The Diplomat の記事より
(もとは隔月刊の印刷ニュース媒体で、オーストラリアで発行。
2009年にオンライン雑誌に移行、現在はワシントン DCに本拠)
日本語メディアでも報道されているように、韓国の新政権は
Nuclear Renaissanceないしは “Nuclear Reconquista“ とでも
呼びたくなる核発電方針に転向したようです。
すでにUAEには韓国製の原発がありますが、それを今後、
世界に広めていく所存のようですね。
そうなるとすぐに、日本の反原発派の皆様からは、「韓国の
原発で事故があったら、風向き次第で日本にも放射性物質が
飛んでくるんじゃないの!?」、「東海 (日本海) の魚は、
食べて大丈夫??」 といった反応がありそうですよね。
無論、それらも深刻な問題ではあります。
でも、私がまず気にしているのは北朝鮮の核兵器との関連ですね。
北朝鮮は既に核兵器を保有 → 韓国も、対抗できる核技術を
保持し続けねば → 当然、核発電をやめるわけにはいかない、
前任の文政権の脱原発政策は愚かだ
という因果関係が実はあるのであれば、北朝鮮の核兵器を
なくさない限り、韓国の原発もなくなることはない、
という結果になってしまいます。
しかしまずは、韓国の核発電の今後全般に関する論考を
読んでみましょう。
The Diplomatの2022年6月25日付の記事で、Eunwoo Lee
記者によるものです。
長い記事なので、2回に分けて私の抜粋・日本語化で紹介しますね。
いつもどおり、< > 内は私からの補足説明です。
原文は、
Can Nuclear Energy Power South Korea’s Future? – The Diplomat
にありますので、読める方は元記事をお読みくださいな。
では今日は記事の前半を。
さわげ、さわげ ・・・
“Disco People”
かなり昔の、私の作品
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韓国の未来は、核エネルギーで大丈夫か?
<韓国の新大統領である> ユーン大統領は韓国の未来の
原動力として核エネルギーを活用、炭素排出の+/― ゼロを
目指すとともに、国際的に <核発電先進国としての> 地位を
固める狙いだ。だが、その行く手は険しい。
<spanitemprop=”name” style=”box-sizing: border-box;”>Eunwoo Lee
2022年6月25日
韓国の核エネルギーの歴史は、汚点に溢れている。ジェンダー間の
公正や住宅供給、コロナ対策などと並んで、原発推進にはデリケートな
一触即発の問題が絡んでいる。保守派の70%以上が核エネルギーの
拡大を好んでいるのに対して、進歩派の約70%は反対している。
実際、ある有名な世論調査では回答者の核エネルギー利用に対する
姿勢を、その回答者の政治的・イデオロギー的な傾向を判断する
ためのバロメーターの1つに採用しているほどだ。
保守派は核エネルギーを自国の技術的能力を世界に示す
旗印のように受け止めている。輸出増進や手早い炭素中立性の
実現手段だと見ているのだ。李明博前大統領は核技術を
「我が国の、将来の飯のたね」 であると持ち上げ、2009年には
UAEに原子炉4基を建設する契約を締結した。当時、同前大統領は
2030年までに原子炉80基を輸出しようと目論んでいた。
それに対し進歩派は、核発電の問題点に目を向ける。環境関連での
実績のまずさ、安全性に係る詐称、金に係る闇の動きなどが韓国の
核産業には長年付きまとってきている。文在寅前大統領は2017年に
選出されたリベラル派で、彼の政権の代表的政策である原発フェーズ
アウトを開始していた。
就任直後に文は進行中であったコリ原発の拡張工事を注視させた。
これは、韓国最大の各コンプレックスだが、のちに民事陪審団の
決定に則り2か所の発電所の工事再開を余儀なくされた。それでも
文は、韓国第2位の原発であるハヌル原発への原子炉2基の新設を
なしにした。文政権下ではコリ第1原発は既に40年間稼働した後に、
遅まきながら廃炉が決まった。ウォルセン第1は予定より早く閉鎖
された。文前大統領の5年間の政権下で、電力供給の原発依存率は
ほぼ30%から26.5%にまで低下した。この傾向が続けば、2050年
にはこの依存率は6%にまで低下する見込みであった。
せっかく、喜んでいたのに~~
私の20分クロッキー
だが今や、5月に文を継いだユーン スク イェル新大統領の下で、
原発業界では楽観論が溢れている。ユーンは韓国を、「原子炉
超大国」 にすると公約しているのだ。ユーンが提示している
エネルギー計画では、シン ハムル原発を拡張するとともに、
18の原発の稼働期間を延長する。これらすべてが計画通りに
進めば、2030年までに核発電は韓国の総エネルギー消費の最大
35%を占めることになる。ユーンの期待では、こうした原発依存の
段階的な拡大によって、現在の韓国が総エネルギー消費の約2/3を
化石燃料に頼っているという化石燃料依存を軽減できるはずだ。
2050年までに炭素中立性を達成するという課題に役立つ以外にも、
ユーンのエネルギー政策の裏には石油価格の過激な変動や天然ガス
供給の中断、それらに伴って必要とされるエネルギー自給の実現と
いった要因がある。
ユーンは、国外市場にも狙いを付けている。韓国の通商産業
エネルギー省 (MOTIE)は近日、「核輸出財団設立プロジェクト」 を
発足する計画で、これは核エネルギー関連の会議や展示会への資金
拠出や輸出手続きの迅速化などを担当する。同省ではさらに狙いを絞り、
官民協働の 「準備タスク フォース」 を設立して韓国独自のパッケージを
まとめ、国外の原発市場を捉えるつもりだ。
今年5月終わり、アメリカのジョー バイデン大統領とユーンは、
「核エネルギーでの協力を拡大し、共同で輸出プロモーションや発電容量
拡大のためのツールを活用、先端原子炉や小型モジュール式原子炉の開発
そして世界への導入を加速していく」 旨の取り組みを確認した。ユーンは
東アジア地域のライバル諸国に対して強い姿勢を保ち、韓国を 「世界の
主要国」 に仕立てていくことを願っているが、その重要な要素の1つが
核エネルギーである。特にユーンはアメリカ主導の 「小型モジュール式
原子炉技術の責任ある使用のための基盤インフラストラクチャー」
(Foundational Infrastructure for Responsible Use of Small Modular
Reactor Technology) というプログラムならびに「インド太平洋繁栄枠組み」
(Indo-Pacific Framework for Prosperity) にも参加している。後者は、
同盟諸国の間でのサプライ チェーンの確保をさらに強化するためのものだ。
両者は基本的には、中国、ロシア、北朝鮮を封じ込めまたそれらと競い合う
ためのものだ。これら3国はいずれも、核技術にただならぬ関心を抱いている。
ああ、予想通りでがっかり~~
私の10分クロッキーより
韓国の核産業はこうした最近の動きを歓迎、伸び悩む同業界にとっての
「ルネッサンス」 を招くものだとしている。ロシアのウクライナ侵略に
伴いヨーロッパはエネルギーの希少化に悩み、ロシアからの天然ガスに
変わるエネルギー源を探している。核産業の専門家たちによれば、韓国と
アメリカの協力により韓国はヨーロッパ市場への足場を固めることになろう。
韓国水力原子力社 (Korea Hydro & Nuclear Power、KEPCO) のトップが
6月中旬にフィンランドを訪問、同国がロシアからのエネルギー源依存を
やめエネルギー総生産量のうち原発の比率を34%から60%へと押し上げる
よう努める中、韓国製原子炉を採用するよう説得に努めた。
ユーン政権はさらに、サウディ アラビアも引き付けようと努めている。
同国は、外国製の原子炉に関心を抱いてきているのだ。一方で
UAEは韓国製のバラカー原発を 「UAEをクリーン エネルギーの
主要生産国へと押し上げてくれた、必要不可欠なプロジェクト」
だと称賛している。これも、韓国核発電業界の威信を高揚させて
いる要因だ。
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まあ、予想通りの展開になっているようですね。
問題点については、後半で紹介されています。
お楽しみに。