d-19) (発電原理) 重水炉って?
2026年4月
イランの中西部、アラークという地にあるアラーク複合核施設。
そこにあるコンダブ重水製造施設に3月27日 JSTに攻撃が
あったと報道されましたよね。アラーク原子炉あるいは
IR-40という名称で呼ばれる(正式名称はコンダブ研究用
重水炉)原子炉があって、まだ建設中だったようです。
合わせて、中部のアルダカン ウラニウム加工施設(イエロー
ケーキ製造施設)にも攻撃があったようで、これも日本語でも
報道されましたよね。
さらに南西部はペルシャ湾岸にあるブシェール(ブシェフル)
原発(現時点では、イランで稼働できる唯一の原発)にも
攻撃があって、ついにIAEAのグロッシ事務局長も警告を
発しましたね。
そうした戦況の中、重水炉とはどういうものかを説明しておく
必要もありそうです。
「やかんをのせたら~~」では今までこの説明をして
こなかったので、ここで重水ならびに重水炉、そして
そのproliferation risksについて短く説明しておきますね。
1 – 重水とは?(基本事項です。「そんなこと、とっくに
知ってるよ~」と仰る方々は、下の 2- に飛んでください)
H2OのHが「軽い」(多数派の)水素同位体つまり H-1 で
あれば「軽水」(その辺にある水)、
Hが「重い」水素同位体つまりH-2 (重水素)であれば
「重水」と呼んでいます。
当然、重水の方が軽水よりも重いです。
「同位体」ってなに?
重水素って、どんな原子の構造?
については、上の黒いメニューにある d-18) ですでに説明して
おります。
2- 原子炉の減速材としては、軽水と重水はどう違うの?
まず、「減速材」とは?
核燃料内のU-235原子に中性子をぶつける ⇒ 衝突すると、
U-235原子が分裂
⇒ 原子内からも中性子が飛び出して、さらに他の原子に衝突
(核分裂の連鎖反応。これが維持される状態が、「臨界」)
⇒ 大量の熱が発生
というのが原子炉内での核分裂連鎖でしたね。
ここで中性子が早過ぎて「通り過ぎて」しまわぬよう、
中性子を「原則」させる物質が、「減速材」です。
軽水炉では、この減速材として軽水を使います。(同時に、
軽水は冷却材でもあります)
重水炉では、減速材が重水です。(重水を同時に冷却材として
使用する場合もあります)
減速材としての重水
減速材にしてほしいのは、中性子を減速することですよね。
ところが現実には、軽水は中性子を吸収してしまう場合が
あるのですね。
対して重水は、既にその水素原子中に中性子を含んでいる
ので、この吸収をしにくいのです。さらに衝突時に、
その水素原子内の中性子が飛び出すこともあって、
連鎖反応を強化します。
つまり、重水は実に優秀な減速材なのですね
だから、重水炉では天然U(鉱石に近いもの)でも核燃料として
使用できます。
実際、カナダのCANDUという重水炉では、天然Uを燃料に
できます。つまり、
あの時間も電力も技術も費用も要する「ウラニウム濃縮」が
不要ってこと。
(ただし、重水そのものが大変高価なので、経費削減には
つながりませんが)
だからこそ、こんな恐ろしい問題も・・・
今のところ核燃料の多くは、U-235の含有量が3~5%です。
つまり、中身の大半はU-238ってこと。
問題は、その核燃料内で「効率よく減速された中性子」がウ
ロウロすると ・・・
当然、軽水の場合よりも多くのU-238原子に中性子が衝突する、
ってことになっちゃいます。
何が起きるか、もう説明済みですよね:
つまり、重水炉ではU濃縮は不要になりますが、Pu-239は
”ちゃんと”できてしまうわけですね。
言い換えれば:
U型核兵器の製造には適さないが、
Pu型の製造には適している
のです。
実際、その昔、重水炉にはproliferation riskは少ないと見なされ
ていた時代もあったようです。U濃縮をしないからですね。
でも、インドが1974年にSmiling Buddhaという核実験を実施した
のですが(上の黒いメニューにあるb-9) )、そのPuはCIRUSと
いう研究用重水炉から取り出したものでした。かくして、
重水炉がPu-239によるproliferationを招いたことが実証されて
しまいました。ああ仏様、笑ってる場合じゃないですよ!
3 – HWR(重水炉)の導入例とその後
過去の導入の実例としては:
インド: 1973、ラジャスタンでCANDUのインド1号機
運転開始 ⇒ 1974年にSmiling Buddha
⇒ カナダ、手を引く ⇒ 1981年に2号機の運転開始
パキスタン: 1972、CANDUを導入 ⇒ 1998、核実験
また、
マンハッタン プロジェクトでも重水炉を実験、
Chicago Pile-3という実験重水炉を作って1944年5月に
臨界に到達したようです。
イスラエルのディモナ核施設でも、1960年代前半に重水炉の
稼働を始めた模様です。
↑ 以上の実例だけを見ても、重水炉がproliferationを招きやす
そうだなあ~という「匂い」がしてきますでしょ?
カナダのCANDU関係者もこの「匂い」は察知したようで、
現在ではCANDU という原子炉を導入しているのは、
カナダ自身とインドとパキスタン以外では
アルゼンチン、中国、韓国、ルーマニアの4国です。
なお、インドがSmiling Buddhaをやらかした後、カナダは
インドとの核発電協力を取りやめました。








