IAEA Weekly News, 10 Oct. 2025
Update 320 — IAEA Director General Statement on Situation
in Ukraine
(アップデート320 — ウクライナ情勢に関するIAEA事務局長の
声明)
オーストリアのウィーン発
2025年10月9日
私はIAEAのnews e-mailにもsubscribeしています。
反原発団体の一部には、「あんな原発推進機関のニュースレター
なんか読んで、何になるんだ!?」と仰る方々もいらっしゃるの
ですが、次の2つの点で必要です:
1) 核発電推進側の見解や主張も知っておかないと、まともな
議論ができません。
2) ことにウクライナ情勢のように戦争が絡んでいる場合、
どちらか一方の報道ばかりを読んでいては、情報操作に
操られてしまいやすいですよね。
それを可能な限り避けるには、「一応、中立的な」国際機関に
よる報道が重要になります。
そのIAEAのnews e-mailの10月10日号から、グロッシ事務局長
によるウクライナ情勢の最新報を、私の抜粋・要約・日本語化
で紹介しますね。
元の英語テキストを読みたい方は、
Update 320 – IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine | IAEA
をどうぞ!
< > 内は、私からの補足説明です。
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IAEA のラファエル マリアーノ グロッシ事務局長が本日述べた
ところでは、ウクライナのザポリージャ原発(ZNPP)への
外部電力供給を復旧させるためのプロセスが始まった。そこに
至るまでに、ここ何週間かウクライナとロシアの両者と頻繁に
接触し、軍事衝突の最中に同原発の外部電力供給が途切れて
しまっている問題に対処した。
ZNPPが先月送電グリッドとの接続をすべて失って以来、
グロッシ事務局長はウクライナとロシア連邦の両者に働きかけ、
同原発に外部電力供給を復旧させるための具体的な提案を
提唱した。同原発の6基の原子炉はすべて停止中だが、
それでもそれら原子炉とと使用済み核燃料とを冷却するため、
外部電力の供給が必要なのだ。
焦点となった課題は、損傷を被った750kVのDniprovska送電線
と330 kVのFerosplavna-1送電線との修復作業を無事に行う
ための安全な状態の確保にあった。この2つの送電線は、
ZNPP近くの戦闘前線をはさんでそれぞれ反対側にある。
「集中的な相談を重ね、Dniprovska と Ferosplavna-1という
電力線により外部電力を回復するためのプロセスが
開始できた」と、グロッシ事務局長は述べている。
さらにグロッシによれば、「ZNPPとのグリッド接続が回復
できるまでにはまだ時間を要するが、ロシアもウクライナも
IAEAと建設的に協力してくださり、核の安全と安全保障に
欠かせない外部電力回復という目的に取り組んでくれた。
その意味では <同原発の安全性という点では>、これ以上
事態が悪化すると誰も得をしない」
ZNPPへの電力供給線としては750kV の送電線が最後に
残っていたのだが、それが9月23日に切断され、それに
より今回の戦争では10回目の外部電力喪失となって
しまった。それに先立つこと約5か月前に、最後に残って
いた330kVのバックアップ送電線が切断されていた。
ロシアとウクライナはともに、こうした損害を軍事活動に
よるものと非難していた。
そうした事情から、この2週間以上、ヨーロッパ最大の
原発であるZNPPでは緊急用ディーゼル発電機(EDG)に
よって冷却用のポンプを稼働させざるを得なくなっていた。
かくして、同原発の核安全ならびに安全保障に関する状況は、
そうでなくても危険に晒されていたのだが、一層危険極まり
ないものとなった。
ZNPPでは現在7台のEDGが稼働中で、その他13台も
スタンバイ状態にある。この原発では引き続きそれらEDGを
交代で使用、必要となる電力を発電している。電力を必要と
するものの1つとして、原子炉の安全システムもある。
現地のIAEAチームは核安全性に関するデータを定期的に
受け取っているのだが、それによれば使用済み核燃料冷却
プールでも原子炉の冷却材でも、温度上昇は見られない。
つまり、どちらの核燃料の冷却も順調に行われている。
今週前半、このチームは現地査察を実施、その時点で
スタンバイ状態になっていた核EDGの状態を調べた。
さらにこのチームは、冷却に不可欠な取水池も平常通り
機能していたことも確認した。この水で、原子炉と使用済み
核燃料とを冷却しているのだ。同原発での放射線レベルも
通常通りであったと、チームは報告している。
このチームは引き続き、同原発周辺で軍事活動が行われて
いると報じている。その原発からの距離は、まちまちだ。
この火曜日 <10月7日> の夜には、このチームのメンバー
たちは5回の爆発が次々に発生するのを聞いている。
<他の報道では2回となっているものもありました>
いずれも原発の近くで起きた爆発で、建物の窓が震えていた。
IAEAのチームは、ウクライナの他の原発にも配置されて
いるのだが、ほとんどの日に軍事活動を報告している。
ザポリージャ以外の原発とは、クメルニツキー、リウネ、
南ウクライナ、そしてチョルノービ <チェルノブイリ>
である。
10月4日にクメルニツキー原発のチームが得た情報によれば、
同原発周辺でドローン16機を観察した。そのうち最も近くに
来たものは、原発から5.5㎞の地点まで接近していた。
その翌日には、南ウクライナ原発の北やはり5.5㎞ほどの
地点で3機のドローンを確認した。
チョルノービ原発ではいまだに、330kVの送電線が先週切断
されたままで、接続が回復できていない。これは約40㎞
離れた地点、Slavutychという町の近郊にある変電所に対し
軍事攻撃がなされたためだとされる。
核安全と安全保障とを確保するためのIAEAの包括的な支援
プログラムの下、クメルニツキー 原発では今週、放射線測定
メーターを受け取った。この調達の資金はチェコ共和国と
日本からの拠出によるものだ。これで機器類の搬入は
159回目となり、今回の戦争中に行われた搬入物すべての
総額は2,000万ユーロに達する。
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さて、軍事的な妨害なく、無事に復旧が進んでくれると
いいのですが~~
なお、原子炉は停止中でも冷却がっ必要で、そのため外部
からの電力を消費する必要があること(たとえば、冷却水を
循環させるためのポンプなどに)については、必要なら
上の黒いメニューの終わり近くにある 付録 w-15) を
お読みくださいな。



