Kyiv Post
OPINION: Europe in Flames: The Next
Conflict (Part 4)
(論調
炎に包まれるヨーロッパ: 次の紛争
(パート4) )
ウクライナ戦争に関するKyiv Post
ウェブサイトに掲載の論考、
パート4です。
英語元記事を読みたい方々は、
Opinion: Europe in Flames: The Next Conflict (Part 4) (kyivpost.com)
へどうぞ。
The Russo-Ukrainian war is not a local
conflict. The future of Europe is at stake.
An in-depth five-part analysis examines
the options facing the West.
(ロシアVSウクライナ戦争は決して、
特定地域だけの紛争ではない。
ヨーロッパの未来が左右される。
西側を待ち受ける選択肢を考察する、
5つのパートからなる徹底論考の
パート4)
いつもどおり、
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。
今回もかなり長いので、お時間の
ない方は何回かに分けてどうぞ。
*************************************
Hans Petter Midttun
2023年12月27日
NATO
NATOはそれが以前に抱いていた戦略
コンセプトとは矛盾した行動を取って
きており、NATOという同盟の安全を
脅かす紛争をやめさせるため政治的・
軍事的両種のツールを併用するとして
いたのだが、それに失敗した。決意の
弱さと自分たちの価値や原理への忠実性
とが欠落していることが、明らかに
なってしまった。それだけでなく、
軍事面での欠点もいくつか明るみに出て
いる。持続可能性のなさと防空システム
の問題も、そうした実例のうち2つに
過ぎない。
だがアメリカとNATOの危機管理能力
については、ウクライナ以外でも課題
が露呈している。シリアでも、ロシア
は紛争に加担している。その結果、
ロシアが紛争解決の一部になっている。
イスラエルの対ハマス戦争も実例の1つ
だが、ここではロシアのパートナーで
あるイランがプレイヤーの1つになって
いる。さらにバルカン半島でもロシアは
長年、セルビアなどスラヴ系集団と
密接な同盟関係にある。「ボスニアや
ヘルツェゴヴィナ、またセルビアと
コソヴォの間では、未解決の紛争の
亡霊がじわじわと姿を現しつつある。
そうした中でロシアがそうした進行中
の不安定な状況を利用、自分の影響力
を強化する一方でEUとNATOを
弱体化しようと努めている」
NATOの領域の教会、あるいはアメリカ
が利害を有する地域の周辺で新たな危機
や紛争、戦争が発生するごとに、NATO
の軍事力構造は既に縮小ないしは無理に
引き延ばされているにも関わらず、
さらに引き延ばされることになって
しまう。そのため西側の注意は、
ウクライナも含めたすべての無視でき
ない紛争各地に分散してしまう。
したがって問題は、次の危機がいつ・
どこで起きるか、である。バルカン
半島なのか?紅海か?韓半島か?
北アフリカか?スヴァルバール諸島
なのか? <スヴァルバール諸島は
ノルウェー領の群島で、ノルウェー
本土よりかなり北にあるのですが、
ロシアとの利害が衝突しています>
どこになるのだろうか?
NATOの関与
NATOの戦略は2014年から今まで一貫
しており、ロシアが武力で解決しようと
している戦争を政治的に解消しよう、と
いうものだ。NATOとしては非軍事的な
支援の身を行うという方針であり、妥当
と見られる軍事的支援を行うか否かは
加盟各国の判断に任されている。NATO
は今も「現地に軍靴で入らない」という
方針を貫いているが、現実には
ウクライナは重大な脆弱性と欠点で苦悩
しており、ロシアはNATOとEUに
対してHybrid Warを続けており、戦争が
ヨーロッパの政治的局面にもたらす
「津波のようなさざ波効果」の長期的な
影響があり、<もし今回の戦争で>
ロシアが勝つならヨーロッパの安全
保障に 破壊的な影響を及ぼす恐れが
あるのだが。
NATOは、平和を打ち破って危機や
紛争、戦争を引き起こすロシアに好都合
な戦略に今も固執している。したがって
現在のこの戦略は、まさにこの理由
から、持続不能なのだ。
NATOは、火の粉を払う努力を始める
必要
2022年8月、私 (Midttun) は西側
による「ウクライナへの介入は避け
られない」と主張した。アメリカと
NATOとは、ウクライナ防衛のために
軍部隊を配備することはしないと宣言
し、それを今も守っているのだが、
いずれ配備することになるだろう。
現実には西側は、以前から予想されて
いたこのステップへと進むだろう。
同様に、ロシアも兵站の都合から侵略
当初の目標を変更せざるを得なかった
のだが、同じ兵站の都合がNATOの
戦略変更をも強いるだろう。NATOは
戦略コンセプト1999-2022に則り
行動することが求められよう。つまり、
「加盟国の安全を脅かす進行中の紛争
をやめさせる」というものだ。
私の「ロシアは何があってもウクライナ
への配線を認めない」という想定が
正しければ、ヨーロッパとアメリカは
最終的には、ヨーロッパの安全を再確立
するために直接的に介入するしかない
という結論に達する。欧米の選択肢は、
2つしかない。国連の防衛責任の
ドクトリンと <NATOの> 最近の
戦略コンセプトとに則り軍事的に介入
するのが1つ。もう1つはウクライナ
が1か月ほどでNATOに加盟すると
いう政治的解決策だ。(この1か月は
移行期間であり、その間にロシアは
ウクライナ領土から撤退できるので、
NATOの規約第5条の発動を回避する)
<加盟国のいずれか1国が侵略を
受ければ、加盟国全体で反撃する、
という条項です>
いずれの選択肢でもウクライナの独立
と主権を保ち、第二次大戦以降で最悪
の人道的破局を防止、さらに今も
続いているウクライナでの破壊行為を
やめさせることができる。 さらに
この選択により西側はその焦点を、
防衛と人道的・経済的支援から、
再建と <避難した市民の> 帰国と
に移行させることができる。また、
NATOの抑止と軍事同盟としての
ステータスとを再構築できる。
2024年にはそれが現実になって
ほしいものだが、はたして ・・・
希望が持てる要因
今回の戦争が始まった時点でアメリカ
とヨーロッパが <兵器や弾薬などの>
増産を怠ったことについては、既に
述べた。増産のプロセスは遅れて開始
されたのではあるが、その成果が
2024年にはかなり現れてくるものと
期待できる。
今回の全面的な侵略が始まる前には、
アメリカの月間砲弾製造量はおよそ
14,400発であった。155mm 砲弾の
生産高はすでに、2023年12月の時点
で2倍に増大している。 この増産は
2024年の間も続く。アメリカ陸軍は
月間の生産量を3月までに36,000に、
9月までに60,000に、2024年初頭
までには70,000 から 80,000 に増やす
計画だ。議会が補正予算法案をいつ
通過させるのかにより、変更がある。
全面戦争が始まった時点でのEU諸国の
年間での155mm砲弾の生産量は
約230,000発で、アメリカよりもおよそ
1/3多い。だがそれ以降のヨーロッパ
での増産は計画よりも遅く、これはEU
がコンセンサスにこだわる体質である
ことが阻害要因となっている。
ヨーロッパのDIBの一部は今も、防衛
調達の受注を待機している。一方、
フィンランドなど一部諸国はすでに
増産を進めている。2023年2月まで
の1年でヨーロッパが製造した砲弾数は
およそ300,000発である。11月までの
時点で、圏内市場担当の欧州委員会
委員Thierry Bretonはヨーロッパは
年間で約400,000発の砲弾を製造
できるとしていた。エストニアの防衛
大臣Hanno Pevkurはこの数値を
600,000から 700,000と見ており、
2024年中には100万に達すると
している。
西側のDIB全体で、同様のトレンドが
見られる。ADシステムやミサイル
なども増産が進んでいる。最低でも
言えることとして、現在のウクライナ
が受け取っているのは砲弾の「滴り」
であるとすれば、それが2024年末
までには「小川」になるということだ。
それも旧式化した古い砲弾を使わねば
ならないのではなく、現在のスマート
で効果絶大な弾薬を使えるように
なろう。
この一時的なギャップを埋めるため、
ウクライナはドローンの国内生産を
増やして砲弾の不足を補っており、
さらに2024年からは西側企業と協力
して155㎜砲弾を国内で製造する
計画だ。
F-16の戦場導入
現在、ウクライナのパイロットや
技術者たちは、この戦闘機とその
センサーや武器システムの訓練中で
ある。逆に言えば、ウクライナの領空
を防衛するために緊急で必要な人材が、
現時点では入手できていないという
ことだ。これは、ウクライナとロシア
の間での戦闘任務回数の比率にも現れて
いる。今年の夏ロシアが実施した戦闘
任務の回数は、ウクライナの5倍に
のぼっていた。今月になると、この
比率はほとんど7倍になっている。
2024には、こうした様相はすべて
様変わりしそうだ。
今回の全面戦争の開始時点では、
ウクライナは軍用飛行機120機を
保有していたのだが、そのうち使用
できるのはわずか1/3であった。
2024年春になれば、ベルギー、
デンマーク、オランダ、ノルウェーが
.F-16 の納品を始める予定だ。供与
総数は、まだ公表されていない。
デンマークは19機、オランダと
ベルギーのhave 42 and 53 F-16
保有数は、それぞれ42と53だ。
ノルウェーには57機あるのだが、
32機をルーマニアに引き渡し中だ。
つまりアメリカが供与をしない限り、
ウクライナに供与できる戦闘機数は
最大で139ということになる。
実際には、それよりいくらか小さく
なりそうだが。
F-16といえど、万能ではない。とは
いえ、ウクライナに現在あるジェット
戦闘機に比べればはるかに優れている。
ウクライナの現在の戦闘機はソヴィエト
時代の旧式MiG-29、Su-24、Su-25で
あり、既に本来の儒教が切れたものだ。
それを、F-16に取り替えることとなる。
それでもなお、数の上ではロシア空軍に
劣るのだが、航空阻止、近接航空支援、
敵国の防空の抑圧といった能力は劇的
に向上する。それに劣らず重要な点と
して、ウクライナはアメリカと
ヨーロッパの両方からパイロットを
調達できる。
F-16が戦闘で使用されるようになる
のは2024年夏のことで、Valery
Zaluzhny将軍 <ウクライナ軍の最高
司令官> はあらゆる可能な手段を
用いて反転攻勢に取り組むタイミング
に間に合いそうだ。
海での戦闘
前述の通り、ウクライナは巡航
ミサイルやUAV <無人航空機>、
会場ドローン(“Sea Baby”)などを
用いてロシアの軍用艦や潜水艦、船舶
23隻を沈没させ、あるいは破壊して
きた。その結果、水陸両面作戦を実行
するロシア軍の能力がほぼ皆無と
なった。海上での阻止作戦を展開し
ウクライナの港を閉鎖させるロシアの
能力は、減少した。黒海艦隊の一部は
クリミア半島からNovorossiyaへと
配置変更された。.
2024年も、会場での戦闘は引き続き
進むだろう。さらにウクライナは、従来
よりも能力の高い新型海上ドローンも
開発中だ。加えて、新たな海上連携を
先日、英国、ノルウェー、その他数か国
と締結した。こうした提携で、
ウクライナの海上安全保障の強化も
進むことだろう。ウクライナはようやく
海上での戦闘や防御能力の向上のために
必要な支援を手に入れられそうだ。
上記に加え、ブルガリア海軍と
ルーマニア海軍の機雷撤去グループが
既に 、ブルガリア沿岸部から国会の
機雷撤去を開始している。ウクライナ
が新たに設定した海上回廊に沿っての
作業で、10月に始まった。トルコ、
ルーマニア、ブルガリアはこの1月に
共同で黒海の機雷を除去する合同計画
を締結する予定だ。
「黒海での航行の自由」(Freedom of
Navigation in the Black Sea)という
作戦があり、北極海や南シナ海での
<高校の自由を確保しようとする>
作戦を同様に必要不可欠なものだ。
NATOがこれを実施することを決め
れば、直ちに BSFからの脅威は消え
去るはずだ。この作戦を実行する /
しないという選択肢は、ウクライナに
NATOが介入するかしないかという
選択と同程度の確率となろうが、
航行の自由を世界的に保持できない
という場合には、全世界に各種の
悪影響が出よう。
本論調にある見解は著者自身のもので、
Kyiv Postの見解でもあるとは限り
ません。
************************************
「特定地域だけのものではない」という
指摘には、私たち反核勢力は注意が
必要です。
どうも多くの人間は、何か深刻な事態が
発生した場合、「自分の問題じゃない、
XXXという特定地域の問題だ」で
片づけようという誘惑が襲来する
ようです。
「ウクライナの戦争だ、日本の問題
じゃない」 ⇔ ご存じの通り、この
戦争の影響の1つとして、すでに
電気料金が高騰しているのですが。
福島第一が大災害を起こした際にも、
「福島の人たち、かわいそーね」 ⇔
東海村原発が大事故を起こして放射性
物質が大量に出ちゃった場合、風向き
次第で東京23区の大半も居住不能
地帯になりかねないのですが。
「中国南部で新型感染症が蔓延してる
そうだけど、日本まで来ないよね」 ⇔
後にどうなったか、ご存じですよね。
Divide and conquer とよく言われます
が、大問題が発生した場合、
局地化する (特定地域の問題だという
認識を広めてしまう)⇒ その地域の人
たちと、それ以外の人たちとに世論が
分かれる ⇒ 問題の本質や拡大は見逃
される
というパターンが頻出してしまうよう
に考えます。
ウクライナ戦争の例であれば、
「核兵器の影」が及んでいることは
明らかなので、私たち反核勢力が
「世界的に」核廃絶の声を高めていく
ことが必要でしょう。
「XXX地域だけの問題」にして
しまわないように。
では、近日中にこの論考の締めくくり
Part 5 も紹介しますね。