c-10) (その他の「前科」) Begin Doctrine
2026年4月
ここでのBeginとは “kick off” のことじゃなくて、
1977年 – 1983年にイスラエルの首相を務めたMenachem Begin氏
のことです。
1979年にエジプトとの和平条約を締結し、ノーベル平和賞を
受賞した人物でもあったのですが、後の1981年6月にイラクに
あったOsirak原発を爆撃したのですね。(上の黒いメニューに
ある c-1) で説明済み)
その際に述べた “On no account shall we permit an enemy to develop weapons of mass destruction (WMD) against the
people of Israel.” というのが、簡略化して言っちゃえば
Begin Doctrineです。
以下の順で、話を進めますね:
1- そもそもBegin Doctrineとは?
2- その「具体化」の歴史
3- 2026年4月現在の戦争に至った経緯
4- 現実にこのDoctrineを推し進めたら~~
1- そもそもBegin Doctrineとは?
上でも言及しましたが、1981年6月、イラクのバグダッド近郊に
Osirakという核施設がありました。それをイスラエル軍が
爆撃したのです。詳しくは上の黒いメニューにある c-1) で
説明したのですが、中東の敵対国がWMD(大量破壊兵器)を
手に入れることをイスラエルは決して許容しない、という
大きな方針ですね。なにも45年前の出来事だけじゃなくて、
現在行われている(2026年4月)イスラエル + アメリカ VS
イランの戦争も、イスラエルとしてはこのDoctrineに則っての
ことですよね。そうした現時点までの経緯については、
すぐ下の 2- で概略的に説明します。
しかし、このDoctrine、それを推し進めていくとトンデモない
結果を招きかねないことに、すでにお気づきでしょう。
とっくに2019年12月4日、The Washington Institute for Near
East Policyのウェブサイトに公表された記事がその問題を
指摘してました。
このInstituteはそもそもイスラエル寄りのシンク タンクでして、
「何でもカンでもイスラエルのやることを非難する」という
立場じゃ、ありません。そうしたシンク タンクであっても、
下記に紹介するような内容を掲載している、という事実も
忘れないでくださいな。
筆者はJay Solomonさんという、このInstituteのフェローで、
以前にはThe Wall Street Journalの外事コレスポンデント
だった方です。
彼の記事 “What Happens When Everyone’s Trying to Get Nukes?”
という記事から、一部を私が日本語化・要約・抜粋してみます。
< > 内は、私からの補足説明です。
*******************************************
イスラエルの「Begin Doctrine」は、中東の敵対的諸国が
核兵器を手に入れることを食い止めようといいう取り組みだが、
それが実行不能になる恐れがある。しかも、実行不能となった
場合、その次に何があるのかは不明確なのだ。
・・・・・(中略)・・・・・ このDoctrineに則り、1981年に
イスラエル空軍はイラクにあったOsirak原子炉を破壊、2007年
にはシリアにあったal Kibarというプルトニウム製造施設を
つぶした。
<上の黒いメニューにある c-2) で説明済み>
・・・・・(中略)・・・・・
トルコのエルドアン大統領:「トルコが核兵器を保有してはならぬ、というのは容認できない」
・・・・・(中略)・・・・・
サウディ アラビアのモハメド ビン・サルマン皇太子も、イランが核を持つなら、サウディも持つと発言。
<ページ f-10) や f-4) 参照>
***********************************
イラン一国が核兵器を保有しそうな模様と認識されると、
イスラエルが攻め込む(2026年4月現在、現に進行中)
だけじゃなく、他の周辺諸国も核兵器への食指を ・・・
核兵器とは、かくも物騒で厄介なものです。そして核発電は
核兵器から派生し、核兵器開発の隠れ蓑として頻繁に
利用されてきましたよね。
私が「やかんをのせたら~~」を続けているのも、
一市民として核に対する抗議をやめるわけには、いかない
からですね。
2- その「具体化」の歴史
まず、イスラエル自身はおそらくとっくに核兵器を保有している
ことを認識しておきましょう。まあ、同国政府の公式見解では、
「あるとも、ないとも」認めていませんが。
ディモナの核施設の存在についても、イスラエル政府は
「シカト」してますよね。
上の黒いメニューで c-3) c-4) も参照。
自分は核兵器を(おそらく)保有しながら、周辺の敵対諸国が
保有することは決して許さぬ ・・・ なんともムチャな方針ですが、
そのムチャが具体化した実例を時系列で並べていきましょう:
(1960年代 アメリカが核技術をパーレヴィ時代のイランに導入)
1981 Operation Opera (c-1) 参照)
1986 Moldechai Vanunuさん、ディモナ核施設での核兵器開発に
関するwhistle blow (c-3) )
(要するに、この頃までにはイスラエルは核兵器を持って
いた模様)
1991 湾岸戦争で、イラクからのスカッド ミサイル攻撃に
対抗して、イスラエルは あと一歩で核兵器による反撃を
実行するところであった、と見られる
2007 Operation Out of the Boxで、イスラエル軍はシリアに
あったal Kibarというプルトニウム製造施設を爆撃・破壊
2000年代 イランで核開発が進む(詳しくは、d-4) f-2) f-3) f-4) )
2010 イスラエルとアメリカがSTUXNETで、イランの核施設に
サイバー攻撃(d-4) )
2015 JCPOAという核合意、いったん締結
2018 トランプのアメリカが、JCPOAから離脱
2023? 遅くともこの頃までには、イランは60%(あるいは
それ以上)に濃縮したUを保有
2025年6月 イスラエル + アメリカ、イランの核施設を爆撃
2026 4月現在、イスラエル + アメリカ VS イランの戦争が
進行中
3- 2026年4月現在の戦争に至った経緯
今回イスラエル + アメリカがイラン攻撃に踏み切ったのは、
イランの核開発が少なくても「表向きの」理由ですよね。
では、そのイランへの核導入(核発電の技術と核兵器技術とは、
単なる程度の差です)を最初に行ったのは?? 皮肉なことに、
アメリカでした。上の黒いメニューにある f-2) で説明済みです。
1979年以前 Atoms for Peaceの旗のもと、アメリカはパーレヴィ
体制のイランに核技術を導入
1979 イランでイスラム革命、現在のイスラム共和国体制に
2000年代 イランで核開発が進む。 f-3) 参照。同時に、当時の
アフマディネジャド大統領がホロコーストの史実性を否定するなど、イスラエルへの敵対を強める。
2010 イスラエルとアメリカがSTUXNETで、イランの核施設に
サイバー攻撃(d-4) (”秘密の攻撃”で核開発を阻止しようと
したのだが、効果は限定的)
2015 JCPOAという核合意、いったん締結
2018 トランプのアメリカが、JCPOAから離脱
2023? 遅くともこの頃までには、イランは60%(あるいは
それ以上)に濃縮したUを保有
2020年代前半 アメリカのバイデン政権は交渉によってJCPOA
再建に努めたが、失敗(交渉で核開発を阻止しようとしたが、
失敗)
・・・ 結果として、
2025年6月 イスラエル + アメリカ、イランの核施設を爆撃
2026 4月現在、イスラエル + アメリカ VS イランの戦争が
進行中(秘密攻撃も交渉も失敗したので、あからさまな
軍事攻撃だ! けど、効果のほどは???)
* なお、参考テキストとして、IRAN WATCHの次の記事も
挙げておきますね:
A History of Iran’s Nuclear Program
このサイト、The Wisconsin Project on Nuclear Arms Control
という民間非営利団体の運営するものですが、関連する
各種事項を詳しく説明してくれています。
4- 現実にこのDoctrineを推し進めたら~~
まず、交渉がとん挫した ⇒ 武力で核施設をぶっ潰すしかない!
という流れになったわけですが、武力で核開発を確実に
やめさせられるのでしょうか??
仮にやめさせられたとしても、そのROIがあまりにも悪いのでは?
では、こうした核開発を防止するには?
・ 核兵器開発と表裏一体の技術であり、
・ 実際にいくども核兵器開発の「隠れ蓑」となってきた
核発電を廃絶することでしょう。
IAEAの存在理由も抜本的に変更して、核発電の推進をやめ、
もっぱら「核開発か?」と疑われる活動の監視と、核物質や
核技術の世界的な管理とに専念してもらうのが賢明でしょう。
「やかんをのせたら~~」を今まで続けているのも、単に
「原発事故があったから、原発反対!」などと主張したいんじゃ
なくて、
「現在のイスラエル + アメリカ VS イランの戦争のような事態を
なくそう」と主張したい
のですね。
日本には、使用済み核燃料の再処理も、U濃縮もありまして~~
軍事的爆撃は実際には、どこまで効果ああるのか?それを
確認せずに、なかば「盲目的に」武力に信頼を置いたBegin
Doctrineが世界に認められ広まった、と仮定しますよ。
その前提で、日本とその周辺の核武装事情を考えてみます。
そしたら・・・
・ 北朝鮮が、核ミサイル基地とPu製造用とみられる原子炉との
新設工事を始めた!
⇒ \( ; > O<) / 日本を守るため、こちらから先制爆撃を実施せよ!
Begin Doctrineが世界的に容認された世界では、この先制攻撃は
容認されますよね。
( ^ O^) / それはいい、交渉もサイバー攻撃も挫折してきたん
だから、軍事攻撃しか解決はない!
・・・ なんて意見も、巷には既にありますよね。
でも、立場を入れ替えて、北朝鮮の立場から見ると ~~
(;; ◎o◎)」 日本にはとっくに、U濃縮工場もあれば、
再処理工場(Puを抽出する)も稼働する計画だ!おまけに、
FBR計画もあきらめていない! (FBRのブランケットで
生成されるPu-239は高純度で、核兵器には大変使いやすい
代物です。g-8) 参照)
⇒ \( ; > O<) / 王朝を守るため、こちらから先制爆撃を実施せよ!
Begin Doctrineが世界的に容認された世界では、この先制攻撃も
容認されますよね。
以上では「仮定」の上で想像を働かせていますが、すでに
現実においても
・ ロシア軍は日本の東海村核施設を軍事標的の1つに選んで
いました。d-11) の中ほどにある、赤い文字の個所を参照。
もしBegin Doctrineが世界的に容認されたら、ロシアが日本の
核施設を「疑いの目」で見ている限りは、この標的選定も
容認されてしまいます。
・ 上の「1- そもそもBegin Doctrineとは?」で紹介した通り、
イランが核兵器を保有してしまった場合、トルコやサウディも
黙ってはいないでしょう。なら、トルコやサウディにも、
イランの核施設を爆撃する権利がある ・・・???
・ 何よりも、現在行われているイスラエル + アメリカ VS
イランの戦争もBegin Doctrineの現実化という側面を有して
いますし、そのせいでホルムズ海峡も実質封鎖状態に陥り、
全世界が被害を受けています。
↑ こんなDoctrine、平和や安全をもたらすとは思えません。
しかも、
・ JCPOA再建交渉の失敗が実例で示しているように、
外交交渉も万能ではない
・ サイバー攻撃なども、今回の戦争に至ることを防止は
できなかった
すると、もはや「打つ手はない」と諦めて、核兵器が蔓延する
世界の中でおびえつつ生きていくしか、選択肢はない
のでしょうか?
いえ、あります。核兵器と密接不可分な技術であり、現実に
核兵器開発の「隠れ蓑」になってきた核発電も、廃絶する
ことです。
核兵器と核発電の不可分性をしっかりと認識し、両者の廃絶を
求める。いうまでもなく、「やかんをのせたら~~」の
主張ですね。











