ここで、当然、次の疑問が生じるでしょう:
2020年10月
本来の用途であるプルトニウム製造用原子炉 = 軍事利用
それに蒸気タービン発電機をつなげたら = 平和利用
ウラン濃縮がU235の濃度3-5%なら = 平和利用
という理解困難な区別が、なぜ蔓延ったのか??私には、よく分かりません!
1950年代から60年代にかけての日本での核エネルギーに関する言説を取り上げた
書物なども読んだのですが~~
1954年3月には、ビキニ環礁での水爆実験による第五福龍丸の悲惨な事故があり、
「放射能モンスター」の映画「ゴジラ」も出来たわけですが。
でも、その翌年には、第8回新聞週間の代表標語として「新聞は世界平和の原子力」
という標語が選ばれたりしています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mscom/84/0/84_KJ00009002044/_pdf/-char/ja
もちろん、「核兵器は悲惨を招く、核を使うなら平和利用を」という願いも広く
社会にあったのでしょう。でも、その「平和利用」の実体が、上記のようなものだと~
そして10年後
1965年5月には日本最初の核発電所、東海発電所が臨界に達しています。
こともあろうに、その原子炉はコルダ―ホール型でした。
そんなことは、日本語版Wikipedia にも明記してあります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80
もちろん、日本導入に当たり改良を加えはしましたが、主に耐震性の問題です。
コルダ―ホール型 (Magnox) 原子炉が本来、どういう用途のものであったのか?
英語版Wikipedia をご覧になっても、明らかです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Magnox
— the Magnox was designed with the dual purpose of producing electrical power and plutonium-239 for the nascent nuclear weapons program in Britain —
とありますから、Magnox (コルダ―ホール型)原子炉とは本来、
発電と兵器用プルトニウム製造という二重用途のためのものです。
下は、英語版Wikipediaの”Magnox”というページの情報をもとに私が作成した図です。
この図をよく見てくだされば、
「なんだ、プルトニウム製造用原子炉で熱くなった空気で水を熱して蒸気を発生させて、
発電も同時に行うようにしただけじゃないか」とお分かりになるでしょ?
なお、Magnoxタイプの原子炉は今ではほとんど使われなくなっていますが、北朝鮮のヨンビョン核施設には、残っているそうです。(上記の英語Wikipedia)
「さもありなん」って感じですよね。
* なお、ヨンビョンのMagnoxタイプの原子炉については、
このページの一番下にある「ヨンビョンの原子炉」という
注記もぜひご覧くださいませ。
すると、日本の市民たちから、なぜあまり反対がなかったのか??
不思議でしょうがないです。日本社会をあげて、「平和利用」に浮かれていたのでしょうか??
導入しようとしている「原子炉」が本来どういう性質のものだったのか、反核団体なども調べなかったのでしょうか??
もちろん、当時はインターネットなどはありません。でも、書物は多数出回っていたはずです。原子炉のメカニズムがまったく公表されていなかったとも、思えません。
私の完成作品より
反核団体などから、コルダ―ホール型原子炉の日本導入に対して、
・ なぜ反対の声が小さかったのか?? あるいは、
・ 実は反対の声はかなりあったのだけど、
マスメディアなどに無視されていたのか??
そのあたりの事実をご存じの方、なにとぞご教示ください!
1954年から65年ごろにかけての、「原子力」や「核兵器」に関する日本社会の世論動向ですので、リアルタイムで経験されて覚えて
らっしゃる方々も、いらっしゃると思いますので。
私、ひで フランシスのアドレスは、
yadokari_ermite*yahoo.co.jp (<– * を @ に変えてくださいませ)
でございます!
次ページからの予定:
次のページ シリーズとなる f-x) (これから)の各ページでは、
今そして近未来に「核兵器と核発電の不可分性」が問題となりそうな地域や動向を取り上げます。
その皮切りとして、北朝鮮のヨンビョン核施設について、
NTI のウェブサイトにある今までの経緯の概要を、私の
要約翻訳でこの下に紹介しますね。
* 注記:ヨンビョンの原子炉
「原子炉と核兵器の不可分性」を否定する人たち(しかも、
反原発デモの参加者の中にそうした人たちを見かけたことさえ、
実際にあります!)がよく持ち出す謬論の1つに、
「韓国には原発がいくつかあるけど、核兵器は持っていない。
北朝鮮は核武装しているけど、原発はない。だから、原発と
核兵器が無関係なのは明らかだ」
というものがあります。
下線部、つまり「北朝鮮は ・・・ 原発はない」は実はとんでも
ない間違いでして、ヨンビョンの核施設に5MWの原子炉があって、
北朝鮮側はこれを「発電用だ」と主張していました!
つまり、「原発だよ~」があったわけです。しかし。
実は「原発だよ~」の正体は ・・・ 今(2020)では、世界中の人
たちの知る通りですね。
The Nuclear Threat Initiative (NTI) という大量破壊兵器に反対する
国際NPOがあり、そのウェブサイト(英語)には反核活動に関与
する私たちには役立つ情報がアレコレあります。
ここでは、Yongbyon 5MWE Reactor (ヨンビョンの5MWE)というページ(https://www.nti.org/learn/facilities/766/ )の内容を、日本語で短く要約して(とはいっても、長くなりますが)みますね。
2018年7月に最終更新された記事です。
”コルダ―ホール型原子炉のクローンで、ヨンビョン核研究センターにある施設。現在、再稼働を目指し再建が進行中。
このヨンビョン原子炉はグラファイトを中性子減速材とし空気
(二酸化炭素)で冷却する原子炉で、英国のコルダ―ホール原子炉をモデルにしている。その建設は1979年に始まり、86年に竣工した。北朝鮮にたくさんある天然ウランを燃料(ウラニウム濃縮が不要)、グラファイトを減速材として使用し、冷却材も高価な重水ではなく二酸化炭素を用いるので、北朝鮮には好都合なタイプの原子炉だった。
北朝鮮はIAEAに対し、この原子炉は発電用だと申告していたのだが、コルダ―ホール型では兵器グレードのプルトニウムの製造が容易なので、専門家たちは疑いの目を向けていた。のちに、2005年には北朝鮮が核兵器保有を発表し、翌年には同国最初の原爆実験を行ったので、この専門家たちの嫌疑の正しさが証明されることとなった。
米国の衛星画像とその分析から、この原子炉は1989、1990、1991年に停止していたようだ。そのうち1989年の停止は期間が長く、炉心にあった核燃料のほとんどを取り出すことができた模様だ。北朝鮮は89年の停止の際に使用済み燃料棒から90グラムほどのプルトニウムを再処理したとIAEAに報告したが、90年と91年の停止については、何も言っていなかった。
このヨンビョン原子炉などの核施設をIAEAが1992年に査察したのだが、当初の申告内容と現状とが食い違っていた。そこでIAEAはさらに、臨時の査察を要請した。北朝鮮はこれに憤慨、核拡散防止条約(NPT)からの脱退意図を表明した。だが米朝協議があり、脱退が有効となる数日前、1993年6月に、脱退を延期することとした。
94年の5-6月、北朝鮮の技術者たちがまたもや、この原子炉の使用済み核燃料の60%を取り出し、冷却池に入れた。IAEAの査察官の監督なしに、である。このため、米国との軍事衝突に至りそうになったが、ジミー カーター前大統領の訪朝で話し合いが始まり、金日成との合意の枠組みを設定するための協議が続いた。この枠組みは、1994年10月に締結された。
2002年10月、北朝鮮がウラン濃縮プログラムを秘密裏に進めているとの嫌疑で米国と北朝鮮が対立、先の枠組みも破棄された。さらに北朝鮮は12月、ヨンビョンの5MWe原子炉を再稼働させ、NPTからも脱退すると言い出した。米国の高官たちが後に確認したところによれば、同原子炉は2003年2月に再稼働していた。北朝鮮からの発表によると、1994年以来保管されていた8,000本の使用済み核燃料棒は処理済みで、さらに2005年にはもう8,000本を取り出して処理するとのことだった。
2007年の6か国協議では、この原子炉を使用不能にし燃料棒も取り出すことで合意が成立した。翌年には、原子炉の冷却塔が破壊された。だが2009年4月に北朝鮮がミサイル実験を実施、それを国連の安全保障理事会が非難すると、同原子炉を再建すると北朝鮮は言い出した。だが2009年8月撮影の衛星画像では再建工事が始まった様子はなく、翌年11月にアメリカの専門家たちが同核施設を視察した際にも、この原子炉は稼働している様子がなかった。
2013年4月、北朝鮮全土での核施設の再稼働を開始し、その一環としてヨンビョン原子炉も再稼働すると、同国は発表した。・・・衛星画像では、再稼働のため、隣接する実験用軽水炉のポンプと同原子炉の二次冷却システムとの接続工事が始まっていることが判明した。やはり衛星画像から、2013年9月にはこの5MWe原子炉は再稼働しており、おそらくは兵器グレードのプルトニウム製造が目的であった。
2016年4月の衛星画像を見ると、道路や保管倉庫の増設などの工事が進んでおり、核燃料の再処理が目的ではないかと思われる。ただし同じ画像を見る限り、原子炉そのものは停止している様子で、使用済み核燃料を再処理するためではないか、と見られた。その使用済み燃料取り出し作業は、2017年1月の画像では完了した模様で、原子炉を再稼働させてさらにプルトニウムを製造するのでは、と見られた。その1月の22日までには、再稼働が始まった様子が窺えた”
やれやれ、長くなりました ・・・
「再処理」というのは、ここでの文脈では、原子炉内の使用済み
核燃料を処理して、プルトニウムを取り出すことですね。
当然、「長崎型原爆をつくるつもりじゃ??」と睨まれる行為です。
・ 兵器グレードのプルトニウムがある → どこかで必ず、原子炉と
再処理が関与している
・ 兵器グレードのウラニウムがある → どこかで必ず、濃縮施設が
関与している
ってことです。
だれだ、「北朝鮮には原発はない」なんて、呑気なことを
言っていたのは!?!?