s-12) (SMR) SMRとHALEU
2026年10月
このままCANDUを短く紹介する固定ページの作成を始める
予定でした。
ところが。
どうも日本語メディアでもSMR新設の話題が登場しており、
しかも
・ 「小型でモジュール式」といった簡単な説明しかされておらず、
・ 大事故を起こしにくいという記載はあるが、
・ SMRに現実的に付きまとっているHALEUというproliferation
関連の問題については沈黙している
そんな記事が目立ちます。
一例として、次の産経新聞ウェブサイトの記事を:
米原子力規制委、次世代小型モジュール炉SMR建設を初めて許可 AI需要で期待高まる – 産経ニュース
そこで、
1 まずは、現時点でよく報道されているBWRX-300について、
ごく短く紹介
2 passive safetyばかり話題にされているけど~
3 HALEUに伴うリスク
という順で、本ページ s-12) を作成することにしました。
1- まずは、BWRX-300について
2026年10月初旬現在、日本語メディアで話題になっている
SMRといえば、BWRX-300ですよね。上のリンク先にあるように、
TVAがこのSMRを使った原発を建設するのを、NRCが許可したと。
そのBWRX-300ですが、GE Vernova Hitachi Nuclear Energy社
(以下、GVH社)のSMRの1つで、簡単に言っちゃえばESBWR
(上の黒いゴチャゴチャ メニューで、上の方にあるページ al-3) 参照)の発展形です。ですから、基本的にはBWRを小型化した
SMRです。
BWRの基本的な構成は、すでにページ d-2) で説明済みです。
なお、英語版WikipediaのBWRX-300というページ(日本語版
には、ありません!)
BWRX-300 – Wikipedia
によれば、このTVAとGVHの合意は、2022年8月に成立した
そうです。さらに2025年12月、DOEはTVAに対し、この
BWRX-300建設を支援すべく4億ドルの補助金を供給することを
決定しました。
「SMRなんてアメリカの話だよね~~」で済まさないで
くださいね。日本の公金も投入されるのですから。(後で述べます)
さらに、上の英語版Wikipediaのページによれば、北米だけでなく
ポーランドやスウェーデン、エストニア、ハンガリー、ブルガリア
などでもSMR導入の話はあるようです。
いや、日本でもすでに2021年10月、当時の自民党幹事長が
既存原発をSMRに建て替えようっておっしゃってました。
ページ s-0) の冒頭をご覧くださいな。
2 passive safetyばかり話題にされているけど~
で、多くのメディアがSMRを取り上げるとき、簡単に言っちゃえば
「メルトダウンしにくい」という特長に言及してますよね。
そのわけは、passive safetyだと。
すでにページ s-9) などで、passive safetyについては説明しました。
念のため、SMRでの冷却水のpassive safetyとはどんなことなのか、
あえて図解しておきます。
要するに、
外部電源喪失などで冷却水を炉心へと送り込むポンプ類が
動かなくなっても、
小型なので、温度差による自然な対流で冷却水は炉心を流れる
ってことです。
でも、たとえば大地震などで冷却水そのものが漏れ出してしまい、
LOCAに陥った場合とか、どうなるんでしょうかねえ??
それと、原発事故そのものは、確かにSMRならいくらか起こり
にくくなるでしょうけど、
proliferationも視野に入れると、SMRの過半数には重大な問題が
あります。
その重大な問題については、多くのメディア報道は取り上げて
いないようです。
(;; >0<) / もう、メディアは偏向してて、ずるい!
と怒ることも必要ですが、反原発勢力の側に問題はなかった
でしょうか??
正直言って、少なくても日本では、多くの反原発団体が原発問題と
いうと事故ばかりに注目しており、proliferationや戦争/テロ関連
リスクをあまり訴えてこなかったことも、メディア報道の偏りに
つながってきたと私は見ております。
まずは、反原発勢力が「SMRの過半数が使う新型の核燃料」の
危険性をアピールしませんと。
その核燃料に伴う危険性について、次に述べますね。
3 HALEUに伴うリスク
World Nuclear Associationという、原子力産業の国際的な業界
団体があります。そこが出しているHigh-Assay Low-Enriched Uranium (HALEU)という2026年8月17日付の文書が
High-Assay Low-Enriched Uranium (HALEU) – World Nuclear Association
にあります。そのWhat is HALEU? という段落に、
— HALEU is needed for many advanced power reactor fuels,
and about two-thirds of the SMR designs in development.
(HALEUは先端型各種原子炉の多くで必要になり、開発中の
SMRのおよそ2/3でも必要だ)
HALEUとはどんなものか?それは既に説明済みなのですが、
それでも
(;; ? o?)> ちょっと待って、そもそもHALEUってなに??
と仰る方々のために、U濃縮度と用途のチャートを再掲して
おきますね:
では、HALEUのどこが、そんなに問題なのか??
上のチャートで示す核兵器グレードへの濃縮が、従来の
原子炉燃料であった3-5%よりもはるかに容易になってしまう、
それが問題なのですね。
(;; ? o?)> ちょっと待って、5% を19.75%とかに高めたって、
90%まで濃縮するための作業や時間は、たいして変わら
ないんじゃ??
それが、大きく違うんです。
Vienna Center for Disarmament and Non-Proliferationという団体の
ウェブサイトに、
HALEU: Some Safeguards and Non-Proliferation Implications
(HALEU: セイフガードと核拡散防止に対する影響の一部)
という文書があります。
HALEU-Some-Safeguards-Implications.pdf
John Carlsonさんによる、2024年8月8日付のものです。
その
2. Safeguards and non-proliferation issues
という段落に、以下のくだりがあります:
私の日本語化を、英語原文の次に。
そこでの < > 内は、私からの補足説明。
The potential challenges with HALEU related to safeguards and
non-proliferation can be briefly outlined as follows:
(1) Higher attractiveness for diversion. This relates primarily to the possible diversion of HALEU as feedstock for high enrichment. However, a recent paper has also raised the possibility that HALEU could be used directly for a nuclear explosive device. Whatever the practicability of this, the issue certainly highlights a major difference with HALEU compared with current LEU fuels. If HALEU is diverted for further enrichment to weapon-grade HEU (90 percent U-235 and higher), the enrichment effort required would be significantly less
than using typical LEU. For example, to produce HEU at 90 percent enrichment using as feedstock HALEU at 19.75 percent enrichment would require little over 40 percent of the enrichment effort
compared with using LEU at 5 percent enrichment —.
(2) Economic incentive to reprocess. The higher residual
enrichment of spent HALEU, compared with spent LEU, could
change the economics of reprocessing. As shown in the Annex to
this paper, preliminary analysis suggests reprocessing HALEU
could be economically attractive. Whether this is in fact the case
will depend on the cost of reprocessing, which in turn will depend
on practical aspects, especially burnup levels (affecting the
proportion of fission products in spent fuel) and whether the
higher fissile content of spent HALEU fuel causes significant complications in reprocessing HALEU. If reprocessing HALEU is viable, this would raise the following considerations:
(a) nuclear latency issues, if new reprocessing plants are established
in states that do not currently reprocess (currently the only non-nuclear-weapon State with a commercial reprocessing facility is Japan);
(b) diversion risk for HALEU recovered for re-enrichment and for separated plutonium (assuming plutonium separation from HALEU
is undertaken – see section 4 below).
Major factors affecting questions of risk include the type of fuel and the type of fuel cycle involved. For example, currently there is no practical technology for reprocessing TRISO fuel. Currently,
therefore, TRISO fuel is seen as presenting low proliferation risk.
*********************************
セイフガード <核技術の悪用防止策> と核拡散防止との関連でHALEU に伴う潜在的な課題は、簡略化して概略を示すなら
次のとおり:
(1) 悪用しようという誘惑が高まる ― 基本的には、HALEUを
悪用してさらに濃縮を行おうという危険性である。さらに最近の
ある研究報告によれば、HALEUはそのまま核爆発装置に使う
ことも可能であるという。その実用性がどの程度であれ、現行の
LEU核燃料と比べてのHALEUの大きな違いがここに浮かび
上がることは確かだ。
HALEUを悪用して核兵器グレードのHEU(U-235の比率が90%
以上)に濃縮する場合、 それに要する労力 <遠心分離する
ための作業や所要時間など> が、典型的なLEUからHEUに
濃縮する場合と比べて、大幅に減るのだ。例として、19.75%のHALEUを90%のHEUに濃縮するための労力は、5%のLEUを
同じHEUに濃縮するための労力と比べて、ほぼ40%で済む。
・・・・
(2) 再処理をしようという経済的な誘惑 ― 使用済みのLEUと
比べ、使用済みHALEUを再処理すると、再処理の経済性が変わる
恐れがある。・・・・ 予備調査から判明しているように、再処理に
要するコストは各種の現実的な要因、特にバーンアップ
<核燃料中の核分裂性物質が、どこまで核分裂したか> の程度に
よって変わる。(それにより、使用済み核燃料中の核分裂性物質の
比率が左右される) また、使用済みHALEU核燃料中の核分裂性
物質の比率が高いためHALEUの再処理に重大な複雑性が伴うのか
否かも、そうした現実的な要因によって変わる。HALEUの
再処理が実用的である場合、次の各問題が発生する:
(a) 潜在的核保有の問題 ― 現在は再処理を行っていない国が
新たに再処理工場を建設する可能性(今のところ、核兵器意を
保有していない国で商用再処理施設を持っているのは、日本だけ)
(b) 再濃縮のために抽出したHALEUや、分離抽出した
プルトニウムが悪用される危険性(HALEUからのプルトニウム
抽出を行うと想定した場合)
こうしたリスクに影響する主要要因の一部として、核燃料のタイプ
や該当する核燃料サイクルのタイプもある。たとえば、TRISOを
再処理できる技術は、今のところ存在していない。したがって
現時点では、TRISOはproliferation riskが小さいとみられる。
<TRISOについては、ページ h-2) を参照。TRISOにHALEUが
使用される可能性については、h-3) を参照>
**********************************
さらに、上記に続く3. Enrichmentという段落には、以下の
くだりが:
The following is an approximate comparison of the enrichment
effort needed to produce one safeguards significant quantity (SQ)
of weapon-grade HEU using feedstock of natural uranium, LEU
and HALEU.
As defined by the International Atomic Energy Agency (IAEA) for safeguards purposes, an SQ is a quantity of HEU containing 25 kilograms U-235. For the following calculations, weapon grade is defined as 90 percent U-235 (one SQ of HEU at 90 percent enrichment is approximately 27.8 kilograms of total uranium).
The metric for enrichment effort is the SWU – separative work
unit. Calculation of enrichment effort depends on the
assumptions made, including: • The ratio between feed material
available and planned/acceptable tails assay (depleted output);
• The number of enrichment stages required;
• Enrichment levels – figures used here are 5 percent U-235 for
LEU and 19.75 percent U-235 for HALEU. Based on these figures,
to produce one SQ of weapon-grade HEU:
• Starting with natural uranium requires an enrichment effort of
5,370 SWU.4
• Starting with LEU enriched at 5 percent U-235 requires 835 SWU, that is, around 16 percent of the effort required if starting with
natural uranium.
• Starting with HALEU enriched at 19.75 percent requires 345 SWU,
that is, around 42 percent of the effort required if starting with
LEU, or just over 6 percent of the effort required if starting with natural U.
*********************************
セイフガードとの関連で 1有意量(significant quantity、SQ)の
核兵器グレードHEUを、天然ウラニウムとLEUとHALEUを
それぞれ使って製造するための濃縮作業量を、概略的に比較して
みよう。 <SQとはIAEAが定義した用語で、1個の核爆発装置の
製造を排除しえない核物質の量を指します>
セイフガード関連でIAEAが定めているように、U-235を25kg
含んでいるHEUが、1 SQに相当する。以下の試算では、核兵器
グレードとはU-235比率が90%であるとしている(濃縮度90%でHEUが1 SQあるなら、ウラニウムの総量はおよそ27.8kgになる)
ウラニウム濃縮に要する労力の単位はSWUつまり separative work unit(分離作業単位)という。<なお、SWUはエネルギー量の
単位ではなく、加工作業の大変さを表す単位です。出発点となる
Uの濃縮度、濃縮後のUの濃縮度、残滓の量などから算出する
そうです> 濃縮労力の算出には、ある種の想定が伴う。
その例として、以下のものがある:
• 利用できる、出発点となる核物質と、計画しているまたは
許容できるテールズ アセイ(残滓の中のU-235含有量):
• 必要となる濃縮段階がいくつあるのか
• 濃縮の程度 ― ここで採用する数値としては、LEUがU-235 5%、HALEUが19.75 %である。
この場合、核兵器グレードのHEUを1 SQ製造するためには:
• 天然ウラニウムから濃縮する場合には、濃縮労力は 5,370 SWU
• 5%のLEUから濃縮する場合には、835 SWU。つまり、天然
ウラニウムから濃縮する場合の約16%。
• 19.75%のHALEUから濃縮していく場合には345 SWU。つまり、LEUから濃縮していく場合の約42%。天然ウラニウムから始めた
場合の濃縮労力と比べるなら、わずか6%強。
************************
これでお分かりですよね?
U濃縮は、最初のU-235濃度が低いほど大変な作業になり、
その大変さの程度は直線的に濃度に比例するわけじゃ、
ありません。低濃度であるほど、けた外れに大変になるのですね。
当然、HALEUが世界に蔓延してしまえば、「核兵器グレードに
まで濃縮しやすいU」が世界にはびこる結果になっちゃいますよね。
しかも、再処理コストが下がるため、「再処理への誘惑」も
強まってしまう。
反原発団体の皆さん、このproliferation risksをもっと社会に訴えるのが、責務では??
さらに、日本の血税が~~
今年3月のトランプ・高市会談では、日本がアメリカでのSMR
建設を支援する投資をしましょ、といった合意がありましたよね。
詳しくは、たとえば まさの あつこさんによる今年4月9日付の
「異常過ぎるSMR(小型原発)1社に6.3兆円の高市・トランプ
共同発表」という文章をお読みくださいな。
異常過ぎるSMR(小型原発)1社に6.3兆円の高市・トランプ共同発表|まさのあつこ 地味な取材ノート
つまり、この合意が議会で承認されて実現してしまえば、
上記の通りproliferation risksやreprocessing risksを悪化させるHALEUの蔓延を招くSMR建設に、日本国民の血税が投入されて
しまう
という結果になっちゃいます。
反原発団体の皆さん、こうしたトンデモない大問題を、
もっと指摘する情報発信を展開しましょうよ!











