v-2) (Beyond) Ten Reasons

v-2) (Beyond) Ten Reasons

2026年5月

上の黒いゴチャゴチャ メニューにあるページ v-1) で紹介した
ように、アメリカのワシントンDC近郊に本部を置く反核
団体にBeyond Nuclearなるグループがあります。
核兵器と核発電の両方の廃絶を求める団体で、この2つの
不可分性に気が付いている点で、目の付け所が良いですね。

そのBeyond Nuclearのexecutive director、Linda Pentz Gunter
さんが最近、著作を出版なさったのですね。No To Nuclear. Why Nuclear Power Destroys Lives, Derails Climate Progress And Provokes Warという本です。
その本の付録として、主張の要点を10点に短くまとめたものが
ありまして、大変的確かつ簡潔なフライヤーなので、
日本語にして本「やかんをのせたら~~」で公開してよいか
問い合わせたところ、Lindaさんからご快諾をいただきました。

My work, “Anemone Sacrament”, upper part

そんなわけで、以下にフライヤー全体の日本語化
紹介しますね。
日本語化テキストは既にHOMEというページで2026年
5月9日に紹介済みですが、それだけでは多くの日本語読者の
皆様には、説明不足だろうと思います。
そこで本ページでは、マンガと <私からの補足説明> とを
追加しております。そうしたマンガと <私からの補足説明> とは
いずれも私の責任で作成したものです。テキスト本文は、Lindaさん
の英語テキストを私が日本語化したものです。

元の英語フライヤーをお読みになりたい方は、ここをクリック!
(* ジャンプ先のページはPDFですが、5月9日にブラウザーで
開いたところ、特に問題は発生しませんでした)

PDFやけど、大丈夫やったで~~

いつもどおり、
私(ひで)の日本語化
<  > 内は私からの補足説明
です。

***************************************
Ten Reasons To Reject Nuclear Power
(核発電を拒絶すべき10の理由)

1.  核発電には、費用がかかり過ぎる
原子炉を新設するための費用は多くの場合、当初の推定よりも
はるかに大きくなる。当初予算の3倍にも膨らむ場合さえ
あるのだ。つまり、既存の原発への補助金であれ新設原発への
投資であれ、再生可能エネルギーや省エネルギー技術への
投資から資金を奪ってしまうため、そうしたより短期間で
実現でき費用も少なくて済む気候変動への対策への妨害と
なってしまう。毎時1kWの発電量当たりに必要となる費用を
見ると、再生可能エネルギーによる発電コストと比べ、
新規原子炉による発電ははるかに高くつく。既存の原子炉の
稼働を続けるためのコストについても、新規の再生可能
エネルギーによる電気料金と比べ、高くつく。小型モジュール
原子炉(SMR)を採用するなら、さらに高価な電気となって
しまう。これは、SMRは小型であるため大型原子炉と同じ
発電量を得るためにはSMRを多数設置せねばならないためだ。
<SMRは工場でモジュールを製造し、現地で組み立てるのだが>
そのために必要な資材や製造工場に膨大な初期投資が必要で
あるため、SMRは大型原子炉と比べスケール メリットに劣る。
ある調査によれば、<発電量が> 200 MWのSMRを設置する
費用は原子炉の建設費用の約40%だが、発電量は約20%に
過ぎない。そのためSMRによる電気の料金は、大型原子炉の
場合よりも高くつく。
<建設コストの異常な膨張の実例は、上の黒いメニューに
ある al-4) や al-1)(終わり近くのVogtle原発に関する記載)で
紹介済み。
SMRとはどんな原子炉か、またその特性とは、については
s-0) から s-10) までの s-x) 各ページで説明済みです>

架空の原発での説明ですよ

2. 核発電には時間がかかり過ぎる
技術が進歩しているとは言われているものの、原発の新規
建設にはかなりの期間を要する。平均で少なくても10年は
かかる。それに加え、建設のための準備作業にも5から
10年を要する。安全性の評価、環境関連や認可関連の作業、
必要な資金調達の手続きなどだ。つまり、現時点で何らかの
原発を新規建設しようとしても、気候変動の緩和や炭素排出の
削減のために何らかの意味ある貢献をするまでには、
あまりにも長い期間がかかるのだ。<日本でも、建設中の
大間原発は誘致が決まったのは1984年のことでしたが、
2026年5月現在、まだ工事中です。s-0) 参照> 現在の気候
変動問題は至急の対応を要求しており、数か所の原発の完成を
15年から20年、あるいはそれ以上もの期間にわたって
待っている余裕などないのだ。もっと安価な再生エネルギー
なら、ずっと短期間で拡大できる。
<原子力業界などの一部は> 2050年までに新規原発数千基を
建設できるので、炭素排出を大幅に削減できるなどと
主張しているが、これはあまりにも非現実的だ。これだけ
急激な原発の新設など、原子力産業の歴史に前例がない。
さらに、原発の建設工期は今までになく長くなっているのだ。
またSMRは現時点ではまだ、紙上の設計段階にある。
そのため、現在の気候危機に効果があるほどの量で近い未来に
実用化できることなど、ありえない。

原発は冷却用に外部電源がないと、動けない。
その外部電源が火力だったら?

3.「低炭素」というゴマカシ
原子力業界は <原発こそ> ”ゼロ炭素排出”だと息まいて
いるが、そんなエネルギー源はあり得ない。仮に核発電が
低炭素ないしはゼロに近い炭素排出であったとしても、
再生可能エネルギーと比べるなら適切な選択ではない。
再生可能エネルギーの方が、同じ投資規模でより多くの
炭素排出を削減できるからだ。炭素排出が少ない
エネルギー源であっても、工事期間が長すぎたり費用が
かかり過ぎたりでは、気候変動緩和の妨害になって
しまう。「すべての策を採用する」とか「上述のすべて」
といったアプローチも、実効性に欠ける。ある調査に
よれば、大型原発の新設を計画している諸国は、気候変動
緩和という点での効果を失っている。再生可能エネルギーに
投資したほうが、より大きな効果が得られるからだ。
リソースは有限である以上、それを時間がかかる、あるいは
コスト効率の劣る選択肢に充当してしまっては、再生可能
エネルギーのような より効果的な選択肢で得られる進展を
逃してしまうことになる。
<核発電とCO2排出については、付録 w-1)  付録 w-3)
付録 w-8)  付録 w-18) などで取り上げています>

たとえば酷暑で川の水温が上昇しすぎた場合、その水を冷却に使っている原発は角王できなくなる場合が。
近年、ヨーロッパで実際に発生している問題です。

4. 核発電は信頼性に欠ける
原子力業界の主張では、原発は常時稼働させられるので、
「信頼性が高い」という。それに対し、太陽光や風力は
変動してしまうそうだ。だが現実には原発は、定期検査や
技術的あるいは安全面での問題のため、少なくても稼働可能
期間のうち7%から12%は停止していることが通常だ。一旦
停止させた原発を送電グリッドに再度接続することは、
短時間ではできない。つまり、再生可能エネルギーに比べて、
核発電は柔軟性に劣るのだ。
気候面での極端な事態 <台風や高温など> が発生した
場合を考えてみよう。原発の中には放射性物質が大量に
存在しており原発はそれ自体が危険なものなので、停止させ
ざるを得ない。これは、外部電源や原発内部の非常用電源を
喪失した場合、メルトダウンに至ってしまう危険があるためだ。
付録 w-15) や 付録 w-23) >  気候変動による極端な
高温の中では、原発の冷却のために環境から水を取り入れる
必要があるため、その環境中の水の温度が高くなりすぎたり
水位が低下すると、原発は機能できなくなってしまう。
付録 w-10) 付録 w-16) 付録 w-17) など >  これに対し
再生可能エネルギーはそれ自体は安全なものなので、
こうした問題を起こさない。つまり核発電とは信頼性が高い
とは呼び難く、気候変動の解決にもなりがたい。実際には、
気候変動が悪化するにつれて、原発は単なる債務となって
いくのである。

竣工後は??

5. 核発電で、充分な雇用が生まれるわけではない
新規建設の原発が予定通りの工期で竣工できることは
望めないし、予算通りで完成できるとも考えにくい。
また、建設そのものが見送られる場合もある。原発
建設で生まれるはずだった雇用も、結局は近い将来には
現実化せず、いつまでも発生しない危険性すらある。
原発の新設による雇用発生を待って無駄に費やされる
時間があるのなら、再生可能エネルギーのプロジェクトに
充てたほうが賢明だ。そのほうが工期も短いうえ、サプライ
チェーンの発達も招き、各種の広範な部門に長期的な雇用を、
短期間で創出しうる。
原子力関連の雇用は、短期間のものが多い。つまり、
建設期間中だけなのだ。あるいは、原子力の専門的職業で
ある。つまり、その仕事ができる人員は、雇用創出の約束を
受けた立地市町村から選び出されるとは限らないのである。

左側の5種類の物質、いずれも放射性です

6. 核発電からは、死を招く長寿命の廃棄物が
どの原発からも、致命的なまでに有害で半減期も長い
高レベル廃棄物が生じる。それを人間が浴びることの
ないよう、何万年もの間遮蔽せねばならない。だが、
歴史上初めての放射性廃棄物が1942年に発生して以来
<下の * 参照>、 そんな遮蔽の技術はいまだに
見つかっていない。地下に埋めて処分するための処分場は
世界でただ1か所、フィンランド <のオンカロという
ところに> あるが、今も未完成であり、技術と倫理の両面で
未解決の問題を多く抱えている。<そうした現状の中で>
放射性廃棄物の産出を続けるのは、ましてや全世界で
さらに核発電の開発をさらに推進するというのは、無責任だ。
<そうした行為を続けるならば> この問題そのものも、
死を招く核廃棄物も、将来の世代に残してしまうことになる。
<* 史上初の放射性廃棄物が発生したのは、皆様もご想像の
通りマンハッタン プロジェクトでのことです。初めての
人為的な核分裂連鎖反応が行われた際に出来たもので、
シカゴ近郊にそれを”埋葬”した記念碑があります。「この地を
掘るな」という趣旨の注意書きがあるようです>

経済でいうopportunity costってやつです

7. 核発電は、人間の健康にとって有害
核発電のあらゆる段階ではイオン化放射線が出るが、
これは人の健康にとって有害だ。特に女性や子供は、
この害を受けやすい。放射線被ばくから人を守るという
問題を考える際、この被害の不均等性という事実が
考慮されたことは、稀である。アメリカの放射線被ばくに
関する基準は、いまだに健康な20代・30代の白人男性を
ベースにしている。これを、「基準人」(Reference Man)
と呼んでいる。しかも今では、そうした基準をさらに
緩和しようという動きが進行中だ。人口集中地区でも原発を
新規建設できるように するためだ。

化石燃料を核発電に代えることにも、健康面での問題が伴う。
マーク ジェイコブソン(Mark Jacobson)教授
<下の * 参照> の試算によれば、<現在の気候変動危機への
対策として> 化石燃料の代わりに原発を新設する場合、
原発建設には長い工事期間が必要になることが多いため、
その待機期間中に「およそ9,300万人が死亡することになろう」
これに対し、再生可能エネルギーを導入すれば待期期間は
原発の数分の一で済み、この死者数は大幅に軽減できる。
<* マーク ジェイコブソン: 1994年からアメリカの
スタンフォード大学の教授で、気候科学とエネルギー問題の
関わりを専門にしてらっしゃる そうです>

Yucca Mouuntainの位置

8. 核発電は、人権を侵害
ウラニウム採掘鉱山や精錬工場、濃縮や処理の工場、原発、
廃棄物処理場の選定を見ると、リソースが特に貧弱で
抵抗できないコミュニティーに対する差別的姿勢が浮かび
上がる。核発電を行っている諸国のほとんどはウラニウムを
遠方の他国や先住民地区から供給してもらっており、
ウラニウム採掘に従事した人々には保護も医療も適切な
補償もないのだ。

核関連の業務は土壌や大気、水源などを汚染してきたが、
これらは生命を維持するための基本的な必要物だ。
核プロジェクトでは、先住民との契約への違反行為が
たびたびあった。<その一例として> 西ショショーン
(Western Shoshone、下の * 参照) 地域というアメリカ
先住民の居住地域にあるルビー ヴァレー(Ruby Valley)には、
アメリカ政府がユッカ マウンテン(Yucca Mountain)
核廃棄物処分場を建設する計画であった。さらには、
先住民にとっての神聖な地である同地を、武力で強制的に
没収するぞとの脅しさえあったのだ。ほぼいずれの実例に
おいても、影響を被るコミュニティーとの相談もないまま、
彼らの土地が標的にされていたのだ。また予め充分な説明を
受けたうえで自らの意思で同意し、あるいは「ノー」という
権利が認められていなかった。今後の新規核プロジェクトも
引き続き、社会の底辺の弱者を犠牲にしていくことであろう。
原子力業界には植民主義的な体質が深く根付いており、
グローバル サウスなどにある遠隔の土地を奪い取っては
西側のエネルギーに対する貪欲を満たすのである。
<* 西ショショーン: アメリカ西部のアイダホ‐ユタ‐
ネヴァダ州にまたがる地域で、アメリカ先住民のものでした。
ところが核廃棄物の最終処分場を建設したい政府は、
この地に処分場の建設を検討していたことがあります>

主な原子炉事故だけでも~~

9. 核発電は危険すぎる
事故などがあれば大がかりな破局と大規模な被害をもたらし、
しかもその害は長期間に及ぶ。そんな危険性を抱えたエネルギー
技術は、核発電だけだ。大規模の原発事故が発生すれば
どれだけ深刻な健康と環境への被害が及ぶかは、我々はすでに
3回にわたり知るところである。アメリカのスリーマイル
アイランド原発、ウクライナのチョルノービリ(チェルノ
ブイリ)原発、そして日本の福島第一原発だ。
<それら以外にも> 原発でのニアミスや事故寸前といえる
事態、部分的な炉心のメルトダウン、放射性物質の漏出などが、
原発やウラニウム鉱山や精錬工場、再処理工場、核廃棄物
保管施設などでは発生してきた。

<2026年春> 現在、ウクライナとイランの戦闘地域では
無謀にも原発が戦闘の影響を被っている様子を、我々は
目にしている。
大規模の事故が発生した場合のコストも、天文学的な数字に
なる。例として、チョルノービリ原発の爆発による被害総額は
すでに推定で7,000億ドルに達しており、福島第一原発の事故に
よる被害総額は、除染作業や被害者への補償・賠償コスト
すべてを計算に入れると、5,000万ドルを超える可能性がある。

「やかんんをのせたら~~」は、メニューがゴチャゴチャで使いにくいやんか!

10. 核兵器につながる道
ウラニウム-235は、原子炉燃料の材料でもある。その濃縮度が
5%未満であれば、「平和利用」とされる。一方で90%以上に
なると、核兵器グレードとされる。つまり、どのような国で
あれ「平和利用」の核発電プログラムを進めている国は、
核兵器を開発できるだけの技術とスキルと材料とを保有して
いることになる。平和利用プログラムから核兵器へと至る道を
さらに歩みやすくしてしまっているのが、核不拡散条約
(NPT)にある欠陥だ。核兵器を持たないと宣言した加盟
諸国には、核エネルギー開発を行う「不可侵の権利」を認めて
しまっているのである。つまり核発電は核兵器意を持たないと
いう約束に対する「代償のご褒美」になっているのだが、
そのため核発電プログラムが核兵器開発に至ってしまう
危険性の扉は、常時開いてしまっていることになる。
なにしろ、核兵器の保有をその国の「格の高さ」と見なして
しまう誤った認識も、世界にはあるのだ。だからこそ、
イランがすでに核兵器を開発しているのか、それとも今後
そうする計画なのか、だれにも分かっていないのだ。核の
「平和利用」技術が世界的に輸出されている限り、さらに
新たな諸国が核兵器を開発してしまうリスクは存在し
続けるのである。
*************************************

1つの事故だけにこだわっていると、「巷」では風化しちゃいます

核発電の危険性を簡潔に網羅説明してくれて いますよね。
日本の反原発の立場の方々と話していると、上記の6、7、9
ばかりに関心が集中してしまっており、1、2、4のような
経済・産業的側面や、現在重大な問題である3の現実調査、
そしてもっとも破壊的な危険性である10の具体的な話が
あまり聞こえてこないことが多いのですね。10の話があっても
「どことなく、つながっている」といった漠然とした話が多く、
具体的・技術的な側面や 現実に発電 ⇒ 兵器とつながって
しまった実例については言及が少ないのですよ。
それで私(ひで)は、この「やかんをのせたら~~」を
始めたわけです。

エラそーな口を叩くようですが、日本の反核(兵器も発電も)
運動は、基本的なあり方を改めるべき時期に来ていると、
私は見ております。その際、このBeyond Nuclearさんの活動
など、参考になるのでは?

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