アメリカ政府が無償でPu-239を民間スタートアップに支給!
Beyond Nuclearのウェブサイトより
U.S. to gift Pu-239 to private nuclear industry – Beyond Nuclear
Beyond Nuclearさんによる記事
2025年10月2日
ありゃま、こんなことって、あって良いのでしょうか!?!?
アメリカ政府って今まで、核の拡散に対して大変警戒して
きたはずです。
それがアル・ゴア元副大統領の姿勢などにも、はっきり
表れていました。
(上の肥大した黒いメニューで、付録 w-4) などを参照)
それが今や、アメリカ政府がPuを民間に支給だそうです。
まずは、Beyond Nuclearさんの記事を見てまいりましょう。
Beyond Nuclearさんの発表記事の一部については、
全体を日本語化する許可を私が得ているので、
記事本文を全訳しますね。
< > 内は、私からの補足説明です。
**********************************************
トランプ政権、民間企業に国の核兵器Puのストックパイル
20トンを無償提供。核兵器拡散の危険が。
未公開であった政府文書をPolitico <というウェブサイト、
Politics, Policy, Political News – POLITICO> が入手して
レビュー、さらに下院の民主党議員3名がドナルド トランプ
大統領への書簡でこの文書を問題にしたのだが、同文書に
よれば核発電のスタートアップ企業を対象に国の有する
核兵器グレードのPu 20トンを無償提供する計画を、
ホワイトハウスは進めている、とのことだ。
トランプ政権のこの目論見では、アメリカに冷戦時代から
残っていて恒久的な核廃棄物として処分されるはずに
なっていた核兵器のストックパイルから核弾頭2,000個
相当分<のPu> を取り出し提供することで、アメリカの
民間原子力スタートアップ企業が迅速に事業を軌道に
乗せられるよう支援する。対象となる原子力関連の
駆け出し各社は、それを受け取る代わりに、国内での
発電用に開発する新世代の原発で、そのPuの燃料を
使用することになる。だが、そうした原子炉は現時点では
実証がされておらず、ライセンスもおりて
いないのだ。この目論見の一環として、アメリカのスタート
アップ核企業の一部は核燃料中のPuを再処理して国外に
輸出する。トランプ
政権がこのような兵器グレードのPuの密売的行為を
行うなら、国家による核兵器プログラムのみならず、窃盗団に
よる核兵器用物質の入手とテロリスト組織への販売すら
全世界に大幅に拡散させてしまう結果になりかねない。
このホワイトハウスの目論見では、現時点で核兵器開発と
核発電の推進とを担当しているエネルギー省(DOE)に対し、
兵器グレードのPuを「変質」させて、スタートアップの
核発電各社が新型の設計の原子炉で使用できるようにする
任務を委ねる。そうした原子炉は未完成でまだ承認も受けて
いない(例として、カリフォルニア州サンタ クララに本部が
ある原子炉のスタートアップ企業のOklo社によるAuroraと
いうナトリウム冷却・金属燃料の高速原子炉や、ビル ゲイツ氏
出資のTerraPower社のNatriumという新型原子炉など)
のだが、それでもすでにOklo社などは高速原子炉を世界市場と
国内市場とに売り込むマーケティングを秘かに始めている。
<Natriumについては、上の黒いメニューにあるページ シリーズ
tw-1) tw-2) tw-3) を参照>
ホワイトハウスからのこの大統領令は今年5月に、トランプ
大統領による全米への「核エネルギーを解き放て」という
呼びかけの一環として発されたもので、エネルギー省に
対してはアメリカの余剰Puを活用せよと指示していた。
現時点でのホワイトハウスの計画ではさらに、核弾頭の
部品である「プルトニウム ピット」というコンポーネントの
余剰も、軍部が民間用途に譲渡せよとしている。
<「プルトニウム ピット」: 日本語Wikipediaに解説があります。
「ピット(核兵器)>
Politico の該当記事ではOklo社のCEOであるJacob DeWitteの発言を
紹介しているが、「Okloは、このPu核燃料のプログラムを活用したく
考えている。競合各社とは異なり、Okloの高速中性子原子炉はPuを
「つなぎ材料」として活用し、ウラニウムのグレードを高めるための
プロセスというボトルネックを迂回できる」 そうした「望まれる
グレードのウラニウム」の燃料は今のところ、ロシアから輸入する
しか入手手段がないのだ。つまり、ここで望まれているグレード
<濃縮度> のUとはU-235を20%近くまで濃縮したウラニウム
燃料で、High Assay Low Enriched Uranium (HALEU) と呼ばれる。
Okloの以前の取締役として高名であったChris Wrightは、トランプ
大統領の新たに任命したエネルギー長官であることが確認され、
Oklo社を退いている。Okloの Aurora 原子炉の設計を現在、原子力
規制委員会が検討中なのだが、これは液体ナトリウム冷却・金属核
燃料の高速原子炉であり、賛否の分かれる代物だ。この高速
原子炉が議論を呼ぶのは主に、この原子炉を改造すれば「二重用途」
(つまり、商用と軍事用)の原子炉となり、Puをさらに増殖して
発電にも核兵器にも使用できるためだ。
<高速増殖炉でのPu増殖の危険性については、ページ if-3) を参照>
Okloの開発計画のコンセプトに対しては、2025年7月25日付のある
米議会宛の書簡で反対が表明されている。これには核兵器の世界
拡散に反対する17 名の専門科学者たちが署名していた。最重要の
問題として、アメリカはこの50年間、商用原発でのPu燃料の使用に
反対してきたのだが、それから根本的には何ら変化は発生して
いないのだ。これは、安全保障と経済性の両面での理由による。
その書簡がさらに告発しているところによれば、核兵器グレードの
Puを原発の燃料として使用するというこの提案の予算を承認して
しまうと、核兵器の世界的拡散を加速させてしまうだけだ。
その過程は明らかで、次の2通りがある:
1) アメリカ企業が、Pu核燃料とPu抽出技術とを国際的に輸出する
計画である。
2) アメリカが他国による兵器グレードPuを発電用と称して密売など
することを非難できなくなってしまう。アメリカ自身も、同じことを
やってしまうからだ。
さらに、パイロ プロセシングという一種の「リサイクル」技術で
<使用済み核燃料から> PuとUを抽出して再使用するのは、
すでに経済面での理由から持続的に実行できないことが判明して
いる。核発電は既に経済的に厳しいものであり、それがさらに
悪化してしまうだけである。この再処理プロセスが「安全と
安全保障の両面で大変コストのかかる」ものであることは既に
認識されており、使用済み核燃料からPuなどを抽出する作業も、
それを各燃料に加工するのも、コストがかかり過ぎる」
**********************************

日本特有の核燃料再処理の場合で説明
分離したUとPuをワザワザ一部ミックスして、MOX → だから、核兵器製造用じゃない、という「体裁づくり」 でしょうが、いったんPuを分離精製している以上、いつでも核兵器に使えますよね (潜在的核兵器保有)
日本のものですが、再処理によりUとPuが取り出せることは共通です
アメリカ政府の方針なので、私も含めて他国の市民には抗議も
しにくいのですが、アメリカの反核団体を日本から応援することは
可能です。
上の黒いメニューでページ v-1) をクリックすれば、
Beyond Nuclearさんの連絡先があります。
Bulletin送信のための登録や、寄付などをお願いいたしますね。
それと、今回の記事では技術的な記載も多く、説明が必要でした
よね。
やはり、核発電と核兵器の不可分性を社会に訴えていくなら、
核技術のある程度の理解も欠かせません。ページ a-4) 参照。




