Peace Negotiations and Zaporizhzhia Nuclear Power Plant
(和平交渉とザポリージャ原発)
「やかんをのせたら~~」では核抑止問題にしばらく
注目してきたため、
ザポリージャ原発のことを最近あまり取り上げて
きませんでした。
しかし、忘れていたわけじゃ、ございません。
https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/peace-negotiations-and-zaporizhzhia-nuclear-power-plant
に、Darya Dolzikovaという方による今月(2025年9月)
4日付の論考を見つけました。
いつもどおり、一部抜粋・日本語化して紹介しますね。
詳しくは、上のリンクから元の英語テキストをどうぞ。
< >内は、私からの補足説明です。
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<リード>
ロシアとウクライナ間の和平交渉を求める機運が高まる中、
ヨーロッパ最大の<ザポリージャ>原発が今後どう
なるかは予断を許さない。

みんな、逃げて~
私の15秒クロッキーと30秒クロッキー
<本文>
ザポリージャ原発(ZNPP)は今も、両国がせめぎ合う
前線にある。和平・停戦交渉がどのようなものであれ、
同原発とその付随都市であるエネルホダルとは、
ロシアの支配を離れるべきだ。さもないとこの原発は
ウクライナにとってもヨーロッパにとっても放射性物質の
脅威をまき散らしかねない存在として際立ち、ロシアは
引き続き軍用機器類や人員をそこに保管するだろう。
同時に、同原発をウクライナに引き渡したとしても、
安全性を確保するのは大仕事だ。・・・・
ロシアによる誤った稼働
・・・エネルギー用インフラを標的にするのは戦争での
常とう手段だが、原発の場合には核物質があるため
独自の危険性がある。それを軍事標的にするのは、
無責任だ。原発への攻撃は、非戦闘員に被害をもたらす
恐れがあるなら、人道のための国際法で禁じられている。
原発に深刻な事故を発生させるには、原子炉を直接
攻撃する必要はない。攻撃やメインテナンスの不備などで
冷却水や外部電源システムに損傷が出れば、原発の稼働と
安全のためのシステムには問題が発生しうるのだ。
そして、実際にZNPPではそうした事態が幾度か発生して
きている。最悪の場合、こうした事態から放射性物質が
漏出することもあり得る。<上の黒い巨大化した
メニューで、付録 w-15) も参照>
・・・・・

拷問はやめてくれ・・・
私の20分クロッキー、男性のモデルさん
・・・同原発を占拠中のロシア軍は、ウクライナ人の
原発スタッフやエネルホダル市民に対し、拷問や拘束、
その他嫌がらせを行ってきている。・・・ ZNPPの
スタッフに対する拷問の報告には、証拠もよく整って
いる。著者に入った情報によれば、2025年8月の時点で
最低でもエネルホダルの住民19名がロシアにより拘束
されている模様だ。そうした人たちの中には、
長期間の投獄刑に処された人たちもいる。・・・
・・・ 同原発でのロシア軍の活動を監視するTelegramの
チャネルもあり、その一部はロイターでも報道されている。
そうした動画などを見ると、ロシア軍はそこから武器を
発射、軍用機器を保管、さらには敷地内でBBQをしたり
している。・・・ ZNPPに配置されているIAEAのチームが
先日報じたところによれば、「敷地の教会に極めて近い
位置から」外へ向けての発砲が聞こえたそうだ。
ウクライナ高官たちによれば、ロシア軍は以前から、
この原発からドニプル川対岸にあるニコポルなどの
都市への攻撃を行ってきている。だがウクライナ軍は
それに対抗する充分な反撃をできずにいる。迂闊な
反撃をして原発に損害をもたらし、原発事故を招く
わけにいかないからだ。
<敵軍がこちらの原発を占拠してしまった場合、
こちらは迂闊に手を出せなくなる ・・・ つまり原発は
防衛の脆弱箇所となりえるのですが、これについては
多くの方がご指摘済みです。「やかんをのせたら~~」
でもとっくに指摘済みで、上の巨大化した黒いメニューで
ページ d-6) にある「原発ドロボーの襲来」という
あほバカ漫画の下をご覧くださいな>
そうでなくとも、戦場において原発を稼働させること
自体に、大きな問題やリスクがある。その実例の一部
として、すでに外部電力供給の喪失や冷却水供給の
深刻な問題がたびたび発生してきた。しかも、ここ
数中間、悪化しているのだ。加えて、優秀なスタッフも
不足している。・・・・ ロシアの原発のスタッフを戦地に
ある原発で働くよう招いても、なかなか応じては
くれないだろう。・・・
それだけの問題がありながら、ロシアの国営原子力
企業Rosatomの経営陣の発言からも、ZNPP周辺で
観察された出来事を見ても、ロシアはこの原発の
再稼働に執着してしまっている。現状で再稼働など
すれば、無責任極まりない。・・・ <現在、ZNPPの>
原子炉はコールド シャットダウン状態にあり、
この状態では何かあった場合に対応する時間が取れ、
重大事故を防止しやすくなる。炉内の核燃料の同位体
組成も、稼働中かコールド シャットダウンかで
異なってくる。稼働中のほうが、無論リスクが高い。
現在のような戦時下において再稼働に踏み切れば、
原発事故のリスクは大幅に増大してしまう ・・・

呆れてすっ飛んじゃう~
私の20分クロッキー
ロシアによる制御が続く場合のリスク
上述の各理由から、ZNPPとエネルホダルをロシアが
制圧したままでは、どのような停戦あるいは和平協定も、
不完全で持続性のないものになってしまう。原発の稼働や
メインテナンスの人材もなかなか手に入れられずにいる
ため、ZNPPを無事に運用する能力は低下していく。
同時に、経年劣化も起きる ・・・
ロシア側の操作員たちにはRosatomとロシア政府から、
ZNPPの<6基ある>原子炉の一部でも再稼働せよとの
プレッシャーがのしかかる見込みだ。Rosatomの経営陣に
よれば、2023年までの時点で同社はZNPPとエネルホダル市
とに200億ルーブル<約356億円>を充当しており、
2026年までにさらに900億ルーブルを投じる計画だ。
一方、第三者のロシア語ウェブサイトにある財務記録を
見ると、Rosatomの子会社がZNPPの運営を継承して
いるのだが、その子会社の2023年の純損失は120億
ルーブルに達していた。
この原発の操作員たちにしてみれば、ロシア政府に
対しても国際社会に対しても、自分たちにはこの原発を
再稼働させて運用していく能力があるのだ、と実証したがる
ことであろう。これは資金フローを確保するためであると
ともに、ロシアの核発電技術とZNPPの和平交渉での
カードとしての価値とを高く見せるためだ。・・・・
上述のように、現状でZNPPを再稼働してはならない。
重大な事故を招く危険があり、そうなればウクライナ
だけでは済まず、ヨーロッパ各地に被害が出る。
さらにZNPPがロシアの掌中にある限り、ウクライナ国内
並びに停戦・和平交渉の相手(つまり、ウクライナであれ
国際的な国家連合体であれ)にとっては、ZNPPは恐怖の
対象となる。・・・ この原発は、ニコポルから直線距離で
わずか13㎞の位置にある。・・・ ロシアの手の内に
とどまってしまった場合、この原発はロシア軍の
サンクチュアリとなる。NATO軍もウクライナ軍も、
原発に対し本格的な攻撃を行うわけには行かない。・・・
ZNPP周辺が一種の緩衝地帯ないしは立ち入り禁止地帯に
指定された場合には、当然、ロシア軍がZNPPにいること
自体が問題となる。
<ついでに言うと、原発の侵略軍による占拠・基地化は
基本的に世界のどこででも起こりえるのですから、
世界の商用原発すべての周囲に非武装地帯を設ける必要も、
まじめに検討すべきですよね>

憂鬱だ~
私の20分クロッキー、男性のモデルさん
ZNPPの今後に関する選択
理想的には、ZNPPの正当な所有者はウクライナであり、
適切な管理運営ができるのもウクライナのみである以上、
ウクライナに変換するべきである。しかしロシアも、
これ程貴重な戦利品を返したがらないだろう。・・・・
短期的により実現性の高い選択として、ZNPPの所有権を
何らかの国際的なタスク フォースないしはコンソーシアム、
あるいはIAEAに移すのが賢明かもしれない。ZNPPの敷地と
その周辺は、エネルホダルも含め、中立地帯に指定できよう。
そうした地帯を原発周囲に設けることで、原発が軍事基地に
転用されてしまうことを防止できるだけでなく、原発が
周囲の軍事活動からの被害を被るリスクも軽減できる
はずだ。
IAEA内部でのロシアの影響力を考えると、IAEAが
どこまでZNPPに関与できるのか、といった懸念も表明
されていた。この原発をIAEAが委託されて管理運用する
ことで、中立性や信頼性を高めやすくなるだろう。
だが、IAEAは大型事業の運営や重大なインフラ施設の
管理を行う機関ではない。そのため、IAEAだけでは
人材も資金も不足となろう。さらに、IAEAの核エネルギー
部門を担当する副事務局長は、ロシア国籍なのだ。
そこでそれに代わる選択肢として、IAEAと民間主体とが
協力してZNPPの管理運用に当たるという選択がある。
その民間企業としてはヨーロッパやアメリカのもの、
さらに韓国、日本、中国の企業なども考えられる。
そして国家政府や世界銀行、OECDなどが資金援助を行う。
世界銀行は最近まで核エネルギー プロジェクトへの出資を
禁じていたのだが、今年6月に解禁した。
<核発電を”野放し”にしておくと、このように地球規模で
多大の資金問題も招き得ることにもご注意>
ロシアでもウクライナでもない組織がZNPPにいることで、
将来の軍事攻撃を抑止する要因にもなるだろう。・・・・

不安しかない・・・
私の20分クロッキー
理想としては、返還後のZNPPを直接に操作するのは、
ウクライナ人の人材であるべきだ。・・・ この原発の
現場・現状を熟知しているのはウクライナの技術者たち
だけだ。それでもロシアは、少なくてもしばらくは
ロシア人の人員も同原発に配置するべきだと固執する
かもしれない。・・・・
この原発周辺での戦闘が止み、徹底した安全評価と
メインテナンスを行い、外部送電グリッドとの接続の
重複化や冷却水の確保といった主な補助システムや
安全システムを再構築できれば(もっとも、この水源の
確保が難題だが。現時点で、カホヴカ貯水湖が破壊
されているので)、原子炉を1~2基稼働させることも
あり得よう。時間はかかるだろうが。だが、これには
専門技術も巨額の資金も必要になる。技術はウクライナに
あるが、財源については国外からの援助を必要とする
はずだ。関連施設すべてを検査し、それに先立ち
大がかりな地雷撤去作業も必要となりえる。どの程度の
投資が必要となるのか、その金額推定は難しい。ロシアが
返還する時点で、どのような状態になっているか不明
だからだ。それでも、数十億ドルにのぼる可能性がある。
・・・・・

こんなの、前例にしないでよ~
私の20分クロッキー、男性のモデルさん
前例となってしまう誤りの回避
・・・・
ロシアに和平・停戦交渉においてZNPPの返還を確実に
議題に取り上げさせるためには、当面、ウクライナを
支援する諸国はロシアが引き続きこの原発を占拠したく
なくなるような動きをせねばならない。一例として、
RosatomがZNPPを占拠していることを理由とする、
同社のスタッフ並びに世界での業務を対象に制裁を
実施することだ。そうすれば、ZNPPの占拠を続けても
損失が大きくなるだけで、利益にはつながらないと認識
されよう。
ロシアによるZNPP占拠をやめさせることができない場合、
その影響はウクライナ戦争を超えてしまう。・・・
相手国のエネルギー インフラを占拠するという暴挙が
まかり通ってはならない。ウクライナ戦争はいろいろな
意味で前例を作っているのだが、原発の占拠継続という
先例は、まだ回避できる悪しき前例なのだ。
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特に真新しい考察があるわけではなく、今迄からZNPP
関連で指摘されてきている問題が列挙されてますよね。
ある日本の防衛軍(自衛隊)の士官の方のお話ですと、
某国軍が日本に攻め込んでくる場合、最初に占拠を
狙うと自衛隊が見ているのは若狭湾の敦賀原発だ
そうです。
敦賀に限らずとも、泊も柏崎刈羽も若狭湾も、原発が
「ザポリージャ化」されるリスクを抱えてますよね。
「本当に日本を愛する」のであれば、核発電と
いうものを再考すべきでしょう。