at-1) (ATF) 新型の核燃料を古い
原子炉に?
2024年9月
ATF: Accident-Tolerant Fuel
(事故に強い核燃料)
なるものが、アメリカなどで開発中
です。
原発の「事故安全性」(おかしな
日本語ですが)を改善するには、
基本的に
・原子炉
・核燃料
・その他(外部電源、格納容器、制御棒
などなど)
を改善することになりますが、
新型原子炉各種については既に2021年
秋ごろから翌年初めにかけて、論じて
おります。
上の黒いメニューで、探してクリック!
(基本的に項目はアルファベット順
ですので、たとえばTWRについて
お読みになりたい方は、黒いメニュー
内の下の方で tw-0) などを見つけて
くださいな。
で、メルトダウンを問題にする場合
には、
原子炉
核燃料
外部電源や冷却材の確保
などが主な改善点になりますよね。
予想通り、福島第一のメルトダウンを
受け、アメリカなどでは「事故に至り
にくい」「事故になっても、対応が
しやすい」核燃料の開発が進んで
います。
このページでは、そうした新型核燃料
つまりATFを、ごく短く紹介しますね。
それとどうも、やっぱり核発電推進勢力
によるメディア パブリシティの支配力
が現れているのか、メディアの関連
報道は「視野狭窄」を示すものが多い
です。
たとえば、
・ 大洗でHTGRの冷却系停止実験 →
目論み通り「核分裂連鎖反応が勝手に
停止」 → ”メルトダウンしない
新型原子炉だ!”
⇔ メルトダウン以外の問題がおおあり
なんだけど??
(上の黒いメニューで h-4) 参照)
・ FBRのブランケットで新開発の触媒
と一緒に核種変換を起こさせると、
長寿命の放射性廃棄物を短寿命に →
それを、新聞がなんと「無毒化」
などと表現!(上の黒いメニューの
終わりの方にある 付録 w-7) と
付録 w-13) を参照)
そして今回短く取り上げるATFでも、
数少ない日本語報道は、なんやら
原子炉の安全性を大きく向上させる
ものであるかのように取り上げて
いますよね。たとえば、
原発の過酷事故に強い核燃料 各国で開発進む 科学記者の目 編集委員 滝順一 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
どうも、こうした記事を読んで
「原発が今より安全になるじゃない
か」と短絡しちゃう人たちって、
いまだにいらっしゃるんですよね。
それを放っておくわけにはいかない
ので、このページでは
・ ATFの実例の簡略紹介
・ ごく簡単に、問題点の指摘
をしますね。
主なATFの例、ごく短く説明
事故(基本的には、LOCA(冷却材
喪失)など)の発生をしにくく
した、あるいは発生した場合に
メルトダウンなどに至りにくくした
改良核燃料のことです
情報ソースとしては、
アメリカDOEなど核発電推進または
擁護の立場の機関がインターネットの
”英語圏”で公表しているATF関連の
文書を、数種類読みました。
(下の付記も参照)
ただし、今回はそれらから直接の
日本語化はせず、私なりに要約
しております。短くするために。
ATFの実例
1) 既存のZr容器に入った核燃料の
改良
Zrとはジルコニウムという金属元素の
元素記号で、この金属の合金、たとえば
Zircaloy 4という合金は現在のPWR
原子炉の多くで、「各燃料ペレットを
おさめるチューブ型容器」として広く
採用されています。
問題は、このZrが高温水蒸気と反応、
水素を発生してしまうことでして。
Zr + 2H2O –> ZrO2 + 2H2
という反応式が、ATF関連の技術文書
ではほぼ確実に登場するので、覚えて
おいてくださいね。
で、この水素が原発事故時の「水素
爆発」の原因になることは、ご存じ
ですよね。炉心で爆発ってわけです
から、当然、燃料棒も痛みますし、
放射性物質の漏出も起こります。
ここで、燃料棒の構成を知らないと
「見えてこない話」になっちゃうで
しょうから、簡略化した燃料棒の
模式図を。
そこで・・・
核燃料や燃料棒の材料を変える、
添加物など加えて改良する
といった改善策が登場することに
なりますよね。
そうした改良により、
・ メルトダウンを(いくらか)
起こしにくくなる
・ 放射性物質のリリースも
(いくらか)防止効果が高まる
・ 事故発生からメルトダウンに至る
までの時間が長くなり、メルトダウン
防止のための対応がとりやすくなる
そう簡単じゃ、ない
以上、すぐにでもできそうな改善
提案に聞こえるかも。
実際は、そう簡単じゃありません。
たとえば、
・ 燃料棒の「容器素材」が何なのか
は、燃料内での核分裂連鎖反応に
影響します。
Zr以外の金属を使うと、核分裂が
低下する場合も
→ すると、核分裂連鎖反応を保持
するため、核燃料中のU-235濃度を
上げる必要
→ proliferation risksが悪化
たとえば、TRISOもこうした問題が
ありましたよね。
( h-2), h-3) 参照)
**** ひでの私見 ・・・ ****
私としては、
・ まず、事故を防止しようという
研究や努力がなされてきたことに対し
ては、賞賛を惜しみません。
「原発推進勢力のやることなら、
何でもけなしちまえ!」といった
「対話拒否」の姿勢は、何も建設的な
結果を生みません。
*************************
(付記)
全体に「やかんをのせたら~~」
では、核発電推進勢力からの情報や
論文なども紹介してきました。
そうすると、
「推進派の論文なんて、ウソが書いて
あるだけよ!!」
といった感情的な反応と出くわすこと
があります。
この反応は推進派をおしなべて
「ウソつき」呼ばわりしているわけで、
単なる人格攻撃です。「やかんをのせ
たら~~」では、こうしたargumentum
ad hominem (対人攻撃)を極力避けて
おります。
具体的には、固定ページを作成する
前に、その話題についての推進勢力と
反対勢力との両方の立場からの主張を
読み、そのうえで当該の固定ページを
書いております。
ただし本ページでは、DOEなど推進勢力
からの主張しかインターネット上に
見つかりませんでした。そこで、そう
した主張をベースにATFのあらましを
短く紹介したうえで、ここで「ひでの
私見」として問題指摘をしているわけ
ですね。
核に反対する同志の皆さん、こうした
技術動向にも対応し問題指摘ができる
ように、しようじゃないですか!
**********************
“Flower of the Dawn”
私の昔の作品より
しかし、
・ こうしたATF開発の努力が存在して
きたという事実そのものが、「原子炉は
深刻な事故を起こしえるものだ」って
ことの現れですよね。ならそもそも、
ここまでして核発電に固執せねばなら
ないのか??
・ 確かに「問題発生 → メルトダウン
までの時間」を稼げれば、メルトダウン
防止のための対応はしやすくなります。
でも、たとえば福島第一のメルトダウン
の場合のように、冷却手段が全滅して
しまった場合には、何ができるの??
・ ATF製造で U-235の濃度を高めた
場合、当然、proliferation risksが
悪化しちゃいます。
・ ここまで費用やリソース、時間を
費やしてATFを開発し、あるいは新型
原子炉を開発しているのですが、そんな
費用やリソースなどなどがあるのなら、
再生可能エネルギーのイノヴェーション
に費やしたほうが、よほど建設的です。
(UやPu、Zrなどなどは有限な資源で、
いずれなくなります)
・ ATFといえど、使用済み核燃料など
の放射性廃棄物は相変わらず発生
します。
* 大きな問題点の1つ:
新型原子炉の開発や製造、設置などと
違い、ATFなら既存の原子炉で使用でき
そうですね。これすなわち、「古い既存
原発の再稼働」に悪用されてしまう
恐れが。
「ATFという安全性を高めた新型核燃料
を使うので、再稼働しても心配不要です
よ~~」てなわけですね。
結果、ATFを口実に再稼働が次々と
進んでしまう ・・・ それをやめさせ
たければ、ATFの問題点も指摘、情報
発信していくのが、私たち反核勢力の
任務では?