小型HTGR設計企業のRadiant社、ワイオミング州を追われ
テネシーへ
Beyond Nuclear Bulletin10月16日号より
元の英語記事は、次のウェブページでお読みになれます:
Radiant booted from WY Heads to TN – Beyond Nuclear
ザポリージャ原発の外部電力復旧工事が気になりますし、
復旧が始まったとの日本語報道も見かけるのですが、
周辺での軍事活動をまず停止させないと、工事をいくら
進めてもまた一撃で ~~~
ですから、この復旧工事については軍事活動に関する報道を
見つけたら、また紹介しますね。
では、今日は?
Beyond Nuclear Bulletinにある面白い記事を、私の抜粋要約・
日本語化で紹介します。
Radiant Industries社というアメリカの新型原子炉設計開発企業が、
最近までワイオミング州で業務をしていたのに、地元市民たち
からアレコレ反対に会い、テネシー州のオークリッジ国立研究所に
移転した、という記事です。マンハッタン計画の拠点の1つで
あったことで有名な研究所ですよね。
同社が開発している新型原子炉は小型のHTGRで、工場で製造し
現地に搬送するものだそうです。要するに、HTGRのマイクロ
SMRですね。マイクロ原子炉、つまり発電容量が1MW までの
ものです。同社の計画では、年間にこの”Kaleidos”という
HTGR-SMRを最大50基、工場で製造できるようになるそうです。Radiant社ではそのKaleidosをアメリカ国内で販売するだけで
なく、輸出することも考えているようです。
ここですでにお気づきの通り、
・ 年間最大で50基も製造、世界に輸出
・ しかも小型なので地下の秘密基地など、衛星画像では追跡
できない場所への
設置も可能
・ しかもHTGRなので、核燃料はHALEUになる恐れ
というわけですから、proliferation risksが従来の大型軽水炉
よりも大幅に高くなってしまいますよね。
なお、
・ HALEUについては上の肥大化してしまった黒いメニューに
あるページ hal-1) と hal-2) をお読みください。
・ HTGRについては、やはり上の黒いメニューにあるページ
h-0) h-1) h-2) h-3) h-4) をお読みくださいな。
・ SMRについては、ページ
s-0) s-1) s-2) s-3) s-4) s-5) s-6) s-7) s-8) s-9) s-10) を
お読みくださいませ。
特にSMRは目下、核発電推進勢力が必死に売り込んでいる
代物ですので、私たち反核勢力はSMRの問題点などを
よく知っておく必要があります。
Radiant社については、同社のウェブサイトを:
Homepage – Radiant Nuclear
では、そのRadiant社の最近の騒ぎについて、Beyond Nuclear
ウェブサイトの記事から、抜粋・日本語化で紹介しましょう。
元の英語記事は長いので、全部を紹介するのはやめて
おきますね。
< > 内は、私からの補足説明です。
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Radiant booted from WY Heads to TN
(Radiant社、ワイオミング州を追い出されテネシーへ)
2025年10月16日
2025年10月13日、カリフォルニア州のエル 背軍度に本拠を
置く核発電のスタートアップ企業であるRadiant Industries社は
突如、プロジェクト計画の変更を発表した。当初、同社は
その新型マイクロ原子炉(最大で1MWのHTGR)設計の、
アメリカ初の大量生産アセンブリ―ラインを建設する予定
だったが、これに人々の賛同が得られず、変更を決めたのだ。
Radiant社がこのプロジェクトの試験的な実施を始めたのは
今年3月25日のことで、この時同社は一般市民との
ミーティングを行った。その場所はワイオミング州の
バーナン(Bar Nunn)というロッキー山脈の高地地帯に
ある小さな町(人口は3,000人以下)で、その町の住民たちが
このミーティングで同社に質問を突き付けた。集まった
町民たちは誠実な回答を期待していたのだが同社はまともな
回答をせず、それ以降のミーティングは喧しいものとなった。
話は事態の最後へと飛ぶが、それから202日後になって、
Radiant社はCowboy State Daily <というワイオミング州の
地方紙> のエディター宛の公開書簡を発表、Kaleidos原子炉
(ギリシャ語で、「麗しいもの」という意味)のアセンブリ―
ラインの建設場所をテネシー州オーク リッジにあるオーク
リッジ国立研究所へと移すと告げた。もともと、アメリカ
エネルギー省の研究所である。「マンハッタン プロジェクト」
での原爆製造施設の1つであった。
バーナンの町はナトローナ郡 <Natrona County> にあるの
だが、そこで独自のスタイルで社会活動を行い影響力のある
活動家Samantha Fowlerは、次のように述べている。
「Radiant Industries社がワイオミング州に来た時、まるで
開拓者みたいな口をきいていた。その当時から住民たちは
安全性や放射性廃棄物、何かあった場合の責任の所在などに
ついて同社に質問を投げかけていた。同社は質問には答えず、
以前から用意していた通りの言葉を返してきた。バーナンの
町役場と市長は私たちに、放射性廃棄物は「一時的に」
「安全に管理する」と述べていたのだが、廃棄物をどこに
保管するのか、この「一時的」はどの程度の期間なのかに
ついては、まったく説明がなかった。この問題に関し住民が
投票を行うことも彼らは拒否、請願も無視し、この問題を
憂慮していた住民たちのことを、議員たる自分たちが代表者を
務めている市民としてではなく、妨害者であるかのような
振る舞いをしていた。その間、Radiant社は黙していた。
ワイオミングでのこのプロジェクトを指揮していたMatt
Wilsonはある時、突然Radiantの姿をワイオミングの公衆から
消し去った。新たな通知もなく、声明もなく、何もなかった。
Radiant社がテネシー州へと移るというニュースがようやく
報じられたとき、Wilsonは住民たちからの講義も、バーナン
<の住民たち> が抗議を貫いたという事実も、気に留め
なかった。それどころか彼は、まっとうな抗議を貫いた
住民たちを侮辱していた。ワイオミングの人たちは
「核に関するIQが低い」と宣うたのである。それが、
Wilsonの最後の言葉だった」
・・・以下略・・・
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やれやれ、最後の方は、日本でもありそうな展開ですよね。
ただ、原発推進勢力や原発企業などに「核IQが低い」などと言わせないよう、
私たち反核勢力が日ごろから技術面も含んだ情報発信をしっかりと進めていることは必要です。
特にHTGRやSMRとの関係では、いまだに反原発派の一部に見られる
核発電の最大の問題 = 原発事故
という往々にして発作的な反応は、困りものです。
上の参照ページの一部で紹介したように、確かに
SMRにはpassive safetyが備わっており(特にページ s-2) 参照。ただし、付録 w-20) も参照)、
HTGRの実験で、2024年3月に茨城県でJAEAが「わざと冷却系をとめて、
メルトダウンが起きるかどうか試すテスト」を実施したのですが、
現実に「勝手に原子炉は停止、メルトダウンはしなかった」のです。(ページ h-4) 参照)
仮に事故が全くなくなった場合でも、proliferationというさらに深刻な問題は残る・・・というより、
原子炉の事故が減った分だけproliferators は原子炉を「安全に」使用できる ⇒ Pu-239の製造がやりやすくなる
というディレンマは、決して忘れないでください。
所詮、過去の事実からも、原子炉とは核兵器用のPu-239製造装置なのです。

私の産む子供は、私に似る ・・・
私の、昔の20分クロッキー
このモデルさん、お子さんがいらっしゃる様子でした
美術モデルさんの中では、比較的珍しい存在です


