」あるいは
「さらに他の人たち」として短く取り
上げるだけなのだ。しかもそうした
匿名の人たちの発言を紹介するに
あたっては、「環境保護論者たちの
一部は核エネルギーを支持している
ものの ・・・」という断りを入れて
いる。
さらなる問題としてJoselowは、
Energy Fuels社の上級バイス
プレジデントCurtis Mooreのナン
センスな発言を金科玉条のごとく繰り
返しているのだ。Mooreの主張では、
同社のグランド キャニオン鉱山は
同地の水源に対し「全く何の」リスク
ももたらさず、しかも「気候変動との
戦いにおいては、ウラニウムは間違い
なく不可欠なのだ」ときたものだ。
<原文では、ここに写真>
アメリカ人はいずれ、この法案の
代価を支払うことになる。アメリカ
先住民は、特に被害にあう。<ロシア
からの> ウラニウムの輸入を禁じて
おきながら核発電からの卒業を求める
のでなく、この汚染だらけの産業を
アメリカ国内で幾何級数的に拡大させ
ようとしてしまっている法案なのだ。
ロシアがウクライナ侵略を開始した
時、アメリカ ウラニウム生産者連盟
(Uranium Producers of America)と
いう業界団体のエグゼクティブ
バイスプレジデントであり、さらに
Uranium Energy社という鉱山企業の
バイスプレジデントも務めるScott
Melbyeは、ある発表の中で次のように
述べていた:
この下は、私の見解ではなく、Melbyeさんの主張です
「ロシアによるウクライナ侵攻を
見れば、戦略的に不可欠なエネルギーの
供給や鉱物の確保においてロシアやその
同盟諸国に依存していてはならないこと
が、明らかだ。アメリカの原子炉の
約半分を稼働させるためのウラニウム
は、ロシアやカザフスタン、ウズベキ
スタンからの輸入だ。アメリカには
ウラニウム資源は潤沢にあり、最高の
環境・安全・衛生基準でウラニウム燃料
を製造できる能力もあるというのに、
アメリカ国内での製造はほぼ全面的に
停止している。アメリカ ウラニウム
生産者連盟では今までも度々、政策
担当者たちに対し、こうした国外への
過剰依存のもたらす惨劇について警告
してきた。こうした <ウラニウム輸出
諸国の> 国営ウラニウム企業の市場
戦術は食い荒らすもので、そのため
アメリカ国内のウラニウムのサプライ
チェーンは衰退してしまったのだ」
バイデンの5月13日の発表を受け、
Melbyeは「この当たり前の段階に
到達するまで、これほどの機関を
要したのは馬鹿げている」と語って
いた。
だが、この法案による禁輸で実際に
ロシアにどの程度のダメージがある
のか、またそれがいつ頃になるのか、
分かりはしない。bne IntelliNews が
今年の1月19日の記事で明記していた
ように、「確かにカザフスタンは
ウラニウムの供給では世界最大の
プレイヤーなのだが、その精錬済み
ウラニウムの多くはロシアの転換工場
で処理され、それから世界の市場に
輸出されている」のだ。かくしてロシア
は「カザフスタンのウラニウム埋蔵量
の26%以上をコントロールしており、
毎年のウラニウム生産量の中では
さらに22%に対し権利を有している」
たとえば、こういう「迂回」もあり得る
ところが今回のロシア製ウラニウムの
禁輸法案ではウズベキスタンやカザフ
スタンは名指しでは指定されておらず、
法案にある「ロシアの法人」という
言葉では正確な対象が不明確である。
カザフスタンは、このロシア産ウラニ
ウムの禁輸からカザフスタン産ウラニ
ウムへの需要が増大するはずだと見て
おり、その需要に応えようとして
いる。「この法案によって世界最大の
ウラニウム産出国であるカザフスタン
には大きなチャンスが発生、カザフ
スタンはこの新たな需要に応えアメリカ
の求める核エネルギーに必要な鉱物を
供給できる」と、この1月にThe Times
of Central Asia 紙は報じていた。それに
先立ち昨年12月にこの法案はアメリカ
議会を通過していた。
Uがどこから来てるのかも、重大な問題なのです
それらに加え、この法案にはかなり
深刻な例外規定が設けられており、
ロシア産ウラニウムがアメリカに入り
込む可能性は充分に残っている。
同法案によれば、「原子炉稼働の継続
あるいはアメリカの核エネルギー企業
の業務継続のために低濃縮ウラニウムが
必要であるが、その有効な供給源が他に
ない場合、また第(1)項に定める
低濃縮ウラニウムの輸入がアメリカの
国益につながる場合には」ロシアから
のウラニウム輸入を継続できる。
こうした例外規定は、ウラニウム燃料
の不足のためアメリカの原子炉が寿命
以前に、あるいは恒久的にシャット
ダウンされてしまうことを防止する
ためにある。この例外規定は、2028年
1月まで有効とされている。つまり、
RosatomやKazatomprom、北米の
ウラニウム企業各社、アメリカ議会、
そしてバイデン政権にとっては
「ウィン・ウィン」なのだが、アメリカ
先住民はまたしても裏切られ、
憂き目を見ることになったのだ。
Linda Pentz GunterはBeyond Nuclear
の国際関係スペシャリストで、Beyond
Nuclear Internationalでの執筆や編集も
行っている。本記事で表明されている
意見はすべて、Gunter氏個人のもの
である。
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長くて疲れた~~ 私の20分クロッキー、
男性のモデルさん
長い記事でしたが、アメリカの歴史に
おいては先住民への迫害や虐殺が付き
纏ってきたことはよくご存じですよね。
そして核問題との関連では、そうした
先住民差別が今も行われてしまっている
ことが、お分かりいただけたと思います。
日本国内に目を転じても、原発は必ず
過疎地域にあって、そこから電力を
ワザワザ遠路、大都市に供給して
いますよね。