付録 w-23) 原発の冷却 II

付録 w-23) 原発の冷却 II

2026年2月

このページの内容は、付録 w-15) 原発の冷却って? (基礎的内容)
と重複します。

それでも本ページを作ったのは、昨今の日本社会での原発
関連の口論を聞いていると、推進派も反対派もともに、
原発に関する基礎的事実を無視して言いたいことを主張
→ 結局、罵り合いに終わる
というパターンが見られるからです。

「ステーキだ!」
「寿司だ!」
「あのう、ここ四川レストランなんですが~~」

ですから、基礎的な事実をウルサイほど押さえておきたいの
ですね。
そうした重大な基礎事項の1つとして、原発の冷却とそれに
必要な外部から原発への電力供給があります。これに伴って、
CO2排出、
非常時の電力供給、
戦時の敵やテロ組織からの攻撃に対する脆弱性、
といった深刻な諸問題も関連します。

ページe-7) で私は、あるセミナーでのある「不勉強な質問者」
さんの件を紹介しました。
繰り返しますが、私はなにもその特定人物を非難したい
わけじゃ、ありませんでした。
反核勢力が原発の正体を学んでもらうための基礎コースの
ようなものをまだ作っていないことを、問題にしたかった
のです。そしていまだに、そうした基礎コースは日本語では
見当たりません。

再掲 一人が質問時間を独占してしまうと ・・・基礎コースが別にあれば ・・・

一例として、英語のWikipediaにはResidual heat removal system
(原子炉の停止後の熱を除去するシステム)というページが
あるのですが、英語版のみです。日本語では、こうした
基礎的解説を見つけにくいのですね。
こうした現状からも、日本語の基礎コースが必要だと考えて
おります。

では、そのWikiページから、Normal operationsの概論と
PWRの2段落を抜粋して日本語化してみます。

いつもどおり、<  > 内は私からの補足説明です。
************************************

核分裂生成物の代表例: セシウム137(Cs-137)は放射性なので、”勝手に”
Cs-137 — (β- 崩壊、半減期約30年)–> Ba-137m(バリウムの放射性同位体)+ 崩壊熱

通常時の稼働

水を減速材 <下記参照> とする原子炉の場合、停止後の
熱は次の2か所から発生する: (1) <発電中に照射した>
中性子が、原子炉の停止後に遅れて核分裂を起こす。
(2) 発電中に核分裂により生成された各種放射性同位体
<核分裂生成物と呼びます> の崩壊。 <崩壊熱と呼ぶ
熱を発します>
停止直後には、この2種類のメカニズムの両方が
ほぼ同じ程度に働き、フルで発電した場合の約6%の
熱量を発する。ただし(1)による崩壊の方が短期間で、
その<生成物の> 半減期は80秒程度だ。(2)のメカニズム
<の生成物> はずっと崩壊が遅く、1日経過後の発熱量は
原子炉の名目熱出力の1%程度に達しえる。炉心から
発生する崩壊熱を除去するには、RHR システム <Residual
HeatRemoval、残留熱除去システム> を使用する。

上の説明

PWRs

まず、発電時の温度になっている原子炉冷却材システム
(RCS)を、二次冷却側から冷却する。<二次冷却系の>
蒸気発生器から水蒸気が発生 <これには、放射性物質は
含まれない> するので、メインの濃縮器 <蒸気を水に戻す>
で水に戻して貯水するか、大気中へと直接に放出する。
原子炉が充分に冷めてRHRシステムを安全に稼働できる
ようになったら、原子炉の冷却材はRHRのポンプならびに
熱交換機を経由して移動、炉内の温度をさらに下げて
「コールド シャットダウン」と呼ばれる <低温停止状態>
にする。<ただし、コールド シャットダウン状態を維持
するには、引き続きRHRシステムを稼働させないといけない
ので、停止中でも原発は外部からの電力供給を受ける必要が
あるのですね>
RHR の熱交換器は、コンポーネント冷却水システム
(CCS)が冷却する。これは中間的な冷却水ループで、
放射性物質を含むシステムと外環境の間に位置する。
放射性物質による汚染を防ぐための位置である。
<このあたり、テキストだけだと分かりにくいでしょう。
そこで、下に説明図を作成しました>

<減速材: 本ページは基本事項の説明なので説明して
おきます。
通常は、本ウェブサイトではこうした基本事項は
学習済みの読者を対象としておりますが。
減速材とは、核燃料めがけて照射されている中性子の
動きを遅くして、燃料の原子核に衝突しやすくする物質の
こと。具体的には、軽水・重水・グラファイトなどが
あります。
***************************************

PWRの場合での略図説明

しつこいようですが、事故や異常が全くない状態でも、
停止中であっても原発は冷却しないといけないのです。
それは、稼働中に発生した残余熱のせいでもありますが、
核燃料という放射性物質が中にある限り、それが放射性
物質である限り「崩壊熱」という熱を新たに発生する
からですね。
加えて、使用済み各燃料の冷却保管プール(Spent Fuel Pool,
SFP、ページ 付録 w-15) 参照)も冷却しませんと、使用済み
核燃料の冷却ができません。

ここで、知識のある読者の方々からは、次のようなご質問が
あるかも:
(; ・_・) 「それはそうだけど、冷却系の一部には、
外部電力に頼らないシステムもあるんじゃないの?たとえば
HPCIとかRCICみたいな。それも言及しないと、フェアじゃ
ないでしょ」

確かに、HPCI(High Pressure Coolant Injection)やRCIC
(Reactor Core Isolation Cooling)は事故時に炉心からの
蒸気を利用してタービンを回して専用のポンプを作動させ、
そのポンプが炉心からの蒸気の冷めた水を非常用冷却水
として炉心へと送り込む、というものです。炉心からの
蒸気を使うので、外部電力に頼りません。

概略説明図
RCICの概略

けど、RCICはあくまで、地震や津波、テロ攻撃などで
外部電力供給がなくなり(station blackout)通常の冷却系
からは冷却水を炉心へと送り込めなくなった場合の、
非常用冷却装置です。そして本ページの解説では、事故や
故障のない通常運転を想定しております。

ですから本ページではRCICのことは無視しても良いはず
ですが、どうも日本の反原発派の皆様の多くは事故に注目
されるので、短く言及しておくと ・・・
福島第一原発にもRCICは装備されていたのです。が、津波
襲来のときに、設計通りには作動しませんでした。そこで
TEPCOさんは再稼動する柏崎刈羽の6号機には、HPAC
(高圧代替注水系)という類似した新たな冷却システムを
設けたそうです。(日本語マスメディアでも報道されています
ので、ご自分でサーチしてご確認ください)
ザポリージャでも、RHRがあるから大丈夫というのであれば、
IAEAがここまで慌てふためく必要はないですよね。
さらに、チョルノービルにもRHRはあったと聞いております
が~~~

こうした原発関係者の努力を、私は決して軽んじはしません。
よくやっていると思ってます。
ですが、こうした安全策を追加していくほど、原発のコストが
膨れ上がるのも事実ですよね。
一例として、ページ al-4) で紹介したように、EPRという
現時点で実用化されているうちでは最新型の原子炉では工期
延長が繰り返され、コストの異常な膨張が続いております。
こうした傾向が続くなら、当然、電気料金にも影響します。

それと、原発の数が増えれば、必要となる外部電力も
増大します。

I’m on a tight rope —

そしてチョルノービルやザポリージャでの昨今の出来事が
証明しているように(ページ u-3) など参照)、グリッド
などからの外部電力が必要だという事実が、テロ攻撃や
軍事攻撃に対する脆弱性でもあります。もちろん、CO2
発生や自然災害(よく知られた事実として、地震 →
津波 → 外部電力喪失 → メルトダウン)などとの関連でも
大きな問題です。

そうした問題を、次の新たな固定ページで取り上げます。

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