で、JCPOAはどうなった??

中国のICBMサイロ増設に対するアメリカやインドの反応をしばらく取り上げてきましたが、その間にJCPOA再建交渉の方は、どうなったのでしょうか?
10月6日付のTasnim News Agencyによる記事を見てみましょう。

Tasnim News Agency, October 6, 2021

JCPOA Talks to Resume Soon: Iranian MP – Politics news – Tasnim News Agency
(イラン議会の議員、JCPOA会談は近く再開)

(私による日本語化)

テヘラン発(タスニム) –  イラン議会のある議員が明かしたところによれば、2015年の核合意を再建するための交渉を近日中に再開するための計画があり、それにはイランの最高国家安全保障会議が策定した戦略が盛り込まれている、とのこと。

イラン議会の国家安全保障と外交政策委員会のスポークスパーソンであるこの議員が、この水曜日(6日)にタスニムに述べたところでは、包括的共同作業計画(JCPOA)を再建するための会談は近日中に再開する。

このMahmoud Abbaszadehはさらに、西側の関係者たちの様子からもJCPOA再建会談は近日中に再開する見込みだという。ただし、正確な再開の日取りはまだ決まっていないそうだ。

「すぐに」「どのくらいすぐに?」

「すぐに」「どのくらいすぐに?」

「その会談実施に合わせて、(イランの)交渉団を結成することになろう」と、Abbaszadeh は述べた。

さらに同議員によれば、イランの最高国家安全保障会議がJCPOAの再建会談のための戦略を策定し、イラン外務省がその方策を実行するという。

JCPOA再建会談が最後に開催されたのはこの4月のことで、ウィーンでの会談であった。イランと同核合意のイラン以外の加盟諸国の間で会談が行われた。つまり、英国、フランス、ロシア、中国、ドイツである。

アメリカは2018年にこのJCPOAを脱退、この核合意で一度は撤廃された経済制裁を再開した。これに対しイラン政府は、JCPOA合意の第36条に定められている報復核処置を実施した。

来る交渉ではこの核合意を再建する可能性について、またアメリカのその合意への復帰可能性について、検討する。

********
そうでなくても、ずっと下の今年9月23~28日前後の投稿で紹介したように、中東では
パキスタンの核兵器がアフガニスタンに入り込まないかという危険が存在しているのに、
そのうえにJCPOA再建ができず、結局イランも核兵器保有 ・・・ なんてことにならないよう、祈っております!

では、下の10月8日で重水素の中国への輸出禁止をアメリカが決めたことを紹介しましたが、一部読者の皆様には、「いったい、二重水素や三重水素(トリチウム)が、アメリカの安全保障とどう関係するんだ??」と不思議がってらっしゃる方々も、いらっしゃるかも。
そこで、新たな固定ページ t-x)(トリチウム)を作成中です。何ページかにわたって、トリチウムが如何に核軍備で重要なのかを紹介していきます。
しばし、お待ちくださいな。

 

Posted in Uncategorized | で、JCPOAはどうなった?? はコメントを受け付けていません

中国のICBM用サイロ新設、インドにも波紋 4

Guarding Indiaにあるインドの反応、
長い記事を4回に分けて紹介しており、今回はその最後。
元の記事は、
Why China is building more missile silos – Guarding India
にございます。

中国の言い分は?

中国の外務省も国防省も、上述のような観測に対して反応していない。一部の中国メディアの報道では、問題のサイロとされているものは風力発電所だという。そして、アメリカの学者たちやジャーナリストたちが「中国脅威論」を広めてしまっていると、避難している。

風力発電だよ~~

風力発電だよ~~

では、インドは憂慮すべきなのか?

今回の新設サイロを切り取って観察するなら、アメリカへの対抗を特に強化するためのものだと見受けられる。

だがもっと広い視点で見るなら、核武装に関する中国の両義性と最新式DF-26中距離道路可搬型二重用途ミサイルとに、インドは警戒の目を向けるべきだ。DF-26発射装置のうち16台は現在の増設の動きの間に、新疆ウイグルのコルラという場所に配備されている。そのミサイルの攻撃可能な射程と配備のタイミングとを考えると、インドも潜在的な標的の1つになりえる。

中国もインドも「核の先制攻撃をしない」という宣誓を発してはいるが、インドの弾道ミサイルに対する防衛能力は限られたもので、中国が核兵器について両義的な姿勢を保っていることは、インドにとっては心配の種だ。

そうした展開に対して、世界はどう対応すべきか?

アメリカにとっても、どの国にとっても、明らかな選択肢など存在しない。中国はNEW START (戦略兵器削減条約) には参加しないと公表している。中国外務省の軍事管理部門の書記長を務めるフー ツォンが最近述べたところでは、アメリカとロシアが保有す津核弾頭数は中国のほぼ20倍に相当し、「核兵器削減を目的とする交渉でその両国と一緒に中国も核弾頭数を減らすと考えるのは、現実的ではない」

「お前、刃物持ち過ぎだぞ!」

「お前、刃物持ち過ぎだぞ!」

アメリカの軍事管理を専門とする学者数名が主張しているところでは、米中間では15年間にわたり「トラック1.5」と呼ばれる核兵器交渉がアメリカ政府の出資で続けられてきたのだが、2019年に一旦停止となった。これを、再開すべきだという。停止された理由は、米中間の摩擦の増大、「価値の喪失」、Track 1対話を開始できなかったことが挙げられている。他の者たちの主張によれば、アメリカがミサイル防衛能力を更新しているため、戦略的な安定性に動揺が生じており、軍拡の管理がより複雑化してしまっている。

***************

やっと、これで全部です!
米中が核ミサイルを持って睨み合い → いずれか、または両者の核ミサイル増強、→ 第三国(ここでは、インド)にも波紋
という構図が明らかですよね。
やはり、核兵器を代表とする大量破壊兵器なんて物騒なものは、この惑星から廃絶するしか選択はないですね。

Posted in Uncategorized | 中国のICBM用サイロ新設、インドにも波紋 4 はコメントを受け付けていません

中国のICBM用サイロ新設、インドにも波紋 3

では、Guarding Indiaにあるインドの反応の紹介に戻ります。
長い記事を4回に分けて紹介しており、今回はその3回目。
元の記事は、
Why China is building more missile silos – Guarding India
にございます。

(私による日本語化)

3つ目の推測として、中国は新設中のサイロを「おとり」として使用する計画かもしれない

北京にあるカーネギー国際平和基金で核政策プログラムを担当している中国人学者Tong Zhaoの主張によれば、アメリカのミサイル防衛システムと精密攻撃通常兵器との向上を中国は憂慮しており、そのために中国の核兵器によっては抑止ができなくなってしまうのでは、と懸念している。Zhao氏が2021年3月に中国の全人代で主張したところでは、シージンピン(習近平)国家主席は中国軍部に対し、「最先端の抑止戦略能力を急いで作り上げるよう」指揮したそうだ。

最近発見されたサイロは、敵国に推測ゲームをやらせることで、核抑止の効果を増強しようとするものかもしれない。中国による、一種の「隠しんぼ」だ。サイロのうち1つ、あるいはいくつか、あるいはすべてに、ミサイルが配備されている可能性がある、というゲームで、敵国は攻撃を強化するにつれ、結局はサイロすべてを攻撃せねばならなくなる。わずか数基のミサイルを破壊するのに、敵国は核弾頭や精密誘導兵器を多数無駄に使わねばならないのだ。ことによると、サイロの中身はからなのだ、という可能性さえある。

これは、中国にとってはコスト効率に優れた戦略で、しかも核大国としてアメリカに匹敵しうるという中国のイメージを世界に浸透させることも可能だ。

「隠しんぼ」ゲーム ~~ どっかにミサイルがあるよ~~

「隠しんぼ」ゲーム ~~ どっかにミサイルがあるよ~~

アメリカは、今回のサイロ発見にどう反応したのか?

7月28,日、New York Times による今回発見されたサイロに関する報道について、Stratcom(アメリカ戦略軍)がリツイートを発表、「中国の核が世界にもたらす脅威の増大、そしてそれを覆い隠すヴェールが衆目を集めたのは、この2か月でこれが二度目だ」と述べている。

Richard司令官はこの4月の上院での証言で、 中国がICBM用サイロを大規模に配備していると述べた。Stratcomが中国によるサイロ建設の件を把握したのは、学者たちが衛星画像でそれを知るよりも早かったようだ。

7月の第1週にユーメンのサイロ場が発見された時には、国務省のスポークスパーソンが「中国の核兵器保有は拡大を加速、しかも以前予想されていたよりも高度なレベルに達する恐れがある。この増強は、憂慮すべきものだ。中国のねらいが何なのか、疑問が生じる」と述べた。ペンタゴンのあるスポークスパーソンが6月終わりにWashington Postに述べたところでは、「国防省のリーダーたちが証言し公に語ってきたこととして、中国の核武装が増強されており、今後10年間で倍以上に増大する」 アメリカ国防省の2020 China Military Power Report (2020年中国軍事パワー報告)の予想では、中国の核兵器装備はその当時で200基台の下半分だったが、今後10年間で倍以上に増えるであろう。

**************
さらに、次回に続きます。

Posted in Uncategorized | 中国のICBM用サイロ新設、インドにも波紋 3 はコメントを受け付けていません

アメリカのNRC、中国のCGNとその関係への放射性物質と重水素の輸出を禁止

アメリカのNRC(原子力規制委員会)、中国のCGNとその関係への放射性物質と重水素の輸出を禁止

Guarding Indiaによる、中国のICBMサイロ増設に対するインドの反応の実例を紹介していました。長い記事を4回に分けて紹介しているのですが、その3回目を今回は紹介する予定でした ・・・ が、アメリカから、その中国に対する「新たな措置」のニュースが飛び込んできました。こういう場合、予定を急に変更することをご了解ください。

そのNCRによる指令本文は、下記にございます。
https://www.federalregister.gov/documents/2021/10/01/2021-21342/order-suspending-general-license-authority-to-export-radioactive-material-and-deuterium-to-china

放射性物質と重水素は、あちらにやるな!

放射性物質と重水素は、あちらにやるな!

NCRによる輸出禁止の指令、私による日本語での要約

Order Suspending General License Authority To Export Radioactive Material and Deuterium to China General Nuclear (CGN), CGN Subsidiaries, or Related Entities
(中国の中国广核集团(China General Nuclear、CGN)及びその系列各社、関連団体への放射性物質と重水素の一般的輸出許可権限を一時停止する指令)

アメリカ原子力規制委員会からの通知、2021年10月1日

発令機関:
Nuclear Regulatory Commission(アメリカ原子力規制委員会)

行動の種類:
指令、発令

要旨:
アメリカ原子力規制委員会は本指令を発令、NRC規制の下で、中国广核集团(China General Nuclear、CGN)及びその系列各社、関連団体への放射性物質と重水素の一般的輸出許可権限を一時停止する。

日付:
本指令は、直ちに発効する。

中略

本指令の対象となるライセンス取得者は、連邦規制基準(CFR)の表題10の110.21から110.24に定める一般的ライセンスを、1954年の原子力エネルギー法(AEA)の第54、64、82、109b項(改訂後)に則り、NCRから付与されており、それによりCGN及びその系列各社、関連団体へ放射性物質と重水素の輸出を行うことが許可されてきた。アメリカ行政府は、 10 CFR part 110に則りCGN及びその系列各社、関連団体への一般輸出権限を一時的に停止することがアメリカの国家安全保障を保ち、また1954年の原子力エネルギー法(改訂後)の趣旨に則り米国全体の防衛と安全保障とを強化するために、必要であると判断した。本決定は、2018年に行政府が定めたアメリカから中国への民生用放射性物質の輸出権限を認めるうえでの枠組みを拡大したものである。そのため行政府では、・・・(以下省略)

日付: 2021年9月27日

原子力規制委員会を代表して、記す

Nader L. Mamish,

国際プログラム オフィス、ディレクター

********************

核なき世界になりますように ・・・

核なき世界になりますように ・・・

日本語メディアでは、あまり本件を取り上げておりませんが、中国のICBM用サイロ増設の件をご存じの皆様にとっては、「さもありなん」という輸出禁止ですよね。
本件を「中国の電力不足を捉えた、アメリカによる経済・産業面での中国いじめ」でもあるかのように取り上げている人たちもいらっしゃいますが、

・ そもそも上の本文にも、「国家安全保障を保ち、また・・・ 米国全体の防衛と安全保障とを強化 ・・・」とある
・ 前述のように、中国によるICBM用サイロの大幅な増設に、アメリカは間違いなく反応してきている
・ 今回の禁輸の対象には、重水素も含まれている。重水素は、強化型核爆弾に欠かせない物質(これについては、後日また説明します)

という3点を考えれば、この禁輸の主な意図は軍事的なものだと推察できますよね。

やはり核の世界では、発電は兵器を見えなくしてしまう「隠れ蓑」になりやすいものですね。

では次回は、何も飛び込みニュースなどがなければ、Guading Indiaの記事に戻ります。

Posted in Uncategorized | アメリカのNRC、中国のCGNとその関係への放射性物質と重水素の輸出を禁止 はコメントを受け付けていません

誰が言い出した?? 「原発廃止 → ブラックアウト → 病院で停電」というトンデモ飛躍

本サイトのフォーカスから離れた問題ですが~~

本ウェブサイト「やかんをのせたら~~」のフォーカスは proliferation risks
(核発電を経由しての、核兵器の拡散リスク)にあります。
だから、「原発廃止しても、停電しないのですか?」という、社会的マインド
コントロールによる不安については、本ウェブサイトでは基本的には
対応しておりません。
他の反原発活動の皆様が、この問題には充分な情報発信を行ってらっしゃる
ので、私がいまさら取り上げるまでもない。ということです。。

私自身が1980年代後半にエネ庁関連で原発推進広報の仕事に関わっていたので、
こうした「停電不安」を煽る社会的プロパガンダが行われていた事実は、
実体験から知っております。でも結局は、日本国の原発推進の裏には
「潜在的核抑止」という問題があることを知ったので、反核兵器・反核発電に
定位し、1991年にその広報の仕事を辞めたのでした。

ただ、いまだに(2021年10月になっても)、
「原発廃止 → 停電 → 病院などで救命機器が停止」という不安を訴える
方々が社会の一部にいらっしゃるようなので、
ごく短くコメントしておきますね。
詳しくは、他の反原発団体ウェブサイトなどをお探しくださいな。
(本サイトのフォーカスからは、離れた問題なので)

☆ まず、病院などには非常用の自家発電装置が備わっています。
緊急時を考えた装備をしておくのは、病院などの施設では当然のことでしょう。

Floating towards the light

もっと大事な問題があるでしょ~ 私のソフトパステル デッサンから

 

もっと本質的な問題として、原発は大都市から離れた田園地域に
あり、送電グリッドで長距離送電をしています
たとえば、柏崎刈羽原発(2021年10月現在、停止中ですが)から
東京新宿までなら、直線距離で大まかに300㎞ほどあります。
その距離を、送電線で送電しないといけないわけですね。
発電所がまったく問題なくフル稼働していても、300㎞を
結ぶ送電グリッドのどこかで落雷や地震などあれば、
その発電所からの電気は新宿には来ないわけです。

だから、ほんとに電力供給を安定化させたければ、
発電の分散化が必要
たとえば新宿の電力供給をさらに安定化させるなら、やはり新宿近辺に
発電装置を設けるのが賢明です。原発がこれには不向きなのは、
言うまでもありませんよね。
建物の屋上などに太陽光パネルを設けるのは、環境への負荷も少なくて、
適切だと考えます。山林を伐採してメガソーラーを建設 ・・ なんていうのは、
私は賛成できませんが、すでに建っている建築物の屋上に自家消費用の
パネルを設置するなら、環境への影響も少なくて済むはずです。

それと、そうした屋上・屋根パネルが普及すると、好ましい副作用
あります。その地域の気温が下がるわけですね。
これ、真夏の熱中症防止には好ましい副作用ですよね。
今年の8月もそうでしたが、くらくらする危険な暑さの中で道を歩いていて、
ご高齢の方が日陰で立ちすくんでおられて、「大丈夫ですか?」と
声をかけたことが何度かありました。(今年の夏だけでも)
いつも、「暑くて、日陰にいないと倒れそうで~~」という趣旨のお返事でした。

あんまりな暑さは、実に危険なのです。
熱中症による救急搬送、1,805人に減少…今後も注意必要 | リセマム (resemom.jp)
などにも、具体的な人数の報道があります。
地域としての夏の気温を下げる取り組みが必要です。

まあ、上記のような問題は、詳しくは他の反原発サイトをお調べくだされば、
書いてあることなので、これくらいにしておきますね。

早く戻りましょ ・・・

早く戻りましょ ・・・           私の20分クロッキーから

 

私が問題にしたいのは、むしろ、「原発廃止 → 停電」という「思考のショート
サーキット」がなぜ蔓延してしまったのか? という社会的マインド コントロール
です。昔々、原発推進広報の仕事に携わっていた私としては、やはり「原発推進
プロパガンダ」が広範に浸透したという問題を指摘したく思うのです。

・ 「平和利用」というマヤカシ   もそうですし、
・ 「核発電」といわず、「原子力発電」という名称が普及してしまった
ことも、そうしたプロパガンダの効果でしょう。

軍事が関わると、国家は社会的プロパガンダに打って出るものです。
ナチスもそうでしたし、
イラクに侵攻したときのアメリカもそうでしたよね。

では、本サイトのフォーカスを外れた問題なので、ここまでに。
次回は、Guarding Indiaによる記事に戻ります。

Posted in Uncategorized | 誰が言い出した?? 「原発廃止 → ブラックアウト → 病院で停電」というトンデモ飛躍 はコメントを受け付けていません

中国のICBM用サイロ新設、インドにも波紋 2

中国のICBM用サイロ増設に対するインドの反応実例、
Guarding India, 2021年8月26日の記事の紹介を続けます。

Why China is building more missile silos – Guarding India
(中国、ミサイル用サイロを増設する狙いは?)

(私による日本語化)

中国がミサイル用サイロを増設しているのは、なぜか?

この理由としては、次の3種類が考えられる。

1つ目。  中国の政治科学を研究している人たちの一部によれば、今回のサイロ増設によって中国は「警告即発射」(launch-on-warning、LOW)という姿勢に乗り換えようとしているそうだ。LOWでは、敵国からのミサイルを発見次第、それが自国内の標的に到達しないうちに、その敵国へとミサイルを発射する。

LOWつまりLaunch On Warningの概略

LOWつまりLaunch On Warningの概略

中国の核武装戦略は今までは、1964年からあまり変わらずにいた。同年、中国初の核兵器爆発に成功したのだ。 それ以来最近まで、中国の戦略の基本は、核兵器を始めて爆発させた時点からあまり変わっていない。確実な報復をできるようにすることで、核抑止を実現するというものだ。そのために欠かせない要件として、敵からの先制攻撃を受けても、中国の有している核兵器が機能を続けられるように保つことが必要だ。敵からの先制攻撃が通常兵器であっても、核兵器であっても違いはない。このLOWという防衛策へと移行するためには、中国はいくつかの核弾頭をミサイルに装備して、それらをいつでも発射できる状態に保ち、迅速な報復ができるようにしておかねばならない。今のところ中国では、弾頭とミサイルとを警戒オフの状態で保管しており、この両者は指揮系統が異なる。

MIRV(1つのミサイルに複数の核弾頭)の概略

MIRV(1つのミサイルに複数の核弾頭)の概略

2013 年に中国の人民解放軍の軍事分所であるScience of Military Strategy (軍事戦戦略科学)が発表したある文書によれば、中国がLOW方針を実施することは「あり得る」そうだ。 さらに2015年発表の2015年防衛白書には、「迅速な対応」という言及がある。アメリカの戦略軍(US Strategic Command (Stratcom) )のCharles A Richard 司令官は、2021年4月のアメリカ上院での証言で、「中国軍の一部は、すでにLOW方針に切り替えている」と述べた。

だが、サイロだけでは、特に現時点のように建設初期段階では、中国軍がLOWに切り替えようとしていることの断定的な証拠とはならない。

2つ目  サイロ増設により中国は、核弾頭備蓄の増大という目標を実現できる。

もっと作れ!

もっと作れ!

現在、中国が保有している核弾頭はおよそ350個である。非営利団体であるFAS(アメリカ科学者連盟)の核情報プロジェクトを担当しているHans M Kristensen と Matt Kordaの推定によれば、その350個の核弾頭のうち272個は作戦部隊に割り当てられており、残る78個は新設の固形燃料型ICBMであるDF-41に向けて生産された。

地上配備のミサイルは中国には約150基あり、それらで運べる核弾頭数は180から190にのぼり、アメリカの一部を攻撃できる。今回新設中のサイロすべてに単一核弾頭のミサイルを配備すれば、子の核弾頭総数は410から440にまで急増してしまう。完成したサイロすべてにDF-41を配備した場合には、DF-41には1基当たり2から3個の核弾頭を配備できるので、この総数はさらに増大し930から940に達する。

そうするためには、中国は兵器在庫にあるDF-41を増やし、特に核弾頭総数を3倍ほどに増やさねばならない。これは、近未来中には実現できそうでない。だが、サイロ増設の様子からは、中国の核弾頭数増大やDF-41進展の匂いはしていない。
*******************
まだまだ、次回に続きます。

日本語化していて思うのですが、やはりインドはずっと中国とは対立してきただけ
あって、中国の軍備増強などには敏感ですね。日本語メディアの多くが「中国軍 →
尖閣列島、台湾海峡」といった側面ばかりを取り上げ、ニュースの受け手の一部も
「嫌中」といった短絡した反応に走りやすいのに対して、このGuarding Indiaの記事は
中国の動きの裏にある意図を探ろうとしているのが、よくお分かりになると思います。

アジアに限らず、核発電に伴う動きは核武装の動きと連動している場合が少なからずあり、そうした実例も今後とも本ウェブサイト「やかんをのせたら~~」では、
紹介してまいります。

Posted in Uncategorized | 中国のICBM用サイロ新設、インドにも波紋 2 はコメントを受け付けていません

中国のICBM用サイロ新設、インドにも波紋

中国が新たなICBMサイロ場を建設中だというニュースを聞いて、当然アメリカの反応も気になりますが、世界情勢の基本をわきまえてらっしゃる方々であれば、もう1つの大国の反応も心配になったはずです。そう、インドですね。

以前から、中国とは対立してきたこの国、しかも核兵器も保有しているこの国の反応は??
それを知りたくて、Guarding Indiaというウェブサイトの記事を見つけました。

8月終わりの記事なので、もっと早く紹介したかったのですが、他に
北朝鮮のミサイル発射の件やパキスタンの核兵器がアフガニスタンに
入る危険性といった深刻な問題が発生したため、ようやく今
(2021年10月2日)になって紹介できます。

これもかなり長いので、何回かに分けて紹介しますね。

Guarding India, 2021年8月26日

Why China is building more missile silos – Guarding India
(中国、ミサイル用サイロを増設する狙いは?)

(私による日本語化)

衛星画像から、中国が少なくても3か所で新たなICBM用サイロ場を建設中であることが判明している。ガンスー(甘粛)省のユーメン(玉門)近郊、ジンジアン(新疆ウイグル)のハミ近郊、そして内モンゴルのオルドス市のハンギン旗の3か所だ。

きわめて概略的な地図ですよ

きわめて概略的な地図ですよ

中国が建設中とみられるミサイル用サイロは、ユーメンでは約120基、ハミでは約110基、ハンギンでは29基とされる。今年これまでに人民共和国陸軍ロケット部隊(PLARF)のジランタイ トレーニング場で16 基のミサイル用サイロが検出されている。このトレーニング場も、内モンゴルにある。

ユーメンのトレーニング場の発見につながったのは商用人工衛星の画像で、カリフォルニアのジェームズ マーティン不拡散研究センター(James Martin Center for Nonproliferation Studies)の研究者たちが発見した。ハミのトレーニング場を特定したのは米国科学者連盟(FAS)の核問題の専門家たちで、Planet Labs の衛星画像を利用した。ハンギンのトレーニング場は、ワシントンDCの中国航空研究所(China Aerospace Studies Institute)の研究者たちが発見した。

ユーメンとハミのトレーニング場は同一的で、サイロは完ぺきなグリッドのパターンで配列されている。サイロとサイロの間隔は、ほぼ3㎞だ。一部のサイロには、ドーム状のシャッターが設けられている。この2つの施設をサポートしているのは、近隣にあるPLARFの各種施設だ。

今年(2021年)に上記のサイロ軍が発見されたのだが、それに先立つ数十年間は中国はわずか20基のミサイル用サイロしか運用しておらず、そこにはDF-5という液体燃料型の大陸間弾道弾(ICBM)が配備されていた。現在行われている建設工事が完了すれば、中国が保有するミサイル用サイロの数は250から270に達し、ここ数十年間に同国が保持 していた数の10倍以上に増大する。
**********
長いので、ここで切ります。残りは、次回以降に。

Posted in Uncategorized | 中国のICBM用サイロ新設、インドにも波紋 はコメントを受け付けていません

パキスタンの核兵器がアフガニスタンに入り込む危険性、他の論者の指摘 2

そのタリバンが核兵器を入手する危険性を指摘するBolton氏の主張、後半を紹介しますね。

The Washington Post, 2021年8月23日
John R. Boltonによる主張
元の記事は、以下のリンク先に。

Opinion | John Bolton: Kabul’s fall poses a risk that Pakistani extremists will increase their influence in Islamabad – The Washington Post

(私による日本語化)
そうした危険を考えるなら、アフガニスタンにはアメリカ軍とNATO軍の駐在を続けるべきであったという理由として、充分だ。駐在を続けていれば、この国での新たなテロリストの発生する危険を監視するだけでなく、パキスタンとイランの国境の動向の監視も続けることができたはずだ。トランプとバイデン両政権は遺憾にも、撤退方針を採用したため、そうした保険となる施策をやめにしてしまったのだ。

消防隊の中に混じって~~

消防隊の中に混じって~~

冷戦時代のソヴィエト軍との争いから、アメリカ2001年の9/11テロ以来の行動に至るまで、パキスタンとアメリカの強力は不可欠だった。それがあれば、アメリカ政府はパキスタン政府の核政策やテロリスト支援政策に対し、激しい批判を投げかけることもできたはずだ。今ではアフガニスタンはタリバンの手に落ち、アメリカは今まで程にはパキスタン政府の善意やロジスティクス支援を必要としない。もちろん予想不可能な要因が膨大にあるが、パキスタンの各能力を考えるなら、パキスタン政府が今後もタリバンその他のテロ集団の支援を続けるようであれば、アメリカはパキスタンに対して強く当たらねばならない。放火魔と消防隊員の両方で構成されている政府は、世界でもパキスタンだけだと言われてきている。消防隊員たちは活動を強化しないといけない。パキスタン市民たちに、近年の同国政府によるテロリスト支援政策によってパキスタンの安全保障が劣化したのであって、強化されたのではないことを説得せねばならない。

パキスタンがタリバンへの支援をやめたという明確な証拠が見当たらない現在、アメリカもパキスタン政府に対する援助を中止すべきだ。また、パキスタンを「NATO以外の同盟国」のリストから外すべきだ。テロに対抗するための制裁を強化するなど、やるべきことはまだある。また、インドにさらに接近するべきである。

彼らが作って、誰かが買っていった

彼らが作って、誰かが買っていった

最重要課題として、パキスタンが保有している核兵器や兵器製造施設に最大限の視線を注ぐべきだ。将来、パキスタンにテロリスト政権が誕生した場合(あるいは、現存の政権であっても、もしくは似たような姿勢の後継政権が登場したとしても)、テロリストに核開発能力を手渡そうとする気配が見られたなら、それを防止する手を打たねばならない。これは大変な苦渋に満ちた選択ではあるが、核兵器がテロリストの手にわたるなら、結果はもっと悲惨なものとなる。中国は長年パキスタンの核兵器開発活動に強大な支援を行ってきており、同国の核兵器が悪用された場合には、中国も責任を問われる。アメリカの意図と真剣さとを、中国に知らしめねばならない。

バイデン大統領は、そうした必要な手を打つだけの覚悟を決めているのだろうか?おそらく、そうではあるまい。George Packerが最近発表したRichard Holbrookeという、アメリカ政府の外交官でアフガニスタンとパキスタンに対する特命代表を務めた人物の伝記を見ると、オバマ政権時代にアフガニスタン問題に関してホワイトハウスの危機管理室で開かれたミーティングにおいてHolbrookeが記したノートからの引用が見つかる。Packerの著作によれば、そうしたノートにはHolbrookeによる個人の感想が挿入されている。たとえば、こうだ。「ジョー バイデン副大統領によれば、パキスタンの利害はいずれも、アメリカの利害ででもあったそうだ  ・・・ はあ!?」  この発言の時点ですでに、このバイデンの発言は誤りであったし、今ではもはや、危険な誤りだ。Holbrookeは的確で、短い言葉ながらも多くを語っていた。バイデンが認識を変えたことを願おう。

********************
NATO軍の駐在を続けるべきだった、といったBolton氏の主張については、読者の皆様もご意見が分かれると思います。(あくまで彼の主張の紹介であって、私フランシスがそれをすべて肯定しているわけじゃないことには、ご注意くださいね)

ただ、パキスタンの核兵器が同国やアフガニスタンの武装勢力の手に渡ってしまう危険性をBolton氏のような専門家が指摘しているという点で、軽視できない主張ですよね。

さらに、たとえばISIS(日本のメディアは「イスラム国」と呼んでますが、パキスタンのISIと混同しないでね) は、少なくても2014年までには日本にも上陸していたようですし。
イスラム国、大学生が参加を計画 「勤務地:シリア」アキバの古書店に怪しげな求人 | ハフポスト (huffingtonpost.jp)

 

 

Posted in Uncategorized | パキスタンの核兵器がアフガニスタンに入り込む危険性、他の論者の指摘 2 はコメントを受け付けていません

パキスタンの核兵器がアフガニスタンに入り込む危険性、他の論者の指摘

では、そのタリバンが核兵器を入手する危険性を指摘する見解の実例を、さらに紹介しますね。
The Washington Post, 2021年8月23日
John R. Boltonによる主張

元の記事は、以下のリンク先に。
Opinion | John Bolton: Kabul’s fall poses a risk that Pakistani extremists will increase their influence in Islamabad – The Washington Post
(主張: ジョン ボルトン氏 ー カブール陥落で、パキスタンの過激派がパキスタン政府への影響力を強める恐れ)

(私による日本語化)

John R. Bolton(以下、「ボルトン氏」)はアメリカのトランプ政権で国家安全保障問題担当顧問を務め、「The Room Where It Happened: A White House Memoir」(このタイトルを翻訳しておくと、この部屋でそれは起きた ― ホワイトハウス回顧録)というトランプ政権の回顧録を著している。

・・・(ポッドキャストに関する告知が、英語の元記事にはあります。ここでは省略) ・・・

闇の中で政府から ・・・

闇の中で政府から ・・・

(本文)

アメリカがアフガニスタンから「脱出」したが、これが及ぼす深刻な波紋は多数あって、いずれに着目すべきかに頭を悩ませるほどだ。特に重大な課題の中でも、最も突出しているのがパキスタンの今後だ。この数十年間、パキスタン政府は無謀なまでに核兵器保有に躍起で、しかもイスラム主義テロ勢力を支援してきている。その脅威をアメリカの政策担当者たちは今まで一貫して過小評価してきたか、対処を誤ってきた。カブールがタリバンに陥落した今、無視や言葉濁しができる時代は終わったのだ。

すぐ隣のアフガニスタンをタリバンが掌握した以上、パキスタンの政府に対する影響力が既に強大な過激派がその影響力をさらに増大させ、いずれは全権を掌握してしまう脅威を無視できない。

18から19世紀にかけて今のドイツの主要勢力であったプロシアという王国では、他の諸国が軍を有しているのに対し、プロシア軍が王国を有しているといった表現がよくなされた。この言葉は、パキスタンにも良く当てはまる。「鋼鉄の殿堂」とも呼ばれるイスラマバードの軍部は、確かに国家安全保障に関しては実質上の政府であり、軍部以外の政府部門はベニア板の構造物のようだ。同国の諜報機関であるInter-Services Intelligence(ISL、インターサービス インテリジェンス)は以前から過激派の温床となっており、しかも過激派は軍部全体にも入り込んでいてより高いランクへと歩を進めている。現在の首相イムラン カーンも今までの選挙で選ばれた指導者たちの多くと同様、「表向きの顔」を務めているに過ぎない。

アフガンへの旧ソヴィエトの侵攻と敗退の略述

アフガンへの旧ソヴィエトの侵攻と敗退の略述(画像をクリックすれば、拡大します)

旧ソヴィエト軍がアフガニスタンに侵攻し戦闘を展開していた頃(主に1980年代)、ISIはアフガニスタンのムジャヒディンという反ソヴィエト軍の勢力を広範に支援していた。これには宗教的な理由と、国家安全保障上の理由とがあった。アメリカ政府も、「ムジャ」にパキスタン経由で支援を送るという誤りを犯した。パキスタン経由だったため、実際にどのような政治家や軍人が援助を受けていたのかが、分からなかったのだ。さらにパキスタンはテロリスト組織がカシミールでインドを攻撃目標とすることも可能にした。インドとパキスタンが別々に英国から独立した1947年以来、インドとパキスタンは敵対を続けており、その一触即発の対立地域がカシミールなのだ。

カシミールの現状

カシミールの現状

旧ソヴィエト軍は1989年にアフガニスタンから撤退したが、ISIは当然のようにタリバンなどの勢力を支援、そうした勢力がアフガニスタンを1996年に掌中に収めた。パキスタン軍部の基本認識として、カブールの政府が親パキスタンであれば、インドに対抗するうえで「戦略的深さ」が得られる。パキスタンの指導層は、それをタリバンが実現してくれたと考えているのだ。2001年にアメリカ軍と反タリバン勢力などの連合軍がタリバン政権を打倒した際、ISIはパキスタン国内にタリバンの避難地を設け、武器や必要物を支給した。もっとも、パキスタン政府はそれを以前から否定しているが。

そして今、タリバンがアフガニスタンの政権を再度握った。パキスタン国内のタリバン勢力やその他の過激派に対して、アフガンのタリバンが避難地へのお礼をする可能性がある。パキスタンのタリバンとは、アフガニスタンのタリバンと同盟している過激派だ。世界にテロリスト政権がもう1つ増えて欲しくはないのは、明らかだ。だがパキスタンの抱えているリスクは、他の多くの国とは規模がまったく異なる。アフガニスタンではISIS(イスラム国)も基盤を獲得しつつあるが、それやアルカイーダと比べても、タリバンの危険性は見劣りしない。

イランは今も核兵器を手に入れようと躍起だが、パキスタンは既に数十基の核兵器、おそらくは150以上をすでに保有している。この数値は、公に発表されている情報源によるものだ。そうした核兵器が過激派の手にわたるなら、インドにとってのパキスタンの脅威は強大なものとなり、南アジア地域の緊張は歴史上前例のないレベルに達するだろう。特に、パキスタンの核兵器プログラムや弾道ミサイル プログラムでは、中国が中心的な位置を占めているという事実を考えるならば。さらに、パキスタンの核兵器がテロ集団の手にわたり、世界のどこかで爆発するという危険性を考えるなら、新たな9/11的テロ事件が発生する恐れもある。その被害は、2001年のものを上回ることになろう。
*************

この記事も長いので、後半は次回に。

なお、あくまでBolton氏の主張の紹介であり、私(フランシス)個人の主張では
ないことは、忘れないでくださいね。
私は「アフガニスタンの何れかの武装勢力が、パキスタンの核兵器を入手する危険性」を
心配しているのですが、Bolton氏のような安全保障の専門家もその危険を指摘している、
ということです。Bolton氏の主張を何もかも、私が肯定しているわけでは、
ございません。

それと、Kemp氏やBolton氏に限らず、同様の危険性を憂慮する声は、
英語の報道には他にも見当たります。

 

Posted in Uncategorized | パキスタンの核兵器がアフガニスタンに入り込む危険性、他の論者の指摘 はコメントを受け付けていません

英国軍の元司令官が、パキスタンの核兵器のコントロールをタリバンが掌握する可能性を憂慮 2

The Times of Indiaによるケンプ元司令官の問題指摘の紹介、後半です。

(私による日本語化)

この元英軍司令官はさらにイランや中国、ロシアをも非難した。タリバンを支援しているというのだ。こうした状況ではこの南アジア地域は開発からも取り残されかねないが、その中で建設的な役割を演じることができるのはインドであると、この元司令官は述べた。

ケンプ氏の主張では、「イランもタリバンへの資金や資材提供で重要な役割を演じてきている。今回のタリバンの勝利にも、直接に貢献している。イランは聖戦勢力に資金や武器を与えて支援し、特にアフガニスタン駐在のアメリカと英国の軍人たちを殺害する軍事活動を支援した」

さらにケンプ氏によると、中国もタリバンに資金を拠出して反タリバン勢力の指導者たちを殺害させ、今後はアフガニスタンにある資源を「強奪する」とみられる。

カネやるよ、地下資源くれ

カネやるよ、地下資源くれ

この英軍の元司令官によると、「おそらくインドはこの地域で唯一、アフガニスタンで建設的な活動ができる国だ。だがパキスタンと中国が、インドを排除しようとするだろう」とのことだ。

「ロシアと中国はアフガニスタンを、西側に対する一種の武器として利用するだろう。特にアメリカに対して」とも、ケンプ氏は述べた。

「今回の米軍の無条件撤退のため、こうなることは確実で、予想できた」と語るこの元司令官によれば、ジョー バイデン大統領の政権が米軍の撤退を加速させたため、今回の現状はさらに迅速に訪れた。

その米軍撤退という決定のため、それまでのアフガニスタン政府は意気消沈してしまった。その前政府軍には以前から忠誠心に関する問題があり、そこに汚職や兵士への給料支払いの不定期性といった問題がさらに輪をかけたのだ、とこの大佐は述べている。

この元司令官はさらに、こうした展開のため難民問題が発生するという懸念も指摘した。アフガニスタンからの難民は、結局はヨーロッパに到来するだろう。そしてアフガニスタンは、「以前と変わらぬ暴虐で乱暴な暗黒の支配に戻ってしまう。今回のタリバン政権も、2001年ごろのものと何も変わらないからだ」という考えを述べ、それに疑いをはさむ余地もないとした。

さらに彼の主張では、アフガニスタンの支配をタリバンが再度手に入れたことで全世界の聖戦勢力が活気づき、アフガニスタンはそうした勢力にとっての安住の場となろう。

隠れ家と地下道があると ・・・

隠れ家と地下道があると ・・・

この元司令官は、アメリカのバイデン大統領による今回米軍をアフガニスタンから撤退した主な理由の1つとして、中国とロシアへの対抗に注力することがあるという主張を非難、「実際には逆効果だ」とした。

彼によれば、聖戦勢力はアメリカの力が衰えたものと認識、西側、特にアメリカに対する敵対を強化することだろう。さらに、我々西側諸国が西側に味方するものと期待していた国々も、西側の安定性に疑問を抱くようになるだろう。

「そうなると、アメリカの優越性が損なわれる」というのは、彼の結論である。

Yossi Kuperwasser氏はイスラエルの准将(予備軍)で、諜報と安全保障の専門家である。以前、イスラエル軍の軍事諜報部門の調査部のヘッドを務め、イスラエルの戦略問題省の長官も歴任した。そのKuperwasser氏も、上述と同様の意見だ。彼が強調している点として、今回のアフガニスタンでの展開のため、イスラエルも含む中東のアメリカの同盟諸国はワシントンの約束を信頼できないものとみなし、脅威に対しては自国で対抗する能力を強化することを主眼とすべきだという重大な教訓を学ぶことになろう、としている。*************

以上、英陸軍の元司令官としてアフガニスタンやイラクの戦場で指揮をとられたケンプ氏による主張を紹介した記事でした。
しかし、それほどの司令官といっても、一人だけの憂慮なら、「考えすぎだよ」と笑い飛ばす読者の方々もいらっしゃるかも。

問題は、現実には他の識者からも深刻な憂慮が上がっているってことです。そうした「他の実例」を次に紹介しますね。

 

Posted in Uncategorized | 英国軍の元司令官が、パキスタンの核兵器のコントロールをタリバンが掌握する可能性を憂慮 2 はコメントを受け付けていません