「3か国声明」に対する、イラン政府の反応 2

2021年8月23日付Tehran Timesの
Iran says position on JCPOA talks has not changed – Tehran Times
(JCPOA交渉でのイランの基本的な立場に、変更なし)
という記事の紹介を続けます。長いので、今回も途中まで。
また、次回に続きますね。

JCPOAに残された時間は短い」

このスポークスパーソンはさらに、JCPOA交渉が時間切れになってしまう危険性も言及した。「アメリカがJCPOAのすべてに違反しており、ヨーロッパその他の諸国までが制裁の解除という点で違反しているため、JCPOA再建のための時間はもうあまり残されていない」と、同スポークスパーソンは警告を発した。

「イランはそうした違反に対して報復的な行為を行ってきたが、それらはあくまでJCPOAの枠組みの中に納まるものであり、イランの忍耐力といえど永久に続くものではないことに、他の加盟諸国は注意すべきだ。しかも今回の待期期間の間、アメリカの新しい交渉官たちからは言葉以外に何も受け取っていない。単に、失敗に終わった以前の政権と同じ経路をたどろうとしている」と、Khatibzadeh は続けた。

Khatibzadehはさらに言葉を加え、「JCPOA再建に向けた交渉は、だらだらと続いてはならない。その問題については、交渉の開始当初から強調してきた。何らかの時間の枠組みと基準を設けて、交渉を進めるべきだ。他の加盟諸国も交渉のテーブルに実際に出席してくれれば、この交渉は決してだらだらとしたものには、ならないはずだ。イランは、そうした長すぎる会談を望まない」

(みんな、寝てしもたやんか)

(みんな、寝てしもたやんか)

同スポークスパーソンはさらに、JCPOAの加盟国でもあるヨーロッパの3か国政府が最近発した合同声明についても言及した。8月19日、E3と呼ばれるこれら3か国は、イランの核開発活動について懸念を表明する声明を発表した。

「IAEAが発表した最新の報告によれば、イランが金属ウラニウムをまず20%まで濃縮し、さらにそれを60%にまで高めたうえで生産能力を大幅に増大したことが確認されている。我々、フランス・ドイツ・英国の各国政府はそれに対し深刻な懸念を抱いている」と、その声明にはある。

このE3 諸国は再度、イランによるJCPOA規定への違反を非難、「民生用途だと思えるような用途が見当たらない」核開発を行っていると主張している。

さらにその3か国によれば、「さらにイランはJCPOAで合意していた査察の手続きを撤廃し、IAEAによる「追加議定書」の適用の拒否するようになっており、我々の懸念はさらに深まっている。それに加え、ウィーンでの交渉もイランからの要請により現時点ですでに2か月間中断しており、再開の日取りもイランは約束していない。こうしたイランの行動は、さらに憂慮を増し加えるものだ。イランは交渉を拒否し、ウラニウム濃縮の既成事実を積み重ねており、JCPOAの再建がさらに複雑なものになってしまう」

(実は60%だけど、1%未満ってことにしてるんだよ~~)

(実は60%だけど、1%未満ってことにしてるんだよ~~)

E3声明の結論として、「イランは、JCPOAに違反する行為を速やかにやめるべきだ。我々3国はイランに対し、可能な限り早急にウィーンでの交渉に復帰し、会談の迅速な合意締結と成功とに努めるべきである。我々は、関係者のいずれにとっても時間の猶予がなくなっているという問題を、繰り返し強調してきた」

Khatibzadehによればイランの行動はすべて、同国の国際的な義務に則るものだという。「イランがやってきたことはすべて、NPTや防止策を順守し、規則の枠内で行っている。しかも、IAEAにあらかじめ通知を出してある。」と彼は述べている。 いずれの行動もIAEAの監視下で行い、報告していない活動は存在していない。イランの活動はいずれも平和的なもので、繰り返すが、すべてIAEAが把握している」

Khatibzadeh が強調した点として、こうした政治的声明を発したからと言って、これらヨーロッパ3か国がJCPOAの規定に違反したことの責任を免れるわけではない。
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長いですね。さらに次回に続きます。

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「3か国声明」に対する、イラン政府の反応 1

では、そのイラン政府は、JCPOA再建交渉の今後の展開については、どういう姿勢なのでしょうか?
Tehran Timesから。2021年8月23日付

(元の英語記事は、次のリンクをクリック)
Iran says position on JCPOA talks has not changed – Tehran Times
(JCPOA交渉でのイランの基本的な立場に、変更なし)

テヘラン発 – 2015年の核合意に関するイランの基本的な立場に変更はないと、イラン政府は繰り返した。あくまで、アメリカがイランに課している経済制裁を実質的にすべて解除すべきだ、という立場だ。つまり、イラン背は新政権が就任したが、それによってもウィーンでの核合意交渉でのイランの立場に変化はない、というものだ。

「君の道は曲がってるよ」 「君の方が曲がってるんだよ」

「君の道は曲がってるよ」
「君の方が曲がってるんだよ」

イラン外務省のスポークスパーソンSaeed Khatibzadeh はイラン政権の交代に言及、それにより何らかの変化はあるかもしれないが、ウィーン会談でのイランの基本的立場は変わっていないとした。

2015年の核合意は正式には包括的共同行動計画(JCPOA)という名称で、その加盟諸国はイランを含め、オーストリアの首都ウィーンで会談を行ってきている。アメリカをこの合意に引き戻し、イランにこの合意の規定をすべて順守させることが狙いだ。今までのところ6ラウンドの会談を重ねてきたが、JCPOAの再建という点では、まだ具体的な成果を何も見ていない。一番最近行われた会談は、この6月に終了している。

「現在、イラン政府の最高レベルでは新しい展開が進んでおり、そのため何らかの変化が生じる可能性はある。それでも、イランの基本的な立場に変わりはない。アメリカが実質的に制裁を解除すること、またイラン以外のJCPOA加盟諸国もその規定を順守することが、今まで通り、ウィーンで何らかの合意に達するための前提なのだ」と、Khatibzadeh は火曜日に述べた。

この毎週の記者団向けブリーフィングで、同スポークスパーソンはさらにウィーンでの次回会談ラウンドの開始として考えられる日付についても言及したが、会談再開の具体的な日付を述べることは拒否した。ただ、会談再開については何らかの決定が下されるはずだ、と述べるにとどまった。

「次回会談ラウンドの開始日程については、何らかの決定が下されると考えてよいはずだし、実際にそうなるはずだ」とKhatibzadeh は語った。
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かなり長い記事なので、何回かに分けますね。次回に続きます。

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JCPOA関連で、UK、フランス、ドイツの共同声明

60%超もの純度にウラニウム濃縮をしてしまうと、世界から非難を浴びることは目に見えていますよね。やはり、そうした非難がヨーロッパの3国の政府から出てきました。
ただ、その3国のうち、2つは核兵器保有国だというのが問題ですが。「核兵器保有国」が「持たざる国が持とうとしている」のを、叩いているという指摘も、当然あると思います。
それに、イランに言わせれば、「イスラエルの核兵器には、何も言わないのか!?」ということになるでしょうし。

やはり、核兵器は地球から全廃するしかないですよね。
当然、核兵器製造に実際には悪用された「実績」を持つ核発電も、地球から全廃するしか。

英国政府のウェブサイトより
このプレスリリースの本文は、下記のリンク先に。
https://www.gov.uk/government/news/e3-statement-on-the-jcpoa-19-august-2021

E3 Statement on the JCPoA: 19 August 2021

The governments of France, Germany and the United Kingdom respond to Iranian plans to produce uranium metal.

(JCPoAに関する欧州3国の共同声明: 2021年8月19日
フランス、ドイツ、英国の各政府は金属ウラニウムを清算しようというイランの計画に対し、本声明を発する。)

発表元

Foreign, Commonwealth & Development Office (英国外務国際開発省)

発表日
2021年8月19日
(私による日本語化)

“ IAEAが発表した最新の報告によれば、イランが金属ウラニウムをまず20%まで濃縮し、さらにそれを60%にまで高めたうえで生産能力を大幅に増大したことが確認されている。我々、フランス・ドイツ・英国の各国政府はそれに対し深刻な懸念を抱いている。

“ そうした行為は、包括的共同行動計画(JCPOA)の下でのイランの順守すべき規定に対する重大な違反であることを、我々3国は繰り返し訴える。20%への濃縮も60%へのそれも、核兵器開発での重要なステップであり、いずれの濃縮度でも、そのようなウラニウムには、信頼できる民生用途がイランにはない。さらにイランはJCPOAで合意していた査察の手続きを撤廃し、IAEAによる「追加議定書」の適用の拒否するようになっており、我々の懸念はさらに深まっている。

"There, you gotta stop --"

“There, you gotta stop –“

“ それに加え、ウィーンでの交渉もイランからの要請により現時点ですでに2か月間中断しており、再開の日取りもイランは約束していない。こうしたイランの行動は、さらに憂慮を増し加えるものだ。イランは交渉を拒否し、ウラニウム濃縮の既成事実を積み重ねており、JCPOAの再建がさらに複雑なものになってしまう。

“ イランは、JCPOAに違反する行為を速やかにやめるべきだ。我々3国はイランに対し、可能な限り早急にウィーンでの交渉に復帰し、会談の迅速な合意締結と成功とに努めるべきである。我々は、関係者のいずれにとっても時間の猶予がなくなっているという問題を、繰り返し強調してきた。

以上

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「発電用核燃料で~~す」といったウラニウム濃縮を始めても、
・ いつのまにやら兵器グレードに近づけた濃縮が行われ、
・ それをやめさせるには、諸国の政府がまとまって働きかける必要があるが、
・ それでもなかなかやめさせるには至らない
・ つまり、もとは「発電用」で始まったウラニウム濃縮が、結局はウラニウム型原爆に至ってしまう実際の可能性がある
という深刻な事実の実例ですね。

イラン1国を非難すればよいというもんじゃなくて、「核保有5か国」も、インドやパキスタンも、北朝鮮もイスラエルも、核兵器は全廃するしか、選択はございますまい。

それを徹底するには、核発電も全世界で全廃することが必要ですね。

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イラン、ウラニウムの過剰濃縮を加速

JCPOA交渉のそもそもの発生は、イランがウラニウムの過剰濃縮を始めたことにあるのですが、それについてIAEAから新たな発表がありました。

もう少し早くここで紹介したかったのですが、東京では危険な暑さが再来襲しており、
私が夏バテして寝込んでおりました~~

REUTERS、2021年8月18日

Iran accelerates enrichment of uranium to near weapons-grade, IAEA says
(イランが準兵器グレードのウラニウム濃縮を加速と、IAEA発表)
Francois Murphy記者

元の記事は
https://www.reuters.com/world/middle-east/iran-accelerates-enrichment-uranium-near-weapons-grade-iaea-says-2021-08-17/
にあります。本文中のリンクも、上記本文でお探しください。

ウィーン発、8月17日(ロイター) –  ウラニウムの準兵器グレードへの濃縮を行ってきたイランだが、その過剰な濃縮を加速している。この火曜日(8月17日)に国連の核監視機関であるIAEAが公表した報告による情報で、それをReutersが入手した。西側とイランとはイラン核合意(JCPOA)の再建に向けた交渉の再開を目指しているのだが、この加速により両者の間では緊張が高まる。

イランは以前には、ウラニウム濃縮での核分裂性U235濃度を20%で行っていたのだが、今年4月に60%へと上昇させた。これは、イラン中部のナタンズにある核施設で爆発と停電が発生、主な地下施設であるウラニウム濃縮工場の稼働に障害が発生した事件に対する対応である。

そちらが爆破で来るなら、こっちはもっと強烈な爆破で)

そちらが爆破で来るなら、こっちはもっと強烈な爆破で)

その事件をイランは、イスラエルによる攻撃だとしている。濃縮ウランのU235濃度が90%前後になると、兵器グレードとされる。(元の英語テキストには read more というリンクがありますが、お読みになりたい方は上で紹介したリンクから英語本文をご覧ください)

この5月に国際原子力機関(IAEA)が報告したところでは、ナタンズにある地上の試験的ウラニウム濃縮工場で最大60%までの濃縮を行うに当たっては、最新式遠心分離機をつなぎ合わせたもの(カスケードあるいはクラスターと呼ぶ)を1式使用していた。IAEAの事情通の職員がこの火曜日に述べたところによれば、イランは今やウラニウムの濃縮に第2のカスケードも使用しているそうだ。

2015年の核合意の規定への違反をイランは幾度も犯してきているが、このカスケード増設はその最近のものだ。同核合意によれば、イランによるウラニウム濃縮の上限は3.67%とされている。こうした増強はこの核合意再建のための交渉を危うくするものだと、アメリカならびにヨーロッパの同盟諸国は警告を発してきている。この交渉は目下、一時停止中である。

Reutersの報道によれば、イランは自国の核プログラムは平和目的であると繰り返し主張しており、今回のウラニウム濃縮に関してもIAEAに報告済みだとしている。さらに、イランは確かに2015年の合意から離れてきているが、アメリカさえ同合意に復帰し経済制裁を解除すれば、イランもこの合意順守に戻ると、イランの国営メディアは述べている。

お前たちさえ「平和」なら ・・・

お前たちさえ「平和」なら ・・・

その国営メディアが報じたところでは、イラン外務省のスポークスパーソンSaeed Khatibzadehの発言として、「この核合意の下での義務を参加諸国が再度履行し、アメリカ政府がこの一方的で違法な経済制裁を完全に解除し、それを検証できたならば、イランによる同合意からの逸脱や対抗行為は逆転させることが可能だ」とのべたそうである。

月曜日にIAEAが発表したところでは、イランは濃縮金属ウラニウムの加工を進めている。西側諸国はそれに反対しており、そうした過剰濃縮ウラニウムには、平和的用途はないとしている。

金属ウラニウムは原爆の中核部を製造するために利用できるが、イランはあくまでそのウラニウム濃縮は平和目的であり、原子用燃料開発しているだけだ、と主張している。(元の英語テキストには read more というリンクがありますが、お読みになりたい方は上で紹介したリンクから英語本文をご覧ください)

(Francois Murphyによる報告。Dubai ニュースルームが補足情報。編集はMark Heinrich とPeter Cooney)

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最後の段落にあるように、現在のところ60%もの濃度の濃縮ウラニウムには、「平和利用」はないはずです。西側の立場をとっているんじゃなくて、60%の濃縮ウラニウムをどんな「平和利用」に使うのか、イランは明示すべきですね。そうでないと、訳が分からず、疑心暗鬼を増強させるだけです。
さらに、イランだけが問題なわけじゃなくて、ウラニウムの濃縮がいったん広まってしまうと、どこの国であれ過剰濃縮が始まった場合、それをやめさせるのが如何に大変かを実証する実例ですよね。
当然、ウラニウム濃縮と使用済み核燃料再処理とは、各国で行わず国際管理下に置くべきだという動きも出てきているわけですね。本「やかんをのせたら~~」のページ add-2) (追加)もご覧ください。(上の黒いメニューの下部)

 

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JCPOA再建交渉が停滞中、続き

CNBCによる、JCPOA再建交渉が停滞している問題についての記事、
後半の紹介を続けます。

元の記事は、次のリンク先に。
https://www.cnbc.com/2021/08/03/iran-nuclear-deal-talks-are-stuck-after-substantial-progress-negotiator-says.html

(私の日本語化、前回の続き)

「このプロセスを、いつまでも続けるわけにはいかない」

先週、アメリカのAntony Blinken 国務長官は、この交渉がもう2か月近くも停滞していることに懸念を表明した。

7月29日にクウェートで開かれた記者会談で同国務大臣は、「外交努力に努めているが、このプロセスをいつまでも続けるわけにはいかない」と語った。

いつまでトイレ入っとんねん??

いつまでトイレ入っとんねん??

「イランがその核プログラムの活動を継続するようであれば、そのうち、JCPOAが再会できても、せっかく今までにJCPOAで達成してきた成果も充分には取り戻せなくなってしまう」と、Blinken 国務長官は述べている。「今、ボールを握っているのは、イランだ」とも。

新たに成立するRaisi政権がすでに各国の交渉団と話し合いをしたのかどうかという質問に対し、先述のドイツ高官はまだ何のコミュニケーションも行われていないと答えている。

「イランの政府関係者の間で、この交渉をどう進めるかという話し合いが真剣に行われていることを示す兆候は、充分にある」と同ドイツ高官は述べており、Raisiがこの交渉そのものから撤退してしまうのでは、という懸念を否定した。

火曜日にそのRaisi がテレビ演説で述べたところでは、「アメリカによる暴君のような経済制裁」を解除させ、イラン市民の生活水準を向上させるという。

この木曜日(8月5日)に大統領に就任したRaisiは、この6月に、バイデン米大統領との会談はあり得ないと発言したが、ホワイトハウスはアメリカがそもそも現時点でイランと外交関係を保持していないと述べ、その発言を無意味だとした。

アメリカはRaisiを、人権侵害の容疑で制裁対象の個人の一人としており、そのイラン新大統領はウィーンでの会談でも強硬派姿勢に出るものと見られる。

「次のステップとして予想していることだが、イランの政府が固まれば、イランの交渉団もウィーンに戻ってくるのではないか。そうなるのは、8月の中旬だろう。そのうえで会談を再開して、イラン側がどういう立場で交渉に臨んでくるかを見よう」と上述のドイツ高官は述べている。

これじゃ、困る ・・・

これじゃ、困る ・・・

「議論の余地が残る問題」

イランと西側諸国とは第7ラウンドの会談へ向けた準備を進めている模様だが、同ドイツ高官によれば、今までの交渉は「極めてまっすぐなもの」であった。

「JCPOAをもう一度機能させるにはどうすれば良いのかについては、イラン側と極めて良好に理解し合うことができた。だが、まだこれから議論の必要な問題も残っており、重要な問題だ。そのことを、軽視したくはない」と、同高官は語った。

残る問題の主なものとして何があるのか、と説明を求められた同高官は「イランの新政権誕生とともにアメリカが撤退するのでは、という懸念をイラン側は繰り返し表明している」と答えた。

「イランがJCPOAの合意を完全に順守している限り、もう第2のトランプが登場しないようにしてもらいたいと、イラン側は望んでいる。アメリカが一方的に合意を破棄するようなことが、二度とないようにしてくれ、というのだ」と、同ドイツ高官は語る。
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長い記事でしたが、以上です。

次回は、この「ウラニウム過剰濃縮問題」に関する IAEAの声明を取り上げます。

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CNBCより ー JCPOA再建交渉、停滞中

しばらく中国のICBM用サイロ??建設の問題を扱っていて、
JCPOA(イラン核合意)の件を取り上げませんでした。
その間に、交渉はどうなったのでしょうか?

CNBCの報道より
元の記事は、下記のリンク先に。
https://www.cnbc.com/2021/08/03/iran-nuclear-deal-talks-are-stuck-after-substantial-progress-negotiator-says.html

Iran nuclear deal talks are stuck after substantial progress, negotiator says
(イランとの核交渉、大幅な進捗を見たが座礁中 ・・ 交渉官たち)

202183日発表

Amanda Macias

要点

  • 本交渉に参加しているドイツ高官によれば、最初の3か月間に同交渉は「大幅な進展」を見たが、今のところ2か月間停滞している。
  • この停滞が始まったのは、イランの新大統領Ebrahim Raisi が選出された時のことだった。Raisiは今週、Hassan Rouhani の後継として大統領に就任する。
  • 先月、バイデン政権の高官が、匿名を前提に記者団に告げたところでは、今まで6ラウンドの会談を重ねてきたが、アメリカの交渉団はいまだに何の合意の締結も見ていない。

ワシントン発  2015年のイランとの核合意を再建しようという微妙なバランスが要求される会談は、6月にはあと2週間ほどで合意に到達できそうな模様であったが、同会談に参加しているあるドイツ高官によれば、複雑な問題が何件か未解決のままである。

「あと2mだったのに・・・」

「あと2mだったのに・・・」

今年春、包括的共同行動計画(JCPOA)の参加国がこの会談を開始、終日の会談が今までに6ラウンド行われた。会場は、ウィーン市内のいくつかのホテルであった。

同ドイツ高官によれば、「3月には我々も、同盟国であるアメリカも、この交渉を早く締結させるつもりでいた。どうも、思っていたよりも長くかかっている。だが6月の時点では、政治的意志をもってあと2週間、真剣な交渉を重ねれば、合意に到達できると考えていた」

その6月の時点までは、交渉は「極めて大きく進展していた」と同高官は述べている。

「この種の交渉では必ずそうだが、もっとも複雑な問題は最後に取り組むことにされ、なかなか解決されないものだ。だが行ってみれば、今回の交渉ではまず白紙から始め、6月までには4種類の文書、1520ページほどもある合意文書を交わしていたのだ」と、同高官は述べた。

今後の交渉をしやすくするため、同高官は匿名を前提として記者団に話をした。

目下、同交渉は一時停止したままであるが、これはイランの新大統領Ebrahim Raisiの選出の時に始まった。今週、彼はHassan Rouhaniの後継として大統領に就任する。

2015 年のJCPOAの締結に一役買ったのはオバマ政権で、これによりイラン経済を麻痺させ同国からの石油輸出をほぼ半減させていた経済制裁が解除された。加盟国はアメリカ以外には、フランス、ドイツ、英国、ロシア、そして中国がある。

数十億ドルにも達する経済制裁を解除してくれれば、核製造プログラムの一部を廃止し、核関連施設を国際機関による査察に開放することに、イランは合意している。

「石油売らせてくれたら、核見せまっせ」

「石油売らせてくれたら、核見せまっせ」

2018年、当時のアメリカ大統領Donald Trump は選挙公約を守り、JCPOAからアメリカを一方的に撤退させ、JCPOAを「歴史上、最悪の合意」だとした。Trump はさらに、いったんは解除されていたイランへの経済制裁も復活させた。この歴史的な核合意からワシントンが撤退したことを受け、同合意に加盟している他の諸国はこの合意を何とか保とうと懸命に努めてきた。

Trump政権の「最大限のプレッシャー」というキャンペーンのため、そうでなくても低迷していたイラン経済はマヒに陥り、石油輸出も大幅に減少した。かくして、イラン政府とアメリカ政府の間の緊張が、沸点に達した。

バイデン政権は発足以来、同合意の再建に努めており、ウィーンでの会談も最近、第6ラウンドを終了した。

先月、バイデン政権のある高官が匿名を前提に記者団に述べたところでは、これまで6回の会談を重ねてきたが、アメリカの交渉団はまだ何も合意に到達していない。同高官がさらに述べたところによれば、アメリカは他の加盟諸国とともに第7ラウンドの会談に加わる意志がある。これら加盟諸国のことを、P5+1とも呼んでいる。

今後の時間的な予定を尋ねられた同高官だが、交渉がいつ再開するのかというスケジュールの詳細については、一切の詳述を避けた。
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この記事も長いので、2回に分けます。
後半は、次回!

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Federation of American Scientistsのウェブサイトより、中国のサイロ新設の件 -4

ほんと、この報告は長いですよね。
今日で、最後になります。

元の英語記事は
https://fas.org/blogs/security/2021/02/plarf-jilantai-expansion/
にあります。

(私による日本語化)
(続き)

アメリカの対ミサイル防衛システムがもたらしえる影響を克服する   アメリカのミサイル防衛システムのため、中国の報復能力が無意味になってしまうのでは、という懸念は絶えず深刻なものであった。中国は既にDF-5B というICBMに複数核弾頭(MIRV)を搭載することを決定している。核ミサイルが最大で5個までの核弾頭を搭載できるのだ。新型のDF-41 ICBMもMIRV搭載が可能で、将来配備予定の JL-3 SLBM も複数核弾頭を搭載できる。サイロ配備型の固形燃料ミサイルと、それが搭載する核弾頭数とを増やすことで、中国はミサイル防衛システムを確実に突破する核兵器を追求していくことであろう。

固形燃料式サイロ配備ミサイルへの移行   中国の旧式ICBMである液体燃料式ミサイルは燃料充填に時間がかかり過ぎ、発射までに時間が大変かかる。そのため、敵国からの攻撃に曝されやすい。さらに、液体燃料を扱うのは面倒で、危険が伴う。固形燃料式サイロ配備ミサイルに切り替えることで、敵からの攻撃時に機能を維持できる能力、稼働手順、さらにICBM軍の安全を向上できる。

まだ燃料満タンにならへんの??

まだ燃料満タンにならへんの??

非戦時にもミサイル警戒態勢を保つよう、変更  中国のミサイルは平時には核弾頭を外して配備されているものと見られているが、アメリカやロシアのものはいつでも発射できる状態で配備されており、発射命令があれば短時間で発射できる。アメリカとの軍事競争がエスカレートしているため、中国もミサイル発射までにそのような時間をかけて準備している余裕があるのか、疑わしい。現状のままでは、中国は信頼できるだけの抑止力を維持できない恐れがある。2020年にアメリカ国防総省が確かなこととして述べたところでは、ジランタイのサイロ建設は「中国が米ロにか適わぬまでも、何とか抑止力を持とうと努めていることの、新たな証拠だ」。

ICBM軍のバランス  中国のICBMの80%は可搬式で、数も増大中である。中国はICBM軍全体の増強に努めているので、サイロ配備ミサイルも増強し、しかるべき役割を果たさねばならない。

中国の核攻撃力の増強   中国は従来、「最低限の抑止力」という原則を保ってきたため、今までは核ミサイル発射装置を比較的小さなレベルに保ってきた。だが今や中国指導層は、核弾頭を増やしたミサイルを増強し、敵国の軍事施設に対する脅威を強化せねばならないと、判断した可能性がある。アメリカ、インド、ロシアは今も自国の核兵器装備の近代化に努めており、核兵器の強化あるいは増大を進めている。

誰かが増やすと、その他も増やしてしまう ・・・

誰かが増やすと、その他も増やしてしまう ・・・

短時間で発射できる通常兵器の強化   ジランタイで新設中のサイロは核ミサイル用のものとみなされているが、1つの可能性として、まず通常弾頭の弾道ミサイルをサイロに配備するという選択もあり得る。(本筆者は、その可能性を提唱しているわけではないが) そうした配備を実施すれば、戦略的(大陸間など)レンジではなく中距離の標的に対して極めて短時間で攻撃を行う能力が得られる。

国家の威信   中国は富を増やしており、従来よりも力を付けている。強国はミサイルもそれだけ多数保有するものであり、そこで中国も、強国としての立場を強く打ち出すため、ミサイルを増強する必要がある。

現代型の固形燃料式ミサイル用サイロをジランタイ近郊に12基以上も建設しているという事実から、中国の核兵器戦略は、サイロ配備のミサイルへの依存度を高めようとしている可能性がある。その動機が核兵器全体の増強にあるのか、脆弱性の拡大に対する対抗なのか、それとも短時間で発射できるICBMが将来どのような役割を演じるのかに関して独自の考えがあるのか。それは、今後の展開を見ないと判らない。いずれにせよ今回のサイロ建設は明らかに、核兵器の近代化を推進する核抑止のダイナミクスを思い起こさせる事実であり、他の何よりもジランタイのトレーニング地域を観察すれば、中国の労力を探ることができる。

***************

長かったですね、ようやく終わりました。

上のリンク先、つまり元の英語ページには、本件に関する背景情報へのリンクなどもあります。英語の書物など読める方々は、どうぞ!

 

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Federation of American Scientistsのウェブサイトより、中国のサイロ新設の件 -3

このFederation of American Scientistsの記事、かなり長いですね。
続きを紹介します。

英語の元記事は、
https://fas.org/blogs/security/2021/02/plarf-jilantai-expansion/
にあります。

(私による日本語化、続き)

ドライブスルー式トンネル

今回のトレーニング地域にみられる新施設の中でも特に関心を引くものとして、2か所のドライブスルー式トンネルがある。これらのトンネルは、移動式発射装置で利用するものかもしれない。正確な機能は不明だが、その物理的寸法と位置を見ると、これらトンネルは発射台やミサイルの再装着施設を覆い隠すためのものかもしれない。移動式発射装置は、隠さずに稼働させると、大変攻撃に弱いものだ。

現時点までに発見されている2か所のトンネルは、トレーニング地域の両端に配置されており、このトレーニング地域には新たな施設や発射台が工事中で拡張が行われている(英語本文の下の図を参照)

この2か所のトンネルは長さがおよそ350メーターで、計算上はDF-41の発射台12台を収納できる。より現実的には、実際に収納できる発射装置はそれより少数で、支援用車両も収納するのであろう。トンネルの入り口は幅と高さがおよそ6メーターで、大型の発射装置も充分に入り込める。

各トンネルには出入り口が2か所あり、片側には長さ75メーターの部分があってトンネルのその他の部分よりも幅が広くなっている(20メーターと13メーター)。この幅広部分はおそらく、ミサイルの再装備あるいは人員が集まる場所であろう。この幅広部分に隣接しているのが四角形の建築物で、3棟の高い建築物がある。これらは、地上からトンネルに出入りするため、あるいは耐天候制御システムを収納するためのものであろう。

こうしたトンネルは、稼働旅団基地エリアにおいても建設中である可能性がある。ただし、本記事の著者はまだそれを発見してはいない。

覗いてみたら ・・・

覗いてみたら ・・・


要約と意味合い

ジランタイ近郊のPLARFのトレーニング地域は独自ののぞき窓とでも呼ぶべき存在で、そこからは中国の核に関する姿勢を探ることができる。中国は現時点で18基から20基のサイロを運用しており、ジランタイのトレーニング地域に建設中のサイロが出来上がると、この数は一気にほぼ倍増してしまう。今までのサイロが旧式の液体燃料式DF-5というICBMを配備するためのものであったのに対し、ジランタイの新たなサイロは1基を除きすべてそれより小型で、新型で小型の固形燃料式ICBM、たとえばDF-41やことによってはDF-31Aなどに合わせた設計になっている模様だ。

1か所のトレーニング地域内にこれほど多数のサイロ(今までのところ、16基)が建設中であるのは、奇妙なことだ。(たとえばウーザイ(五寨)の発射試験施設には、トレーニング用サイロは2か所しかない) サイロが2基もあれば、トレーニングには充分であると考えられる。1つの説明として考えられるのは、中国が数種類のサイロ設計を試しており、どのタイプのサイロをどの旅団の基地地域に最終的に建設すべきかを見定めようとしている、という可能性だ。米国国防総省が2020年に断言したところによれば、ジランタイはDF-41を「サイロ配備するための少なくてもコンセプトをまとめるため、利用されている可能性が高い」  その目的のため、同地域のサイロは実際の使用能力もある程度実現する可能性すらある。

攻撃されたら報復できるよう、武器を増やしとかなきゃ~~

攻撃されたら報復できるよう、武器を増やしとかなきゃ~~

仮に中国のICBM用サイロの数が倍増あるいは3倍増したとしても、アメリカやロシアが運用しているICBM用サイロの個数と比べれば、はるかに小さいものにすぎない。その事実は、指摘しておくべきだ。アメリカ空軍にはサイロが450基あり、そのうち400はミサイルを搭載している。ロシアは稼働可能なサイロを約130基擁しており、それに対し中国のジランタイで16基新設というのは、アメリカのICBM軍団1つの中の1中隊が持つサイロ数の、1/3にも足りない。

だが中国にしてみれば、あくまで「最小限度の抑止」というのが核戦略であり、従来よりも多数のサイロをジランタイに建設するのは重要なことなのだ。運営コンセプトが定まれば、中国国内の他の旅団基地においても、新しいサイロのクラスターが2~3箇所、建設開始となる可能性は否定できない。今までのところでは、中国のサイロ建設はアメリカとのサイロ数での対等化を狙ったものではなく、準対等化さえ目指すものではないのだが、ならはそもそも、中国は何のためにサイロの新設などに取り組んでいるのか?その建設の動機とは?その説明として考えられるものが、いくつかある。(あるいは、それらのうちいくつかを組み合わせた説明も可能だ。以下、そうした可能な説明を列挙するが、順序には意味はない)

報復能力の保護強化  現在のICBM用サイロでは、アメリカやロシアからの攻撃に対して脆弱すぎると中国が懸念している可能性がある。サイロの数を増やすことで、先制攻撃を受けても存続できるICBMの数が増え、報復攻撃でそうしたミサイルを発射できる。現在中国は車載の可搬式固形燃料ICBMを開発中だが、これはアメリカCIAの分析によるなら、アメリカ海軍がTrident II D5ミサイルを太平洋に配備したことに対する対応であった。こうした作用・反作用の力学こそ、中国が目下進めている核兵器近代化の要因の1つであろう。
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ほんと、長い記事ですね。最後の部分は、次回に。

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Federation of American Scientistsのウェブサイトより、中国のサイロ新設の件 -2

https://fas.org/blogs/security/2021/02/plarf-jilantai-expansion/

にあるFederation of American Scientists、Hans Kristensenさんによる報告の続きです。
かなり長いテキストですので、次回にも続きます。

(私による日本語化)
サイロの建設

ジランタイ トレーニング地域での新たな動向の中でも最も重要なものの1つとして、弾道ミサイル用とみられるサイロがかなりの個数、建設されている。いずれ、こうしたサイロからミサイルのテスト発射がなされるのを見ることになるかもしれない。

基地のある地域にはDF-5という大型ICBM用のサイロがあるのだが、このジランタイ地域のサイロはそれよりも、ほぼすべて小型である。アメリカ国防省によれば、「ジランタイのサイロは、DF-41の基地とするための作業のコンセプトを最低でも得ることを目的として、使用しているのであろう」

現在建設中のサイロは、少なくても16基ある模様だ(下の画像を参照)。それらには多様な寸法のものがあり、今までのところ建設工事は3段階で行われてきている。まず2016年に最初のサイロ施設の建設が始まり、次に「ロシア型」サイロ4基の建設が2018-2020年にかけて行われた。そして2020年終わりごろ、さらに新たなサイロ11基の建設が始まった。いずれのサイロも、トレーニング地域の中央部10×20㎢の範囲内に配置されていた。サイロ間の間隔は2.2から4.4キロで、1つの核攻撃で2つのサイロが破壊されることのない間隔であったのだろう。

サイロ間の間隔、かなり簡略化した説明

サイロ間の間隔、かなり簡略化した説明

今回のサイロ建設が始まったのは2016年のことで、1基のサイロと地下施設数か所で始まったものとみられる(39.7000, 105.4164)。その輪郭と特徴とは従来のものと類似はしているものの、同一ではない。その実例が、ウーザイ発射試験場にある新設サイロだ(38.888, 111.5975)。ジランタイ施設にあるものがサイロかどうかはまだ確認されておらず、その建設現場は大型の建造物で数年間にわたって覆い隠されていた。だが2019年の衛星画像から確認できたこととして、半円形の構造物が見られ、サイロの壁面である可能性がある。もしこれが正しければ、DF‐5程度のサイズのミサイルを想定しているのかもしれない。

今回のサイロ建設の第2段階が始まったのは2018年6月のことで、今やほぼ完成している。中央のトレーニング地域の西端に沿って配置された4基のサイロも含まれる。建設工事中にこれらのサイロは、第1段階と同様に構造物で覆い隠されていた。この4基のサイロはロシアのものによく似ており、地表のインフラストラクチャーがほとんどない。ミサイルを搬入してくるトラック用の曲がった道路、ミサイル搭載用の全長30mの発射台、そして直径がおよそ6メートルのサイロ蓋がある程度だ。

この第2段階の工事が始まったのは、アメリカ国防総省による中国の軍事動向に関する年次報告2018年版が出る直前であった。その報告には「中国はDF-41の発射方式をさらに拡充することを検討している模様だ。それには、鉄道での可動式の発射や、サイロ発射も含まれる」との記載がある。

2019年9月の記事で私(Hans Krinstensenさん)が取り上げたのはこの第2段階の建設で、その発見事項は後にアメリカ国防省による中国の軍事・国防の動向に関する2020年版議会向け報告においても認められたものだ。同報告によれば、そうしたサイロのサイズを考えると「DF-5の装備は考えられず、DF-41や中国の小型ICBMであるDF-31Aなどの装備を検討してのサイロかもしれない」とある。

空気を入れて、隠しましょ

空気を入れて、隠しましょ

第3段階の工事は2020年後半に始まり、今までのところでは最大規模のものだ。2021年の最初の2か月のうちに、合計で11基のサイロと急速に拡大してきている。工事はまだ初期段階だが、衛星画像を見ると今回のサイロは第2段階の4基よりも小型である。だが、今回の建設現場は様子が異なる。以前のサイロが強固な構築物で隠されていたのに対し、今回のサイロを隠しているのは、耐天候用テントあるいは空気を入れて膨らませる構造物のようだ。

ジランタイでのサイロ建設と並行して、ホーナン(河南)省のスンディアン近郊でもサイロが建設中である可能性がある。

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かなり長い記事なので、続きはさらに次回に。

 

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Federation of American Scientistsのウェブサイトより、中国のサイロ新設の件 -1

中国軍部がユーメンやハミ、ジランタイなどに建設中なのは、風力発電所なのか?
それとも、ICBM用サイロなのか??

その決め手は衛星画像の分析ですが、今までの報道記事はそうした技術的な側面を
あまり詳しく取り上げてくれていませんでした。

そこで詳細な考察のあるテキストを探したところ、ありました!
Federation of American Scientists(アメリカ科学者連盟)のウェブサイトに、

China’s Expanding Missile Training Area: More Silos, Tunnels, and Support Facilities
(中国、ミサイル用訓練エリアを拡張 ― サイロやトンネル、支援施設を増設)

という報告がありました。著者は Hans Kristensen、 2021年2月24日付のテキストです。

それを何回かに分けて、日本語化して紹介してまいりますね。
元の英語テキストは、
https://fas.org/blogs/security/2021/02/plarf-jilantai-expansion/
にございます。

「風力発電所なんだったら、なんでこんなもんがあるのよ!?」

「風力発電所なんだったら、なんでこんなもんがあるのよ!?」

(私による日本語化)

中国中部の北側に、トレーニング用地域が不規則に広がる。そこで中国は弾道ミサイルの新たなサイロを増設中とみられる。

最近入手した衛星画像からは、少なくても16か所のサイロが建設中と思われる。この地域でのサイロに対する最初の言及があったのはわずか2-3年前のことであった。それから短期間のうちに、かなりの増設をしたことになる。

同じ衛星画像からは、独特なトンネルの姿も窺える。ミサイル発射ユニットまたは搭載操作を隠ぺいするためのものとも思われる。

このトレーニング地域は内モンゴル自治区のジランタイという町の東部にあり、中華人民共和国ロケット軍(PLARF)がここでミサイル部隊の人員訓練や、道路搬送型ミサイル発射台ならびにそれらのための支援車両の操作のための精密な手順の実施を行っている。
ジランタイのPLARFトレーニング地域

ジランタイのトレーニング地域は140㎞ほどの長さで、面積はほぼ2,090平方メートルに達する砂漠と山岳の地帯である。比較的最近できたトレーニング地域で、施設の大半は2013年以降に出来たものだ。それ以来拡張を続け、ミサイルの発射練習や搭載訓練では今や140台を優に超えるミサイル発射台をミサイル部隊が使用している。また発射部隊が短期間滞在してさらに別の場所へと移るキャンプ地も24か所以上あり、発射装置や支援車両の修理などを行うハイベイ型(高い位置に設備がある)修理工場も5か所にある。加えて、必要物の大型供給基地1か所と隣接する支援施設なども揃っている。(画像を参照)

このトレーニング地域では盛んに活動が行われており、現時点でいくつかの地区へと拡張が進んでいる。特に、中央部と南北とに拡張が目立つ。この拡張工事では、発射台やミサイルを扱うハイベイ型新施設、発射装置が使用する無数の発射台、ミサイル用サイロ、発射部隊が利用するキャンプ場、発射装置を隠し保護するための地下施設などを建設している。

「見るな」と言われると、みんな余計に見てしまう

「見るな」と言われると、みんな余計に見てしまう

この地域のマッピングは大変な作業で、この2年間に行われた建設活動をカバーせねばならなかった。困ったことに、Google Earth にあるこの地域の画像は極めて限られており、しかも昔のものなのだ。比較的最近(2019)の画像があるのは、北東部だけである。今ある画像の大半は、2013年から2014年のものだ。この地域に対してはかなり世界の関心が向けられていることを考えると、これは奇妙な現象だ。そこで本記事の著者はGoogle Earthに頼るのでなく、本記事の末尾に列挙してある資金援助者の皆様からのご支援を活用して、Maxar’s Secure Watchというサービスに加入、最新の高解像度画像を入手できた。このサービスで広域の画像を集めると膨大な経費がかかり、またPlanet Labs だと、低解像度の画像でも大変な出費となってしまう。幸運にも、ヨーロッパのSentinel Hub Playground というサービスなら、低解像度ではあるが無料の画像を利用でき、それを有用なツールとして新しくできた構造物(画像は5日ごとに更新される)を検知、さらに検知した新しい構造物をMaxarの画像で詳しく精査した。

この地域をモニターすることで、PLARFがどうやってその移動式ミサイル部隊や作戦に関与する車両類を配備しているのか、潤沢な情報が得られる。さらに、中国全土にわたって、実際に吉が設けられている箇所にはどのような構造物や特徴がみられるのかも、分かってくる。そのうえ、中国の核兵器近代化の現状と今後を知るための手がかりも得られ、中国の戦争能力に関してアメリカ軍の士官たちが主張していることがどこまで真実なのかを評価するうえでも役立つ。
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まだまだ続く長い記事なので、続きは次回以降に。

 

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