if-0) (IFRフォロワー) IFRフォロワーッて??

2022年2月

簡単に言えば、この固定ページのシリーズ if-x) では、IFR (Integral Fast Reactor) という原子炉と、そのフォロワー(現在形)全般に共通の問題点を紹介します。フォロワーの
代表とされているのは、2022年2月現在のところ、GEH社のS-PRISMですが、これは
まあ「原子炉」というよりも「(軽水炉からの)使用済み核燃料の処理装置だが、
その際に発電も行える」という装置と見た方が良い、との意見もあります。
ただ、IFRには前身があって、EBR II (Experimental Breeder Reactor II) という
ものです。これが反原発勢力にとってはなかなかの曲者でして、1986年の実験で
故意にメルトダウンさせようと、わざとLOCA (冷却材喪失)を引き起こしたの
ですが、特殊な核燃料を採用していたなどの理由で、原子炉での核分裂は「勝手に」
停止したそうです。「メルトダウンしにくい」原子炉が、すでに出来つつあった
のですね。(もっとも、実用化はされませんでしたが。すぐ後で、説明します)

ですから、時間的な順序としては
EBR II –> IFR –> S-PRISM
というシリーズで考えるべきでしょう。EBR IIをさらに発展させたIFRは、核発電推
進勢力にとっては大変魅力的なものでしたが、1994年にクリントン政権のアメリカ
政府がIFRプロジェクトの進行をキャンセルしました。(後述)  でも魅力的なので、
GEはその後も自社での研究開発を続けたようです。今では、GEと日立のアライ
アンスであるGE Hitachi Nuclear Energy社が、IFRの後継ともいうべきS-PRISMの
実用化に努めています。


で、これからどうするつもり?
私の20分クロッキーより

なお、
( ? o?) 「EBR IIっていう以上、EBR I があったんじゃないの?」
ってお考えの方々もいらっしゃることでしょう。
はい、ありました。アメリカのアイダホ州に。世界で初めて、発電に
成功した原子炉として有名です。逆に、それ以前の原子炉はいずれも
研究用、あるいは兵器用Pu製造が目的だったのですね。まあ、最初に
発電した際の電力は、200Wの電球を4つ点灯させた程度でしたが、
発電量を徐々に増大させていきました。もっとも、発電以外にも
目的があって、「Puの増殖」が可能であることを検証する、
というものだったようです。

そして1955年には、燃料が部分的なメルトダウンを起こしました。
とはいっても、ある実験で炉心が加熱してしまい、燃料棒が変形した
というものだったそうです。

で、なんのためにIFRを取り上げているの?

このところ、固定ページではSMRやTWR、PBRといった新型原子炉を
とりあげております。で、IFRは上述のとおり「メルトダウンを故意に
引き起こそうという実験をしてみたが、それでもメルトダウンしなかった」
EBR II を引き継ぎ、さらに使用済み核燃料の処理機能を加えて「核ゴミ」を
減らすよう設計されていたので、もしその後継であるS-PRISMなどが
実用化された場合には、反原発勢力としては「反対する理由」に気を
付けないと。ですから、IFRの問題点を以前から紹介しておきたかった
のですね。

\( > O<)/ 「そんな実験、嘘だ! 原発推進派は、ウソばっかり言って
きたじゃないか!!」
などと感情的な反応を示される読者の方々も、いらっしゃるかsも。
でも、
・ そうした感情的な反応を示していると、中立的な立場の人たちには、
「反原発派って、感情的で発作的だなあ」と思われかねませんよ。
当然、反原発派が説得力を失ってしまいますね。
・ この「メルトダウンしなかった実験」、日本ではあまり知られて
いませんが、アメリカの核発電関係者の間では、よく知られていることです。
ですから、私たち反原発勢力は、「メルトダウン以外の危険」を
指摘しないと。それが何なのかは、後日ページ if-3) で明示します。

実際、今でも IFR は原子炉技術者たちなどの間では、大変評価が高い
原子炉です。まあ、2022年2月現在、まだ実用化はされておりませんが。
少なくても図面やコンピューター シミュレーション上では、
メルトダウンしにくく、核廃棄物も減らせるという「優れモノ」と
されています。
さあ、これに反対する理由とは??

それと、なぜ、そんなに「Generation IV」原子炉の問題点指摘に私は
こだわっているのか?? それは、現在の核発電をめぐる趨勢や言説を
見れば、説明を要しないでしょう。核発電推進勢力からは、「カーボン
排出の削減が焦眉の急 ⇒ メルトダウンしない新型原子炉を多数新設せよ!」
という主旨の主張が喧しいですよね。当然、「メルトダウンさえしにく
ければ、“安全”と言えるのか??」という視点を、核発電に反対する
私たちは広める任務を負っていますよね。

1990年ごろ、核発電のproliferation riskを説いても、エラソーなおじさん連中からけってくるのは、「電気どうなるの??」ばかりでした。 電気のためなら、核兵器が拡散しても構わないのでしょうかねえ??

1990年ごろ、核発電のproliferation riskを説いても、エラソーなおじさん連中から返ってくるのは、「電気どうなるの??」ばかりでした。
電気のためなら、核兵器が拡散しても構わないのでしょうかねえ??

マーチ(デモ)では、原発はなくならなかった

ところが!自慢をしたいんじゃなく、事実として私は1980年代後半に
エネ庁関係の原発PRの仕事を受けてしまった ⇒ そこであれこれ学ぶ
うちに、proliferation riskの恐ろしさに気づき、1990年ごろから今まで
ずっと核発電には反対しております。当時は、友人や知人からバカに
されることもありましたが。
で、2011年3月から、友人や知人たちの私に対する態度が急変し、
いくつかの反原発団体から手伝いをするよう求められたのですね。
しかし、2011-13年ごろの反原発団体の多くは、簡単に言ってしまうならば、
「原発 ⇒ メルトダウン ⇒ 放射能が怖い」というパターンの「反対理由」
でしたよね。

それを見ていて私は、「いずれ、核発電推進勢力は、“メルトダウンしにくい
新型原子炉” を掲げ、カーボン削減のためと主張して巻き返しを図るだろう」と
予想してました。それで、そのころにGeneration IV原子炉のこともあれこれ
調べたのですね。

すると、「味方」であるハズの反原発団体などの一部から、
(  > O<) / 「メルトダウンしにくいって、どーせ原発推進派はウソばっかり
ついてるんだから、そんなこと調べてないで、デモにでも参加しろ!」
などと非難されることさえ、ありました。まあ、私は反原発マーチ(デモ)は、
あまり成果を上げることなく徐々にすたれていくだろうと予想していたので、
ほとんど参加しないのですね。


予想通り ・・・ で、これからどうしよう?
私の20分クロッキーより

そして。2022年2月現在、予想通り「SMRならメルトダウンしない。
カーボン削減のため、そうした新型原子炉の普及を」といった主張が、
毎日のように報道されるようになっております。ですから、「新型原子炉」
の問題点を指摘する任務が、私にはあると考えております。
そのキー イッシューは、やっぱりproliferation riskなのです。

EBR II ⇒ IFR ⇒ S-PRISM を簡単にまとめれば

時系列で極めて簡略化してまとめてみましょう。

1951年  アメリカのアイダホ州に、世界初の高速増殖炉にして世界で最初に
発電に成功曽田原子炉 EBR I が稼働開始。最重要目的は、Puの増殖が可能だ
ということを実証することであったよう。
1953年  増殖が可能であることを実証。
1955年  ある実験中に、部分的なメルトダウン。燃料が変形。
1964年  EBR I 稼働終了、EBR II に引き継がれる。

1969年  EBR IIからさらに発展した、IFR コンセプトの試験にEBR IIが
利用されるようになった。
1986年  上述の「わざとメルトダウンさせよう」実験で、メルトダウン
しなかった。(次回のページ if-1) で述べる予定)
1994年  クリントン政権が、IFRプロジェクトをキャンセル。
(やはり proliferation riskが主な理由だったようですが、詳しくは後日)

それ以降も、GEは独自にIFR研究開発を継続。
2022年2月現在、上述のとおりGEHがIFRの後継S-PRISMの実用化に
努めているよう。

(GEHに対する悪意は、私にはまったくありませんよ!
ただ、私企業である以上「儲けが出るような」活動をするべきですが、
結局 核発電というビジネスは利益になるのかというと~~)

「こんな面白い機械、やめらんねーよ」

「こんな面白い機械、やめらんねーよ」

で、次回から

if-1) IFRとそのフォロワーの概要
if-2) IFRとそのフォロワーの安全性
if-3) IFRとそのフォロワーのproliferation risk

という内容を順に紹介していく予定です。
では、次回の if-1) をアップロードするまで、しばしお待ちくださいな!

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